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Category  不動産

2018年07月03日 更新

親子間で不動産を売買する時の注意点

親子間で不動産を売買する時の注意点。贈与を目的に売る場合、生前贈与の非課税枠、相続時精算課税、住宅取得資金贈与、夫婦間贈与の特例、110万円の基礎控除など。

親子間・親族間であっても、不動産を売買する場合には、大きな金額が動くために、かかる税金に注意する必要があります。夫婦間や親子間で不動産の名義を変更する方法には、「売買」「贈与」の2種類があり、売買は金銭授受による名義変更、贈与は金銭授受によらない名義変更だといえるでしょう。

売却の場合には売却した方に対して、出た利益に応じた譲渡所得税が、贈与の場合には贈与を受けた方に対して、金額に応じた累進課税制度で贈与税がかかります。死後相続により名義を変えるのが一般的だといえますが、生前から相続税対策などで名義を変更することもできます。

この記事では、贈与を目的に売る場合にかかる税金や生前贈与の非課税枠、さらに、親子間で売買する場合の注意点について、詳しく見ていきます。

1. 親子間で贈与を目的に売る場合

代理や認知症等で意思表示ができない場合と似ていますが、どちらも売却後のお金が親本人のものを前提にしているのに対し、こちらは最初から贈与を目的とした売却です。住んでいる家を贈与することは現実的ではないと考えられるので、主に土地の場合が想定されるでしょう。

親名義の土地を子に名義変更する場合、親から子への贈与とみなされます。贈与の対象が土地でもお金でも、贈与であることに変わりはないので、どちらが先でも大きな金額になると、高い税率で贈与税がかかります。贈与の手続きとしては、名義変更するだけなので、親子が法務局に出向いて(または司法書士などに依頼して)、必要な登記をすれば終了です。そして、贈与された側の子は、土地の価値に応じて贈与税を支払います。

ただし、贈与での名義変更は、登録免許税が2%(相続では0.4%)もかかります。しかも贈与税率は、相続税率よりもはるかに高く、相続が近い場合には税金の負担額を考えて、贈与にするか相続にするか決める必要があります。

相続税も贈与税も、課税額が大きくなるほど税率も高くなる累進課税制です。相続税が最高税率の55%になるのは6億円超であるのに対し、贈与税の場合は特別税率でも4,500万円超で最高税率の55%になります。一般的に、同じ金額なら、相続税よりも贈与税の方が、税率が高くなります。

2. 生前贈与の非課税枠

生前贈与の非課税枠には、以下の4つのものがあります。

  1. 相続時精算課税の特例による非課税枠 2500万円
  2. 住宅取得資金贈与の特例による非課税枠 最大1200万円
    ※相続時精算課税制度と一緒に利用すれば最大3700万円
  3. 夫婦間贈与の特例による非課税枠 2000万円
  4. 110万円の基礎控除による非課税枠 110万円(毎年)

2-1. 生前贈与各制度の詳細

それでは次に各制度についてどのような違いがあるのか詳しく見ていきます。

2-1-1.相続時精算課税の特例による非課税枠 2500万円

親から贈与された住宅取得資金については、親の年齢に関係なく相続時精算課税制度の適用を受けることができます。この制度を選択した住宅取得等資金は、親の相続時に相続財産に加算して相続税を計算し、この制度で既に払った贈与税があればそれを差し引くことができます。

2-1-2. 相続時精算課税の特例制度の主な内容

  1. 適用対象となる贈与者は親、受贈者は20歳以上の推定相続人。
  2. 受贈者である兄弟姉妹がそれぞれ、贈与者である父母ごとに選択。
  3. 贈与の翌年2月1日より3月15日までに所轄税務署長にその旨、上記の選択を贈与税の申告書に添付して行う。
  4. 一定の家屋を取得する資金または一定の増改築資金の贈与であること。
  5. 一定の家屋とは新築または築後経過年数20年以内(耐火建築は25年以内)であること。 家屋の床面積50㎡以上などの条件を満たすもの。
  6. 住宅取得資金2,500万円までは課税されず、2,500万円を超えた場合は一律20%の税率で課税される。
  7. 本制度を適用した場合は110万円の控除は併用できない。
  8. 本制度の贈与者(親)以外からの贈与財産には110万円の基礎控除額を控除し、通常の贈与税率を乗じて計算する。
  9. 本制度を選択した受贈者(子)は贈与者(親)の相続時に、贈与財産と相続財産を合算して現行の相続税の課税方式で計算した相続税額から、既に払ったこの制度の贈与税を控除する。 控除しきれない贈与税は還付する。
  10. 相続税の課税価格に合算する贈与財産の価格は贈与時の時価とする。

