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Category  不動産

2019年09月05日 更新

農地が税金対策になるって本当??理由や方法は?

農地は税金対策になるという話を時々耳にしますが、どのような対策になるのでしょうか?まだイメージが湧かない方も多いかもしれません。

そこで今回は、農地を利用した税金対策について、その実をご紹介したいと思います。

1.農地を活用した税金対策とは

皆さんは、農地を使った税金対策というものをご存知でしょうか?

「農地は安い」「土地は農地にしたら税金が安くなる」こういった話はまれにあるものですが、果たしてそうなのでしょうか?また、根拠はどこにあるのでしょうか。

以下にその理由を記述します。

1-1.農地が税金対策になる理由

農地が税金対策になる理由は、固定資産税課税方式にポイントがあります。

つまり通常の土地より、農地の固定資産税の方が安い、という話ですね。

固定資産税は更地にしていると何の控除も受けられず高くついてしまうので、早く何かの用途に用いるか、いっそのこと売却してしまう方がリスクは抑えられます。そしてそのリスク回避の手段として、農地活用が挙げられます。

しかし、農地なら何でも安くなるのか、と言われれば実はそうではありません。農地は、その土地がどのような場所に位置しているかにより固定資産税の額が変わってきてしまうのです。

すなわち、立地によって固定資産税が安くなる場合もあれば、そうでない場合もあるという事です。

それでは実際に、農地にはどのような種類があり、どういった税金の計算がされるのか見ていきましょう。

1-2.農地区分と税金の違い

現在、日本国内は都市化を進めるべき地域つまり「市街化区域」と、逆に都市化を止め環境保全に努めるべきとされた「市街化調整区域」の大きく2つに分類されています。

さらにこの分類は細かく分けることができ、その分岐は以下の通りになります。

市街化区域内

①特定市街化区域:大都市圏など最も都市化を進めていく地域

②一般市街化区域:上記以外で都市化を進めていく地域

③生産緑地:環境の保全を指定された地域

市街化区域外

④市街化調整区域:開発を制限し環境を守るべき地域

市街化区域内にも、環境を保全する区域が設定されていることがわかります。

そして農地もこの分類に準じ、以下の区分として設定されています。

①特定市街化区域農地

②一般市街化区域農地

③生産緑地

④一般農地

つまり「一般農地」とは市街化区域「外」に存在する農地のことを指します。

そしてこの分類がそのまま固定資産税を決定するために用いられます。

10aあたりのおよその価格帯をまとめてみたので、参考にしてください。

※10a→10アール=1000平米

宅地並み評価

①特定市街化区域農地…10aあたり数十万円

②一般市街化区域農地…10aあたり数万円

農地評価

③生産緑地…10aあたり数千円

④一般農地…10aあたり千円

「農地評価」と「宅地評価」に分けているのは、農地の種類により土地の評価の方法が違うためです。

農地評価…農地利用を目的として売買実例価格を基準とし評価する方法

宅地並み評価…宅地(家屋を建てるための土地)の売買実例価格を基準として評価した価格から、造成費などを控除した価格

このようにその農地区分によって、土地の評価額が決定されます。

固定資産税は不動産評価額に税率を掛けることによって求められますが、通常この評価額は固定資産税評価額(※公示価格のおよそ70%に設定された額)を用います。

※公示価格…毎年国土交通省が公表する、その土地の取引の基準となる価額

しかし農地の場合はこの評価額が農地区分→評価方法によって変動、また次に紹介する負担調整特例を通してから固定資産税が決定されるのです。

農地の負担調整特例

①特定市街化区域農地

宅地化農地として宅地と同じように計算がなされます。

ABいずれか少ない額

A : 評価額×1/3×軽減率 ×税率

B : (前年度の課税標準額+当該年度の評価額×1/3×5%)×税率

②市街化区域農地

土地の評価方法は宅地並み評価ですが、実際の課税方法は農地と同様です。

ABいずれか少ない額

A : 評価額×1/3×税率

B : 前年度の課税標準額×負担調整率×税率

③④一般農地・生産緑地地区内農地

ABいずれか少ない額

A:評価額×税率

B:前年度の課税標準額×負担調整率×税率

特定市街化区域農地の特例

特定市街化区域農地においては、上記①Bの額が以下の式より下回る場合は、以下の式で算出された額が税額として採用されます。

(当該年度の評価額 × 1/3) × 2/10 × 税率

このような農地独自の固定資産税算出方法が存在するため、税金が安いという話が生まれ、また実際にはそうでなかったりするのですね。

おおまかな結論としては、①②のような市街化区域内に農地を持っても固定資産税はそこまで安くならず、対して③④のような地域に農地を持つと固定資産税が安くなる、と言えるでしょう。

ただし実際には、②の市街化区域内にある土地で農地を持ち農業を続けていると軽減措置が働く場合もあり、より正確な固定資産税を知るためには土地活用に詳しい地元の税理士などに助力を求めるのが賢明だと言えるでしょう。

