事例紹介
Category 不動産
2018年07月03日 更新
中古住宅の売却時に買主候補をその気にさせるには
家やマンションを買う際に気持ちが固まる瞬間というのがあります。実際には家やマンションなどの不動産にかかわらず、すべての買い物に当てはまることです。優秀な営業マンは、買主の心の動きに敏感です。
トップセールスは、買主が買いたいと思った瞬間に、間髪入れずに契約をさせることができます。トップセールスマンは、どういう時にどういうことをさせれば、契約につながるかをわかって行動しています。
ジョセフ・シュガーマンというダイレクト・マーケッターが言うところの心理的トリガーという手法です。ダイレクト・マーケッターというのは、直接消費者を相手にして売り込む方法の専門家です。訪問販売のような消費者と直接対話するような営業をイメージして頂くとわかりやすいと思います。
ただ、ジョセフ・シュガーマンの手法は、一軒一軒家庭を訪問するのではなく、インターネットを使って大量の人に同時にアプローチするところが違います。ただ、人が物を買う時の行動心理は、インターネットを使った場合でも、直接会って話した場合でも同じです。このシュガーマンの手法を応用するテクニックをお知らせします。
ちなみに、トリガーというのは銃の引き金のことです。心理的トリガーを引かせるとは、買主に購入を決める決断をさせることを言っています。どのような方法を使うことができるのか見ていきます。
1. ジョセフ・シュガーマンの法則
最初にジョセフ・シュガーマンについて少しだけお話します。彼は自分で作った通信販売の会社で自ら広告のコピーを書いていました。その30年以上にわたる経験の中でどのようにしたら、広告を読んだ人がその商品を買いたくなるのかをつかんだそうです。実際にブルー・ブロッカーというサングラスを世界中で2000万個以上売り上げたことで有名になりました。
お客の「心理的トリガー」を見極める『シュガーマンのマーケティング30の法則』という本を出しています。今回のお話はその本の中にあるある手法を応用したものです。世界中で実績が出ている方法ですので、人種を問わず効果が実証された方法といえます。もちろん、我々日本人にも当てはまる方法ですので、安心してください。
ジョセフ・シュガーマンの法則のひとつに一貫性の原理というものがあります。これは、ついで買いの法則とも言われますが、人はひとつの行動を取ると、その行動と一致する行動をとり続けようとする行動のことをいいます。
ネットで情報商材などを買われた経験のある方なら良くご存知だと思いますが、ひとつの商品を買うと続けて関連した商品が特別価格で買えるというものがありますよね。例えば、ダイエットのDVDを買ったとします。すると続けて、ダイエットに最適な器具の紹介があって、更にダイエット食材の紹介があって…としつこいくらいに続くことがあります。
とにかく買い続ける間は商品の紹介が続くというサイトがあるそうです。最高でいくつまで用意されているのかわかりませんが、人の心理を上手に使った販売手法と言われています。購入する方も、騙されている訳ではなくて、ダイエットする(痩せる)という決断に対して、それをサポートする物の紹介をしてもらえて、しかも安く買えるので嬉しいと思ってつい買ってしまうのです。
これは、購入者の最初の「痩せる」という決断を、サポートをする商品を次々と購入することで一貫したものとしていると捉えることができます。しかし、この一貫性の原理は、最初の行動を起こさせることが出来なければ使うことはできません。
購入するとなるとハードルが高いですが、それが名前を書くだけだったらどうでしょうか。行動するのはずっと楽になるはずです。インターネットを使っていると、「○○をプレゼントするので、とりあえず、名前とメールアドレスを登録してください。」という広告を目にすることが多いと思いますが、これは最初のハードルを下げることで、商品の購入の為の行動を起こさせようとしているのです。
普段気にしていないかもしれませんが、様々なマーケティングの戦略があり、知らず知らずのうちに、あなたも動かされてしまっているかもしれません。もっと興味深い戦術があるのですが、ここはマーケティングを学ぶところではありませんので、買主に対して実践する方法についてお知らせいたします。
2. 購入に向けた一歩をさせる
先ほど、お話したように、いきなり購入の話をするとハードルが高いです。とはいえ、内覧に来ているということは、それなりに購入の意思があるということです。その状態になっている人の背中を押す方法としてオススメしたいのが、購入申込書に記入をしてもらう方法です。
