事例紹介

Category  不動産

2018年10月19日

親から相続した空き家、売却したいと思った時に特別控除が受けられる?

年々増え続ける空き家、限られた土地に多くの空き家が建っている状況は社会問題となっています。

そこで、増え続ける空き家問題についてと相続した空き家を売却する場合の特別控除についてご説明します。

1. 空き家を相続する際に特別控除は適用できるか

国土交通省が実施した空き家実態調査の結果、近隣の生活環境に迷惑を及ぼす可能性がある空き家や、災害などで倒壊の可能性がある空き家で、周辺地域や住民に影響を及ぼす可能性がある空き家も多く見受けられることがわかりました。また空き家のうちの約60%が耐震性のない建築物であると推測されています。

そこで平成28年度が実施された税制改正の結果「相続等により取得した空き家を譲渡した場合の3,000万円特別控除」が決定したのです。

この法律は、相続税を圧縮するものではなく、要件が適合した際、相続人の「所得税」を圧縮するものになります。

相続をする時は、取得する資産の使い道や、売却の予定等まで含めて、しっかりとした対策を立てることになります。相続税の対策の一つとして、必ず検討しておくべき項目の一つになります。

2. 「空き家に係る所得税の譲渡所得の特別控除の特例」とは

「空き家に係る所得税の譲渡所得の特別控除の特例」とは、相続によって取得した空き家を一人暮らしだった被相続人が死亡した日以後3年を経過した日の属する年の12月31日までに譲渡した場合、その空き家を売却、譲渡して得た利益の中の3,000万円を控除出来るという内容です。

この特例にはいくつかの条件があります。

2-1. 適用を受けるには

  • 被相続人が一人で暮らしていた家に限る

「空き家に係る所得税の譲渡所得の特別控除の特例」の目的は、増え続ける空き家をなくすことです。

被相続人が亡くなった時点で一人暮らしの場合、その家が空き家になってしまう可能性が高いため、被相続人が一人で住んでいた場合の家に限定されます。被相続人に同居者がいる場合は、そのままその家に住み続けることが可能ですので「空き家に係る所得税の譲渡所得の特別控除の特例」の対象にはなりません。

被相続人に同居者がいなかった場合は、亡くなった人が住んでいた空き家、その敷地を相続した人が売却して利益を得た場合、その利益の中から3,000万円の特別控除が認められるのです。

  • 昭和56年5月31日以前に建てられた住宅であること

「空き家に係る所得税の譲渡所得の特別控除の特例」の対象になる家は、どの空き家でも良いわけではありません。

被相続人がその家で一人暮らししていたことの他にも、建築年月日が「昭和56年5月31日以前に建築された住居とその敷地」に限定されます。

区分所有建築物は別ですが、建物を壊して敷地のみを譲渡する、あるいは建物について耐震基準を満たすように耐震リフォームをきちんとしてから譲渡するようになります。耐震基準を満たしている住居であれば、そのまま譲渡しても問題はなく、控除を受けることが出来ます。

そもそも昭和56年5月31日以前に建てられた建築物は、耐震基準を充たしていないことが多く、また敷地面積もとても広い物件も多いのです。エリアによっては、売買することでかなりの高額になる場合もあり、そうなると不動作譲渡による税金の割合も高くなってしまいますので、処分しようにも出来ないという状況も続いていました。

家を軽く手放せるようになるためのサポートと、耐震基準を満たさない古い家屋をこのまま放置させないために作られた税制でもあります。

  • 相続から譲渡までの間、空き家状態を保つこと

「空き家に係る所得税の譲渡所得の特別控除の特例」の対象になる空き家とは、被相続人から相続した後、その家や家を取り壊した後の土地を、業務用や個人住宅用、または貸付けの用として使用した場合には、この特例は適用できません。

条件としては「相続~譲渡まで引き続き空き家」であると必要があります。

  • 対象譲渡
    相続人が相続開始後3年目の年末までに譲渡することも条件です。
  • 譲渡資産が、以下のいずれかに該当するものであることも条件になります。
    空き家を新耐震基準に適合するようにリフォームして敷地とともに譲渡すること(家屋全部を取り壊し等して行う改築には適用されません)または、空き家を除却し、敷地のみを譲渡すること。

「空家等対策の推進に関する特別措置法」を税制面サポート措置として、「居住用財産を譲渡した場合の3千万円特別控除」があります。

注意しなければならないのは、他の優遇措置との重複適用について、相続税の取得費加算の特例と併用することは出来ません。また自己の居住の用に供した家屋ではないので「長期譲渡所得の軽減税率の特例」も適用外となります。

