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Category  不動産

2019年09月05日 更新

農地にかかる税金って??いくらくらいかかるの?

不動産の中でも、宅地ではなく農地を持っている、またはこれから持とうとされている方にとって1番気になることのひとつに「税金」があります。

農地を持つと、いったいどんな税金がいくらくらいかかるのでしょうか?

今回は、そんな農地にまつわる税金についてザっとご紹介致します。

1.農地を保有しているとかかる税金はいくら?

通常、土地や建物など不動産を保有していると「固定資産税」が課税されることとなりますが、農地ももちろん例外ではなく課税されます。

この固定資産税は土地、家屋、償却資産の3つのうちいずれかの財産を保有しているとかかる税です。

課税対象者は毎年1月1日時点で固定資産税台帳に登録されている人物で、1度納付が義務づけられるとたとえ年度途中でその不動産を手放しても納税しなければなりません。

続いて固定資産税の計算方法についてですが、これは「固定資産税評価額」の数値を基準に算出されます。

ご自身の不動産の固定資産税評価額は、毎年5月ごろに送られてくる納付通知書に添付されている課税証明書の「価格」欄など(市区町村により欄名・フォーマットが微妙に違います)や、役所に必要書類の提出と不動産一件につき300円ほどの手数料を納めて交付される「固定資産台帳」などで確認することができます。

その年の固定資産税評価額は、

前年度の固定資産税課税標準額 × 負担調整率=今年度の固定資産税課税標準額

といった式で算出され、少しずつ変動するため注意が必要となります。

そして、このように決定された固定資産税評価額に対し、標準税率1.4%を掛けてその不動産の固定資産税が決定されます。

固定資産税評価額×標準税率1.4%=固定資産税

さて、ここまでが固定資産税の基本となりますが、続いて農地での固定資産税についてです。農地は固定資産税が安いという話がありますが、これは半分正解で半分間違いです。

まず、国は国内の農業を盛んにするため政策を行っているという意味ではこの話は本当です。人が生きるためには食糧が必要であり、また食糧なら何でもいいかと言うとそうではなく、ちゃんと国内で作った作物を国内に普及させねば意味がありません。外国の輸入食品ばかりに頼っていては、全て外国の事情に日本の食糧事情が左右されてしまうこととなります。

日本の食糧自給率は今や40%を切っており、つまり単純計算で私たちが日常生活で口にする食品の半分以上は外国産なのです。国もこの数字をなんとか上げようと考えていますので、農地に対する優遇措置を構えているのですね。

では、農地が安いという話のどこが間違いかと言えば、農地ならどこでも固定資産税が安くなるというわけではない点です。そう、農地には実は種類があるのです。

日本国内の土地は現在、大きく分けて市街化区域とそうでない地域の2種に分かれています。簡単に説明すると、都市化を進めていくための土地と、逆に都市化を抑えて自然を守らなければならない土地に分けられているのです。

この2種類の土地は、もう少し細かく見ると更に以下の4種に分けることができます。

市街化区域内

①特定市街化区域:大都市圏など最も都市化を進めていく地域

②一般市街化区域:上記以外で都市化を進めていく地域

③生産緑地:環境の保全を指定された地域

市街化区域外

④市街化調整区域:開発を制限し環境を守るべき地域

そしてこの4種それぞれで農地を持った場合、①が最も固定資産税が高く、④にいくほど安くなっていきます。つまり大都市で農地を持つと高額な固定資産税がかかり、一般農地で農地を持つと大変課税が安くなるのです。

