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Category  不動産

2019年09月05日 更新

ローソンへ土地賃貸なら市街化調整区域でも土地活用になる?

せっかく土地を持っているのに税金だけ払っている状態で資産価値を感じられない…。そんな悩みを持つ地主にとって、ローソンへの土地賃貸は有効戦略と言って良いのでしょうか?

資材置き場や駐車場くらいにしかできないと思っていた土地に、賃料数十万が発生すると言われたら気になる地主は多いものです。

ローソンへの土地賃貸とはどんなものか、そのリスクも含めて紹介しましょう。

1.ローソンに土地を賃貸するとはどういうこと?

ローソンなどのコンビニはいろいろな場所に出店していますが、その多くは店舗の用地として地主から借り受けています。賃貸住宅とちがって市街化調整区域外でもコンビニなら建設許可が出やすいですし、駐車場や資材置き場以外の土地活用として知っておきたい方法です。

まずは、ローソンと地主との契約の種類について知っておきましましょう。

1-1.リース

所有している土地に店舗を建てて、土地と店舗を貸し出す契約方法です。建物の建設も土地の持ち主がするので費用がかかりますが、土地だけを貸すよりも割高な賃貸料金を設定できます。また、ローソンでは建設協力金制度があり、貸付融資金を受けることができます。

ただし、融資金として借りるお金ですから、無利息ですが返済しなければなりません。事業計画を建てる時には、負債を負うことを頭に入れておきましょう。

1-2.FST

所有している土地に店舗を建て、土地と店舗を貸し出すところはリースと似ていますが、内装部分はローソンの負担となるところが違っています。建設費の融資を受けたいときには、ローソンの建設協力金制度を利用することができます。リース契約のときと同じように無利息で融資をうけ、家賃賃料との差額が利益となるイメージです。

1-3.事業用定期借地

事業用定期借地とは、土地のみを期限付きで貸し出す方法で、ローソンでは15年以上の契約期間となっています。土地の名義や整地義務は地主ですが、建物の名義、建設費、内装工事はローソン側です。

リースやFSTと比べると賃料が低くなりますが、地主側の初期投資は少なくてすみます。初期投資を抑えて、できるだけ借り入れをせずに済ませたいなら事業用定期借地が向いているでしょう。賃料は高くても、リースやFSTでは建物の固定資産税などがかかりますし、実際のケースごとに向いている契約は変わってきます。

2.ローソンに土地を賃貸するのに必要な広さは?

  • ローソンの敷地条件は、間口20メートル以上、面積が120坪以上
  • ローソンの店舗条件は、間口19.8メートル以上、面積が60坪以上

最近はコンビニの大型化が進んでいます。イートインスペース、ATMなどサービスが多様で充実していることから、敷地面積、建物建物の床面積が基準以上あることが必要です。

このほかローソンの立地条件では、原則24時間年中無休営業ができ、第一種低層住宅専用地域、工業用地域ではないことをクリアしなければなりません。土地所有者とのリース(建て貸し)、FTS(建て貸しで内装はローソン持ち)、定期借地権での出店は、郊外型店舗、路面型店舗での出店を目指しています。

出店に向いているかローソンが審査し、条件が整っていれば契約できる仕組みです。ポイントとしては、商圏世帯数、事業所数、立地を調査して判断します。郊外型コンビニは、車で通りかかって入店しやすい立地だと高評価につながります。このため、緩やかな右曲がりカーブの左手に店舗がある立地は、ロードサイド店舗用地として価値が高くなります。

一方、中央分離帯がある、慢性的に渋滞が多い道路では、出入りしにくいためマイナス条件となります。

3.ローソンに土地を貸す場合の賃貸料の相場はいくら?

