事例紹介

Category  不動産

2018年07月03日 更新

リロケーションのメリットとデメリットと注意点

2000年の法改正により、活発化してきたリロケーションは、転勤などで一時的に家を開ける際に、その期間だけ賃貸として出すサービスのことを言います。家を空けている間の管理が不要となるだけでなく、収入を得ることもでき、最終的には再び自宅として住むことができます。

うまく活用すればとても便利なサービスと言えるでしょう。借主にとっても、賃料を安く抑えることができるなどのメリットがあり、今注目されている市場の一つです。

一方、賃貸期間が限られているということから契約をするにあたっては注意するべきポイントもいくつかあります。ここでは、リロケーションのメリット、デメリットや注意点について考えていきます。

1. リロケーションとは?

リロケーションとは、一時的に家を自分で管理ができなくなった際に、その期間だけ業者に委託して他人に家を貸し出すサービスのことを指します。マイホームなど手放したくない家を、転勤などの理由でどうしても一定期間に空けなくてはならなくなった場合に有効な手立てです。

空き家にしていても住宅ローンや税金の支払いが必要な上、転勤先でもお金はかかります。リロケーションを利用すれば、留守中に家賃収入を得ることができ、負担を減らすことができます。

また、賃貸の契約期間が過ぎれば、家を返してもらうことができるので、再び住むことが可能となります。

2. リロケーションが始まった背景

リロケーションを実施する際に借主と貸主の間で結ぶのが賃貸借契約です。その根拠となる借地借家法では、一定期間だけ家を貸すということに対応していませんでした。正当な理由がないと貸主から借主に退去を求めることができなかったのです。

しかし、2000年に施行された定期借家法により、期間を限定して貸すことが可能となりました。こうしたことから、不動産賃貸会社がリロケーションを手がけるようになり、専門とする企業も登場するなど、リロケーション市場が拡大してきています。

3. リロケーションの利用者

リロケーションの物件は賃貸借期間が限定されるなどの特性上、一般の賃貸物件に比べて利用する際の制約が多くなってしまいます。そのため、リロケーションの利用者は限られる傾向にあります。リロケーションを利用するのはどのような方々が多いのでしょうか。貸主、借主それぞれについてみていきます。

3-1. リロケーションの貸主

リロケーションの貸主は基本的に、マイホームなどの手放したくない家を所有しているが、転勤や長期的な出張、家族の介護などの理由で、一定の期間、家を空けなければならない方です。家を自分で管理できる地域よりも遠く離れる際には、家を賃貸に出すためにリロケーションを扱っている業者に委託する必要があります。

3-2. リロケーションの借主

リロケーションの借主は、自分の思うような物件を探しているがまだ見つかっていない方やマイホームを購入するために貯金をしている方などがいらっしゃいます。住む地域は決まっているが、まだ家を買うまではいかないという方にとって、比較的安く借りられるリロケーションは便利なサービスと言えるのかもしれません。

4. リロケーションを利用する期間

定期借家契約に法的な期間の定めはありません。そのため、借主と合意した期間であれば自由に設定することができます。ただし、あまりに短い期間では借主も引越し等の負担が大きくなってしまうことや他の賃貸物件との競合もありますので、契約期間は短くても半年、複数年とすることが多いようです。

とはいえ、短い期間の定期借家契約でも、再契約すれば更新をすることができます。短期契約を繰り返せば、戻ってくる時期がずれてしまったときのリスクに対応することもできます。ただし、再契約には、借主の同意が必要となります。

5. 貸主から見たリロケーションのメリット・デメリット

転勤などの理由でしばらく家を空ける必要が出てきた際に、家を手放さず残しておくための対応について考えてみましょう。代表的なものでは以下の3つが挙げられると思います。

  • 空き家のまま維持しておく。
  • リロケーションで賃貸物件として出す。
  • 普通借家契約で賃貸物件として出す。

空き家のままにしておいても税金がかかってしまいますし、空き巣などの被害に遭う可能性もあります。また、普通借家契約では、貸主から借主の退去を求めることはできません。一方で、リロケーションを利用するには手数料が高くなってしまうなどのデメリットもあります。

