事例紹介

Category  不動産

2019年01月21日

農地転用について〜地目を変更するタイミングは?

農地転用の許可を取ると言うことは、「農地を農地以外に使ってもいいですよ」という許可を取ることです。農地を他の地目を変更するための許可とは違います。ですから農地転用の許可を受けていても、現状が農地のままであれば、農地としての扱いになります。

では、どのタイミングで農地は宅地になるでしょう?

1.農地転用後の地目変更登記のタイミングはいつ?

登記上の地目が農地であったとしても、実際にその土地に家が建っていれば、それは宅地として判断されます。現状で家が建っていれば、その土地は紛れもなく「宅地」として扱われます。

しかし、いくら家が建っている状態の宅地であったとしても、登記が農地のままになっている状態では、それを書類上で証明することは出来ないのです。

◆地目変更登記とは?

農地の転用許可を得て、農地転用のための工事が終了した後、登記の地目を変更します。

これまで「農地」とされていた土地は、通常登記上の地目は「田や畑」となっています。農地転用して工事が行われると、その土地は農地ではなくなります。そこで、その時点の状況に合わせて、登記の地目を変更することになります。登記の地目変更手続きは、地目が変更されてから1ヶ月以内に行わなければなりません。

◆中間地目とは?

あるAと言う地目から、A以外の地目へ変更される途中の地目のことを中間地目と言います。

農地転用の際によくある例として、農地だった土地に自分用や子ども用の住宅を建てたいとなったとき、農地を造成して整地した状態になった際、家の建築までに少し時間が空く場合など、一時的に駐車場として利用することがあります。この場合、本来は農地から宅地へ変更される予定ですが、途中一時的な駐車場として使うことになりますので、「青空駐車場」として「雑種地」へ地目変更をすることは出来ません。

あくまでも宅地にすることが目的ですので、中間利用の際の地目に変更することは出来ないのです。

1-1.地目変更登記可能なタイミングは基礎工事の完了時点

現時点で農地ではなく宅地であっても、登記上で「宅地」と変更されていれば、「宅地」として認められます。その際、「どのタイミングで宅地であると認めるのか」ということが疑問になってきます。

「農地を造成し、整地し終わった段階になったら宅地になる」と考えるのか、「家などの目的の建物が完成したら宅地となる」と考えるのか、どのタイミングで宅地と判断するかと言うことはそれぞれ見解が違ってきます。

ですから農地を宅地にする場合は、宅地にするための基礎工事が完了した時点で「住宅の建築が明確になった」と判断されるようになっています。宅地にするための基礎工事が完了したと言うことは、「地目変更登記が可能な状態になった」と考えられるからです。

1-2.一般的には建物表題登記と合わせる

建物の建築が完了した時は、その建物の所在や床面積、階数、構造などの物理的状況を登記しなければなりません。建物表題登記をすることは法律上での義務であり「新築から1ヶ月以内に建物表題登記をするように」と期限が定められています。

地目変更登記が出来るようになるのは「基礎工事が完了した時点」だとご説明しましたが、宅地として建物が完成した後に、建物表題登記と同時に地目変更を行うと言うスタイルが一般的に実施されているタイミングです。

2.農地転用の流れ

農地とは田んぼや畑や果樹園などのいわゆる「耕作地」のことです。なお、住宅についている家庭菜園のような土地は農地とは呼びません。農地は、登記簿謄本で登記されている「地目」においても、田または畑としっかりと登記されています。地目が「田」や「畑」として登記されている場合は、農地法の適用を受けるため、自分で勝手にその土地を誰かに売ったり譲渡したりすることは出来ません。

また、自分で勝手に地目を農地から宅地などに変更して使用することや売却・譲渡することも出来ません。対象となる土地を売却や譲渡、地目変更するなど、農地を転用する場合は、あらかじめ農地法に基づいた手続きを取ることになります。

例えば、年老いた親世代が農地での耕作が出来なくなり、駐車場にしたり、太陽光発電で活用したり、農地を埋め立てて子どものための住宅を建てたりしたいなど思う人たちも多いです。

このいずれのケースでも、農地から何かしらに地目を変更する場合は、事前に農地法に基づいた手続きを取らねばなりません。

◆農地法の手続きについて

農地法の手続きの流れとしては、「農地転用届」もしくは「農地転用許可」を取ることになります。それから、農地法4条もしくは農地法5条に基づいた手続きを取っていくことになります。

