事例紹介
親から不動産を相続したものの、自分たちはマイホームを持っているし、固定資産税など維持する費用もかかるので売ってしまいたい……こんなケースはよくあるものです。実際、少子高齢化の進む現代日本ではこういった空き家の処理が滞っている事例がよく見受けられ、総務省実施の「住宅・土地統計調査」によると、空き家率はじきに20%、つまり5軒に1軒が空き家という状態がもう目前に迫っているような段階です。
しかし、ちょっと待ってください!相続したその空き家、実は相続税だけでなく、売却する際も別途所得税などがかかってくるのをご存知でしたか?
相続した不動産を売却する際に一体いくらくらい税がかかるのか、一度ここで確認しておきましょう。
この記事でわかること
1. 不動産を相続した後に売却すると所得税はいくらかかる?
税金の原則として、財あるところに必ず税も存在します。今回ご紹介するような相続物件の売却の際、これももちろん例外ではなく、課税対象となります。
この時かかるのは、「譲渡所得税」と呼ばれる税。譲渡所得税の大まかな内訳としては所得税と住民税からなり、不動産などを譲渡(売却)した時に出た利益「譲渡益」をもとに算出されます。つまり、相続した不動産の取得費や譲渡にかかった諸々の出費より、その不動産の売却益の方が多かった場合に課税がなされるわけですね。
それでは、その課税の条件と実際の課税額がどのように決まるのか見ていきましょう。
1-1. 相続した不動産の保有期間で所得税の税率が変わる
まず大きな分かれ目として、相続により取得した不動産を、「どのくらい保有していたのか」というところがポイントです。保有期限は5年を境に区切られ、それより前に売却してしまえば譲渡所得税が高く、逆に5年より長く保有してから売却すると税が安くなるというのが初めに押さえておくべきことです。
長期譲渡所得税
前述の通り、相続により取得した不動産の保有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」に分類され、短期の場合に比べ税金が安くなります。ここで気になるのが5年をどうやって計算するかという点だと思いますが、相続の場合は「取得の日」を相続が発生した日ではなくて、被相続人が取得した日まで遡って計算することになります。
また勘違いしやすいポイントとして相続人が「譲渡した年の1月1日」時点が起算点となるという事です。上記のルールで保有期間が5年以下であれば譲渡所得税が高い「短期譲渡所得税」の取扱となり、5年より長く保有してからの売却になると逆に税金が安くなる「長期譲渡所得税」としての取り扱いとなります。
例えば事例をあげますと、2014年5月31日に父が購入したマンションを相続することになって2019年6月10日に売却した場合は「短期譲渡所得」として取り扱われてしまいます。この場合は2020年1月1日を超えるまで保有した方が税金を抑えられるという事です。
簡単に注意事項を申し上げたところで、以下に「長期譲渡所得」とみなされた場合の実際の課税率を記載します。
・保有期間が5年超の「長期譲渡所得」の場合
課税譲渡所得金額×15.315%(所得税+復興特別所得税)
+5%(住民税)=譲渡所得税額
短期譲渡所得税
上記に長期譲渡に対し、こちらの「短期譲渡所得税」の方はその税率が一気に跳ね上がります。
・保有期間が5年以下の「短期譲渡所得」の場合
課税譲渡所得金額×30.63%(所得税+復興特別所得税)=譲渡所得税額
+9%(住民税)
長期譲渡所得の場合と比べ、ほぼ倍の税額が課税されることになるわけですね。
1-2. 相続した不動産の売却時の特例
以上に基本となる譲渡所得税額の課税方式をご紹介いたしましたが、それでは単純に相続した家を長く持っていればいいのかといえばそう単純ではありません。
保有期間は5年以上の方が税金が安くなるとお話ししたものの、それはあくまで基本的な譲渡所得税額だけを取り出しての話。相続してからの居住の実態や、固定資産税や都市計画税、維持費をはじめ、以下のような特例に当てはまるかどうかで相続不動産の得な取り扱い方が変わってくるのです。
◆3,000万円の特別控除
