事例紹介
Category 不動産
2018年04月03日
不動産(住宅)購入で所得税が戻ってくる?仕組みと申告方法について解説
不動産(住宅)購入の機会は一生のうち何回もありませんよね?せっかく不動産(住宅)購入したのなら所得税が還付される場合があるので条件と申告方法も気になるところです。そこで
今回は不動産(住宅)購入で所得税が還付される条件と申告方法を解説します。
この記事でわかること
1. 不動産(住宅)購入すると所得税が還付されるって本当?
不動産(住宅)購入すると所得税が還付される場合がありますが、理由として住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)という制度の効果が大きいためです。
まず通常の所得税の計算についてですが、所得税の計算は、給与収入などの収入からそれぞれの控除を差し引いて合計所得を計算し、その合計所得から基礎控除などの所得控除を合計したものを差し引き、課税対象となる金額を計算します。
最後に課税対象の金額に所得税の税率をかけて、所得税の金額が算出されます。
ここで住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を利用していると上記の計算で算出された所得税の金額から、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)で計算した金額を直接差し引くことができます。
この「所得税の金額から」直接差し引けるというところの効果が大きいということになります。
2. 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは?
住宅ローン控除は、正式には「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除」といい、税額控除のひとつになります。上記で述べたように税額控除なので、減税効果が大きいです。
条件として簡単にいうと、新築または中古のマイホームを購入する際やリフォームをする際に住宅ローンを利用して金融機関等からの借入金がある場合、基本的には最大10年間にわたって借入金残高の1%に応じた金額が所得税から差し引かれるというものです。
つまり納める税額が少なくなるため、納めすぎた税金が還付されますので納めた税金以上が還付されることはありません。
しかし、所得税から還付しきれなかった分は翌年の住民税から差し引かれるようになっていますのでぜひ適用漏れがないように注意しましょう。
2-1. 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の仕組み
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は分類としては、一般住宅、認定住宅(長期優良住宅、低炭素住宅)、バリアフリー改修促進税制、省エネ改修促進税制の4つがあげられます。
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、金融機関等で住宅ローン等を組んで借入金をして住宅を取得する場合に、個人の金利負担の軽減を図るためにつくられました。
そのため確定申告についても住宅ローン等を組んで借入れをした人が個人単位で申告するの
で世帯単位での申告ではないことが注意点です。
2-2. 適応条件
個人が、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用を受けることができるのは、次の5つの条件を満たすときになります。
1つめの条件は、新築又は取得の日から6か月以内に住み始めて、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいることが必要となります。
2つめの条件は、この特別控除を受ける年分の合計所得金額が、3,000万円以下であることが必要となります。
合計所得金額とは、いままでに述べたとおり所得控除を差し引く前の所得の合計額のことをいいます。
収入と所得は混同しやすいですが、収入から必要経費や、その収入ごとに決められている控除を差し引いたあとの金額が所得ということになります。
3つめの条件は、住宅の床面積が50平方メートル以上であり、床面積の2分の1以上の部分を自宅として利用していることが条件です。
床面積については登記簿に表示されている床面積で判断されますが、マンションの場合は面積の測定方法の違いから登記簿の床面積が小さく表示されているため注意が必要です。
また店舗や事務所などと併用で使用している住宅の場合は、店舗や事務所などの部分も含めた建物全体の床面積によって判断しますが、床面積の2分の1以上を自宅として使用していることが条件となります。
4つめの条件は10年以上にわたり分割して返済する方法になっている新築又は取得のための一定の借入金又は債務があることです。
一定の借入金又は債務とは、例えば銀行等の金融機関、独立行政法人住宅金融支援機構、勤務先などからの借入金や独立行政法人都市再生機構、地方住宅供給公社、建設業者などに対する債務です。
ただし、勤務先からの借入金の場合には、無利子又は0.2%(平成28年12月31日以前に居住の用に供する場合は1%)に満たない利率による借入金はこの特別控除の対象となる借入金には該当しないので注意が必要です。