2.農地の生前贈与

続いて、農地の生前贈与についてです。

財産を持つ人が家族などにその財産を分与する場合、亡くなってから法律に従って、また故人自筆や公的な手続きを経て作成した遺言書、親族どうしの話し合いなどの結果に基づいて決定された人に財産が渡るシステムを相続と言います。

また一方、財産の持ち主が生きているうちに特定の人物に自身の財産を分与することを贈与と呼びます。

通常、相続に対して贈与は制限が多く税額が高くつきます。しかし贈与される財産が農地であった場合、条件に合えば以下のような特例が適用されることとなります。

2-1.贈与税納税猶予の特例

農地の贈与において一定の要件を満たす場合、その贈与税の納付が猶予されます。すなわち、贈与されるのが農地で、その後もずっと農地として使われる場合は贈与税が実質0円となるのです。

ただし贈与者、被贈与者、贈与される農地それぞれが以下の条件をすべて満たしている必要があります。

贈与者の条件

①3年以上農業を営む個人

②相続時精算課税制度の適用を受けていないこと

③対象年度において他に農地の贈与を行っていないこと

④過去にこの特例を利用して農地の一括贈与を行っていないこと

被贈与者の条件

①贈与者の推定相続人であること

②次の要件の全てに該当することを農業委員会が証明した個人

⑴贈与された農地を取得した時点で18歳以上であること

⑵農地を取得した日まで引き続き3年以上農業を営んでいること

⑶農地の取得日からも農業を行い、農業委員会の証明時に農業に従事していること

農地の条件

贈与者が農業を行っている農地の全て、主に採草放牧地や準農地の3分の2以上を相続人の1人の農業後継者に一括して贈与すること

また被贈与者については、当該農地について相続時精算課税制度の適用を受けることはできなくなっています。

ここで出ている相続時精算課税制度とは、贈与のパターンの1つです。通常、暦年控除と呼ばれる年間110万円の基礎控除が付いたスタイルで贈与が行われますが、親または祖父母が65歳で子または孫が20歳以上という前提で申請し、受理された場合適用されます。

2,500万円の控除付きで生前贈与を行うことができますが、相続時には結局贈与された財産も含めて相続税の計算が行われるほか、一度適用されれば元の暦年控除に戻すことはできません。

その上ここに記したような特例を受けることができなくなるので、慎重な検討が必要です。

上記の要件の他に、三大都市圏でこの納税猶予を受けるためには生産緑地の指定を受けていなければなりません。

生活環境機能及び、公共施設等の敷地の用に供する土地に適していること
②面積が一団で、500㎡以上の農地等であること

③農林漁業の継続が、可能であること

以上が生産緑地の要件となります。この上で、都市設備(幹線道路や下水道など)に支障がないよう運営します。

しかしこの生産緑地は、指定前から指定後まで数々の難所が待ち受けています。

上記の要件をクリアした上で、基本的に行政が生産緑地を決定します。

しかし苦労して生産緑地に仕上げても、一度生産緑地に認定されてしまうと都市計画上の動きが無い限り後戻りはできません。

生産緑地では、原状回復を原則として厳しい規制があります。その後建物などを建てる際は市町村の許可が降りなければいけません。また形質の変更、水田の埋め立てや干拓、宅地造成などにも許可が要るようになります。もし許可なくこれらの行為が行われた場合は、原状回復として直ちに元の耕地に戻さねばならなくなります。

これらの条件を満たして無事適用を受けても、その後が無ければなりません。

あってはならないケースとしては、贈与を受けてから被贈与人が農業をやめてしまったり、農地の20%超を宅地転換や売却・贈与したりしてしまうことです。

こうなると特例の対象外となり、一気に課税されてしまうので注意しましょう。

また、もし被贈与者が以下のような状況に追い込まれ農業をストップせざるを得なくなった場合は、猶予対象から外れ贈与税の追い込みをかけられることとなってしまいます。これを避けるには、2か月以内に他の農業者に土地の貸し付けを速やかに行えば、引き続き猶予対象として維持できる場合があります。

  • 精神障害保健福祉手帳の1の交付を受けた状態
  • 身体障害者手帳の1級又は2の交付を受けた状態
  • 介護保険の要介護認定における要介護5認定された状態

3.農地に転用

次にご紹介するのは、今まで違う目的で使われていた土地を農地に転用するというパターンです。

1番多いのは、使わなくなった家を取り壊し農地にするケースではないでしょうか。現行の税制では宅地に対して大幅な固定資産税の優遇があり、家を壊して更地にしてしまえばその優遇が外れ固定資産税が増大してしまいます。こういった事態を防ぎ、何なら利益を出してしまおうということで、農地に転用するわけですね。

