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Category  不動産

2018年07月03日 更新

離婚しても住宅ローンが残った家にそのまま住みたい時の対応法

離婚した場合、住宅ローンが残った家にそのまま住むには、様々な手続きが必要です。連帯債務者として2人でローンを払っている場合や、配偶者が連帯保証人となっている場合等、状況により必要な手続きが違ってきます。また、財産分与についても考えなくてはいけません。

そこで今回は、それぞれどのような手続きが必要なのか、また、家のローンを養育費として払ってもらう場合のリスクや財産分与の考え方はどのようなものなのか等についてお伝えします。

 

1. 住宅の所有者と住宅ローンの名義人は同じでないとならない

まず、ローンを組んで購入した住宅(不動産)には、「住宅ローン名義人」と「所有名義人」が設定されます。住宅ローン名義人とは、ローンを申し込んだ(契約した)当事者のことです。債務者とも言います。

家計を主に負担している1人がローン名義人であったり、共働きの場合は夫婦でローン名義人(=連帯債務者)であったりします。「所有名義人」とは、対象となる住宅(不動産)の登記簿に記載してある名義人です。

住宅ローンは、「債務者(住宅ローン名義人)がその物件に住んでいることが条件」となっているため、「住宅ローン名義人が家を出て、ローンの支払いだけ続ける」というパターンには問題が出てくるのです。

では、実際にどのような問題が出てくるのかが気になってくるところです。2人でローンを払っている場合や、配偶者が連帯保証人になっている場合など、それぞれの場合の対処法をお伝えします。

2. 夫婦で住宅ローンを払っている場合(連帯債務者)

離婚となった際、2人でローンを払っている場合は、お互いが連帯債務者であるため、その責任を果たす必要があります。では、具体的にその支払義務や名義変更について、一体どのように対処すればよいのか、場合別に詳しくお伝えしていきます。

2-1. 連帯債務者とは

連帯債務者は、借りた人と全く同じ支払義務を負う立場にあります。債務者とはローン申込人のことを指しますので、夫婦の共有名義でローンを組んだ場合は、夫婦どちらとも連帯債務者となります。そのため、離婚をしても、その住宅に住んでいない場合でも、夫婦どちらもが支払義務を負い続けるということになります。

また、夫婦どちらかが支払えなくなったとしても、もう1人の支払義務が消えるわけではないので、ローン残高を払い続けなければなりません。つまり、複数人が連帯債務者となっている場合は、それぞれの連帯債務者が満額の返済義務を負っているということになります。

例えば、2,000万円のローンを夫婦2人で組んだ場合について考えてみます。妻が1,000万円分のローンを完済したとしても、ローン全体としては夫の1,000万円分が未返済となっているため、妻の債務はまだ消えていません。

債務はあくまでそのローン全額が完済されたときに初めてなくなるものですので、連帯債務者となった場合は、ローン全額が完済されるまで債務を負い続けることになります。

2-2. 住宅ローンの名義の変更は難しい

離婚後、ローンを払っている住宅から出ていく場合は、支払義務を解消するためにローン名義を変更したくなる、というケースもあります。しかし、住宅ローンはその住宅に住んでいることが条件となりますので、住宅から出ていく場合はローンの借り換えが必要となります。

さらに、2人でローンを払っている場合、住宅ローンの名義は、基本的に離婚を理由に変更することはできません。

なぜなら、夫婦共有名義のローンを組んでいる場合は、そのローンは金融機関が夫婦の合算収入に対して融資可能と判断し、ローン審査を通っているケースが多いからです。

つまり、この場合の住宅ローン名義変更は、2人のうち片方を外して単独名義に変更するということで、金融機関が審査を通した合算収入額に達しなくなるということです。それは債権者側からすると、「ローン残高の回収ができなくなる」ということに繋がるので、基本的に単独名義への変更を承諾できないのです。

2-3. 住宅ローンの名義変更の方法は

どうしても名義変更をしたいという場合、新しく名義人となる方の収入が金融機関に融資可能と判断されれば、変更できる可能性はあります。ただ、それは現実的には難しいところです。名義を変更するためには、他にもいくつか方法があります。

2-3-1. 住宅ローンを完済する

一番早く解決する方法は、ローンを完済してしまうことです。債務そのものがなくなれば、名義が誰であっても関係ありません。ローンの残年数や残高が少ない場合は、一括返済してしまうのが一番早く確実な方法です。

ただし、一括返済できる経済力がある場合はそもそもローンを組んでいないことが多いので、大抵の場合は、契約通り時間をかけて確実に完済する、ということになります。

しかし、突然の事故や病気、リストラなど、確実に完済できる保証はどこにもないので、双方が「突然のトラブルで完済が難しくなるかもしれない」というリスクを数十年抱えることになります。

2-3-2. 住宅ローンの借り換えをする

ローンそのものを借り換えることで、結果的に名義を変更するという方法もあります。共有名義で契約している住宅ローンの残高分を、単独名義で別のローンとして借り換えるのです。

