事例紹介
Category 不動産
2018年07月03日 更新
公示地価とは?価格の意味と地価公示とのちがい
新聞やテレビのニュースなどで、公示地価という言葉を毎年よく耳にします。公示地価とは、国土交通省が毎年発表する土地の適正価格のことです。
新聞やニュースなどでは、前年の公示地価と比較することにより日本経済や全国的な土地価格の傾向を判断するのに利用されています。
こちらでは、公示地価の詳しい内容や利用される場面について詳しく説明致します。
この記事でわかること
1. 公示地価とは
公示地価とは、国土交通省が地価公示法に基づいて公示(公表)する、全国に定めた標準地の毎年11月11日時点での地価のことです。
標準地とは、国土交通省が全国から選んだ標準的だと判断できる土地のことで、約25,00025,000か所あります。この公示地価は、標準地の「正当な価格」として参考にされ、さまざまな場面で活用されているのです。
・まずここでは、公示地価の標準地はどのように選ばれているのか?
・よく聞く「公示地価」と「地価公示」は、どうちがうのか?
・公示地価の「正当な価格」とはどういう意味なのか?
これら33つについて詳しく説明します。
1-1. 標準地は全国約25,000か所
先ほど説明したとおり、公示地価の標準地は国土交通省、さらに詳しく説明すると、その中に設置されている土地鑑定委員会が選んでいます。
ちなみに、平成28年28年は25,27025,270地点の標準地の価格が决決められました。とはいえ、標準地は毎年一から決められているわけではありません。毎年ほぼ同じ地点が標準地として選ばれています。
また、標準地は法律で決められた「公示区域」から選ばれます。この公示区域は、以下のように定義されています。
・都市計画区域
・その他の土地取引が相当程度見込まれる区域
標準地として選ばれる土地は、上記22つの条件を満たしている必要があります。ですから、都市計画区域に指定されておらず、さらに土地取引がほとんど行われてない地方や山間部の土地は、標準地に選ばれることはまずありません。
この公示区域内で、利用状況や交通の便などの環境、地積や形状から見て標準的だと判断できる土地が、標準地として選ばれているのです。
先ほども説明したとおり、標準地は1度決められると、基本的に毎年標準地として扱われます。しかし、その土地の環境などが大きく変わり、標準的な土地とは言えなくなった場合には、標準地から選ばれなくなります。
このように、標準地は国土交通省に設置された土地鑑定委員会が、公示区域内の標準的だと判断できる土地から選んでいます。
1-2. 公示地価と地価公示とのちがい
上記で説明したとおり、公示地価とは国土交通省が公示する標準地の価格のことを指します。そしてこの公示地価とよく似た言葉として、「地価公示」というものがあります。
地価公示とは、国土交通省が地価を発表するという行為のことを指す言葉です。そのため、ニュースなどでは「公示地価が公示されました」や「地価公示されました」という表現が使われます。
このように、公示地価と地価公示は、それぞれ別の意味を持った言葉です。
どちらかの表現が間違っているというわけではありません。そのため、使い方に注意しましょう。
1-3. 公示地価は土地の「正当な価格」
先ほど、公示地価は国土交通省内の土地鑑定委員会が決めた土地の正当な価格だと説明しました。
この「正当な価格」の意味について説明します。
1-3-1. 土地の取引価格は個人的な事情が含まれる
正当な価格とは、客観的にみて妥当な価格のことです。もう少しくわしく説明すると、土地の価格とは売り手と買い手の合意により決まるものです。
そのため、売り手と買い手の個人的な事情によって価格が上下することも珍しくありません。
たとえば、売り手が早く現金を手に入れたいため土地を安くしたり、逆に買い手がどうしてもその土地が欲しいため高く買ったりすることもあります。ほかにも親族や親しい友人同士の取引であっても、価格が大きく上下することが考えられます。
しかし、このような売り手や買い手、場合によっては両者の個人的な事情が絡んだ土地の取引価格は、「客観的にみて妥当」とは言えません。
そこで公示地価は、このような売り手や買い手の個人的な事情を排除した価格として発表しているのです。そのため、公示地価は「正当な価格」なのです。
1-3-2. 公示地価は2人の不動産鑑定士が鑑定する
ここまで、公示地価の「正当な価格」の意味について詳しく説明しました。
国土交通省の土地鑑定委員会では、標準地の正当な価格を表示するため、222人の不動産鑑定士に鑑定評価を求めています。もし鑑定評価を行う不動産鑑定士が1人だとであれば、その不動産鑑定士の私見が含まれたり鑑定に誤りがあったりすることが考えられます。
その私見や誤りに基いて公示地価が決められると、公示地価の信頼性が大きく下がってしまいます。
そのため、公示地価の決定には222人の不動産鑑定士の鑑定評価を土地鑑定委員会がさらに精査することにより、標準地の地価を決めています。
以上のとおり、公示地価は標準地の正当な価格を、国土交通省の土地鑑定委員会が精査して決めています。
この正当な価格とは、土地取引における売り手や買い手の事情を一切排除した、客観的に妥当だと判断できる価格のことです。
2. 公示地価が利用される場面
ここまで、公示地価は標準地の正当な価格だと説明しました。
そのため、公示地価は土地に関するさまざまなことで参考にされています。具体的には日本経済の動向の把握や個人での土地売買や、公共事業による用地取得、相続税や固定資産税で活用されています。
以下では、公示地価が利用されているこれら344つの場面について詳しく説明します。
2-1. 日本経済の動向の把握
公示地価が利用される1つ目の場面は、日本経済の動向の把握です。
多くの方にとって公示地価という言葉をもっともよく耳にするのは、毎年33月に新聞やニュースで公示地価が公示されたときでしょう。