このように、どこに農地を持つかで固定資産税は左右されるため、農地が安いというのは半分正解で半分間違いと言えるのです。

以下にそれぞれの土地の固定資産税のおよその額をまとめてみましたので、参考にして下さい。実際の固定資産税額は大変計算が難しいので、税理士への相談をおすすめします。

※10a→10アール=1000平米

宅地並み評価

①特定市街化区域農地…10aあたり数十万円

②一般市街化区域農地…10aあたり数万円

農地評価

③生産緑地…10aあたり数千円

④一般農地…10aあたり千円

農地評価と宅地評価に分けているのは、農地の種類により土地の課税標準となる評価額の算出方法が違うためです。

農地評価…農地利用を目的として売買実例価格を基準とし評価する方法

宅地並み評価…宅地(家屋を建てるための土地)の売買実例価格を基準として評価した価格から、造成費相当額を控除した価格

次に、農地のための税の負担調整措置をご紹介致します。

通常の固定資産税と違い、農地にはこのような特例を挟んだのちに税額の計算が行われるのです。

1-1.負担調整措置

①特定市街化区域農地

宅地化農地として宅地と同じように計算がなされます。

ABいずれか少ない額

A : 評価額×1/3×軽減率 ×税率

B : (前年度の課税標準額+当該年度の評価額×1/3×5%)×税率

②市街化区域農地

土地の評価方法は宅地並み評価ですが、実際の課税方法は農地と同様です。

ABいずれか少ない額

A : 評価額×1/3×税率

B : 前年度の課税標準額×負担調整率×税率

③④一般農地・生産緑地地区内農地

ABいずれか少ない額

A:評価額×税率

B:前年度の課税標準額×負担調整率×税率

出典:農林水産省HP

1-2.特定市街化区域農地の特例

特定市街化区域農地においては、上記①Bの額が以下の式より下回る場合は、以下の式で算出された額が税額として採用されます。

(当該年度の評価額 × 1/3) × 2/10 × 税率

2.農地を売った時にかかる税金はいくら?

自らの所有する財産を他者に売り渡した時、自分が買った時より売った時の額の方が高ければその差額は利益となり、これを「譲渡益」と呼びます。

そしてもちろん、譲渡益には譲渡所得税という税が課せられます。

通常、譲渡所得税は給与所得や事業所得と一緒に合計して申告・課税が為されます。

しかし不動産での譲渡所得税は、これらとは別に申告・課税が為される「分離課税」という形式をとるため注意が必要です。

不動産の譲渡所得税の計算は、取得した際の費用から売却した金額、及び売却の際かかった諸費用を引いて、そこに税率をかけて行います。

(収入金額-取得費-譲渡費用)×所得税および住民税率

ここまでが不動産を売却した際の譲渡所得税の基本ですが、売買物件が農地の場合には以下のような特例が適用されます。

2-1.譲渡所得の特別控除

不動産としての譲渡所得税は上記の計算式により求めますが、農地を売却する際はここから800万円または1,500万円の特別控除が適用されます。

適用の基準は以下の通りです。

800万円の特別控除となる場合

以下の①~③どれかに当てはまる場合です。

簡単に言うと、都道府県・市区町村などの行政からのあっせんや、農地管理団体のあっせんにより売却すると特別控除の対象となります。

①勧告に係る協議、調停又はあっせんにより譲渡した場合

②農地中間管理機構又は農地利用集積円滑化団体に譲渡した場合

③農用地利用集積計画により譲渡した場合

1,500万円の特別控除となる場合

以下のような公的団体に買い取れた場合は、1,500万円の特別控除対象となります。

農業経営基盤強化促進法に基づく買入協議により農地中間管理機構又は 農地利用集積円滑化団体に買い入れられた場合

以上のような基準で適用が決定され、譲渡益からこの特例控除額を引いて税の計算を行います。

(収入金額-取得費-譲渡費用-特別控除)×所得税および住民税率

もし以上の計算の結果出た数値が0またはマイナスの場合は非課税、つまり譲渡所得税は課せられません。

3.農地を購入した時にかかる税金はいくら?

不動産を売買などで取得した場合は、大きく以下の2点の税金が課税されます。

  • 登録免許税…不動産登記に際してかかる流通税
  • 不動産取得税

登録免許税、不動産取得税ともに、取得した不動産の固定資産税評価額に税率をかけて計算を行います。

不動産を取得した際のこの2種の税にも、農地の取得に関しては以下のような特例が適用されます。

登録免許税の軽減措置

通常、不動産購入での登録免許税は2%(1.5%:平成31年3月31日まで適用の軽減税率)ですが、農地の購入では1%に下がります。

不動産取得税の軽減措置

取得した不動産が農地の場合は、課税標準である固定資産税評価額を3分の2にして計算が行われる特例が適用されます。

4.農地を相続した時にかかる税金はいくら?

