家を売る時に最低限知っておきたいこと

家を売る機会はよくあることではありませんが、大きな資産が動くので失敗はできません。立地や築年数など物件の状態や、売却希望条件も様々なので、一筋縄ではいかない部分もあります。

そこで今回は、スムーズにトラブルなく売却を進めるために家を売る時に最低限知っておきたいことについてまとめました。

1. 家を売る4つの方法

家を売る方法には、主に4つあります。

1-1. 不動産会社と仲介契約結ぶ

仲介契約を結ぶ方法では、不動産会社が物件の購入希望者を探してくれます。購入希望者が現れれば、不動産会社が売主と買主との間を取り持ち、契約の手続きを進めます。成約時には、不動産会社に対して仲介手数料の支払いが必要になります。

1-2. 不動産会社に買い取ってもらう

不動産会社に買い取ってもらう方法は、購入希望者を探す必要がないので、早期売却が可能です。仲介手数料や広告費などを支払う必要もなく、確実に売却することができますが、不動産会社による買い取りは、仲介契約で売却する場合に比べ、価格が低くなってしまう傾向があります。

1-3. オークションで売る

住まいのオークションは、オークションを扱う不動産会社を通して行われます。入札期間内に最も高い価格での購入を希望した人が落札者となり、不動産会社を通して売買契約を結ぶことになります。

競争原理により高い価格で売却できる可能性もありますが、落札者が現れれば、希望していた価格より低い価格であっても売却することになります。

1-4. 知り合いに売る

知り合いや親族などに、直接家を売ることもできます。不動産会社を通さないので、仲介手数料を負担する必要がありません。契約のための書類作成や瑕疵担保責任についての取り決めなど、専門的な知識が必要になります。

2. 仲介契約で売る時の流れ

ここからは、仲介契約で家を売る場合の基本的な流れを確認していきます。

2-1. 不動産会社への相談・査定依頼

仲介契約で売る場合、不動産会社に相談し、査定を依頼するところから始めます。不動産会社にも得意不得意があるので、売買に強い不動産会社を中心に選ぶと良いでしょう。

2-1-1. 数社から査定価格を取り寄せる

査定を行う場合は、複数の不動産会社に依頼しましょう。比較がしやすいよう、同じ内容・同じ条件で依頼します。複数の査定を比較することで、適正な価格や相場をある程度把握することができます。

(1) 囮の査定価格に注意する

査定価格を確認する時は、囮の査定価格に注意しましょう。契約を取り付けるために、売主に都合がいいような査定価格を提示してくる不動産会社もあります。

査定価格が高いからといって、実際にその価格で売れる保証はありません。複数社に査定をすることで適切な価格が分かるので、このような囮価格にだまされる危険性を減らせます。

2-2. 不動産会社と媒介契約

不動産会社との契約形態には、専属専任媒介契約、専任媒介契約、一般媒介契約の3つがあります。

2-2-1. 専属専任媒介契約

専属専任媒介契約は、1つの不動産会社に、売却の全てを依頼する契約形態です。他の不動産会社への依頼や、自分自身で買い手を見つけることはできません。不動産会社が背負う責任も大きいので、積極的に動いてくれる可能性が高まります。

2-2-2. 専任媒介契約

専任媒介契約は、1つの不動産会社と契約し売却を進めながら、自分でも買い手を見つけることができる契約形態です。知り合いや親族で買ってくれそうな人がいる場合は、専任媒介契約にしておくと、不動産会社での販売活動と知り合いとの調整を同時に進めることができます。

2-2-3. 一般媒介契約

一般媒介契約は、複数の業者に販売を依頼する契約形態です。自分で買い手を見つけることもできます。複数の不動産会社に依頼するので連絡等の手間はかかりますが、競争が生まれ、より高い価格で売却できる可能性も出てきます。

2-3. 売り出し価格を決める

売り出し価格の設定は、後の価格交渉を考慮した上で行いましょう。価格交渉の場においては、売り出し価格が購入額の上限になります。ここで設定した価格以上の価格で売れることはあまりないので、査定価格や相場を参考に慎重に検討していきましょう。

2-3-1. 相場を調べる

物件の相場を調べる方法は主に3つあります。

(1) 国土交通省の土地情報システムを利用する

国土交通省が公開している、土地情報システムを利用すると、日本全国の物件の取引価格情報を確認することができます。取引の時期、物件の種類、住所や周辺の駅を選択することで検索できます。

(2) 不動産会社の販売ページで確認する

実際に売られている物件を見て相場を確認するという方法です。売り物件は、値下げや価格交渉を考慮し相場より少し高めの価格に設定されていますが、どれくらいの価格帯で売られているのか実際に確認ができるので、とても参考になります。