それぞれの場合について比較することで、リロケーションを利用するメリット、デメリットについて考えていきます。

5-1. 空き家のまま維持する場合と賃貸物件として出す場合のメリット・デメリット

まずは、家をしばらく開ける必要がある場合に、空き家として置いておくか、賃貸物件として市場に出すかについて検討します。

5-1-1. 賃貸物件として出すメリット

空き家となっていても、固定資産税など税金がかかってしまいます。また、住宅ローンが残っている場合は返済もしなくてはなりません。賃貸物件として、出すことで家賃収入を得ることができ、それらを補うことが可能となります。

また、長期間空き家のままにしておくと、空き巣に入られる可能性があります。賃貸物件として出すことで、人が管理されることになりますので、防犯対策にもなるのです。

維持管理の点でも同様です。長期間使用されないと、カビが発生するなどして、建物の劣化の原因にもなります。借主や業者によって維持管理されることで、劣化を防ぐことにも繋がります。

5-1-2. 賃貸物件として出すデメリット

一度賃貸物件として契約を結んでしまうと、後から契約期間の変更をすることはできません。もちろん契約期間が過ぎれば家に戻ることは可能となりますが、予定を変更して早く家を明け渡してもらうことは難しいと考える方が良いでしょう。

賃貸物件として出す場合のデメリットとしては、他人が使用するため家が傷付くおそれがあることが挙げられます。借主の審査は厳しめにしている企業が多いとはいえ、他人に貸し出す以上、多少の損傷は覚悟しておくべきでしょう。

また、賃貸物件として貸し出す際には、ハウスクリーニングなどの手間がかかる場合もあります。入居者を確保するためには、ある程度の手入れは必要となります。

住宅ローンは原則として自分が住んでいることが条件になっています。ですので、まだ返済が終了していないのに他人に貸していることが銀行に発覚した場合、一括返済を求められる可能性があります。その際は金利の高い事業用のローンなどに借り換えをすることになります。

5-2. 普通借家契約として出す場合とリロケーションとして出す場合のメリット・デメリット

次に、一般的な賃貸経営で用いられる普通借家契約として市場に出す場合とリロケーションとして出す場合を比較してメリット、デメリットを考えていきます。

5-2-1. リロケーションとして出すメリット

普通借家契約では、正当な理由がない限り貸主から借主に退去を求めることができません。しかし、リロケーションを利用すれば、賃貸期間が決まっているために期間終了後に自宅に戻ることができます。リロケーションの際に結ぶ定期借家契約は、貸主と借主双方の合意がなければ再契約ができないからです。

また、直接契約を結ぶのは業者との間ですので、修繕などの付帯サービスが充実している場合がほとんどです。また、借主とのトラブルも業者が対応しますので、家のことを気にかける必要がありません。

5-2-2. リロケーションとして出すデメリット

期間限定で貸し出すことになるため、リロケーションは、通常の賃貸物件よりも賃料を安く設定する必要があります。多くの場合、2割から3割ほど安く設定されているようです。

その上、管理を委託した場合にかかる手数料は、安くて家賃の3%、大抵は5%から10%程度とされています。しかし、リロケーションの場合は、手数料が10%から15%程度かかってしまいます。

これは、リロケーションは期間限定の物件であるため、長期的に収益を確保することが難しいことや滞納保証、修理費用などもかかるためです。

6. 借主の立場から見たリロケーションのメリット・デメリット

リロケーションの物件は、賃貸するにあたって借主にとってもメリットが大きく、便利なサービスと言えます。しかし、一般的な賃貸と比べて、制約が多い点もあります。注意点を踏まえた上で、うまく利用する必要があります。ここでは借主の立場から、リロケーションの物件を借りるメリット、デメリットについて考えていきます。

