事例紹介

Category  不動産

2018年12月16日

借地借家法は一時使用の場合にも適用される?一時使用目的賃貸の場合の注意点とは

借地借家法とは簡単に言うと、社会的・経済的に弱い立場である賃借人、いわゆる借主を手厚く保護する法律のことです。ところでこの法律は一般的な土地や建物の賃貸契約には適用されますが、一部適用されない場合があります。それは一時使用目的賃貸借契約を結ぶ場合です。

ここでは借地借家法が適用されない一時使用目的賃貸契約を結ぶ際の注意点などについて解説していきます。

1.借地借家法は一時使用目的の場合にも適用?

借地借家法は一時使用目的の賃貸借契約の場合には適用されません。土地や建物を一時的に貸す、いわゆる一時使用目的の賃貸契約を結んだ場合には民法が適用されます。一時使用目的の賃貸借契約とは、賃貸者が期限を決めて土地や家屋などの建物を貸し出すときに結ばれる契約のことです。この「期限」とは、一年以内であることが一時使用目的賃貸借契約の条件となります。

しかし、稀に期限を明確に定めず、「現在婚約中で、結婚するまで」などの理由で一年以上期限を定めずに一時使用目的の賃貸借契約を結ぶこともあります。

ではなぜ一時使用目的の賃貸借契約には借地借家法が適用されず、民法が適用されるのでしょうか?それぞれの法律を詳しく見ていきましょう。

2.1年未満の賃貸借契約に借地借家法は適用されない

借地借家法は一年未満の賃貸契約には適用されません。ここでは期間を定めた賃貸借契約にかかわる借地借家法について解説していきます。

2-1.借地借家法第29条

借地借家法第29条では、「期間を1年未満とする賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす」と規定されています。ですので一般的には賃貸借期限を一年未満の期間に定めていた場合でも、借地借家法第29条により期間の定めがない賃貸借契約とみなされてしまいます。

2-2.借地借家法第40条

借地借家法第40条では、「この章の規定は、一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、適用しない」とあります。この章とは、借地借家法第三章のことを言います。

借地借家法第29条はこの第三章で規定されているため、建物が明らかに一時的な使用を目的として賃貸借されている場合には、借地借家法第29条は無効となり、一年未満の契約期間であっても期間を定めて賃貸借契約を結ぶことができます。

3.一時使用目的の賃貸借契約は民法が適用される

一時使用目的の賃貸借契約とはどのようなものをいうのでしょうか?また、その契約に大きくかかわる民法の条項にはどのようなものがあるかを解説していきます。

3-1.一時使用目的の賃貸借契約とは

一時使用目的とは、「明らかに」一時使用を目的としていることが分かるものでなくてはいけません。では、どのような観点から「明らかに一時使用目的である」と判断されるのでしょうか。

判例によると、賃貸借の動機や使用目的、その他の事情から客観的に判断されます。例えば選挙事務所やイベント会場として使うというような場合です。また、判例によっては賃貸借の契約期間が一年未満でなければならないというケースもあります。

なので契約期間が長期にわたったり、契約内容に更新特約があったり、権利金や敷金の授受があった場合には一時使用目的賃貸借契約とは認められにくくなります。

このような条件をクリアして一時使用目的賃貸借契約を結んだ際には、借地借家法ではなく民法が適用されます。

3-2.民法第617条

民法第617条では期間の定めのない賃貸借の解約の申し入れについて規定されています。その内容は「当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる。」と定められています。

ここが普通賃貸借契約と大きく異なる部分です。普通賃貸借契約では賃借人に落ち度がない限りは賃貸人から解約を申し出ることはできず、賃借人からのみ賃貸借契約の解約を申し出ることができます。

しかし、民法の適用を受ける一時使用目的賃貸借契約の場合には、期間の定めがない賃貸借契約の場合、賃貸者の一存で解約を行うことが可能です。この点は賃貸者にとって大きなメリットと言えるでしょう。

