事例紹介
Category 不動産
2018年11月26日
市街化調整区域の農地転用条件と許可基準まとめ
「農地を持っているけれど活用が難しい」、「市街化調整区域なので土地評価が低い」という話を聞いたことはないでしょうか。
農地は農地法、市街化調整区域は都市計画法からの制限を受けています。
農地に家を建てたい、農地を売りたい、農地を貸し出して活用したいと考えるなら、こうした法律について頭に入れておきましょう。
この記事でわかること
1.市街化調整区域の農地転用条件・許可基準
都市計画法では市街地として利用を進めるエリアと、市街地化を制限するエリアを区別しています。
「市街地化を制限するエリア=市街化調整区域」の農地転用について解説していきます。
1-1.市街化調整区域とは
市街化調整区域は、都市計画において建物を建設することが制限されているエリアです。国土交通省が管轄する都市計画法で定められています。特に農家は田園地区にあることが多く、農耕に適した地域は市街化調整区域になることがあります。
しかし農家の自宅や作業場、納屋などの建築は例外として認められることがあり、まったく建物が建てられないわけではありません。ただし農地を宅地に使うときには、農業委員会に届け出や許可を得る必要があります。つまり、市街化調整区域の農地に建物を建てるときや、地目や所有者が変わる時には、農地法が絡むため、申請が必要になるということです。
市街化調整区域の農地活用を検討するときには、農地法についても合わせて知っておきましょう。
1-2.農地法第4条
- 農地法第4条「届出」:対象の農地が市街化地域にあり、自己転用のとき
- 農地法第4条「許可申請」:対象の農地が市街調整区域にあり、自己転用のとき
“農地を他の目的に使うとき、農業委員会に届け出、許可を受けなければならない”という法律が農地法第4条、5条です。
農地は使い方が規制されていますが、転用の届け出、認可を受けた場合には、自宅を建てる、駐車場や工場を作るなど農地以外の使い方が認められます。土地所有者本人が転用後の使用者になる「自己転用」では、農地法第4条に従って届け出、許申請を所有者本人が行います。
1-3.農地法第5条
- 「届出」:対象の農地が市街化地域にあり、自己転用ではないとき
- 「許可申請」:対象の農地が市街化調整区域にあり、自己転用ではないとき
農地法第5条は、農地を売ったり貸したりして農地以外の使い方(転用)をするときの届け出、許可申請について定めた法律です。農地転用と同時に、所有権の移動や貸し出しが発生するケースです。農地の持ち主と転用後の土地使用者が農地法第5条に沿って届け出、許可申請を行うことになります。
届け出・申請者は、「もとの所有者と土地を買った人」や「土地の所有者と土地を借りる人」の二者になり、自己転用より少し複雑になります。
1-4.農地転用条件・許可基準
- 市街化調整区域での農地転用は、自己転用、売買、貸し出しをするときに許可申請が必要
- 学校、社会福祉事業施設、病院、国・都道府県の庁舎などは許可申請が必要
- 転用目的が道路、農業用用水排水施設等のときは許可申請はいらない
- 農地区分が農用地区域内農地、甲種農地、第1種農地は原則不許可、第2種農地は他に土地がないとき許可、第3種農地は原則許可
農地の転用については、届け出のみで転用できるケースがある一方、許可申請が必要な場合があります。農地としての区分、転用の目的、転用にかかわる事業計画や資金力、都市計上市街化区域であるなどの条件が整っていることがポイントです。
農地法を無視して転用をおこなうと、原状回復命令や、3年以下の懲役、300万円以下罰金(法人では1億円以下の罰金)を課せられる罰則があります。(農地法第64条、67条)
2.市街化調整区域の農地転用許可の申請方法
「事前相談⇒許可申請書の内容確認⇒転用許可申請書の提出⇒各地区農地協議会への出席⇒農業委員会 総会⇒県知事に進達⇒農地転用許可」(神奈川県藤沢市の例)
事前相談で申請可能な条件が揃っていることを確かめたうえで、土地の現状、転用の利用目的と計画についてなど、必要な書類を揃えて申請する流れになっています。申請時には、土地の登記証明書、地番図、現状地目図、申請建築物の図面、道路・用排水施設等の図面、事業計画書、資力証明書類、所有権者同意書などといった20以上の添付書類が必要になります。所有者や使用者に法人が含まれている場合には、その法人の定款や登記事項証明書が必要です。
3.市街化調整区域の農地転用許可の取得は難しい
立地による区分(農地区分)と、資金などの条件(一般条件)の両面がそろっていないと、農地転用許可申請は難しくなります。市街化地域にある農地は、農地区分からみても第3種農地に当てはまることが多く、転用や住宅の建築などが許可されやすくなっています。
ところが市街化調整区域は、都市計画上建物の建築を増やしたくないエリアです。原則建築物は建てられませんし、農地転用を行うとしても、建造物を必要とする目的のものは難しくなってしまいます。
また農地区分で農営条件がよいとされている場所は評価が高く、転用は原則不可となっています。農地区分が農用地区域内農地、第1種農地の場合、人口密集地から離れている農地が多く、都市計画区分では市街化調整区域と重なるため、転用許可が取りにくいのです。
4.市街化調整区域の農地転用で住宅などを建築する場合の条件・許可基準
市街化調整区域での農地転用には例外があり、住宅の建築ができる場合があります。
市街化調整区域の農地転用で住宅を建築する場合の条件や許可基準について、都市計画法と建築基準法からみていきましょう。
4-1.都市計画法
例外として認められる事例は、都市計画法第34条を根拠にしています。農家等の分家住宅もその中の一つです。
「都市計画法第34条 10号ロ より」
- 本家たる世帯の構成員、または構成員であったものが分家すること
- 分家しようとする者が、譲渡、贈与、相続によって取得した土地であること
- 既存の集落内またはその周辺にあること
- 市街化調整区域内以外には住宅を建築できる土地がないこと
4-2.建築基準法
「建築基準法第43条(接道義務) より」
- 建築物の敷地は、原則として4m以上の幅員の道路に2m以上接していなければならない
農地転用の場合、敷地が道路に面していないケースがあります。建築基準法上の道路がない場合には、建築物を建てられないので注意が必要です。
5.農地転用で市街化調整区域の土地を活用する方法
- 農地転用では農業委員会の許可が必要
- 市街化調整区域では建物が建てにくい
このことから、土地活用の方法が限られていることがわかります。
農地転用で可能な土地活用には次のようなものがあります。
① 農家等の分家住宅
② 農家の施設設備・太陽光発電設置
③ 資材置き場として建築業者に貸し出す・売却
④ 施設敷地として貸し出す・売却
⑤ 自治体や開発業者に貸し出す・売却
①②のケースでは、所有者個人のタイミングで計画を進めやすいですが、③④⑤では需要がなければ話がまとまりません。
市街化調整区域になっている農地の農地転用は、ニーズとタイミング、その後の見通しを合わせて考える必要があるでしょう。
6.市街化調整区域の農地転用条件と許可基準まとめ
- 市街化調整区域では建築が抑制されるので建物が建てにくい
- 農地転用は農地区分と都市計画区分で難易度が決まる
- 分家住宅は、市街化調整区域の農地転用の許可が出やすい
- 一般的には市街化調整区域の農地転用は難しい
農地は農地法で守られているので、転用には農業委員会の許可が必要です。そのうえ市街化調整区域となると、住宅などの建物を建てるのが難しくなります。
農地として売るには相手が農家でなければなりませんし、農地転用して活用するなら、条件が整っている時を逃さずに検討すると良いでしょう。