(3) 一括査定サイトを利用する

インターネットで検索すると、複数の不動産会社で一括査定ができるサイトがあります。このようなサイトでは、相場を基準に査定価格が計算されているので、様々な業者の査定結果を比較することで、相場を把握することができます。

2-4. 購入希望者への内見対応

実際に売り出しを始めると、内見への対応も必要になります。内見は、購入を決めてもらうためのチャンスでもあります。不動産会社に任せきりにせず、できるだけ顔を出し、丁寧な対応を心がけましょう。

2-4-1. 近隣の施設などの情報をまとめておく

その地域を知らない人であれば特に、内見で周辺の様子も確認したいと思って見に来ています。近隣の施設や、住んでいて感じたことなどあれば、事前にまとめておくと、丁寧な対応ができるでしょう。

(1) 学校

小学校や中学校の情報は、子どもをもつ家庭にとっては大変重要なものです。学校までの距離や通学路など分かることは積極的に伝えるとよいでしょう。

(2) 病院

近くの病院の場所とアクセス方法をまとめておきましょう。大きな病院以外に、外科や皮膚科、歯医者などがあれば、追加でまとめておくと親切です。

(3) スーパー

食料品や日用品を購入するスーパーの情報も必要です。アクセスや品揃えの多さ、営業時間の情報もあるとよいでしょう。

2-4-2. 良い印象を持ってもらう

内見で良い印象を持ってもらえるよう、できるだけきれいな状態にしておきましょう。自力での掃除が難しければ、専門の業者に清掃を依頼するという方法もあります。

(1) 水回りの清掃は念入りに

水回りは、生活のあとが出やすいところでもあります。水垢やカビなどが残らないよう、念入りに掃除をするようにしましょう。

(2) 臭いに注意する

生活している人は自宅の臭いに気づきにくくなっています。住みながら家を売る場合は特に気をつけておきましょう。

住んでいなくても、内見前に換気し、消臭剤などを設置しておくような配慮が必要です。棚やクローゼットの中は、臭いがこもりやすくなっているので注意しましょう。

2-5. 買主との価格交渉

売り出し価格のまま購入するという人はあまりいません。買主との価格交渉は必要なステップだと考えておきましょう。ここで交渉が成立しなければ、新たな購入希望者が現れるまで待つ必要があります。

2-5-1. 両手取引の場合は慎重に

売主と買主を仲介する不動産会社が1社の場合、不動産会社は、売主からも買主からも仲介手数料をもらえる両手取引という状態にあります。この両手取引を成立させるため、不動産会社から不当な値下げを提案されることもあります。

交渉を成立させ早く売りたいと焦ってしまい、判断を誤らないよう、値下げの提案には慎重に対応していきましょう。

2-5-2. 価格以外の内容も交渉材料になる

買主と交渉する内容は、価格だけではありません。手付金の額や引き渡しの時期、建物や設備の補修、瑕疵担保責任の期限など、価格以外の内容も交渉材料になります。ひとつずつ交渉していくと時間がかかってしまうので、いくつかの条件を組み合わせて交渉することもあります。

2-6. 買主と売買契約を結ぶ

交渉がまとまれば、売買契約を結びます。契約自体は書面でのやりとりになります。

2-6-1. ローンの審査が終わるまでは安心できない

家を買う人の多くは、住宅ローンを利用して購入します。住宅ローンを利用するためには、審査が必要ですので、契約を結んでも、ローン審査が終わるまでの約2ヶ月程度は、決済に進むことはできません。

2-6-2. 手付金の額と仲介手数料の支払い

成約後には買主から売主へ手付金が支払われます。手付金の額は、売買価格の1~2割で設定されることが一般的です。

また、不動産会社へ仲介手数料も支払うことになります。一括で支払うこともありますが、成約後と決済後に分けて支払うこともできます。

2-7. 決済と登記

売却代金の支払いと所有者移転登記は、どちらかを先に行うと詐欺の手口に悪用されてしまうことがあるので、同時に行われるのが一般的です。買主1人でこれら2つの手続きを同時に行うことはできないので、登記手続きは司法書士など第三者に依頼することになります。

2-7-1. 銀行で行うことが一般的

決済には、売却代金が振り込まれたかどうかの確認が必要になるので、一般的には銀行で行われています。その場で銀行員と出金・入金の確認を行います。

登記については、司法書士の手続きが終わるのを待つか、後日、完了の連絡が来るのを待つ形になります。

2-8. 買主に家を引き渡し

決済が行われる日には、家を引き渡しできる状態にしておかなければなりません。設備の修繕が必要な場合も、特別な取り決めがなければ決済日までに完了させておく必要があります。