解約の申し入れは解約を希望する日時より前に行われる必要があります。建物であれば3か月、土地であれば1年、動産及び貸席の場合には1日前に解約を希望することを賃借人に申し入れなければなりません。

この解約の申し入れから実際の解約までの期間は借地借家法の半分の日時に設定されているため、この点においても一時使用目的賃貸借契約は賃貸者の立場が強い契約方法であるといえます。

解約の申し入れを行ってから規定の日時が経過した時に、期間の定めのない一時使用目的賃貸借契約は解約されることとなります。

3-3.民法第619条

民法第619条第1項では、「賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第617条の規定により解約の申入れをすることができる。」と定められています。

また、第2項では「従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。ただし、敷金については、この限りでない。」とも定められています。

これはどういうことかというと、期間を定めた一時使用目的の賃貸借契約で、契約によって定められた期間が経過しても賃借人が建物などを利用し続けている場合、賃貸人がこの状態を知りながら退去を求めない限り、最初に結んだ条件と同様の条件でそのまま建物を使用し続けることができるということです。

この時敷金以外の担保となるものは、その役目を果たさなくなります。

4.一時使用目的の賃貸借の注意点

一時使用目的の賃貸借契約は一般的な土地や家屋の賃貸借契約と異なるので、この方法で土地や家屋を貸す際には注意すべき点があります。

ここではその注意点について説明していきます。

4-1.普通賃貸借との違い

普通賃貸借と一時使用目的の違いですが、前者は借地借家法で、後者は民法で取り扱います。借地借家法は賃借人の身分を保証する傾向が強い法律であるのに比べ、民法においては賃貸人の権利を保証する傾向が強い法律であるといえます。

ですので、一時使用目的の賃貸借契約は賃貸人にメリットが多い契約形態であるといえます。

4-2.更新がない

一時使用目的の賃貸契約は更新することを前提としておらず、定められた期限までしかその建物や土地を貸しておくことができません。最初の契約で決めた日時が来ると、そこで賃貸契約は終了します。

土地や建物を長期にわたり貸し出して活用したいと考えている場合には、借地借家法が適用される普通賃貸借契約を結ぶことをおすすめします。

4-3.賃借人に落ち度がなくても退去させることができる

普通賃貸借契約の場合、借地借家法が適用されるため、賃借人に落ち度がない場合には賃貸人は解約を申し入れることができず、また賃借人に落ち度があり解約を要請することができても、解約希望日から6か月以上前に解約してほしい旨を賃借人に申し入れなければなりません。

しかし、一時使用目的の賃貸借契約の場合には賃貸人の意向のみで賃貸借契約を解約することができ、解約の申し入れは解約日の3か月前までとなっています。なので賃借人に落ち度がない場合でも、賃貸借の期限を定めずに一時使用賃貸借契約を結んでいた場合、3か月以上前に申し入れることにより、賃貸人のみの意向によって賃貸借契約を解約することができます。

5.借地借家法と一時使用目的賃貸の関係まとめ

ここまで、借地借家法と一時使用目的賃貸の関係について解説してきました。一時使用目的賃貸契約の場合には借地借家法は適用されず、代わりに民法が適用されることがお分かりいただけたと思います。

民法の適用を受ける一時使用目的賃貸契約を結ぶことによって、借地借家法の適用を受ける普通賃貸借契約を結ぶ場合よりも賃貸人の立場は強くなり、期限が決まっている場合には必ずその期限に賃貸借契約を解除することが可能です。

また、期限を決めていない一時使用目的賃貸契約は、賃借人の落ち度がなくても賃貸人は解約を要請することができ、その通告も解約希望日から3か月以上前であれば良いなど、賃貸人にメリットが多い契約方法であるといえます。

期限を決めて土地や建物を貸したい場合には、この一時使用目的賃貸契約を上手に活用して、空き部屋を有効活用しましょう。