財産の持ち主が亡くなった時、その配偶者や子などの法定相続人、その他故人が自筆もしくは公的手段を用いて作成した遺言書や親族の話し合いにより故人の財産を分配するのが相続です。

そして相続により得た財産には相続税が課せられます。

もし相続財産が不動産だった場合、その課税標準は以下のように求められます。

4-1.相続財産が不動産だった場合の課税標準

路線価方式
国税庁が設定した「路線価」に基づいて計算され、簡単にまとめると式は以下の通りです。

路線価×土地面積×補正率

その土地の奥行きや隣り合う側方路線価なども用います。

路線価方式での相続税課税標準計算は、国土交通省が毎年発行する土地取引の指標「公示地価」のおよそ8割になるよう設定されています。

②固定資産税評価額

①の路線価が設定されていない地域では、前述してきた固定資産税評価額をもとに税額が計算されています。

以上が不動産相続時の課税標準の簡単な算出方法です。

続いて相続税率ですが、不動産相続の場合、以下のような形になります。

決定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% なし
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

 

以上が簡単な税率の早見表となりますので参考にして下さい。

ここまでが不動産相続の基本ですが、では農地を相続する場合はどのような特例があるのでしょうか?

4-2.相続税納税猶予制度

相続する財産が農地の場合、一定の条件を満たせば相続税納税猶予制度が適用されます。

これは、相続不動産が農地として所有される限りは相続税の納税が猶予される特例で、つまり農地の相続税実質0円ということになります。

以下が適用の条件となりますが、大変複雑であるため税理士などの専門家の助力を求めるのが賢明です。

被相続人の条件

被相続人(故人)が以下のいずれかの条件を満たしていることが条件となります。

①死亡の日まで農業を行っていた

②生前に農地を一括贈与している

③死亡の日まで営農困難時貸付や特定貸付を行っていた

営農困難時貸付…障害・疾病などにより農業を続けることが困難となった場合に、その農地を他人に貸し付けること

特定貸付…市街化区域外の一般農地を農業経営基盤強化促進法等の規定に基づく事業により貸し付けること

相続人の条件

相続人は、次のいずれかの条件を満たす必要があります。贈与税の特例については、後ほどご紹介致します。

①相続税の申告期限までに農業を引き継ぎ、その後も継続する

②農地等を生前一括贈与されて贈与税の納税猶予の特例を適用していた

③相続税の申告期限までに特定貸付を行った

④その他一定の事項

特例の対象となる農地の条件

被相続人が農業を行っていたか特定貸付を行っていた農地である事を前提とし、次のいずれかに当てはまる必要があります。

①相続税の申告期限までに遺産分割されている農地

②贈与税の納税猶予の特例を適用していた農地

③相続があった年に被相続人から生前一括贈与を受けていた農地

5.農地を贈与した時にかかる税金はいくら?

財産を持ち主の死後に相続するという形でなく、持ち主が生きている間に特定の相手に財産を譲ることを贈与といい、この際に贈与税が課せられます。

贈与税の課税では一定の控除が適用されますが、この控除システムは2種類存在し、贈与の際どちらかを選ぶことになります。通常何もしなければ前者の暦年課税が、また条件に該当し申請を行って、尚且つ今後の贈与が全てこのシステムになって良いなら相続時精算課税が適用されます。

5-1.暦年控除

暦年控除では年間110万円の基礎控除が適用され、この額を超えない範囲の贈与ならば非課税で申告はいらず、もし超える場合はその超過分に税率をかけて贈与税の計算が行われます。

(贈与財産の価額−年間基礎控除110万円)×税率=贈与税

5-2.相続時精算課税制度

こちらのシステムは、2,500万円の控除のもと財産の一部または全部の贈与を受け、課税は相続の際に後回しにされるというものです。

65歳以上の親または祖父母から20歳以上の子または孫への贈与が前提条件で、贈与財産価額が2,500万円を超える場合にはその超過分に一律20%の税率をかけて贈与税を支払います。

