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Category  不動産

2018年05月22日 更新

不動産取引の仲介手数料に課税される所得税に関する知識まとめ

知人や友人、あるいは顧客の不動産購入や売却の仲介をした場合に、お礼としてお金を受け取るということも少なくないでしょう。

こういった形で受け取るお礼を仲介手数料と呼ぶことがあります。

なお、仲介手数料と紹介手数料は性質が異なります。

仲介手数料は宅建業法に基づく宅地建物取引業が収受する業務上の手数料です。

事業として継続的に役務の提供を受ける仲介手数料と臨時的、非業務的にお礼としての収受物と紹介手数料とは区別する必要があります。

なぜなら、紹介手数料を継続的に収受することは業務的活動とみなされ、宅建業法違反となるので、はっきりと区別しておく必要があるからです。

不動産の購入や売却には大きなお金が動きますから、仲介手数料として受け取るお金の金額も大きくなることが珍しくありません。

大きな金額のお礼を受け取るのはうれしいことですが、この時に気を付けておかなくてはならないのが税金の問題ですね(この場合は所得税が問題となります)

ここでは他人の不動産売買に関して受け取った仲介手数料に課せられる税金の問題について解説させていただきます。

1. 不動産取引の仲介手数料は所得税が課税される

他人の不動産売買に関して仲介手数料を受け取った場合には、受け取った金額に応じて所得税を負担する必要があります。

所得税というのは日本国内で所得を得た場合に課せられる税金です。

所得とはごく簡単にいうと「もうけ」のことで、実際に得た収入金額から費用として支出した金額を差し引きした金額のことをいいます。

計算式でいうと「所得=収入-費用」ということですね。

この場合の所得金額は、収入金額100万円から接待交際費10万円を差し引きした90万円ということになります。

この所得から一定の計算方法に基づいて計算した所得税を負担することになります。

以下では所得税の具体的な計算方法や、納付のルールについて見ていきましょう。

1-1. 仲介手数料への所得税課税額の計算方法

所得税は、所得をビジネスとして得たか、あるいは単に単発の収入として得たかによって計算方法が異なります。

ビジネスで得た場合の所得を事業所得、単発の収入として得た所得を雑所得と呼びます。

ごく簡単に言って、所得税は事業所得として計算した方が得になる面が多いです。

以下、それぞれの場合に分けて所得税の計算方法を解説します。

仲介手数料を事業所得(ビジネス)として得た場合

不動産仲介業などとして、1年間に同じような形で仲介手数料を得ている場合、事業所得として所得を得ていることになります。

事業所得の計算方法は以下の通りです。

事業所得=収入金額-必要経費-青色申告特別控除65万円

65万円控除を適用するためには複式簿記による帳簿に基づいた貸借対照表、損益計算書の添付が条件になっています。

なお、上の青色申告特別控除を利用するためには、税務署に対して開業届を出すとともに青色申告承認申請書を提出することが必要です(もし提出していない場合には「収入金額-必要経費」で事業所得を計算します)

また、事業所得として所得税の申告を行う際には、事業に関連して購入した資産の購入代金を数年間にわたって経費として処理したり(減価償却費)、家族に対して支払った給与を経費に含めることができたりと、各種の特典があります。

また、事業所得の場合には、1年間トータルで所得がマイナスになったような場合には別の所得(お給料の所得など)から差し引くことができます。

さらに、1年間の所得から損失をすべて差し引きした場合に所得の合計額がマイナスになるような場合には、翌年以降3年間にわたって繰り越すことができます。

仲介手数料を得た場合

単に友人に紹介した物件購入でお礼としてお金を受け取った場合など、反復継続して収入を得る形でない場合には、雑所得として仲介手数料を受け取ったことになります。

仲介手数料を事業所得として得るためには宅建業法に基づく宅建業者として免許を取得する必要があるためです。

雑所得の計算方法は以下の通りです。

雑所得=収入金額-必要経費

雑所得として計算する場合には、事業所得のような各種の特典は受けることができませんが、受け取った金額が少額である場合には次の項目で説明する確定申告不要となるケースがあります。