6-1. 借主のメリット

リロケーションの物件では、ほとんどの場合において家賃が相場よりも安くなります。これは、一定期間で契約が終了するなど借主にとって不便な制約がある代わりに、賃料が抑えられているからです。

また、リロケーションはマイホームなどの家が対象となるために、一戸建てや家族で住むのに適したマンションなどの物件が多いのも特徴です。室内の設備も充実していることが多く、場合によっては最新の設備を利用することができます。

つまり、安い賃料でグレードの高い物件に住むことができるということが、リロケーションの物件の最大の魅力となります。

6-2. 借主のデメリット

リロケーションの物件は、契約期間の延長はできません。再契約には借主と貸主の双方の合意が必要となります。再契約ができない場合は、契約期間が過ぎれば明け渡さなければなりません。

中途解約も基本的にはできません。床面積が200平方メートル未満のとき、転勤など家を離れる必要のある事情があり、一ヶ月以上前に告知をした場合にのみ例外的に解約が可能となる場合があります。

また、入居審査や入居条件が厳しいのもデメリットとしてあげられるでしょう。リロケーションの物件は、一時的に貸しているのであって、いずれは貸主が自分で使用するつもりである場合がほとんどです。ですので、なるべくトラブルなく綺麗な状態で返して欲しいと考えているために、審査が厳しくなる傾向にあります。物件によっては、禁煙やペット不可などの条件がつく場合もあるでしょう。

7. リロケーションの依頼先を選ぶ際の注意点

最近は、いくらの家賃でその物件を貸し出すか、インターネット上で複数業者を一括で見積もってくれるサイトもあります。しかし、業者選びは、貸し出す家賃だけで決めてはいけません。また、会社の規模や物件数などで判断するのも避けた方が良いでしょう。

リロケーションは特殊な賃貸運営です。借り手が限定されてしまうために、業者の経験やノウハウは重要となります。業者選びの際は、担当者の話をきいて、迅速かつ丁寧な対応してくれる業者を選ぶと良いでしょう。インターネット上などで業者の評判を確認するのも方法の一つです。自分の家をどの業者なら安心して委託することができるのか、慎重に見極めることが大切です。

8. リロケーションの形態

リロケーションの形態としては以下の3つがあります。

  • 家の持ち主と入居希望者が直接賃貸契約をし、リロケーション業者がその仲介を行う。
  • リロケーション業者が家の持ち主の代理人として入居希望者と賃貸契約をする。
  • 家の持ち主からリロケーション業者が賃借し、入居希望者と賃貸契約をする。

家の持ち主が入居希望者と直接契約をすれば、どんな人が使用するのか確かめることができ、安心と言えます。一方、移転先が遠方のため、自分で審査や契約を行う場合が難しい場合は、リロケーション会社が代理して審査・契約をする形態もよく使われます。

リロケーション業者と賃貸借契約を結び、借り受けたリロケーション業者が入居希望者と賃貸契約する形態は、サブリース型とも呼ばれます。サブリース型では、入居希望者を家の持ち主が判断することはありませんが、リロケーション業者が家賃保証をしてくれる場合も多く、より手厚い保証を期待できるでしょう。

9. まとめ

法改正により、たくさんの業者が提供を始めているリロケーションですが、まだ、そこまで一般の人々の間で浸透はしていないようですが、徐々に活発になってきている市場です。空き家対策にも繋がると言われていて、今後ますます注目を浴びるかもしれません。

リロケーションを利用する際は、自分の大切な財産である家を安心して任せられる業者かどうかを見極める必要があります。賃貸契約も特殊であるため、信頼のおける業者に相談し、しっかりと内容を把握した上で契約を結ぶと良いでしょう。

また、期間限定で貸し出しが出来る分、家賃は安く抑える必要がありますし、手数料も高くなってしまう傾向にあります。自分で家を管理ができない期間に、代わりに管理してもらえる上に、多少の収入を得ることが出来る程度に考えておくのが良いかもしれません。