事例紹介
Category 不動産
2018年07月03日 更新
不動産売却査定の際に絶対に確認しておくべきポイントとは
前編では実際に不動産業者に売却査定を依頼する前に確認しておきたいポイントについて考えていきましたが、後編では査定を受けてから業者を選ぶまでに確認しておきたいポイントについて考えていきます。
不動産売却査定の際、結果が出るまでにどのくらい時間がかかるのか、提示された価格をどう判断するべきなのか、査定価格以外で業者を選ぶポイントは何があるのかなどを事前に把握しておくと良いでしょう。
特に、期間が長く、高額のお金を動かす不動産の売買においてどの業者に仲介を依頼するかはとても重要なポイントになります。そのためには、自分のプランや考え方にあった業者選びをする必要がありますが、不動産査定はその大きな判断材料となります。
この記事でわかること
1. 不動産の売却査定にかかる時間
不動産査定には「机上査定」と「訪問査定」があります。机上査定は簡単なデータ入力のみで判断されるので、大体1時間程度、早ければ30分程度で結果が出ます。一方、訪問査定は現況確認を行った後、役所などで詳細な調査を行ない、より正確な価格を算出するため査定結果はすぐには出ません。ここでは訪問査定を受ける場合にかかる時間を考えていきましょう。
1-1. 不動産の現況確認にかかる時間
現況確認は、不動産業者の担当者が建物内の設備、床や壁の劣化具合、土地の形状や地形、道路、周辺環境などを目視で確認することを言います。またその際に売買対象とする範囲、例えば家具やエアコンなどの設備をどうするのか、売買契約が成立した後にトラブルが発覚しないための確認など簡単な打ち合わせも行うことが多いようです。そのため、現況確認には短くても数十分、長い場合には数時間かかることもあります。
1-2. 不動産の査定結果がでるまでの時間
訪問査定の結果が出るまでは、通常、現況確認をしてから数日程度必要になります。不動産業者の担当者は、現況確認を踏まえた上で法務局や役所で法規制やインフラの状況を調べ、価格を算出するので机上査定より時間はかかってしまいます。その分、より精度の高い査定価格を得ることができます。
2. 不動産査定価格が適正かどうかを判断するには
査定価格は売却価格とは異なります。実際に査定価格で売りに出したとしても、購入希望者との交渉次第で最終的な売却価格は変わってくるためです。物件を早く売るためには相場に見合った価格で売りに出す必要があります。つまり査定価格が高ければ良いとは限らないのです。そのため、査定価格の根拠や相場を把握することが重要となります。ここでは不動産価格が適正かどうかを判断する方法について考えていきましょう。
2-1. 不動産査定価格の根拠を確認する
宅地建物取引業法では、査定価格の算出をする際にその根拠を必ず明示することが義務付けられています。ですので、通常不動産業者は査定の結果を報告する際に根拠を示します。この根拠をしっかり確認をして、価格が適正かどうか判断する必要があります。
不動産業者は査定価格を算出する際、類似の取引事例を参考にします。その事例の物件と依頼を受けた物件の個別の詳細な条件を比較し、調整して価格を判断するのです。
査定報告を受ける際は、この参考にしている取引事例に注意をすると良いでしょう。参考事例がたくさんあればあるほど査定価格の精度は上がります。しかし、市場は変動するものであり、あまりに古い取引事例は参考になりませんので、注意が必要です。2、3ヶ月以内のデータであれば問題ありません。
また、対象物件の接道状況や土地の形状など詳細な条件がどのように判断されているのかも確認すると良いでしょう。土地のみの場合、土地の状態によって用途が限定されてしまいますと価格が下がってしまいます。建物がある場合は建物の状態も影響してきますので、注意をした方が良いかもしれません。
2-2. 不動産の相場を確認する
自分で相場を把握しておく方法もあります。国土交通省が提供している「土地総合情報システム」では、売りたい物件がある地域を選択すると、任意の期間における実際の不動産販売価格を知ることができます。相場と不動産業者が提示した価格があまりにもかけ離れていた場合は、注意をした方が良いかもしれません。
3. 不動産査定価格にバラつきがある理由
複数の不動産業者に査定を依頼した場合、たいてい業者によって査定額にバラツキが出ます。これは業者によって使用している査定方法や考え方が違うことが理由としてあげられます。ここでは不動産査定価格にばらつきがある理由について考えていきたいと思います。
3-1. 不動産査定の方法
査定方法には3つの種類があります。一般的に用いられる「取引事例比較法」、投資不動産の際に使われる「収益還元法」、主に建物に使われる「原価法」。それぞれ注目する視点が異なりますので、結果として出てくる価格も異なってくるのです。
また、取引事例比較法でも利用するマニュアルの違いで価格にバラツキが出る場合もあります。多くの場合、不動産流通推進センターが作成した価格査定マニュアルが利用されていますが、一部の業者では独自のマニュアルを作成して使用しています。
3-2. 不動産査定に対する考え方
