事例紹介
Category 不動産
2018年11月05日
遺産相続の手続き方法と、不動産の評価方法について
特に父母等近い方が亡くなると精神的なダメージがあり、その中での遺産相続の話し合いは辛いものです。場合によっては揉めてしまう場合もあるでしょう。
現金に比べると分けることが難しい不動産も4つの評価方法で相続税を支払ったり売却して分けることができます。
- 主な不動産の評価方法は主に4つ
- 遺産相続の手順は、法定相続人探し、遺産内容の確認、法定相続人同士の話し合い
- 遺産相続は法定相続人全員の同意があれば、どのような分け方でも良い
この記事でわかること
1.遺産を相続する時の不動産評価とは?
親御さんが亡くなられた時に出てくるのは相続の問題です。亡くなられた親御さんの配偶者が一人っ子であればまだしも複数の兄弟がいたら相続の問題も出てきます。預金や有価証券等でしたら兄弟できっちりと分けることができるものですが、不動産は土地でなければ二等分や三等分にすることはできません。そこで、もし不動産を相続するとなると基本的に売ることになるケースも多いです。
売らなくても不動産が複数あるのであれば、誰がどの土地をもらうのかという争いなどもあるでしょう。その為にもその不動産の評価額をプロの目で見てもらうなりデータを見るなりで、納得のいく相続をする必要があります。そこで気になるのは不動産の評価額です。
不動産の評価のつけ方は様々です。
まず、1つは固定資産税評価額に基づく評価方法です。こちらの固定資産税の評価額は土地が広くなるほどに高く、利便性が高く住む人の需要が増えるほどに高くなる傾向にあります。どちらかというと、長閑な田舎では固定資産税は安くなる傾向にあります。もし主要の駅から近いとか東京の23区などであれば評価が高くなる傾向にあるのではないでしょうか。
2つ目は国土交通省の地価公示や都道府県地価調査を元手に地価を算出する方法です。この国土交通省の地価公示などについては国土交通省のホームページで簡単に見ることができます。参考までに著者の地元で見てみましたが、駅が遠く長閑なところであるほどに評価額が低く、少々利便性が良いところになると評価額が高い傾向にありました。基本的には固定資産税評価額を見る時と同じような傾向にあります。
国土交通省においては、地価公示の役割を下記のように示しています。
「主な役割
一般の土地の取引に対して指標を与えること
不動産鑑定の規準となること
公共事業用地の取得価格算定の規準となること
土地の相続評価および固定資産税評価についての基準となること
国土利用計画法による土地の価格審査の規準となること 等」
(引用:国土交通省http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_fr4_000043.html)
3つ目は路線価もしくは相続税評価額で地価を算出する方法もあります。
「この財産評価基準は、平成30年1月1日から12月31日までの間に相続、遺贈又は贈与により取得した財産に係る相続税及び贈与税の財産を評価する場合に適用します。
ただし、法令で別段の定めのあるもの及び別に通達するものについては、それによります。」
(引用:国税庁http://www.rosenka.nta.go.jp/)
不動産は何も住宅ばかりではありません。田んぼの可能性もありますし雑木林である可能性もあります。もし住宅ではない場合の評価においてもこの評価方法は用いられます。そして最終的なところでは不動産業者がつける評価を参考にする場合もあります。不動産を扱うプロですので、どれくらいだったら売れるかなどについては熟知しています。ですので、そのようなプロの方の意見を参考にするのはある意味合理的です。ただ、中には評価がつかないような不動産もあります。
具体的な例を挙げると、最近不動産にも関わらず100円という物件が大変話題になっています。あまりの安さに「誤植なのでは?」と疑われたり、「曰くつきの物件なのでは?」と疑われる事態になりました。最近そのような不動産もあってテレビでそのような特集が組まれていました。それによると実際はネット上に掲示するときに100円以下にすることができないから100円にしているだけで、本当はタダでも良いから手放したいという思いがあるからこそ、この価格での売り出しだったのです。この100円物件の正体は誤植ではないのはもちろんですが、曰く付き物件でもありません。実際に店舗に足を運んだ方には1円で売るとの事でした。
そのような物件の持ち主の方は、いくつもの不動産業者に足を運んだ挙句「タダでもこの不動産を買い取りたくない」と言われて、泣く泣くそのような100円不動産を扱う業者に行きついた経緯がありました。基本的に一度相続したら不動産を処分することはほぼ不可能です。ですので、維持をする費用や固定資産税など不要な不動産にお金をかける状態になります。ですので、最近100円不動産なるものが話題になっているのです。