実際、前半でご紹介した農地区分の③④に当たる場合や、①②でもシミュレーションしたうえ更地にしておくより安い場合、理論上大変有効な手段であると言えます。

しかし実際に別の用途で使われていた土地を農地にする場合は、以下のような手順を速やかに踏まなければならないので注意が必要です。

1:まずはその土地にある建物を、基礎を含めて全て解体してしまいます。建物部分が残っていては農地としては認められません。

2:更地にしてしまったら、すぐに土地を耕し、必要であれば土の入れ替えなどを行って「すぐに耕作が始められる状態」にしましょう。ここが農地として認められる最低限のラインです。

3:宅地から農地への転換が終わったら、速やかに転用に際して登記地目(ちもく)変更を行います。この手続きが遅れ、もし転用から1か月が過ぎてしまうと固定資産税に反映されない上、最悪の場合不動産登記法に基づき10万円以下の罰金が課せられます。

4:実際に耕作を行います。たとえ登記簿上地目が田や畑などの農地として設定されていても、役場の人の現地調査により農地として認められなければ税に反映しません。これは固定資産税の課税が登記地目ではなく「課税地目」に基づいて行われるためです。この課税地目は市区町村がその土地の現状を確認し勝手に変更してしまうものなので、いくらこちらが登記を主張しても無駄なのです。

5:地域住民の方との連携、特に農業を営む人々どうしのコミュニケーションを大切にしましょう。農地を営むのに絶対の法律上の規制はこれといってありませんが、周辺の設備管理や水路の利用などについて明確に立場を捉えておかねばなりませんし、農薬不使用などの秩序がある地域も存在します。

4.農地所有適格法人

農地所有適格法人とは、簡単に言うと農地を利用して農業を行うことのできる法人です。

農地所有適格法人はより大きく見れば、農業法人の一種です。

農業法人とは、会社としての形態を持つ会社法人、もしくは協同組合のような形を取る農業経営に特化し法人化した農事組合法人の総称です。

この農業法人は、農地所有適格法人とそうでないその他の農業法人とに分けられます。前者の農地所有適格法人となるためには、以下のような一定の要件を満たしている必要があります。

  • 法人形態:株式会社(公開会社を除く)、農事組合法人、合資会社、合名会社、合同会社
  • 主な事業が農業もしくは農産物の加工販売などの農業※関連事業で、売上高の過半を占めていること

(※関連事業…農畜産物の加工・貯蔵・販売・運搬、農畜産に必要な資材の製造、農家民宿など農村滞在型余暇活動に利用される施設の設置管理・運営を含む)

  • 議決権の過半が以下に該当する農業関係者であること

○法人の行う農業に常時従事している個人
○農地提供をした個人
○農地中間管理機構や農地利用集積円滑化団体を通して法人に農地を貸し付ける個人
○基幹的な農作業を委託する個人
○地方公共団体、農地中間管理機構、農業協同組合(連合)

  • 役員の要件

○役員の過半が、法人の行う農業に常時(原則年間150日以上)従事する構成員
○役員や重要な使用人の1人以上が、法人の行う農業に必要な農作業に原則年間60日以上従事すること

以上の通り、組織として充分に機能していなければなりません。

法人と認められ、ある程度の事業収入を得られれば以下のようなメリットが生まれます。

  • 退職給与や使用人兼務役員の賞与を損金として計上できる
  • 所得を分配し事業主への課税が軽減される
  • 青色申告により9年分の赤字が繰越せる
  • 転作助成金の特別勘定経理と圧縮記帳が行える
  • 定率課税の法人税が適用される
  • 市町村認定の特定農業法人に関し、農用地利用集積準備金制度が利用できる
  • 認定農業者に関し青色申告で割増償却が適用される

その他、農業後継者の確保や社会保険の導入、経営管理の徹底化やローンの借入上限額増加など様々なメリットが生まれるのが法人化です。

5.農地の節税対策の注意点

農地は使いようによって節税対策となる事を主にご紹介致しましたが、それぞれに注意点があることも気づいていただけたかと思います。

特に固定資産税においては節税になる地域とならない地域が存在し、また無理に農地を開墾してもそれが持続されなければならないという点をご留意下さい。また特例制度なども、その前後でずっと農業が続けられる事が前提であり、途中で放棄してしまうと通常通りの課税となってしまいます。

また農業の法人化についても、税制上メリットは受けられるもののその後の展望がなければいけません。集団化することで小回りも効かなくなりますから、うまく法人としての方針をまとめて結束しなければなりませんし、また法人としてのイメージアップにも努めねば集団化した意味がありません。

以上の点を踏まえて、目先の利に飛びつかずその後の計画ありきの農地活用を行いましょう。

6.まとめ

いかがでしたでしょうか?

土地の農地活用や農業の法人化によるメリットや注意点をまとめました。

農地はその地域の人々、行政との協力なくして成り立ちません。また、報酬は支払わなければなりませんが、土地活用に定評のある税理士などへの協力要請も時には必要となるでしょう。

長期的な計画を組み、是非手持ちの土地を有効活用してください!