また、親族や知人からの借入金は全て、この特別控除の対象となる借入金には該当しない形です。
最後の5つめの条件は、居住の用に供した年とその前後の2年ずつの5年間に、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例、居住用財産の3,000万円の特別控除、買い換え特例などの適用を受けていないことが条件です。
つまりこれらの譲渡所得の減税の特例と住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は併用できないということになります。
2-3. 控除期間
控除期間は居住した年月によって異なってきますが、制度内容は、居住の用に供した年(住み始めた年)が平成26年4月1日から平成33年12月31日までの場合、控除期間は10年になります。
この控除期間10年は、一般住宅やその他の住宅についても同様の期間となります。
注意点としては住宅ローン等を利用した金融機関等からの借り入れが10年以上というのを条件としてあげていますが、この借入金を繰り上げ返済してしまって10年以上の返済期間ではなくなってしまった場合は控除期間10年というのは当然のことながら使えなくなってしまう点が注意点となります。
2-4. 控除額の計算方法
控除額の計算方法として具体例をあげたいと思います。
計算方法として対象となる年に支払った所得税額を確認し、その金額以上は還付されず住民税から差し引かれる形になることを確認します。
ここでは所得税額を18万円とします。
次に金融機関の住宅ローン借入金の年末の借入金残高(一般住宅の上限は4,000万円、認定住宅の上限は5,000万円になります。)を確認します。
例として一般住宅の購入に当てはまる内容で年末の借入金残高が2,000万円であったとします。
この2,000万円に1%をかけると20万円になります。
上記から所得税額が18万円だったので20万円を差し引くと2万円が差し引ききれず余る形となります。
以上の計算から所得税18万円は全額還付されることになり、差し引ききれず余った2万円分は翌年の住民税の計算から差し引かれる形となります。
その金額が所得税から戻ってくる(控除される)金額です。年末残高の1%よりも所得税額の方が少なければ、残りの部分が翌年納める予定の住民税から差し引かれます。
こうして基本的には10年間に渡って、毎年金融機関からの借入金残高の1%が所得税の
税額から直接差し引ける形となるのです。
3. 不動産(住宅)購入後に所得税減税の還付申告をする方法
不動産(住宅)を住宅ローンで借入して購入した人は、確定申告をすることで住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を還付申告して使うことができます。
初年度だけはご自身で確定申告をしていただく必要がありますが、2年目以降は勤務先の会社の年末調整で手続きができます。
確定申告の申告期限は不動産(住宅)を購入した年の翌年の3月15日までですが、還付申告は不動産(住宅)を購入した翌年の1月からすることができます。
会社員の場合、申告に必要になる書類は次のとおりです。
・確定申告書A(第一表、第二表)、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
これらは税務署のHPでダウンロードするか、管轄の税務署で手に入れることができます。
・不動産(住宅)を購入した年の源泉徴収票
勤務先の会社から発行されます。
・住宅ローンの借入金の年末残高証明書
借入をした金融機関に発行を依頼して手に入れます。
住民票の写し、登記簿謄本または抄本、不動産売買契約書・工事請負契約書
住民票の写しは最寄りの市区町村の役所等、登記簿謄本または抄本は最寄りの管轄法務局、契約書等はご自身でご準備下さい。
・マイナンバー書類、本人確認書類の写し
こちらも申告書を提出する場合に必要となりますのでご自身でご準備下さい。
簡単なご説明ですが、確定申告書には給与所得以外の収入がなければ、源泉徴収票に書かれている各項目の数字を申告書の該当箇所に転記していただく形になります。
また計算明細書には、上記の書類から土地・建物の価格、面積、借入金年末残高などを記入し、控除額を算出します。
その控除額を最後に確定申告書に転記して、源泉徴収税額から差し引くと還付される税額が計算できます。
ただし、納めた所得税額以上には戻ってはこないので、控除しきれなかった分は翌年の住民税から、上限はありますが差し引かれます。
なお国税庁のHPで確定申告書作成コーナーというページがありますのでその内容に従って入力していくことで申告書の作成も可能です。
繰り返しになりますが、初年度だけ確定申告をすれば2年目からは年末調整で終了できますので初年度だけは面倒でも確定申告をしなければいけない点に注意です。
4. 還付申告(確定申告)をする時の注意点
還付申告(確定申告)をする際の注意点は、先述したとおり3月15日までの期限内に行うか、難しい場合は住民税が決定するまでには申告しなければいけない点と、書類などの不備で控除額が漏れていた場合、取り戻す処理ができないという点です。
確定申告の期間は不動産(住宅)を購入した年の翌年3月15日までで、期限内申告をしておくのが望ましい形ではありますが、還付申告を忘れてしまっていた場合の還付申告(確定申告)は5年間までさかのぼることができます。