そして、さらに「0円不動産」と検索をすると、様々な道府県の物件が出てきます。それほどに全国には不動産業者には扱えないほどに値段がつかない不動産があるのです。
このように不動産の評価は様々です。ある程度の公平性を出すために固定資産税評価額や路面価に0.8を割戻す(1.25を乗じる)ようにします。
1-1.遺言書がない場合の遺産分割協議とは
しっかりとした方であれば、事前に遺言書を書いているケースが多いです。しかし、どんなにしっかりとした方であっても突然の死もあり得ます。まだまだ若いと思っている40代以下の方も明日はどうなるかは分かりません。最近は60代であっても若い方が多いです。死なんて当分先と思っている方も多いでしょう。中にはそのような手続きを面倒くさがってしまう方もいます。そんな時は遺言書がない状態になるでしょう。
もちろん、せっかく遺言書があっても正式な書き方をしていないばかりに遺言書がないと判断されてしまうことがあります。よくありがちなのは本人が自分で書いただけの遺言書であるケースです。最近は手書きよりパソコンのほうが得意な方も増えてきました。ですのでパソコンで遺言書を作成する方もいらっしゃいますが、現段階では無効扱いです。
ただし、こちらは書き間違いのリスクを避けるためパソコンで作成した遺言書を認めようという動きもあり、2020年4月1日に民法を変更することが予定されています。ただ、遺言の内容と日付は自筆で書くことが条件で、財産目録はパソコンで書くことが認められる予定です。そして2018年現在の現段階においても、せっかく自筆で遺言書を書いたにも関わらず、遺言書を作成した日にちが記入されていなかったり、署名がないことで無効になってしまうケースもありあります。
また、署名と同時に押印も必要ですが、押印が抜けているだけでも遺言書とは認められない傾向にあります。ですので、もしこれから遺言書を作成しようとお考えの方は、必ず公証人立ち合いのもとに遺言書を作成しましょう。
このようなことから、遺言書がない状態で相続をどうするかを話し合わないといけない事態もあるでしょう。もし、遺言書がない場合はひとまずは法定相続人が誰なのかを確認する必要があります。基本的に配偶者と子供がいる場合は、その人たちが法定相続人になります。ただ、最近はお子さんがいないご夫婦も珍しいことではありません。その場合は配偶者が相続人になるのはもちろんですが、亡くなられた方の親御さんや祖父母の方など直系尊属の方々が相続人となります。この直系尊属ですが自分より上の世代の方を指しますので兄や姉はそれに含まれません。
配偶者の方は常に法定相続人の第一候補になりますが、亡くなられた時に戸籍上配偶者である方に相続が認められています。ですので、ご高齢の男性が晩年に若い奥様をめとっていたとしたら、その奥様に相続権があります。例え結婚生活がたった1年だったとしても配偶者と認められます。
最近はご結婚もされない方も多いです。ですので亡くなられた時にお子さんはおろか配偶者の方もいらっしゃらないこともあるでしょう。その時もまた直系尊属が相続人となります。通常の家庭であれば、この法定相続人を探すのはそこまで難しいことではありません。
ただ問題は離婚などで前の奥様(前のご主人)の間にお子さんがいる場合、婚外子がいた場合です。離婚歴がある状態の時であっても基本的にそこまで日常生活で接点がないケースも多く、そのような手続きを踏むのに手こずることはよくあります。さらに厄介なのが、婚外子の方が名乗り出てくることによって問題が大きくなることはよくあります。現在は婚外子の方も同じ血を分けた子どもという事で、結婚という手続きを踏んで生まれたお子さんと同じように相続権があります。
また、ここで問題になるのは認知されていないお子さんの場合です。基本的にこの方は同じ血を分けた子どもであっても相続権がありません。それは法的に親子関係を証明できないからです。では、そのような方が遺産相続をあきらめないといけないのかというとそうではありません。「死後認知の訴え」を起こすことができるのです。例えその方の親御さんご本人がなくなっていても、その方の近親者の方のDNAとその訴えを起こしている方のDNAが一致するかを科学的に調査するのです。ご本人ではないという事で信ぴょう性が疑われるかもしれませんが、亡くなられたご本人でなくても正解率は90%となっていますので、非常に信頼できる検査方法なのです。
その上でその人の財産や負債がどれくらいあるのかを確認しましょう。そして財産があればまだしも負債があるようでしたら、相続放棄の手続きを取ることを視野に入れることになります。