2-1-3.  相続時精算課税の特例制度の適用手続き

相続時精算課税選択の特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、相続時精算課税選択の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に、相続時精算課税選択届出書、登記事項証明書など一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。

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2-2.住宅取得資金贈与の特例による非課税枠 最大1200万円

2016年8月24日に「消費税率引き上げ時期の変更に伴う税制上の措置」が閣議決定されたことを受けて、当非課税措置の適用期限が2年半延長されました。この特例の非課税枠は段階的に限度額が設定されています。

2015(平成27)年1月から12月末までは1,500万円に限度額が引き上げられましたが、その翌年2016(平成28年)年の1月から2019(平成31)年3月末までは、消費税増税前の駆け込み需要が見込まれるため1,200万円にいったん引き下げ、同年4月から翌年3月末までは増税の反動減対策として、過去最大規模の3,000万円に引き上げられます。

2-2-1. 住宅取得資金贈与の特例の対象となるための要件

  1. 贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(贈与者は受贈者の直系尊属)であること。
    (注) 配偶者の父母(又は祖父母)は直系尊属には該当しませんが、養子縁組をしている場合は直系尊属に該当します。
  2. 贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上であること。
  3. 贈与を受けた年の年分の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下であること。
  4. 平成21年分から平成26年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと(一定の場合を除く)。
  5. 自己の配偶者、親族などの一定の特別の関係がある人から住宅用の家屋の取得をしたものではないこと、又はこれらの方との請負契約等により新築若しくは増改築等をしたものではないこと。
  6. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること。
    (注) 受贈者が「住宅用の家屋」を所有する(共有持分を有する場合も含む)ことにならない場合は、この特例の適用を受けることはできません。
  7. 贈与を受けた時に日本国内に住所を有していること(平成29年4月1日以後に住宅取得資金の贈与を受けた場合には、受贈者が一時居住者であり、かつ、贈与者が一時居住贈与者又は非居住贈与者である場合を除く)。贈与を受けた時に日本国内に住所を有しない人であっても、一定の場合には、この特例の適用を受けることができます。
    (注) 「一時居住者」、「一時居住贈与者」及び「非居住贈与者」については、国税庁ホームページの「受贈者が外国に居住しているとき」を参照してください。(国税庁ホームページ「受贈者が外国に居住しているとき」)
  8. 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること又は同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること。
    (注) 贈与を受けた年の翌年12月31日までにその家屋に居住していないときは、この特例の適用を受けることはできませんので、修正申告が必要となります。

2-2-2. 住宅取得資金贈与の適用手続き

非課税の特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に戸籍の謄本、登記事項証明書、新築や取得の契約書の写しなど一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。

[aside type=”warning”]社会保障・税番号制度〈マイナンバー制度〉が導入されたことに伴い、個人番号を記載した各種申告書、申請書、届出書等を提出する際には、個人番号カード等の一定の本人確認書類の提示又は写しの添付が必要になります。[/aside]

2-3.夫婦間贈与の特例による非課税枠 2000万円

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。

2-3-1. 夫婦間贈与の特例の対象となるための要件

  1. 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
  2. 配偶者から贈与された財産が、自分が住むための国内の居住用不動産であること又は居住用不動産を取得するための金銭であること
  3. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産又は贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること
    (注) 配偶者控除は同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができません。

2-3-2.  夫婦間贈与の適用手続き

次の書類を添付して、贈与税の申告をすることが必要です。

  1. 財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍謄本又は抄本
  2. 財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の附票の写し
  3. 居住用不動産の登記事項証明書その他の書類で贈与を受けた人がその居住用不動産を取得したことを証するもの