実際の引き渡し手続きは、決済が終わった後に買主に鍵を渡すだけです。

3. 売却時に必要となる諸経費

家を売却する場合にも費用がかかります。

3-1. 仲介手数料

不動産会社へ支払う仲介手数料は、売買価格に応じて以下の割合が上限として設けられています。

  • 200万円までの部分・・・5%
  • 200万円~400万円までの部分・・・4%
  • 400万円以上の部分・・・3%

これに消費税分を加えた価格を、仲介手数料として支払うことになります。

3-1-1. 半額・無料ができるわけ

売却中の物件の中には、仲介手数料が無料になっている物件もあります。これは、売主から仲介手数料をもらっているので、無理に買主からも仲介手数料をもらう両手取引にする必要がないからです。

不動産会社にとっては、両手取引のほうが利益は出ますが、そもそも取引が成立しなければ意味はありません。売主にとっても、早く売却ができることはメリットでもあるので、仲介手数料が半額や無料の物件が増えてきています。

3-2. 登記費用(登録免許税+司法書士報酬)

家を売る時の不動産登記にかかる費用は、登録免許税と手続きを依頼する司法書士への報酬とに分けられます。

登録免許税は、登記をすると課せられる税金で、登記する内容によって一定の税率が定められています。家を売却では所有権移転登記が必要になりますが、所有権移転登記には、固定資産税の評価額に0.015(平成31年3月31日まで)をかけた価格が登録免許税として課税されます。(平成31年4月1日以降は0.02)課税額が1000円未満の場合は一律で1000円となります。

これらの手続きは自力でもできますが、専門的な知識が必要になります。そこで、報酬を支払い司法書士など専門家に依頼することができます。以前は報酬の規定が定められていましたが、現在は廃止されており、依頼する行政書士によって価格も様々です。

3-3. 印紙税

取引に関わる書類を作成する場合、その取引が法律に則り行われた取引であることを示すため収入印紙を貼ります。収入印紙は、印紙税を収めた証明であり、取引される金額が高額になるほど、印紙税も高額になります。

収入印紙のない契約書は、契約が無効になることはありませんが、脱税扱いになります。契約書を2部作成する場合は、2部ともに収入印紙を貼る必要があります。

3-4. 譲渡所得税

家の売却で得た所得のことを、譲渡所得といい、この譲渡所得に課される税金のことを、譲渡所得税といいます。譲渡所得がマイナスの場合は、課税されることはありません。

譲渡所得は、売却価格-(購入価格+所得費用+譲渡費用)で計算でき、この金額から控除される特別控除分を引いた価格が、課税対象となる譲渡所得となります。

譲渡した年の1月1日を基準に5年以上所有していれば長期譲渡所得、5年以下であれば短期譲渡所得として分類され、この期間によって税率も変わります。

3-5. ローン繰り上げ返済手数料

家を売却するために、住宅ローンが残っていれば、完済させなければなりません。

一部繰り上げ返済には手数料がかからないことも多いですが、全額を繰り上げ返済する場合には、多くの金融機関で手数料が必要となります。

3-6. 引っ越し費用

引っ越しのタイミングはそれぞれですが、繁忙期は、引っ越し費用が高額になってしまうことも多いので、費用を抑えたい場合は避けた方がよいでしょう。移動距離や荷物の多さによっても変化するので、前もって見積りを進めておくようにしましょう。

3-7. ハウスクリーニング費用

内見や引き渡し前には、徹底的な掃除が必要です。水回りやキッチンなどは、自分たちで掃除を行うのには限界もあるので、専門のクリーニング業者への依頼も検討しましょう。

費用を抑えたい場合は、自分たちでできる範囲は自力で行い、汚れのひどい箇所を業者に依頼するという方法もあります。

4. 家の売却時に必要となる書類

売却時に必要となる書類は、すぐに手に入らないものもあるので、早めに確認し用意しておきましょう。

4-1. 登記事項証明書(登記簿謄本)

物件に関するあらゆる情報が記載された書類です。物件の管轄の法務局か最寄りの法務局で入手することができます。土地と建物は別物として扱われているので、家と土地両方を売却する場合は、それぞれの登記事項証明書が必要になります。

4-1-1. 共有名義の場合は

共有名義の家を売却する場合は、名義を共有している人全員の承諾が前提です。全員での手続きは大変なので委任状を用意することになります。

4-2. 登記済権利証

登記済権利証は、所有者が不動産の登記を行った際に法務局から受け取る書類です。再発行はされません。売買の手続き上、所有者の本人確認をするための重要な書類なので、紛失している場合は司法書士に依頼し、所有を証明する書類を作成してもらうなどの対応が必要です。

4-3. 土地の測量図

測量図は、その土地の面積や隣の土地との境界を明確に記したものです。基本的に法務局で取得できますが、一部取得できない場合もあります。取得できなかった場合は、土地家屋調査士に作成を依頼する必要があります。

