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Category  不動産

2019年02月25日 更新

借地借家法第10条における借地権の対抗要件とは?

貸している土地を不動産業者や知り合いに売却したいときには、借主に土地の返還を求めることは可能でしょうか?

今回の記事では、借地借家法と民法に基づいて借地権の対抗要件について解説します。また、建物が消失した場合での借地権の解釈についても紹介します。

1.借地借家法第10条における借地権の対抗要件とは?

借地借家法第10条における借地権の対抗要件として、建物に関する登記をあげることができます。借主は、たとえ土地ついての登記がなくても、建物についての登記があれば対抗できるため、貸主が借主に対して土地の返却を求めることはできません。

借主が居住している土地について、貸主が別の人に売却することは可能です。一方で土地の明け渡しについては貸主側が借主に求めることはできません。

通常土地の貸し借りを行う際には、契約が交わされます。その際には借地権が発生します。借地権とは、借主が貸主と契約した範囲内で土地や建物を利用できる権利のことで、権利を主張するために借主は貸主に対して賃料を支払う義務があるというものです。そのため、土地の返却をなどを求める時には借地権の存在が重要です。

貸主が土地の返却を借主に主張できるかを考慮する際に重要となる法律に、民法と借地借家法がありますが、そこには借地権に関する明確な規定が記載されています。

2.民法における借地権の対抗力

民法605条には「不動産の賃貸借はこれを登記したときは爾後その不動産について物件を取得した者に対しても効力を生ずる」との記載があります。つまり借主は、借地権の登記を行なった場合には権利を行使は可能ですが、登記を行なっていない場合には権利を行使することは不可能です。

借地権の登記は義務ではありません。登記は任意となっており、登記をしなかった時でもペナルティーを課せられることはありません。さらに借地権の登録については借主が自らすることができますが、貸主による確認が必要です。

貸主が借地権を認めたくない場合には、借地権の登記を拒否できます。借地権を拒否された借主は、土地を取得した新しい貸主に対して土地の使用についての権利を主張できません。そのような場合では、借主に対して立ち退きを主張できます。

借地権の登記については、土地の借主が使用できる期間が決まっている低地借地権の時にはメリットがあります。期間が過ぎていても土地の返却を拒否する借主に対しては、借地権を提示することによって、賃借の契約が終了していることと、明け渡しを要求できます。

一方で契約期間の定められていない土地の場合には、借地権を主張する機会はなく、むしろ土地を他の人に売却しても借主は住み続けることができます。従ってほとんどの貸主は、借地権の登記をすることはありません。

民法の解釈で考えると、借地権を登記していない借主については、土地の売却後の居住の権利を主張することはできないため、土地の立ち退きを要求することができます。

3.借主を保護する借地借家法

借主が権利を主張する上で重要となるのはもう一つの点は、借地借家法第10条の記載内容です。

借地借家法とは土地と建物に関する貸し借りの契約についての規定が書かれた法律です。経済的にも立場的に弱い借主の権利を保護することを目的に作られました。例えば、貸主が何らかの事情のために貸した土地の返還を求めても、借主が拒否をしたならば、返却してもらうのは不可能です。そうした事が原因で、貸主が土地を貸したらほとんどのケースでは戻ってこないといったトラブルが生じました。

そこで平成3年に改正された借地借家法が制定されました。新しい法律では、土地の契約の際に期間を設けることができるようになり、契約期間が終了したならば、貸主は土地の返還を宣言できるようになりました。

しかし、改正借地借家法にも問題はあります。以前の法律での契約がなされた土地に関しては、改正された法律での適用はできないという点です。そのため長年貸している土地に関しては以前の借地借家法が適用されます。

そのため土地の返却で必要な借地権についても、民法だけではなく借地借家法での規定を確認する必要があります。

4.借地借家法第10条における借地権の対抗要件

借地借家法第10条には、借地権の対抗するための要件として「その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる」と記載されています。

民法では、対抗要件として借地権の登記が記載されていますが、借主が登記をすることは極めて難しく、事実上貸主に有利な法律となっていました。そのため借地借家法では、土地の借主が登記されて建物を持っているだけで、借りている土地の居住の権利を宣言することができます。

土地を借りたとしても、居住用の建物を借主が建てた場合には、その建物については借主のものです。また登記のついても土地の登記については、土地の持ち主である貸主の承諾が必要でしたが、登記については、貸主による確認などは不要で、借主自身で行うことができます。

日本の法律では、土地と建物の登記を別々に行うことが可能です。そのため、土地の登記は貸主の名前であっても、建物の登記は借主の名前で記載されていることがあります。

借地借家法第10条の規定では、建物に関する登記をしていれば貸主の土地の返却に対抗できます。従って、貸主が土地を他の人に売却した時にも、借主に貸した土地を返してもらうことはできません。

また建物の建て替えや火事などで建物が消失した場合は、建物を特定するための登録簿の明細や消失した日付、また新たな建物を建築することの記載を土地の上に掲示していれば、土地の返却について対抗できます。ただし借地権の保存に関する掲示をする前や撤去された後に他の人に土地を売却した場合には、新しい貸主は土地の返却を求めることができます。

そのため、貸主は建て替えなどによって建物が存在していないときを見計らって、土地の返還を求めることも可能ですが、かなり難しいのが現状です。どうしても土地の返却を求める場合には、借主との粘り強い交渉が必要となります。基本的には、普段から借主との良い関係を築いておくことが大切です。

5.まとめ

借地権の対抗について、民法では土地についての登記がなされていれば対抗できるとの記載があります。しかし、通常の土地の貸し借りでは、土地の貸主にはメリットはほとんどありませんし、登記を怠ったことによるペナルティーなどもないためないため、借主による土地の登記を拒否できます。

しかし、借地借家法の第10条では、土地に関する登記がなくても建物に関する登記がなされていれば借地権に対抗できます。そのため、借主自身で建物を建築した場合には、貸主の承諾を必要とせずに登記を行うことができます。建物の登記をした場合には、貸主は土地の返却を借主に求めることはできません。

また改築や火事などの災害によって建物が消失した場合でも、建物を特定するための情報が明記されているものを土地の上に掲示していれば対抗できます。

貸主が他の人に土地を売却した際の権利については、民法では貸主に有利な内容が記載されていますが、借地借家法では借主に有利な記載がされています。そのため、土地を他の人に売却するのが容易ではありません。

一般的に誰かが不動産を購入するときには、現地での下見をしますし、建物や土地に関する登記を確認します。購入した土地に購入者自身が居住する建物を建築する場合や別の用途のために使用する予定を立てている場合には、借主が使用している土地の売却については非常に難しいと言えます。