相続の際には、既に贈与された財産を含めた相続財産に税率をかけて相続税が課税されますが、控除額2,500万円を超えた生前贈与があり、かつ贈与税を支払っている場合は、この贈与税がそのまま相続税の控除に回されます。

結局のところ全相続財産分の税を支払わなければならないので、得しているのか損しているのかわからないような制度ですね。また一度申請があり適用されると後戻りできず、もう一方の暦年控除は適用されなくなりますし、相続の際と違って登録免許税や不動産取得税はしっかり高い税率で課税されます。

適用を受ける時は慎重に検討した上でなくてはなりません。

以上が生前贈与における基本ですが、もし贈与財産が農地であった場合、相続の時と同じく特例が適用されます。

5-3.農地の贈与における納税猶予制度

前述の相続税納税猶予と同じく、条件に該当すれば納税が実質0円になる特例です。

条件をかいつまんでご紹介すると、

  • 被贈与人が18歳以上で、贈与からさかのぼって3年以上農業に従事している
  • 農業用地に使用されている土地を一括して贈与する
  • 特定市街化区域内農地の場合、生産緑地に認定されていなければならない

などです。

ちなみに贈与を受けてから被贈与人が農業をやめてしまったり、農地の20%超を宅地転換や売却・贈与してしまったりするとこの特例の対象外となり、一気に課税されてしまうのでご注意ください。

もし被贈与人が農業を続けられなくなったら、以下の条件に該当する場合は貸付農地にすることで納税猶予を続けられるので急いでください。2ヶ月以内という期限があります。

  • 精神障害保健福祉手帳の1級の交付を受けた状態
  • 身体障害者手帳の1級又は2級の交付を受けた状態
  • 介護保険の要介護認定における要介護5を認定された状態

6.農地の税金対策とは

土地というものは使い途を特に決めておらず、そのまま更地にしていると固定資産税ばかりがずっとかかってしまいますから、何かに使うか早めに売却してしまわなければなりません。

そこで、農地にすると固定資産税が安くなると聞いたからそうしよう!と思われた方も少なくないはずです。

しかし前半でご紹介した通り、どこにどの種類の農地を持つかという点で損得は大きく変化します。多くの場合、一般農地や生産緑地でなければ節税にはつながらないことでしょう。

また、土地があるからと言っていきなり農地ということで扱ったり、登記地目が農地だからとそのまま放っておいたりことはできません。

その土地が農地として現在も機能しており、登記地目だけでなく課税地目も農地と認められている必要があるのです。

まず土地が手付かずの場合は、基礎なども含め建物は全て解体し、土の入れ替えなどを行なって作物を育てられる環境にし、登記地目の変更申請を一月以内に速やかに行なって実際に耕作を始める必要があります。

建物があるままや更地のままにしておいたり、申請をせず放置していたりすると、節税への道は遠くなってしまいます。

そして、登記地目が既に農地となっている場合も油断できません。実際に固定資産税が課税されるのは「課税地目」に準じます。

つまり、たとえ土地の登記地目が農地となっていても、役場の人が現地調査を行って農業が行われていなかったり建物が建っていたりすれば、課税地目は宅地やその他の地目に書き換えられてしまいます。

以上の点に注意した上で、農地としての土地活用をする場合は慎重に行いましょう。

7.農地の税金に関する知識まとめ

いかがでしたでしょうか?

農地に関する税金の扱いについてご紹介して参りました。

今回のポイントをまとめ上げると以下の通りです。

  • 所有、売買、贈与や相続などあらゆる面において農地独自の特例や課税が用意されている
  • 基本的に農地は税が優遇される。しかし条件によっては優遇されないので、「農地は安い」という先入観は一度捨ててシミュレーションする
  • 節税対策として不動産を農地にする場合は、誰が見ても農地という状態を維持しなければならない

以上の点に注意して農地運営を検討しましょう。

また今回ご紹介した内容はあくまで概要ですので、それぞれの市区町村の事情を含め、土地活用に定評のある地元の税理士さんへの相談を行っておくことを強くおすすめします。