事例紹介

Category  不動産

2018年12月16日

借主からの突然の中途解約・・・解約違約金請求の基礎知識

建物賃貸借契約とは、貸主と借主の間で取り交わされる契約です。

貸主はこの契約により「継続的な賃料収入の確保」、借主は「継続的な居住地の確保」という利益を得ます。このバランスを継続させることは双方の利益につながりますが、時としてこのバランスが崩れることがあります。

それは「借主から退去の申し入れがあった場合」です。

契約期間に定めのある契約においては、貸主・借主の意向によって契約期間中に契約を終了させることはできないと法律で定められています。

しかし実際は、借主が退去しやすいように「期間中の解約」が認められていることがほとんどです。

それでは、契約期間中に借主が退去したいと申し出た場合、貸主はどうすればよいのでしょうか?こうしたシーンで用いられるのが「違約金」です。違約金は、貸主が借主に対して「継続的な賃料収入の確保」の損失の補填を求める手段です。

1.借地借家法における違約金の取り決めは?

借地借家法における契約の契約期間は

  • 「定めがないもの」(一般的な普通借家契約)
  • 「定めがあるもの」(定期借家契約)

に2つに区別されます。

また中途解約権を、

  • 「認める」(解約予告期間の定めがある)
  • 「認めない」(解約予告期間の定めがない)

といった解約予告条項の有無によっても区別されます。

この点を踏まえると、締結している建物賃貸借契約において違約金が請求できるのは、「契約期間の定めがあり、中途解約権を認めない」ケース、となります。

2.借地借家法による借主の中途解約権

借地借家法において、借主の中途解約権は契約期間の定めがあるかどうかによって捉え方が異なります。

契約期間に「定めがないもの」は、借主からの解約申し入れから一定期間経過すれば解約が成立します。(民法617条1項2号「期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ」では3カ月とされているものの、慣習的には1カ月ないし2カ月が相場です。)貸主からの解約申し入れも認められるものの、借地借家法27条により制限されており、6カ月に申し入れを行いかつ解約に正当な事由がなければなりません。

つまり、法律的に認められた権利となります。

これに対し、契約期間に「定めがあるもの」は原則として、貸主・借主双方から、契約期間中の解約を求めることが認められません。ただし前述の通り、実際には借主からの解約を認めることがほとんどです。契約期間に定めがある場合でも、中途解約権を認める特約を契約書内に盛り込むことで、契約期間の定めのない場合と同様の捉え方になります(民法618条「期間の定めのある賃貸借を解約する権利の留保」、民法617条1項2号)。これは中途解約に関して貸主・借主双方の合意があるとみなされるためであり、貸主は解約申し入れ期間の賃料を支払うことで解約が成立します。

期間の定めがある場合で中途解約権を認める特約がない場合は、借主にも中途解約する権利がありません。それでも借主が「どうしても中途解約をしたい」となった場合は、貸主・借主間で「合意解約」をしていきます。この合意解約の手段のひとつが「違約金」になるわけです。この方法を用いることにより、期間に定めのある契約において原則認められていない借主からの中途解約ができることになります。

3.借地借家法における中途解約条項(違約金)の有効性

そもそも建物賃貸借契約の中途解約条項は、借地借家法の「借主の権利の保護」に基づくものという考え方があります。借主が不利にならず、「簡単に退去」できるよう設けられました。

しかし中途解約違約金については、その有効性を問われることが多くあります。

  • 「借主の解約理由」
  • 「違約金額設定理由」
  • 「賃貸借契約の目的・用途」
  • 「契約当事者の契約内容の認識程度」

これらによって有効性を判断していくのですが、事例ごとに様々な事情が混在するため、有効性を判断する明確な基準がないというのが実情です。

3-1.中途解約による違約金に関する判例

中途解約違約金の設定限度に明確な基準はありませんが、「1年分の賃料相当額」を有効とした判例があります。【東京地方裁判所:平成8年8月22日】

<事案>

契約期間4年で建物賃貸借契約締結された英会話教室において、契約締結後10カ月経過時点で借主が解約申し入れを行ったが、貸主が「残存期間3年2カ月分の賃料相当額」を違約金として請求した。

<判決>

「1年分の賃料」を違約金として認める

<理由>

建物賃貸借契約において違約金の設定自体は有効ではあるが、あまりにも高い違約金の設定は借主の解約を不当に制限するとともに貸主が家賃の二重取りになることも考えられるため、一定限度以上は無効とする。次の借主を確保するまでの期間は1年程度と思われることから1年分の賃料相当額のみの請求を認めた。

これはあくまでも一例にすぎません。中途解約違約金の内容や条件、諸般の事情により有効性が判断されていきます。

3-2.借地借家法の強行法規

借地借家法は「借主の権利の保護」に基づく法律です。この借主の権利の保護の観点から「この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする」という強行法規が定められています(借地借家法30条)。

借主の権利の保護がなされない中途解約違約金の内容であれば、強行法規により無効となることも考えられます。原則、契約期間に定めのない契約は中途解約できないため、借主が退去したとしても、賃貸借契約は継続し、賃料は契約期間満了まで払い続けるという考え方もできます。

しかし居住用建物は特に借主の権利の保護が強く、通常は中途解約が成立し、契約期間満了までの賃料相当分の請求はできないことがほとんどです。

3-3.中途解約時の違約金の金額

一般的に中途解約時の違約金の金額は「賃料+共益費の相当額」を基準に設定されていることが多く、その該当期間は「1カ月」がベストとされています。

ただし、賃貸借契約時に「礼金0」や「フリーレント○カ月」という契約の場合や、契約から中途解約の期間が短い場合などは、この該当期間が長くなる傾向にあり、中途解約違約金も高くなります。また残存期間が長い場合においても、中途解約違約金が高額になる傾向にあります。

中途解約違約金の目安としては、一般的な居住用建物であれば「1~3カ月」分の賃料+共益費相当額、事業用建物であれば「6カ月~1年」分の賃料+共益費相当額といったところです。

4.借地借家法や違約金トラブルの解決策

借地借家法は「借主の権利の保護」を目的とした法律です。借主が「中途解約」したいと申し出れば認めざるを得ません。

建物に空室期間が続くことは貸主として「継続的な賃料収入の確保」ができなくなる状態です。このような経済的損失は非常に頭の痛い問題です。「継続的な賃料収入の確保」の損失の補填の手段として中途解約違約金の請求が考えられますが、金銭が絡む問題なのでトラブルもつきものです。

  • 「中途解約違約金を請求する際にトラブルが起きてしまったら?」
  • 「中途解約違約金を伴う合意解約が進まなかったら?」

そんな時はやはり土地活用のスペシャリストである「不動産業者」や、法律のスペシャリストである「弁護士」等に相談することが一番です。もし違約金のトラブルが起きた場合、当事者同士の話し合いだけに頼るのではなく、地元の不動産業者や違約金問題に詳しい弁護士等に的確な助言を求めるのが良いでしょう。

5.まとめ

建物の所有者として「いかに空室を減らし、収益を安定させるか」は賃貸建物運営には当然の考え方です。しかし入居者の退去はいわば必然です。法律的には借主の退去を認めざるを得ませんが、経済的損失をいかに少なくするかを考えることも大切なことです。

今回はその手段の一つとして「中途解約違約金」にスポットを当ててみました。借地借家法における違約金の取り決めから借主の中途解約権、そして中途解約違約金の基本的な考え方を知ることが重要です。とはいえ金銭の絡むトラブルの多い手法ですので、自分一人で取り組まず、専門家の知識やアドバイスを受けながら、いざという時に備えましょう。