  • 付近の駐車場の相場の倍程度
  • 固定資産税路線価の5~6%

これらを目安にした額が相場になります。

リースやFSTの場合には建物の建築費用返済分、銀行からの融資なら金利分を加味して利益があがる賃料設定を考えた金額を設定すると良いでしょう。

3-1.リースの場合

土地と内装すべてを含んだ建設費がかかります。土地の賃料を駐車場の相場から計算してみましょう。

駐車場では、アプローチや通路を考えると1台分の面積が6~7坪、50坪に8台程度のスペースが確保できます。月極料金が1台5,000円ならば、50坪に8台の契約があると4万円の賃料ということになります。200坪の土地であれば50坪の4倍なので16万円、500坪の土地なら10倍なので40万円です。月極料金が1万円のエリアなら、単価が倍ですから50坪32万円、500坪80万円です。また、路線価で計算する場合には、坪単価になおして計算します。

(例)

路線価100,000円/平方メートル⇒10,000÷0.3035≒330,579円/坪

この5%とすると330,579円/坪×0.05=16,529円

1ヶ月あたりでは16,529円÷12ヶ月=1,377円⇒50坪なら68,850円

建物では、建設協力金の月あたりの返済額に上乗せした額を交渉で決めることになります。

建築協力金の返済期間は15年ということが多いですから、店舗建設でかかった3,000万円を15年で返済するなら、月あたり166,666円を土地賃料にプラスした額よりも大きくなるよう設定こうします。

3-2.FSTの場合

土地の賃料は、リースと同じように考えます。土地の評価が高ければ賃料も高くなり、店舗建設でかかった費用の15年返済の1ヶ月あたりの金額をプラスした額よりも大きくなるよう設定します。内装費用はローソン持ちですから、リースよりも初期費用は安く済み、賃料を下げても収益が見込めるようになります。

ただし、建物の名義そのものはリースもFSTも地主になりますから、火災保険や固定資産税を持たなければなりません。すべての費用を上回るような賃料設定になるよう交渉することがポイントです。

4.ローソンに土地を賃貸するリスクは?本当に儲かるの?

遊ばせていた土地がローソンの目に止まり、月数十万円から100万円を超えるような賃料で貸しませんかという話に、ラッキーだと感じる地主さんもいらっしゃるでしょう。

ただ、リースやFSTでの賃貸は、建物を自分で建てなければなりません。建設協力金があり、利子がつかないと言ってもお金を借りるのですから負債を抱えることになります。契約は15年以上と長いですから、自己資金があまりなくても参入できますが、まったくリスクがないわけではありません。

地主と契約して店舗を準備したローソン側が、フランチャイズの店主希望者に紹介し経営を任せるという流れになっています。オープンさせたローソンがどんな経営者に任せられるかわかりませんし、もしかすると早期に撤退するかもしれません。ローソンの提案が、地主サイドのリスクヘッジに対応しているとは限らないと考えて、契約内容を良く吟味すべきです。

5.ローソンへの土地の賃貸方法はどれがおすすめ?

ケースごとにメリット、デメリットが違い、どの契約が良いといい切れません。賃料が最も高くなるのは、リースですが借り入れる額が大きくなる可能性も高くなります。また、建物の所有者となるので、固定資産税、火災保険料、修繕費の負担など、ランニングコストがかさみます。

FSTでは、内装についてはローソン持ちですが、建物の所有者になる点では変わりません。初期投資分がリースと比べて少し抑えられるのが特徴です。資金を大きく投入するか、自己資金だけでやりくりするか、ローソンとの契約以外にも活用の可能性があるかなどを考えて、契約形態を決めましょう。

6.ローソンに土地を貸すメリット

土地活用の方法としてローソンに貸し出す方法に注目が集まるのは、メリットを感じる土地オーナーがいるからです。ローソンに土地を貸すメリットをまとめてみましょう。

6-1.自己資金ナシでもはじめられる

リースやFST契約では、ローソン用の建物を建てなければなりません。店舗用の建物ですから、2,000万円前後の資金が必要になります。建設協力金を使うと利子なしで資金融資を受けることができ、ローソン出店に適した土地さえ所有していれば自己資金がなくても賃貸がはじめられます。

また、FST契約なら内装はローソンに任せられるので、資金を抑えることができます。

6-2.宅地として賃貸活用しにくい土地が活用できる

貸して賃貸料を生み出すには、アパートなど住宅を建てて貸すか、駐車場として貸すといった方法が一般的です。市街化調整区域など、住宅を建てる許可を取りにくい区分の土地では使いにくい方法です。