個人事業主として生活している人やフリーターの方は20万円未満であっても事業所得は1年に1度確定申告するルールになっています。

ただし、所得金額より所得控除の金額の方が大きい場合は申告不要です。

1-2. 非課税になることはあるか

サラリーマンとして生活している人や年金で生活している人は、年間の事業所得が20万円を超えない場合には、その事業所得の申告をしなくても良いという扱いになっています。

ただし、この特例が適用されるのはサラリーマン(給与所得者)や年金生活者に該当する人だけです。

その理由としてはサラリーマンの方は勤務先の会社に年末調整という形で所得税の計算をしてもらい、納税も勤務先を通して行っているという事情があるためです(公的年金の受給者は年金受給時に天引きで所得税を支払っています)

個人事業主として生活している人や、フリーターの方は20万円未満であっても事業所得を1年に1度計算し、確定申告をするルールになっています。

1-3.所得を合算して所得税を計算する

ここまでで「所得の金額」の計算までを説明しましたが、ここからさらに所得税を計算する必要があります。

所得の計算を行った後、所得税の計算は以下の計算式に基づいて行います。

所得税の金額=(所得の金額-所得控除)×税率-税額控除

所得控除・税率・税額控除の意味については以下の通りです。

所得控除

所得控除とは、納税を行うそれぞれの人の家庭事情や家族構成などに基づいて控除してもらえる金額のことを言います(当然ながら控除がたくさんあるほど税金は安くなります)

例えば、同じ収入の人でも独身の人と、専業主婦の奥さんや子供がいる人とでは生活の負担は大きく異なります。

このようなケースで不公平感が生じないようにするために、各家庭の状況に応じて、下記のような各種の控除を受けることができるルールになっています。

配偶者控除:38万円

社会保険料控除:1年間で支払った社会保険料の金額

生命保険料控除:1年間で支払った保険料額に応じて最大12万円

医療費控除:1年間で支払った医療費から10万円を差し引きした金額

勤労学生控除:27万円

基礎控除(すべての人が対象):38万円

など

税率

日本の所得税のルールでは、所得をたくさん得ている人ほど税率が高くなる形になっています(累進課税といいます)

例えば、所得金額195万円以下の人で税率は5%、195万円~330万円の人は10%…といった形です。

具体的には以下のような税率になっていますが、10%以上の税率が課せられる場合には「所得金額×税率」で計算した金額から下記の「控除額」を差し引きすることができます。

195万円以下:5%

195万円を超え330万円以下:10%:控除額97,500円

330万円を超え695万円以下:20%:控除額427,500円

695万円を超え900万円以下:23%:控除額636,000円

900万円を超え1,800万円以下:33%:控除額1,536,000円

1,800万円を超え4,000万円以下:40%:控除額2,796,000円

4,000万円超:45%:控除額4,796,000円

例えば、所得額1000万円の人の場合、税率は33%で控除額は153万6000円となりますので、以下のように計算します。

所得1000万円×税率33%-153万6000円=176万4000円(次の「税額控除」前の所得税額)

税額控除

ここまででの計算から、一定の場合には税額控除としてさらに税額を差し引きしてもらうことができます。

一定の場合というのは例えば住宅ローンを組んだような場合で、別途税額控除の金額を計算し、所得控除の項目までで計算した所得税額から直接的に差し引きします。

例えば、住宅ローンの年末残高が3000万円の場合には、30万円の税額控除を受けることができます。

上の税率の項目で計算した例では所得税額が176万4000円でしたので、ここから税額控除の30万円を差し引きし、所得税額は146万4000円ということになります。

◇住民税はどうなる?

上では所得税の計算方法について解説させていただきましたが、所得税が発生する取引では住民税も付随して発生することに注意が必要です。

所得税と住民税の計算方法はほぼ同じ(所得控除の金額が微妙に異なります)ですが、所得税率が累進税率となっているのに対して、住民税率はすべての人で一律10%となっています。