借り換えができた場合、最初に共有名義で契約していた住宅ローンは完済となります。ただし、単独名義で払いきることができる経済力がなければ金融機関の審査に通りませんので、それ相応の経済力が必要です。

2-3-3. 住宅ローンの連帯債務を他の人に代わってもらう

離婚により夫婦のいずれかが連帯債務から外れたい場合は、代わりとなる連帯債務者を別に立てることで、変更可能になる場合があります。

しかし、自分の代わりに何十年も続くローンの連帯債務者になってくれる人を探すことは、かなり難しいと言えるでしょう。仮に代わってくれる人が見つかったとしても、その変更を認めるかどうかは年収や社会的地位等をもとに債権者である金融機関が判断することとなります。

3. 配偶者が住宅ローンの連帯保証人となっている場合

一方、配偶者が連帯債務者でなく、連帯保証人になっている場合もあります。その場合はどういった手続きが必要になるのか、また、連帯債務者との違いはどこにあるのかといった疑問について、以下で詳しくお伝えしていきます。

3-1. 連帯保証人とは

連帯保証人は連帯債務者とは違い、債務者と同じ責任を負うことにはなりますが、それは債務者が返済できなくなった時に限ります。債務者が返済できなくなった場合、債権者から連帯保証人に直接返済の請求が来ることになります。

例えば、別れた夫(債務者)がリストラ等で返済できなくなってしまった場合、妻(連帯保証人)に直接返済請求が来ることになります。なお、「夫に請求してください」主張する権利(催告の抗弁権)は妻(連帯保証人)にはありませんので、その場合、実質債務者と同じ債務(ローン返済)を負うことになります。

では、連帯保証を解除したい場合の手続きについてお伝えします。

3-2. 連帯保証人の解除には金融機関の承諾が必要

連帯保証の解除には、金融機関の承諾が必要です。ただし、連帯保証は通常、ローンが完済された時に解除されますので、離婚のみを理由に解除を申し出ても、承諾を得るのは難しいです。ですが、他にもいくつか連帯保証人から外れる方法があります。

3-3. 連帯保証人の代わりをたてる

連帯債務者の場合と同様に、連帯保証人から外れるには、他の人に連帯保証人を代わってもらう方法もあります。しかし連帯保証人も、普段は何の債務もないとはいえ、債務者が返済できなくなった場合は同じ債務を負うという、リスクの高いものです。

金融機関の審査を通るだけの一定以上の収入があり、かつ高いリスクを背負ってくれる人を探すのは、例え親しい親族であってもかなり難しいことです。普段の行いや信頼性に加え、熱心な説得をしても、なかなか可能性の高い方法とは言えません。

3-4. 住宅ローンを借り換える

夫婦合算のローン契約から、どちらか単独の収入でのローン契約として新たに借り換えることができれば、もう片方は連帯保証人になる必要はありません。

その為、 離婚前にローンを借り換えることで、連帯保証の責任自体が消滅することになります。ただし、こちらも連帯債務者の場合同様、ローンを借り換えることができるだけの収入が必要となります。

3-5. 住宅ローン残高相当分の固定資産を担保にする

連帯保証の代わりに、住宅ローンの残高分に相当する一定以上の資産を担保にするという方法です。仮に債務者が返済できなくなったとしても、その代わりに担保を差し出すことになるので、審査を通れば連帯保証を解除することができます。

ただし、それ相応の固定資産があるという条件が必要ですし、仮にそれが債務者の持ち家で債務者がそこに住む場合は、債務者が返済できなくなった場合差し押さえられてしまうため、住む場所を無くすというリスクを負うことになります。

4. 離婚後、住宅ローンを養育費として払ってもらう場合のリスク

扶養中の子どもがいる場合、離婚後も引き続き妻子が安心して生活できる環境を確保するために、夫が養育費の代わりに住宅ローンを払い続けるケースを選択する方は多いようです。

しかし、家を出た元夫の経済的な負担は大きく、自分の住んでいない家に多額のローンを払っていくモチベーションを維持していかなければなりません。また、このケースを選択した場合には、以下のようなリスクが伴います。順を追って見ていきましょう。

4-1. 住宅ローンが使えなくなる

例えば、住宅ローンの名義人が夫で、所有名義を妻に変えて夫が家を出てしまった場合を考えます。住宅ローン名義人の条件はその住宅に住んでいることですので、債権者である金融機関は元夫が住んでいないことを契約違反とみなして、その時点で住宅ローン残高分の全額一括返済を求めてくる場合があります。住宅に残るほうが住宅ローン名義人になっているか、必ず事前に確認しましょう。

4-2. 強制立ち退きの可能性がある

元夫が経済的に困窮し、住宅ローンの支払いを滞らせると、債権者である金融機関は抵当権を行使します。元夫に支払能力がないと判断されれば、元妻が住んでいる家は差押えられて競売にかけられ、妻子は住む場所を失うという最悪のケースをたどる可能性が高くなります。