しかし、ローソンであれば地域貢献になると認められれば建設許可がおりやすく、住宅以外の駐車場や資材置き場のような活用方法よりも高い賃貸料金を得ることができます。

6-3.遺産相続の時に評価換算額を抑える効果がある

リース契約の場合、土地と建物の名義はもともとの土地オーナーです。更地で相続するときよりも、賃貸物件が建っているときのほうが評価額を抑えることができます。

また、店舗建設で手持ちの資金を使った場合、完成したときには建物は中古扱いになり、評価額が下がります。相続税課税を吟味するときの資産評価額が、現金資産のまま持っていたときと比べて低くなるので、相続税の課税額を抑えられます。

7.ローソンに土地を貸すデメリット

ローソンに土地を貸すことが、土地活用になりメリットが得られる場合がありますが、一方ではデメリットも存在します。ローソンやコンビニに土地を貸すことのデメリットをみていきましょう。

7-1.契約期間が長期なので土地の流動性が低下する

ローソンへの土地の賃貸契約は、15年と長い期間が設定されています。長期契約中に状況が変化する場合もあります。ローソンの建物をそのまま他の事業者に貸すというのも難しいものです。市街化区域なら美容院など他の事業が開業できますが、市街化調整区域では周囲に店舗もなくぽつんとしていて借り手を見つけるのが難しいでしょう。

しかも、資金協力を受けていた場合には、契約によって融資の取扱をどうするかトラブルになることもあります。

7-2.計上状況によって契約途中で撤退がある

宅地としての利用価値が薄い土地をローソンに貸して活用できると思っていたら、経営状況によって簡単に撤退されてしまうことがあります。コンビニ業界はフランチャイズ制で、競争が激しいため、営業成績があがらなければ簡単に撤退を決めてしまうのです。

土地を提供するだけの事業用定期借地では建物の扱いに困りますし、建物があるのに賃料が入ってこないのは地主にダメージを与えます。ローソン経営者側の判断で撤退を申し出た場合は、建設協力金を放棄するという契約もありますが、その場合には負債額が所得として扱われ課税対象になります。納税資金がなければ、資産を処分しなければなりません。

7-3.リースやFSTでは高額の負債を抱えることになる

所有地を生かして自己資金ゼロでローソンの賃貸をはじめても、建設協力金は無利子の融資ですから、賃貸料から差し引いて返済していくものです。

途中撤退なく予定通り15年間賃料が入ってくるなら持ち出しナシの事業計画が可能ですが、2,000万円~5,000万円の負債を抱えるというケースは珍しくありません。

建物の建設費が1,500万円~2,000万円程度で収まっても、整地や付帯工事で1,000万円単位の工事が必要な場合もあるからです。

8.ローソンに土地を賃貸する場合の注意点やよくあるトラブル事例

市街化調整区域でも土地活用しやすいローソンへの賃貸ですが、コンビニに土地を貸し出す事業用定期借地やリース、FST契約でみられるトラブル事例を紹介しましょう。

8-1.契約賃料を徐々に下げられる

はじめの契約期間は15年ですが、契約更新する場合には賃料引き下げや、条件の変更が盛り込まれることが多くなっています。そのまま土地と建物を生かして契約更新をしたかったのに、条件が悪く折り合いがつかないケースがあります。

市街化調整区域では、コンビニへの賃貸をやめても用途変更などめんどうな場合があることの足元をみるような提案だとオーナーが感じることがあります。

8-2.更地返還でもめる

土地を事業用定期借地として貸す場合、契約更新しない時にローソン側が更地返還します。リースやFSTだと建物は地主のものですから、更地にするなら地主持ちです。建物を活かした活用ができれば良いのですが、取り壊し費用が障害となって新しい活用法が難しくなることがあります。

8-3.中途解約で税金に苦しむ

コンビニ経営は直営かフランチャイズ契約をした店主が行います。経営が難しく数年で撤退に追い込まれることもでてきますから、当初プランのように順調に家賃が入らなくなるケースがあります。また、建設協力金の放棄で現金収入がないのに課税所得が跳ね上がり、納税に苦しむ事例もあります。

9. まとめ

  • ローソンへの賃貸は市街化調整区域でも比較的良い利回りで収益があがる
  • 自己資金がほとんどなくても土地活用がしやすい
  • 早期撤退など必ずしも計画通りにいかずトラブルになるリスクもある

活用しにくい郊外の土地の活用方法としてローソンへの賃貸は魅力的ですが、安定経営の条件がどれだけ整えられるか、リスクヘッジを考えた契約を結ぶことができるかを見極めることが大切です。