所得税が発生する場合には、その所得税の金額にさらに10%を上乗せした金額の納税が必要になるということを理解しておいてください。

◇住民税の計算方法と納付方法

また、所得税の計算は自分で計算して税務署に対して確定申告を行いますが、住民税の計算はあなたが行った確定申告の内容に基づいて役所が行います。

実際には、確定申告と所得税の納付を3月15日までに行った後、その年の6月に市役所から住民税の税額決定通知書が納付書とともに送られてきます。

住民税の納付方法には普通徴収と特別徴収の2種類があります。

普通徴収というのは自分で納付書をコンビニなどに持って行って支払う方法で、6月末、8月末、11月末、翌1月末の4期に分けて納付を行う必要がありm佐生。

特別徴収というのは、サラリーマンとして給与所得を受け取っている人が利用できる方法です(自分がオーナーになっている会社の経営者の方も利用できます)

特別徴収を選択した場合には、毎月のお給料から一定額を勤務先の会社に天引きしてもらい、毎月納めてもらうことになります。

住民税の普通徴収と特別徴収のどちらを選択するかは、所得税の確定申告を行う際に確定申告書類上の選択項目にチェックを入れることで選ぶことができます。

もし勤務先の会社にお給料以外の収入があることを知られたくないような場合には、特別徴収ではなく普通徴収を選択するようにしましょう。

2. 不動産の仲介手数料は取引ごとに取り扱いが異なる

ここまでは仲介手数料を「受け取ったとき」の税金計算の方法について説明させていただきましたが、以下では仲介手数料を支払う場合について説明させていただきます。

仲介手数料は不動産業者に対して支払いますが、仲介してもらう不動産取引の種類によって取り扱いが異なるのに注意しましょう。

具体的には取得時と売却時、賃借時のそれぞれで法律上受け取ってよいとされている仲介手数料の金額が異なります。

2-1. 取得時と売却時

取得時と売却時については、対象となる物件価格がいくらか?によって不動産業者が受け取ることができる仲介手数料の上限額が決まっています。

具体的な金額を一覧にすると以下の通りです。

物件価格100万円まで:仲介手数料の上限は5万円

物件価格300万円まで:仲介手数料の上限は14万円

物件価格500万円まで:仲介手数料の上限は21万円

物件価格1000万円まで:仲介手数料の上限は36万円

物件価格5000万円まで:仲介手数料の上限は156万円

物件価格1億円まで:仲介手数料の上限は306万円

物件価格3億円まで:仲介手数料の上限は906万円

なお、不動産業者に対して支払う仲介手数料には、通常は消費税分を上乗せして支払う必要がありますから注意しましょう。

2-2. 賃借時

所有している不動産を賃貸に出すときに不動産業者に借り手を探してきてもらった場合には、仲介手数料を負担するのが一般的です。

この時の仲介手数料についても、不動産業者が受け取ってよい上限額が以下のように決まっています。

  • 居住用の不動産の場合:物件の貸主から賃料0.5か月分以内、借主から賃料0.5か月分以内
  • 居住用以外の不動産の場合:貸主と借主からトータルで賃料1か月以内

居住用不動産の場合には「貸主からいくら、借主からいくら」というようにそれぞれ上限額が決まっていますが、居住用以外の不動産の場合には借主、貸主問わずトータルで仲介手数料の上限額が決まることになります。

多くの不動産業者は法律のルールを守って営業を行っていますが、上で説明させていただいた上限額を超える仲介手数料を要求された場合には一度立ち止まって確認するようにしましょう。

また、上の上限額のルールは契約書上の名目がなんであれ、仲介手数料と実質が同じであれば適用されます。

しかし、広告費については例外で、仲介手数料には含まないというルールになっています。

多くの不動産業者は慣例として仲介手数料1か月分の他に、広告宣伝費としてさらに1か月分(場合によっては数か月分)を徴収しているという実態があります。

3. まとめ

今回は、他人の不動産売買に関して受け取った仲介手数料に関する税金のルールについて解説させていただきました。

本文で解説させていただいた通り、不動産取引で得た仲介手数料については1年に1度所得税の金額を計算し、税務署に対して確定申告を行う必要があります。

確定申告については税務署の相談窓口などで質問などを受け付けてくれますから決して自力でできないわけではありません。

しかし、金額が大きくなる場合や、複雑な取引を行ったような場合には、計算方法に間違いがあると多額のペナルティ(延滞税や過少申告加算税など)が課せられてしまう可能性もあります。

税金計算について不安がある方は専門の税理士や不動産仲介業者などに相談することも検討してみると良いでしょう。