不動産業者との契約は契約の種類によっては3ヶ月で有効期間が切れてしまいます。ですので、一般に不動産業者は3ヶ月以内に売却ができる査定価格を提示すると言われています。しかし、担当者の営業スタイルによって査定金額も異なってくるのです。例えば、できるだけ高く売ろうと少し高めの価格で売り出してから、問い合わせの状況などに合わせて価格を調整させていくというスタイルもあれば、初めから確実に売れる価格を設定して短期間で売ってしまおうというスタイルもあります。
また、不動産は一つとして同じものはありませんので、ある程度は類推するしかありません。つまりは担当者の主観が入ってしまうのです。自分が納得できる営業スタイルの担当者を見つけるのが良いのかもしれません。
3-3. 不動産の査定額が高いから良いとは限らない
もし不動産業者が他の業者に比べて、かなり高い価格を算出した場合は注意が必要です。業者によっては契約を取りたいがために、高い価格を提示する場合があるためです。きちんと担当者に価格の根拠を確認し、その説明に納得ができるかどうかが重要なポイントなのかもしれません。
4. 不動産査定以外の方法で価格を確認するには
査定を受ける以外にも路線価や固定資産税評価額、鑑定評価額を確認することで価格を判断することができます。ここではそれぞれについて考えてきましょう。
4-1. 土地の路線価を確認する
路線価は道路に面する標準的な土地の価格を示したものです。国税庁の財産評価基準路線価図と評価倍率表を参考に算出することができます。
4-2. 土地や建物の固定資産税評価額を確認する
固定資産税評価額とは、総務省が定めた固定資産評価基準をもとに各市町村が算定している固定資産税の基準となる価格です。毎年春に役所から届く固定資産税の納税通知書で確認することができます。役所で固定資産課税台帳を閲覧したり、固定資産評価証明書を取り寄せしたりして調べることも可能です。
4-3. 不動産の鑑定額評価を確認する
鑑定評価額とは、国家資格である不動産鑑定士が評価した不動産価格のことです。無料では行ってはもらえませんが、適正な価値を示すものとして信頼のおける有力な情報となります。
5. 不動産売却時の手取りはいくらになるのか
不動産が売れた金額を売主が全て受け取れるわけではありません。そこから手数料や税金などが引かれるのです。ここでは何をどのくらい引かれるのか確認していきましょう。
5-1. 不動産の仲介手数料
売買契約が成立した場合、不動産業者に仲介手数料を支払う必要があります。手数料は法律で上限が決められています。売れた金額によって手数料が変わってきます。売買代金(税抜)が
400万円以上のとき 仲介手数料=売買代金×3%+6万円×1.08%(消費税)
200万円以上400万円以下のとき 仲介手数料=売買代金×4%+2万円×1.08%(消費税)
200万円以下のとき 仲介手数料=売買代金×5%×1.08%(消費税)
ただし、売主が一般消費者ではない場合は不動産の売買代金にも消費税がかかるため、注意が必要です。
5-2. 不動産の契約書や領収書に貼る印紙代
不動産の売買契約書には印紙税を納付するために印紙を貼付しなければなりません。契約書を2通用意する場合には、契約書毎に印紙を貼る必要があります。また、平成30年3月31日までの間に作成される不動産の譲渡に関する契約書に関しては、印紙税率の軽減措置があります。
契約書以外にも、売買代金の受け取りの際に発行する領収書にも印紙を貼らなければなりません。領収書に貼る印紙に関しては、軽減措置はありません。
それぞれ、表を用意しましたのでこちらをご覧ください。
契約書に貼る印紙税額一覧表
領収書に貼る印紙税額一覧表
5-3. 不動産の抵当権抹消登記費用
住宅ローンの残債がある場合や未登記、登記簿上の変更が必要な場合は、決済後に司法書士に手続きを行ってもらう必要があります。状況によって異なりますが、司法書士などの手数料も加えて1~3万円ほどかかります。
買主の方でも所有権移転登記をしますし、ローンを組む場合には抵当権設定登記が必要になるため、すべてをまとめて一人の司法書士などに依頼することで負担を減らすことができます。登記に関して買主と相談すると良いでしょう。
5-4. 不動産の所得税と住民税
所得税と住民税は、不動産の売却代金から不動産の取得費用と譲渡費用の合計を引いたものにかかります。取得費用とは、不動産の購入代金のことで、譲渡費用は仲介手数料、印紙代、登記費用など売却の際にかかった費用の合計を指します。
売却して損失が出る場合は所得税と住民税を支払う必要はありませんが、譲渡益が発生した場合には税金を納める必要があります。しかし、住んでいた家を売却した場合には、居住用財産の特別控除を利用することができます。この特別控除を使うと3000万円を利益から引くことができます。
ですので、売却益が3000万円以下であれば税金はかかりません。売却益が3000万円を超えるときのみ、所得税と住民税を払うことになります。気になる税率ですが、所有期間が5年以下の短期譲渡と5年以上の長期譲渡で税率が大幅に変わります。この5年の判断は譲渡した年の1月1日を起点として考えます。