4-4. 建築確認検査済証

建築確認検査済証は、建物が建築基準法に従い建築されていることを証明する書類です。建築完了後の検査で問題がなかった場合、所有者に渡されています。

売却には必ず必要になる書類なので準備しておきましょう。紛失してしまった場合、役所に問い合わせると発行証明書をもらうことができます。

4-5. 固定資産税の証明書

固定資産税の証明書は、固定資産税額の確認や、不動産登記で課税額の計算に使用されます。毎年5月1日以降に役所から郵送される固定資産税納税通知書などで対応できます。

4-6. 印鑑登録証明書

印鑑登録をした役所でもらうことができます。発行から3ヵ月以内のものを用意しましょう。共有名義の場合は、全員分の印鑑登録証明書が必要です。

5. 住宅ローンの返済中に売る場合の注意点

住宅ローンを返済中でも売却は可能ですが、ローンは完済が前提条件にあります。

住宅ローンを利用する場合、その住宅は、金融機関の抵当権の対象となります。抵当権とは、ローンの利用者が返済できなくなった場合に備え、金融機関が住宅を担保として確保しておく権利のことです。

買主は、抵当権が残った物件を購入してしまうと、万が一住宅ローンの返済がきちんと行われなかったら、住宅を取り上げられてしまうことになります。ローンを完済することで抵当権はなくなるので、買主に引き渡す前にローンを完済しておく必要があるのです。

5-1. ローンの残金を一括返済できるか

住宅ローンの残金の支払いに、住宅を売却したお金を用いることもできます。

売却価格がローン残高よりも高ければ、問題なく一括返済できるでしょう。しかし、ローン残高より低い価格で売れてしまった場合、売却したお金で足りない部分は、自己資金や新たな借り入れなどから補わなければなりません。

ローン返済中の売却では、ローン残高と自己資金、家の売却価格と売却のための経費、これらをしっかりと計算しておかなければなりません。

5-1-1. 住み替え住宅ローンという方法もある

住み替え住宅ローンとは、今の住宅のローン残高を、新しい住宅のローンに加えることができる仕組みのローンです。ローンを完済できていなくても、家を売りに出し新しい家を購入することができ、完済のための資金を用意する必要もありません。

基本的に、次の住宅のローンを組むことが大前提となっています。ローンの総額は増えてしまいますし、借り入れ額も大きいので審査も厳しくなります。

5-2. 任意売却

住宅ローンの返済が滞ってしまうと、金融機関は、裁判所で不動産を売却し、強制的に貸し出した資金を回収しようとします。

裁判所での不動産売却の手続きを競売といい、この競売では相場よりもはるかに安い価格で売却されることが多いです。競売される前に自分で売却できたとしても、売却価格がローン残高より低く、ローンが残ってしまえば、足りない分は現金で一括返済しなければなりません。

このような状態になると、ローンは返済できず、不動産も売却できない状態に陥ってしまいます。そこで、金融機関と交渉し同意を得た上で、不足分が用意できなくても不動産を売却できるようにすることを任意売却といいます。

交渉が成立すれば、競売よりも相場に近い価格で売却でき、ローンの残高を減らすことができます。しかし、交渉は必ず成功する訳ではなく、金融機関が競売の手続きを進めていれば、競売で買い手が決まる前に任意売却を決めなければならないという時間の制約もあります。

6. 長期になることも覚悟する

家の売却は、長期になることも覚悟しておかなければなりません。

6-1. 早くと高くの両立は難しい

物件を早く売ることと高く売ることを両立させるのは、とても難しいことです。

早く売るために最も効果的な方法は、売却価格を安くすることです。一方、高く売るためには、時間をかけてでも設定した価格で購入してくれる人を探す必要があります。早く売るのか高く売るのかは、それぞれの状況に合わせて判断しましょう。

6-2. 出回り物件と思われると売りにくくなる

複数の不動産会社へ依頼していたり、長期間売り出しを行っていたりすると、物件の情報が広がってしまいます。このように、情報が広がってしまった物件を出回り物件と言います。

出回り物件は売れ残りという印象がついてしまうので、売りにくくなってしまいます。なかなか売れないと、何度も値下げを繰り返し、希望よりはるかに低い価格で売却せざるを得なくなります。

一定期間売りに出しても結果が出なかった場合は、物件の情報が出回る前に一旦売却をやめ、半年ほど後に売却を再開するという方法をとると良いでしょう。

7.まとめ

このように、家を売却するためには、たくさんの知識が必要になります。慣れないことだからと不動産会社に任せきりにしていては、納得いく売却ができなくなる可能性もあります。

全てを一度に理解することは難しいですが、全体の流れや注意点を把握しておくだけでも、その後の準備や対応に戸惑うことは少なくなります。大切な住宅をスムーズに気持ちよく売却するために、ひとつずつ丁寧に準備を進めていきましょう。