公示地価の標準地は、毎年ほぼ同じ地点となっています。そのため、同じ土地の前年とその年の公示地価を比較することにより、日本全体として見たときに土地の価格がどれだけ上下したかを知ることができるのです。
この公示地価が前年よりも上昇していれば、土地売買が活発になったと推測することができ、11年間で景気が上向いたと判断することができます。
また逆に公示地価が前年よりも下落すれば、土地売買は衰退したと推測することができます。この場合は、景気がやや下向いていると判断できます。
日本経済の動向は土地の価格だけで判断できるものではありません。しかし、公示地価は経済の動向を判断する重要な指標の1つとなっており、毎年いろいろな業界や分野で注目されています。
このように、公示地価は日本経済の動向を知るために利用されています。
2-2. 個人での土地売買
公示地価が利用される12つ目の場面は、個人での土地売買です。土地の売買価格は、売り手と買い手の両者が合意すればいくらでも構いません。しかし、目安となる価格は把握したいものです。
土地売買では不動産会社が提示する価格を参考にするのが一般的ですが、それに加えて売買を考えている土地に近い標準地の公示地価を知ることにより、その土地の適正な売買価格を推測することができます。
結果として、不当に高いまたは安い価格で土地売買を行わずに済みます。
2-3. 公共事業による用地取得
公示地価が利用される23つ目の場面は、公共事業による用地取得です。
国や自治体が道路や公園、公共施設などを建設するための用地を取得するとき、土地所有者に補償が行われます。この補償の金額は、公示地価を基に算出されるのです。
このとき、国や自治体と土地所有者との間で交渉が行われますが、公共事業の用地取得では個人での土地売買ほど価格が上下することはありません。それは、公共事業であるという性質上、客観的に妥当な金額がある必要があるからです。
上記で、公示価格は客観的に妥当である「正当な価格」だと説明しました。そのため、公共事業の補償金額の基準とするのに適しています。
2-4. 相続税や固定資産税の算出
公示地価が利用される34つ目の場面は、相続税や固定資産税の算出です。土地を相続したり、所有していたりするときに発生するこれらの税金は、一律ではありません。土地の価値に応じて税額が変わるしくみなのです。
そのため、相続税や固定資産税を決めるためには、その土地の価格が明確で、さらに公平でなければなりません。そこで、公示地価を参考に税額の基となる土地の価格を算出するのです。
ただ、冒頭でも説明したとおり、公示地価は全国約25,000地点の標準地の価格しか決めていません。そのため、都道府県が公示地価を参考に基準地価を決め、市町村が基準地価を参考に固定資産税評価額を決めています。なお、都道府県が決める基準地価については、後で詳しく説明します。
このように、相続税や固定資産税の算出のために、公示地価が利用されています。
以上のとおり、公示地価は日本経済の動向の把握や個人での土地売買や、公共事業による用地取得、相続税や固定資産税の算出と、幅広く活用されています。
3. 公示地価は誰でも知ることができる
ここまで、公示地価が決められる流れ、そして利用されている場面について、詳しく説明しました。公示地価は国土交通省が公示、つまり公表しているものなので、誰でも簡単に知ることができます。
たとえば、国土交通省の公式ホームページでは、全国の標準地と基準値の地価を過去のものも含めて手軽に調べることができます。
上記のホームページを利用すれば、誰でも無料で簡単に全国の公示地価を知ることができます。
4. 公示地価を基に基準地価が公表される
先ほど、公示地価が相続税や固定資産税の算出に利用されているという説明の中で、都道府県が公示地価を参考に基準地価を決めていると説明しました。この基準地価についても説明しておきます。
基準地価とは、都道府県が選んだ基準地の毎年7月1日現在の地価を、9月頃に公表する地価のことです。基準地は利用状況や環境などからみて、一般的と判断できる土地から都道府県が選びます。
この基準地は全国で約22,00022,000地点あります。また、基準地価における基準地は、公示地価の標準地と同じ考え方です。
この基準地は、公示地価の標準地となっていない土地が多く選ばれていることから、公示地価と基準地価を合わせて参考にすることにより、全国の広い範囲の正当な価格を知ることができます。なお、基準地と標準地が重複している土地もありますが、矛盾がないよう地価の調整が図られています。
このように、公示地価とは別に都道府県が基準地価を決めています。基準地価も都道府県という公的な機関が公表している地価であることから、公示地価と並んで土地売買や用地取得、税額の算出に利用されます。
5. まとめ
こちらでは、公示地価の詳しい内容や利用される場面について詳しく説明致しました。
公示地価とは、国土交通省が公示地価法に基づいて公示(発表)する、全国約25,00025,000地点の正当な価格のことです。
この公示地価は、基本的に毎年同じ標準地の価格が公示されるため、同じ地点の地価を前年と比較することにより、地価や景気の動向を判断する材料の11つとしても活用されています。
公示地価が利用される主な場面は、個人での土地売買をはじめ公共事業による用地取得、相続税や固定資産税の算出と多岐にわたります。なお、公示地価とは別に、地価公示という言葉もあります。
非常によく似た言葉ですが、公示地価は国土交通省が公示した土地の価格そのものを指すのに対し、地価公示は国土交通省が地価を公示する行為を指します。この22つの言葉を間違って使わないよう注意しましょう。
また、公示地価の標準地とは別に、都道府県が基準地を選んで地価を決める基準地価というものもあります。この基準地価は都道府県という公的機関が発表している信頼性の高い指標として、公示地価とならんで地価を参考にする際に利用されます。
公示地価と基準地価は誰でも無料で簡単に知ることができるため、土地の売買や相続を行う前には、前もって把握しておくことをお勧めします。