例えば、平成24年の2月1日に取得した住居を平成29年の8月1日に譲渡した場合、実際の所有期間は5年6ヶ月となりますが、法律上の所有期間は4年11ヶ月となるため、短期譲渡の税率が適用されます。
短期譲渡時の税率は、所得税30.63%、住民税 9%(合計39.63%)となります。一方、長期譲渡の場合の税率は、所得税15.315%、住民税 5%(合計20.315%)となります。
計算式は
所得税={売却代金-(取得費用+譲渡費用)}×税率
住民税={売却代金-(取得費用+譲渡費用)}×税率
となります。
5-5. その他
印鑑証明書や住民票の発行費用、引越しにかかる費用や土地の測量が必要な場合はその費用も必要となります。また、住宅ローンの残債がある場合は精算をする必要もあります。
6. 不動産会社を選ぶポイント
不動産業者を決定する際、提示された査定価格も重要ですが、それ以外の部分での判断も重要となります。と言いますのは、不動産の売買は時間がかけて行うものですし、動かすお金も高額になるため、相性の良い業者に依頼する必要があるからです。ここでは不動産業者を選ぶポイントについて考えていきましょう。
6-1. 不動産会社の特徴を確認する
同じ不動産の売買でも不動産業者ごとに得意分野があります。賃貸物件が得意な業者や土地を専門とする業者など様々です。依頼をする前に過去の取引実績を確認するなどし、なるべく似たような取引実績の多い業者を選ぶと良いと言えるでしょう。他にも経営理念やコンプライアンスを確認し、自分のプランに合わせた業者を選ぶことも良いかもしれません。
6-2. 不動産会社の営業が売主の立場で考えてくれるか
売主を徒に急かすことなく、売主の立場で考えてくれる業者に出会うことも大切です。そのためには、スピーディーな対応や丁寧な説明をしてくれるかどうかを見極める必要があります。
また、メリットばかりでなく、デメリットもきちんと教えてくれる業者を選ぶと良いでしょう。特に店頭やインターネットなどの広告で「激安」「最高」など誇張しすぎた表現を使っている業者は注意が必要です。そもそも内容を裏付けるものがないのに、抽象的な用語を使ったり、他の物件や業者などと比較するような表現を使用することは禁止されています。
納得のいく取引を行うためには、具体的な根拠や背景といった詳細まできちんと説明を行ってくれる業者に依頼をすることが必要です。
また、元気な声で電話の応対をする不動産業者は、質の高い接客を目指していることが伺えます。客である売主のことを重要視している証拠でもありますので、信頼できる業者と言えるでしょう。その他、店舗内の整理整頓がされているかどうかなども確認してみると良いかもしれません。
6-3. ブローカーや名義貸しに気をつける
宅地建物取引業法に定められた免許を受けた業者だけが不動産取引を業務として行うことができます。しかし、免許を持っていないのに不動産コンサルティングやアドバイザーとして取引に介在する業者もいます。そういった業者をブローカーといい、厳密には違法の存在です。
さらに、ブローカーの中には、社員でないにも関わらず名刺と肩書を持たせてもらい、不動産取引に関わる業者もいます。こういった行為を名義貸しと言います。名義貸しは、貸す側も報酬を得ることができるため、なかなか立証が困難というのが現実です。
名刺や肩書が複数ある場合や、固定電話にはつながらず、携帯電話でしか連絡が取れないという場合は注意をした方が良いでしょう。
また、免許を取得するためには専任の宅地建物取引士を雇う必要があります。専任の宅地建物取引士の氏名と免許番号は、店舗内の見えやすい位置に掲示しなければなりません。しかし、その会社には勤めていない宅地建物取引士の名義を借りて登録する名義借りで営業を行っている業者もあるようです。
的確なアドバイスや提案を受けるためには、こういった業者には気をつけた方が良いでしょう。
7. 不動産査定の前の掃除や片付け
当たり前の話かもしれませんが、実際に売り出す際は掃除や片付けをしておく必要があります。しかし、現況確認では掃除や片付けをしたから査定価格が上がるとは限らないのです。と言いますのは、現況確認は購入希望者ではなく、不動産業者の担当者が行います。業者は掃除や片付けがされた状態を想像することができるため、査定価格を判断する際に影響しないというわけです。
ただし、普段から綺麗に使っていて傷などがほとんどない場合は査定価格が高くなるかもしれません。こういったことから、現況確認の前に大掛かりな掃除や片付けを行う必要はなく、日常行う程度の掃除で十分だと言えます。
8. 不動産査定の際に確認しておくポイントのまとめ
前編、後編を通じて、不動産査定においてどのように査定が行われるのか、そして、その査定からどのような判断をする必要があるのかについて考えてきました。不動産は一つとして同じものがないため、価値を判断することは容易ではありません。
しかし、売買には長期間にわたって交渉などを行う必要があったり、多くの場合、大きな金額となるため、慎重かつ適切な判断を求められます。思い入れのある不動産の場合もあるかと思いますし、納得のいく取引を行うためには一つ一つの事柄に丁寧に向き合っていくことが大切です。