次に自己の居住用家屋等の3千万円控除との関連について説明していきます。

自己の居住用家屋等の譲渡と被相続人の居住用家屋等の譲渡について、相続人が複数いる場合はそれぞれで3千万円控除の適用が受けられることになります。

共同相続人が被相続人の居住用家屋等を共有で取得する可能性もあります。その場合は、家屋と敷地の共有持分者たる相続人が、それぞれ3千万円控除の適用を受けることができます。例えば共有持分者が2名いる場合には、特別控除額の合計は最大で6千万円になります。

ただし、同じ年に2つの譲渡があった場合は、年間で3,000万円が上限となります。
既に被相続人の居住用家屋等の譲渡に対して3,000万円控除の適用を受けている場合は、重ねて控除の適用を受けることができません。

また、自己の居住用家屋等の譲渡については、前年又は前々年に3,000万円控除の適用を受けていない場合に、別で適用を受けることができます。
前年もしくは前々年に自己の居住用家屋等の譲渡について3,000万円控除の適用を受けている場合も、被相続人の居住用家屋等の譲渡については別途に適用を受けることができます。

また、相続税の取得費加算との併用は不可です。譲渡対価が1億円以内であることという制限もあります。
被相続人が一人で住んでいた居住用財産を、相続後3年目の年末までに分割で譲渡した場合は、その譲渡対価の合計額が1億円を超えるときは「空き家に係る所得税の譲渡所得の特別控除の特例」は適用不可です。また「1億円かどうか」の判定水準は、居住用財産を相続した全ての相続人の譲渡対価も判断しながら決定します。

◆適用が除外される場合

「空き家に係る所得税の譲渡所得の特別控除の特例」が適用されない場合もあります。空き家の相続において生計一親族、同族会社等の特殊関係者への譲渡の際は、この特別控除を適用できません。

また、相続税額の取得費加算との重複適用も出来ません。さらに固定資産税の交換、収用等の特例などとの重複適用もできません。

ただし、「居住用財産の買換特例」「居住用財産の場合の譲渡損失の繰越控除の特例」「特定居住用財産の場合の譲渡損失の繰越控除の特例」とは重複して適用することが可能です。

詳しく知りたい場合は、空き家がある地域の市区町村役場に問い合わせてみましょう。

2-2. 用意する書類

「空き家に係る所得税の譲渡所得の特別控除の特例」の控除を受けるために必要な書類は、以下の通りです。

◆必要書類

・被相続人の居住用家屋であることの確認書
制度の対象となる家屋は、相続開始の直前に被相続人が居住していたこと、相続開始の直前に被相続人以外には居住していた者がいなかったことが条件です。

  • 「相続開始から譲渡まで空き家であったこと等」を証明できるための書類(所在市区町村に状況よって書式が違います)
  • 売買契約書の写し
  • 電気若しくはガスの閉栓証明書又は水道の使用廃止届出書
  • 使用状況が分かる写真
  • 固定資産税の課税明細書の写しなど

全ての確認のために、一定の書類(被相続人居住用家屋等確認書)を市区町村からもらう必要が出てきます。

書類が揃ったら、「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受けて、確定申告書に添付して申請します。

3. 特別控除を受ける際の注意点

「空き家に係る所得税の譲渡所得の特別控除の特例」の対象になる条件として、被相続人が相続発生時に一人暮らしで住んでいる家ということがありますが、被相続人が相続発生時に老人ホームに入所していた場合は適用外になってしまいます。

被相続人の居住用家屋とは「相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋」のことを指します。

被相続人が自宅ではなく老人ホームに入所していた場合、この定義に該当しませんので、「空き家に係る所得税の譲渡所得の特別控除の特例」の適用を受けることが出来ません。

相続税の時は、老人ホームに入所している場合も適用される条件が多くありますが、「空き家に係る所得税の譲渡所得の特別控除の特例」の場合は老人ホームに入所していた場合は適用外になってしまいますので注意しましょう。

4. まとめ

亡くなった親などから空き家を譲り受けた場合の「空き家に係る所得税の譲渡所得の特別控除の特例」についてご説明しました。

空き家を手放したいと思っている人は、「売ったら税金がかかるから」と思って躊躇している人も多いでしょう。

気をつけたいポイントとして、「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例」と選択しながら決めることも出来ます。

相続税額やその他の条件によっては、今回の特別控除「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例」を使用しない方が金額的に抑えられる等のメリットを感じます。

またこの特例を使う場合には、他の譲渡所得の特例は重複して受けられなくなります。

どの制度を利用するのが一番お得かということはなかなかわかりづらいこともあるでしょうが、必要な場合は専門機関に相談することも1つの方法です。

この控除は2016年4月1日から2019年12月31日までの期間内の譲渡に限ります。

空き家を手放すことは、とても大変なのでは?と思うでしょう。しかし、空き家を持ち続けていることも、かなりのストレスに繋がります。

2019年の年末までの期限付き措置でもありますので、空き家を手放す計画がある人は、早めの対処が良いでしょう。