上記の書類のほかに、金銭ではなく居住用不動産の贈与を受けた場合は、その居住用不動産を評価するための書類(固定資産評価証明書など)が必要となります。

2-4.110万円の基礎控除による非課税枠 110万円(毎年)

贈与税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。したがって、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません(この場合贈与税の申告は不要)。

3. 相続時精算課税制度

65歳以上の親から20歳以上の子供へ、2500万円までの贈与を非課税にすることができる制度です。贈与するものは現金、不動産など何でも良いのですが、65歳以上の親からの贈与でなければなりません。2500万円を超える部分の贈与は、一律20%の贈与税がかかります。

注意点として、110万円の基礎控除による贈与と一緒に利用できないことが挙げられます。さらに、6000万円以上の財産を相続した場合、贈与した財産と相続財産を合計して相続税が課税されます。

4. 不動産を贈与してから売る場合の税金

贈与前に売って現金で子に渡すのと、子の名義にしてから子が売却するのと、どちらが得になるのでしょうか。実際に支払う税金はケースバイケースになってしまうので、一概にどちらが得ということはできません。不動産を贈与してから売る場合の税金は、以下のようになります。

4-1. 登録免許税

登録免許税は不動産、船舶、航空機、会社、人の資格などについての登記や登録、特許、免許、許可、認可、認定、指定及び技能証明について課税されるものです。不動産の所有権の移転登記では不動産の価額に一定の税率を乗じることになっています。親から子への名義変更で登録免許税をどちらかが負担します。

4-2. 贈与税

子(贈与を受けた側)が土地の価値に応じた贈与税を負担する必要があります。

4-3. 贈与後に売却して利益がでれば譲渡所得税

譲渡所得とは、一般的に、土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得をいいます。譲渡所得税の金額は、課税譲渡所得金額に一定の税率をかけて計算します。

課税譲渡所得金額は、次のように計算します。

収入金額 - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除額 = 課税譲渡所得金額

子が土地の売却で利益を得れば譲渡所得税(所得税+住民税)を負担しなければなりません。

5. 売ってから現金を贈与する場合の税金

一方、売ってから現金を贈与する場合の税金は、以下のようになります。

5-1. 親が土地の売却で利益がでれば譲渡所得税を払う

親が土地の売却で利益を得れば譲渡所得税(所得税+住民税)を負担することになります。

5-2. 子が贈与金額に応じた贈与税を払う

子が贈与金額に応じた贈与税を負担する必要があります。

6. 親子で不動産を売買する場合

親や親族の名義になっている不動産を自分の名義(またはその逆)にしようとする場合、親子間や親族間で不動産の「売買」を行うことが一般的です。

6-1. 不動産を相場よりも安くすると贈与税の対象になる

親族間の不動産売買でまず注意すべきなのが、「売買代金をいくらにするか」です。親族間といえども、著しく低い価額で不動産を売買した場合、後になって買主に多額の贈与税がかかることがあります。

その不動産の「時価」と支払った対価との差額に相当する金額が、不動産を売った人から贈与により買主が取得したものとみなされてしまうためです。

逆に、売主が不動産を取得したときの費用+譲渡費用よりも売買代金の金額の方が大きく、不動産の譲渡により売主に所得が発生する場合、売主に譲渡所得税が課税されます。

もっとも、この不動産の「時価」については、明確にいくらと決まっているものではありません。複数の公的な評価指標のほか、不動産の取得の経緯や売買当事者の事情、敷地の形状、周辺の売買事例など、個別の事情を総合的に勘案して決まる流動的なものになります。

7. 親子間で不動産を売買する時の注意点まとめ

この記事では、贈与を目的に売る場合にかかる税金や生前贈与の非課税枠、さらに、親子間で売買する場合の注意点について、詳しく見てきました。生前贈与の非課税枠を利用するためには、自分のケースが特例の対象となるかどうかをよく確認し、不明確な点があれば税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

さらに、親子間や夫婦間など、親族間での不動産の売買にも税金がかかるので、親族間での売買で相場よりも安く売るなどすると贈与税の対象になる可能性があることにも気をつけましょう。