相続は自分に相続権があると知ってから3カ月以内にどうするかを決める必要性があります。基本的に法的相続人を皆集める必要性があり、この期限内に相続できる財産がどれくらいあるのかや、それをどうするかを決められない場合もあるでしょう。期限に間に合いそうにない時はリスクヘッジとして限定承認がおすすめです。限定承認とは財産のほうが多く自分にとって得な場合のみに相続をする意向を示すことです。この手続きを踏んでやっと遺産分割協議に入ります。この遺産分割協議においては残された遺産をどのように分けても問題ありません。
例えば「長女はお父さんの介護を頑張ってくれたから、90%の遺産を渡す。あとの10%は他の兄弟で。」という取り決めでもいいですし、「お父さんが亡くなって生活も大変だろうからお母さんに100%の遺産を渡すね。その代わり将来老後何かあったらその遺産を元手に施設に入ってね。」というような分け方でも全く問題ありません。ご両親とどうにも馬が合わず、「例え遺産がプラスであっても遺産放棄をするから親の今後の面倒の一切を兄弟に任せる。」というケースも世間では多いです。
どのような分け方でも全く問題ありませんが、大前提として「法定相続人全員がその取り決めに了承する」事が大切です。この取り決めに了承しない人がいると話し合いは困難を極めます。とにかくこの協議は「相続人全員の同意」を得ることが第一です。ですので、この方法は何も対面でないといけないわけではありません。
同じ日本に住んでいても飛行機で行かないと行くことができない距離の方であれば都合をつけるのは大変でしょう。昨今は海外で生活される方もいますので、海外から日本へ帰るのは現地に仕事を抱え家庭生活を営んでいるのであればたやすいことではありません。そのような事もありますので電話で同意を得ることも良しとされています。
ただ、現金など数字にできるものはまとまりやすいのですが、骨とう品や住宅など形あるものになると話し合いは困難を極める可能性は高いです。例えものを平等な個数相続したとしても、その不動産や骨とう品などの評価額は平等ではありません。ですので、誰が資産価値が高いものを相続したかで争いが起きる可能性があります。
資産が少なければ話し合いもスムーズかもしれませんが、多ければ全てのものに対して且つ全ての法定相続人に合意を得るのはたやすいことではありません。また、お父様やお母様などの人間関係的に接点が多かった人の遺品については、資産価値以外にも思い入れなどもありますのでさらに困難を極めます。分かりやすい例を挙げると生まれ育った家を売りたくないという長男と、家を売ったお金を半分に分けたい次男で対立するなどという話はよく聞かれます。あとは骨とう品なども似たような争いが起きます。
1-2.一般的な不動産評価と遺産相続時の違い
一般的に不動産評価を行う時の多くは、今持っている家を売りに出すときなのではないでしょうか?その時は、ほとんどの場合は不動産業者を通すので不動産業者がつける金額になるケースが多いです。先ほども少し触れたように今は100円不動産、1円不動産、はたまた0円不動産まで話題になっている世の中です。値が付かない不動産もあります。
ですが、遺産相続時はそのような時価に左右されることのない正確な不動産の価格も調べる必要性があります。それはなぜかというと、相続税の納税が必要だからです。そのような時は、不動産鑑定士に依頼してその土地の純粋な価格を調べることが可能です。確かに正確な価格を調べることは可能ですが、やはりプロに頼むので数十万円はかかります。
2.遺産相続時の不動産評価方法
遺産相続時は様々な方法での評価方法を用いて、法定相続人と話をします。たいていの場合は実勢価格や不動産鑑定士などのプロの評価を用いることが多いです。遺産相続時は争いになりやすいので、このような客観的なデータやプロによる評価のほうがお互いに納得が行きやすいです。
ただ遺産相続は法定相続人の同意が必須です。ですので、同意さえあれば基本的に決め方は何でもよいのです。ですので、任意の評価がなされることもあります。このように様々な不動産の評価方法があります。さっそく一つ一つ見ていきましょう。
2-1.実勢価格による評価
実勢価格とは、実際に売買される価格のことですが、相続の際に対象の不動産の価値を決めるのは相続税路線価と呼ばれるもので、相続税路線価は実勢価格の8割程を目安に定めるとされています。
2-2.不動産鑑定士による評価
普段そんなに聞きなれない不動産鑑定士という職業ですが、国家資格を持った不動産の専門家です。資格を持たない私たち素人は不動産の鑑定は出来ず、そのような免許を持っている方のみが鑑定可能です。文字通り不動産鑑定が主な業務ですが、それと同時に不動産に関する相談にも乗ってくださいます。この不動産鑑定士がどこにいるかですが、不動産鑑定士事務所や不動産会社、銀行や資産運用会社などです。遺産相続による鑑定であれば、主に不動産鑑定士事務所や不動産会社に足を運ぶことになるでしょう。不動産鑑定士の方もただの主観だけではなくきちんとある程度の根拠を持って不動産を評価しています。