しかし住民税でも住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を利用するためには、年末調整もしくは3月15日までの期限内申告が必要です。
このため実質的には、住民税の納税通知書が送達されるまでが期限になってきます。
給与から住民税が徴収される会社員は、5月中にはほとんどの市区町村で住民税が決定され、納税通知書が送達されます。
その際に住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を利用していると所得税から差し引き、きれなかった分が住民税から差し引かれる形になるため、この還付申告(確定申告)をしないと
住民税が計算できないという形になります。
還付申告(確定申告)をしないと住民税が計算できないため区役所から納税通知書の発送がされない事態が予想されます。
そのため期限内申告で還付申告(確定申告)を行うことが望ましい点が注意点となります。
次に書類などの不備で控除漏れがあっても確定申告をしてしまうと後から取り戻す処理ができない点です。
通常は申告期限以降に、確定申告に控除漏れがあった場合は、更正の請求という手続きで払いすぎてしまった所得税を取り戻すことができます。
しかしこの更正の請求では、所得控除等の追加は可能ですが、住宅ローン控除は追加で控除することができません。
そのため、例えば住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の書類がそろっていないけど期限内に申告したいのでいったん確定申告しておこうという形での確定申告は避けていただいたほうがいいです。
一度その年の確定申告をしてしまうと住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)をつかった還付申告はできないという点が注意点になります。
これらの注意点に留意して還付申告(確定申告)を行うようにしましょう。
5. 各種所得控除も同時申請で節税対策を!
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を利用して還付申告(確定申告)する際は所得税のその他の各種控除も同時に申告する形になります。
下記に各種所得控除をあげていきます。
・雑損控除
災害や盗難などによって損害を受けた場合に使用できる控除です。損失額によって控除額が変わる点が特徴です。
・医療費控除
病院などで医療費を一定以上支払った場合に利用できる控除です。
・社会保険料控除
国民健康保険や国民年金などの社会保険料を支払った場合の控除で、前後の年の分でも、その年に支払った金額の全額を控除できます。
・小規模企業共済等掛金控除
指定された共済や個人型年金などを支払った場合の控除で、その年に支払った掛金を全額その年に控除できます。
・生命保険料控除
生命保険料を支払った場合の控除で、年間の生命保険料によって金額が変わってきます。
・地震保険料控除
地震保険料を支払った場合の控除で年間の地震保険料によって金額が変わってきます。
・寄付金控除
ふるさと納税などの寄付をした場合の控除です。
・寡婦・寡夫控除
夫または妻と離婚や死別をした場合などに受けられる控除です。
・勤労学生控除
納税者が勤労学生の場合に受けられる控除です。
・障害者控除
納税者もしくは、控除対象の配偶者や扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合に受けられる控除です。
・配偶者控除
控除対象になる配偶者(夫か妻)がいる場合の控除です。
・配偶者特別控除
配偶者に38万円を超える所得があっても配偶者の所得金額に応じて受けられる控除です。
・扶養控除
控除対象になる扶養家族(息子など)がいる場合の控除です。
・基礎控除
納税者全員に適用される控除です。
ここまで所得控除についてあげてきましたが、それぞれの所得控除について解説していくとそれだけで1つのテーマとなってしまうため今回は割愛させていただきます。
個人での所得控除で差し引ける分は上記だけになりますので使える控除があったらなるべく使って還付申告(確定申告)で同時に申告しましょう。
まとめ
ここまで不動産(住宅)購入すると所得税が還付されるのかというテーマについて解説しましたがいかがでしょうか?
上記の内容から次のことがわかりました。
- 不動産(住宅)購入すると住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を使って所得税の還付申告をすることができる。
- 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の仕組み、物件等の条件、控除期間、控除額の計算方法について
- 不動産(住宅)購入後の所得税減税の還付申告の方法について
- 還付申告(確定申告)をする際は、期限に注意して行うようにすること。
- 各種控除も還付申告(確定申告)の際、同時に申告することになるので使用できる控除はすべて使うようにすること。
上記のとおり住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は税額控除で税金から直接差し引けるため効果がとても大きいものになります。
漏れがないように確実に還付申告(確定申告)をして控除を受けるようにしましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。