購入申込書は買付証明書と言われることもありますが、どちらも同じものです。名前だけ聞くと買うのとまったく変わらない感じがしますが、実際は購入と同じではありません。もちろん、条件が合うなら購入することが前提となる書類ですが、逆にいえば条件が合わなければ購入しなくても良いとも言えます。
購入申込書(買付証明書)は、購入条件を調整するために使う書類です。例えば、購入金額や支払い条件、引き渡しの期日などの基本的な条件を明確にして売主に伝える書類となります。ですので、仮に買主が「あと少し安かったら買いたい」と考えているような場合には、この書面を使って売主と交渉する必要があります。
出来の悪い営業は、こういう時に「では、売主にできるかどうか聞いてきます。」と口頭で金額の折衝をしようとします。しかし、優秀な営業はここで書類を書かせます。購入申込書を書くことで、条件がより明確になり、それをクリアしたら買わなければならないという気持ちになることを知っているからです。
条件が合わなければ買う義務はないことを強調しながら、心理的なハードルを下げて最初のステップを踏み出させるのです。通販などでよくある、返金保証と同じようなものです。返金保証も、いつでも返金してもらえるという安心感でハードルを下げて購入を促がす手法のひとつです。実際に少しくらいなら商品が気に入らなくても、返金を求める人は少ないと聞きます。
この手法を使うには買主の営業を上手く使う必要があります。自分の営業担当に根回しをしてもらうように依頼をしておきましょう。買主の営業は選べないので、そこは運しだいとなってしまいますが、自分の営業は買主の営業に対してこのような交渉が上手にできる人を選ぶようにすると良いと思います。
具体的にお話すると、買主の営業担当から買主に「この家、あと100万円安く買えるかもしれませんよ。」とささやいてもらうようにしてください。100万円といえば、手取りが30万円の人なら3ヶ月分以上の収入が増えたのと同じことになります。内覧をした後に買おうかどうしようかと迷っている時に言われたとしたら、かなり気持ちが動くでしょう。
それでも書類を書くことには躊躇してしまうかもしれません。しかし、この時に自分の営業から、「書くのは書類だけで良いので、申込み証拠金などは一切いりませんし、条件が合わなければ買わなくても良いのでダメ元で思い切った数字をぶつけてみましょう。」と言われたらつい書いてしまう可能性が高いです。
このようにして最初のステップを踏ませると良いでしょう。この時点では、申込み証拠金は不要としておいた方が良いです。申込み証拠金を払ってもらえれば、それだけ買う気持ちが固まっていることになるので、その方が良いとは思いますが、お金を払うとなるとハードルが上がってしまいます。最初は書類を書かせることに重点を置いて、次の段階で更に意思を固めるようにして、少しずつ階段を登っていくようにしてください。
もちろん、買主が100万円の値下げを求めてきたからといって、それに応じなければならない訳ではありません。さすがに0円では、気持ちが下がってしまうので良くありませんが、値下げが50万円でも30万円でも契約する可能性は高くなっています。ちょっとした言葉で印象を変えることができますので、参考にしてみてください。
また、条件の交渉は金額だけではないことも覚えておいてください。手付金の額や支払い方法、引き渡し日など、買主が求める条件は色々とあります。場合によっては、値引きよりもそちらの方が重要な場合もあります。
例えば、ほぼ借入れで購入しなければならないような時は、手付金の金額を下げてもらえないと購入を検討することすらできないこともあります。また、現在の住まいの契約が切れそうなら、1日でも早く引き渡しをして欲しいと考えているかもしれません。このような時は金額よりもこちらの条件の重要だと考えています。
これらの情報は、内覧の時の世間話で仕入れることができる場合があります。ただ相手の質問に答えるだけでなく、買主は求めていることを探るのも重要です。探るというと印象が悪いかもしれませんが、相手が買いやすくなるようになることですので、喜ばれるかもしれません。
3. まとめ
今回はマーケティングの手法を使ったアプローチについてお話をしました。自分の営業担当を使う訳ではありませんので、動かすのが難しいかもしれませんが、効果が大きいので使えないか考えてみると良いと思います。
特に買主を連れてきたのが、自分が依頼している営業担当だったり、同じ不動産会社の人間の場合は、とてもやり易いので、特におすすめです。同じ不動産会社が売主と買主をまとめることを両手取引と言って、敬遠することもありますが、このような場合には両手取引の方が良いかもしれません。