とは言えど、やはりデータだけの評価が難しければ建物であればどれだけそれが綺麗かや、設計や設備でどれだけ機能的であるかなどを観察して評価するという方法もあります。やはり心情的に綺麗な方がよく、ボロボロだと価格が下がるという原理は不動産に限らずいろいろなものでありますよね。ですので、よくリサイクルショップに何かを持っていくときはきれいにして持っていくと値が上がると言われています。それは不動産も例外ではないようです。ただ、そのような評価方法ではなく数字で評価することもできます。
建物にはいろいろな素材を用いたものがありますが、素材ごとに耐用年数が決められています。一口に耐用年数といっても「法的耐用年数」はその素材ごとに一律で耐用年数が決められています。SRC造RC造で47年、木造で22年、重量鉄骨で34年です。
ただ、こちらは年数で判断しているので平等で一律かと思いますが、例え同じ築20年でもリフォームを定期的にしてきれいにしている家と、管理がおざなりでボロボロな家とに分かれてきます。さらに室内飼いのペットがいればさらに傷むのは早いでしょう。その事情を加味して鑑定をするのが「経済的耐用年数」です。この経済的耐用年数は、その建物が建ってからの年数と経済的残存耐用年数を足した数です。この経済的残存耐用年数にその管理の良し悪しが加味されることとなります。
また、私たちエンドユーザーの視点を加味して行われる取引事例比較法もあります。例えば、今現在は東京などの都心部に住みたい人が多く、都心部を離れたところは不人気な傾向にあります。基本的に全く同じ建物は存在しませんが、仮に同じ建物が東京へのアクセスが容易なところにあるか、遠く離れた地方にあるかでは需要が多いところは圧倒的に前者になるでしょう。そのようにエンドユーザーの視点から見ての評価を行うのがこの評価方法です。
あとは工場等があって騒音や大気汚染があって住みたいと思えないようなところはあまり需要がありません。そのようなエンドユーザーから見てどれくらい評価がなされるかを見て決める方法もあります。その他にも、日当たりや土地の広さや形、地盤の良し悪しなども評価に含まれます。
このように様々な評価方法があります。詳しくは不動産鑑定士の方に相談しましょう。
2-3.相続人の合意による任意の評価
相続は「法定相続人皆の同意」が得られれば、どのような分け方でも問題がないという原則があります。ですのでプロの手を借りなくても、本人同士が納得できるのであればそれで良いのです。
よくある例としては、被相続人の介護を主に担った人に多めに若しくは良い条件の遺産を渡すことはよくあることです。プロの手を借りることなく、「ここは比較的利便性がいいから、ここの不動産を相続するといいよ。」というようなざっくりとした分け方であっても当人同士が納得できるのであれば問題ありません。
3.遺産相続する不動産評価と相続税評価額の違いに注意!
不動産の評価方法については土地については路線価、相続税評価額などによる評価が行われるところがあります。それはこの不動産の時価ではなく価値そのものを出すことができます。ですので、買い手がつかず無償譲渡をしても良いから手放したいような条件が悪い不動産にも固定資産税がかかるのはそのような理由です。
ですが、相続時は基本的に時価で評価される傾向にあります。それは、すぐに売り出した場合はどれくらいの値段になるかという事です。このように一つの不動産でも付けられる価値はそれぞれ違うのです。傾向としては「時価>相続税評価税>固定資産税評価額」になる傾向にありますが、もちろん例外もあります。ややこしいですが、つけられる価値がそれぞれに違うことは気を付けましょう。もし分からなければ弁護士や不動産鑑定士などのプロの方に相談するようにしましょう。
4.遺産相続時の不動産評価(遺産分割)でトラブルを避けるコツ
まず、法定相続人がどのような人かに留意し、出来るだけ客観的な評価を出しておくことがトラブル回避のコツです。法定相続人がどのような人かを見極める理由としては、経済的に困窮をしていれば遺産相続に固執する傾向にあり、争いが起きやすいです。また、このような言い方は難ですが、経済的な困窮はなくとも所謂「がめつい」タイプの方であっても争いが起きやすいです。
不動産を売買するときは「不動産オークション」などもありますので、それを利用するなどをして公平性を持たせることによって、全員の納得が得やすいです。不動産に関して言うと、よくあることが売却予定のない不動産を共有するケースです。ご兄弟で共有した場合、そのご兄弟にもしものことがあったらそのお子さんたちが法定相続人になるので了承を取るのが大変になります。
このように様々なトラブルがありますので、いろいろなホームページを参考にしたり、専門家の意見を聞くようにしましょう。
5.まとめ
遺産相続は手続き上いろいろと面倒な事や大変なことがあります。
お父様やお母様など近い方を亡くされると精神的につらい時期にそのような手続きがあり、心が折れそうになるかもしれません。ですが、専門家の力を借りつつも乗り越えていきましょう。