競売物件になると立ち退きの強制執行を余儀なくされるため、支払能力のない元夫に頼ることもままならず、かなり厳しい状況に追い込まれてしまうかもしれません。

4-3. 自分が連帯保証人の場合、債務者に何かあった時は自分が支払わねばならない

例えば、妻が元夫の連帯保証人で、元夫が何らかの理由で住宅ローンの支払いを滞納した場合を考えます。妻はすでに縁の切れた元夫に「払うように」と働きかけますが、それでも元夫が支払いに応じない時には、自分が代わりに住宅ローンを払わなければなりません。

また、連帯保証人は催告の抗弁権を持たないため「元夫に請求してほしい」と債権者である金融機関に対して主張することもできません。

以上のようなリスクに備えて、

  • 「法的効力のある公正証書を作成しておく(支払いが滞った時、裁判することなく給与や銀行口座の差し押さえができる場合がある)」
  • 「任意売却の知識を持っておく(不動産売買価格がローン残高を下回っても、裁判所の介入なく売却できる)」

など、債務者・債権者の全員にとって、より良い対処法を考えておくことが重要です。

5. 離婚後の財産分与の考え方

離婚する場合、夫婦の共有財産を半分に分割・分配します。これを財産分与といいます。例えば、妻が専業主婦で、夫の収入で生活していたとしても、離婚時には基本的に財産の50%を妻が夫に請求することができます。また、現金(預金)や不動産だけではなく、年金や退職金が対象になる場合もあります。

5-1. 夫婦で住宅ローンを払ってきた場合

また、「マイナスの財産」、つまり借金や住宅ローンについても、夫婦生活のためのものであれば財産分与の対象となります。特に住宅ローンは、オーバーローン(売却しても残債が残る)の場合、財産分与の対象となります。離婚時に住宅ローンを返済中であった場合、その住宅ローンの残りをどうするかはきっちり決めておく必要があります。

財産分与は、やはり離婚が成立するまでに確定しておくのがよいでしょう。確かに、話し合いでまとまらない場合は調停などが必要となり、費用も労力もかかってしまいます。しかし、離婚後に再度会って話し合うストレスなどを考慮した場合、しっかり取り決めをしてから離婚した方がよいと言えるでしょう。

5-2. 住宅ローンの残額よりも売値が高い場合

売却額で住宅ローンの完済ができる場合は、残った売却益は財産分与の対象となりますので、その分配の方法について話し合うことになります。

その場合、適切に分配(基本的には半分に分ける)することになります。

例えば、夫婦で5,000万円の住宅を購入し、夫が1,000万円の頭金を支払い、残りの4,000万円を夫婦で返済してきた場合を考えます。

離婚時、住宅の時価が3000万円、ローン残高が1000万円だとすると、住宅の時価3,000万円からローン残高1,000万円を引いた2,000万円が住宅の価値になります。

その2,000万円から、夫が支払った頭金の1,000万円を引いた残りの1,000万円が、財産分与の対象額となります。これを半分に分配するため、夫に500万円、妻に500万円と分けることになるのです。

5-3. 住宅ローンの残額が不動産価値よりも高い場合

ローンの残額よりも売値が低い場合をオーバーローンと呼びます。オーバーローンの場合は、仮に売却をしても住宅ローンの残債が残ってしまうため、その残債を一括返済できなければ売却自体ができません。ただし、一定条件を満たした場合に限り、任意売却の手続きをとることで、売却は可能です。

また、売却できない場合は、ローンをこれまで通り払い続けることになり、住宅は財産にはなっていないことになるので、どちらが住んでも問題にはなりません。

ただし、連帯債務者として2人ともローンを払っている場合、どちらか1人がその家に住むのは不公平な感じが否めません。その場合は、名義変更して債務から抜けるなどの方法になりますが、それも難しい場合は、双方で話し合うなどして落としどころを見つけていくことになります。

5-4. 離婚後の財産分与請求可能期間

財産分与の作業自体は離婚前から行うことができますが、離婚後に財産分与を「請求」することになると、請求可能期間は離婚後2年までです。

また、この2年間は消滅時効期間ではなく、「除斥期間(じょせききかん)」として扱われています。「除斥期間」とは時効と同じく、決められた期間内に権利を行使しなければ、その権利が消滅するというものです。消滅時効期間と違う点は、期間中に停止・中断がないことです。

例えば、慰謝料の請求などの際には、内容証明郵便を送ることで時効の進行を止めることができますが、財産分与の請求権はこの「進行を止める」ということができません。ただし、離婚後の2年以内に調停や審判の申し立てを家庭裁判所に申し立てた場合は、それが確定するまでの間、財産分与の請求をすることができます。

6. 離婚しても住宅ローンが残った家に住む方法まとめ

離婚する場合、住宅ローンの問題はややこしく、きちんと双方で取り決めをしておかないと後々問題が出てくることが多くあります。

また、離婚してしまってから取り決めようと思っても、話し合う時間の調整や会うことへのストレスが重なり、なかなか難しいのが実情です。骨の折れる内容ではありますが、離婚前にしっかりと名義や財産分与について話し合っておき、離婚後に不要な問題が起きないよう予防しておくことが、それぞれの気持ちの良い再スタートにつながります。

時には専門家の力を借りながら、住宅ローンについてしっかりと債務整理しておきましょう。