ただし、対象となる農地が市街化区域、または市街化調整区域であるかによって、農地転用届になるか、農地転用許可が必要なのかなど、準備する段取りが違ってきます。

  • 対象となる農地が市街化区域にある…農地転用届
  • 対象となる農地が市街化調整区域にある…農地転用許可

対象となる農地が市街化区域にある場合は、管轄の市区町村にある農業委員会へ出向き、「農地転用届」を発行してもらいます。

対象となる農地が市街化調整区域にある場合は、基本的にはその農地を農地以外へ転用することは禁止されていますので、管轄の都道府県知事から農地転用許可を取らなければならなくなります。

3.地目変更登記の流れ

次に、地目変更登記の流れについてご説明します。

地目変更の申請をするには、あらかじめ法務局で資料の調査、現地の状態を調べておき、対象となる土地が地目の変更が可能なのかどうかを判断しておく必要があります。法務局では、土地の登記内容や資料の調査を行い、不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)を取っておく必要があります。地目変更手続きのためには、発行手数料の安い登記事項要約書でも構いません。それに加えて、対象となる農地の「地積測量図」があれば、そちらも取得しておきましょう。

例えば、地目が宅地以外の土地を「宅地」に変更したい時、登記申請書には、対象となる農地全体の面積の小数点以下の数値までの記載が必要になります。法務局で調査した際に、土地の地積測量図が無ければ仕方ないのですが、一旦尋ねてみましょう。

そして、並行して対象となる農地が、どういった利用目的で、主にどのように利用されているのかについて現況把握をしておきましょう。対象となる農地の地目から、現在どのような状況にあるのかと言うことをトータルで判断して、地目変更登記の申請書類を作っていくことになります。

◆書類の提出について

完成した地目変更登記申請書類は、法務局に直接いくか、郵送で対応可能です。対象となる農地がある管轄の法務局に出向いて、申請窓口に提出します。印鑑も忘れないようにしましょう。何も問題や訂正などがなければ、約1週間前後すると登記が完了します。郵送で申請する際は、必要書類をコピーした後で、登記申請書を一番上にし、その次に案内図、農地転用許可証などを最後にして、全ての書類を重ねてホッチキスで綴じます。

それ以外の証明書類はホッチキスで止めずに、原本に付箋紙で「原本還付」と書いて同封します。プラス、封筒の表に自分の宛名と「不動産登記申請書在中」と記載した返信用封筒に、必要な金額の切手を貼って同封したものを全てまとめて郵送します。郵送する場合は郵便事情も加わるため、何日か余分に時間がかかることと、書類に不備があった場合はさらに何往復かの日数がかかってしまうため、郵送で書類を提出する際には書類に不備がないかをしっかり確認しておきましょう。

また、郵送する場合は必ず書留郵便で送りましょう。書類に不備や訂正など何も問題がなければ、登記の事務処理が終了し、法務局から登記済証が郵送されてきます。

手続きにかかる期間としては、1週間〜2週間みておくとよいでしょう。時期によってはもう少しかかる場合もあります。非農地証明書が発行された時期と重なってしまうと、法務局の窓口も大変混雑します。この時期に登記申請をする場合や、農地転用についての相談をしたい場合などは、日数に余裕を持って早めに予約をしておきましょう。

4.地目変更登記の必要書類

農地転用する際、「地目変更登記申請」に必要な書類は以下の通りです。

  • 地目変更登記申請書
  • 農地転用許可証などの農地関連書類

農地の地目変更登記の場合は、

  • 農地転用許可証や転用届受理の通知
  • 非農地通知書

を添付します。

なお、「非農地通知書」は、対象となる土地のある農業委員会から送られてきます。非農地通知書は、農業委員会の調査や議決によって決定されます。こちらから申請しなくても、農業委員会側が「対象となる土地は農地でない」と判断した場合は、非農地通知書は順次送られてきます。

  • 土地の案内図

地目を変更したい対象となる農地の場所が正確にわかるように、ZENRINなどの住宅地図を添付して提出します。

これらを全て、窓口もしくは郵送にて送付し、申請していきます。

5.まとめ

農地転用と地目変更のタイミングについてご説明しました。農地転用の手順や、地目を変更するタイミングなどは、農地の種類や転用する目的によっても変わってきます。手順はややこしいと感じるかもしれませんが、農地を転用することによって得られるメリットは、収益だけでなく管理面についてなど多々あります。

農地転用の手続きは時間を要することが多いですので、時間に余裕を持って手続きを進めていくようにしましょう。