相続不動産売却の際に使える可能性のある特例の一つで、簡単にご説明申し上げますと、2019年(平成31年)末までに売却した不動産の譲渡益が3000万円以下の場合、譲渡所得税がかからないというとてもありがたい特例です。
従来までならこの特例はマイホームに限ったものであり、自己居住の実態がなければ認められなかったはずなのですが、2016年4月から2019年12月31日までに売却された物件に関してはこの限りではなく、相続の後、空き家となった場合でも特例の適用が認められることとなりました。
しかしながらこの3,000万円控除の特例は、巨額の控除が受けられるだけあって審査基準がとても多いのです。以下にその条件を列挙いたしますが、限りご不安であれば一度税理士さんなどの専門家へご相談なさった方がよろしいかと思われます。
- 親の住んでいた住宅・土地を相続してから売却している
- 売却代金が1億円以下であること
- 2016年4月1日から2019年12月31日までに売却が行われていること
- 1981年5月31日までに建築された、旧耐震基準の住宅であること
- 一定の耐震基準を満たしていること
- 区分所有登記を行なっていない一戸建ての住宅であること
- 相続する直前まで当該不動産に親が一人暮らししていたこと
- 相続した住宅を取り壊していない場合、売却までの間、賃貸経営や事業の用に供していない空き家であること
- 住宅を取り壊している場合、取り壊すまでに住宅を賃貸経営や事業の用に供していないこと。また敷地についても人に貸したり事業の用に供していないこと。取り壊しから売却までの間に新たに建物などを建築していないこと
- 同一の親から相続などで取得した自宅がこの特例を受けていないこと
- 当該不動産について、後述の「相続不動産の取得費加算特例」を受けていないこと
- 相続開始から3年目の12月31日までに売却すること
築30年を超える旧耐震基準の家でありながら「一定の耐震基準を満たす」家というのはなかなかクリアし難い条件であるように思われます。耐震リフォームをしている、建築士などによる証明を受けているなどのことがなければ、よほどのことがない限り実際には住宅を取り壊して土地を更地にしてしまってから売却、ということになるでしょう。
また売却金額の「上限1億円」については、もし土地の分割売却をこの3,000万円控除特例を適用のうえで行う場合、相続から3年目の12月31日までに残りの部分を同一の相続人や別の相続人が追加して売却すればその売却金額も加算されるので注意が必要です。
◆相続不動産の取得費の特例
前半では、相続した不動産の保有期間が長い「長期譲渡」の方が基本的に税が軽減されるとお話し致しましたが、その例外に当たる特例です。具体的には、相続税の申告期限から3年以内に当該不動産を売却すれば、その取得費として相続税も一緒に計上して譲渡益から控除してよいというものです。
適用条件としては、相続税の申告期限から年以内(3年と10ヶ月以内)での売却であること、相続などにより当該不動産を取得し、またその取得者に相続税が課されていることなどが主に挙げられます。
相続税額×売却不動産の課税価格÷(相続した財産の合計の課税価格+債務控除額)
計算式にすると以上のようになりますが、もし土地の相続が2014年12月31日以前の場合は、売却した分の課税額のみならず相続した全ての土地分の相続税が控除額の対象となりますので覚えておきましょう。ただしこの特例にも1つ注意点があります。それは、小規模宅地特例が適用され相続税が軽減された場合、これに伴いこちらの取得費加算特例の方の控除額も一緒に下がってしまうということ。
ここで小規模宅地の特例について簡単に再確認しておきましょう。
◆小規模宅地の特例
相続される土地が以下の条件に該当する場合、相続税の課税標準である不動産評価額(土地の評価額)が330平米分まで20%に減額される。
◯相続人(子)と被相続人(親)が同居している場合
①相続が開始してから、子が相続税の申告期限(10ヶ月以内)までも引き続き当該不動産に居住しており、かつその土地を所有していること
◯相続人が独立して生計を立てており、被相続人と別居の場合
①被相続人が一人暮らし(配偶者がいない状態、他の親族がいない状態)であること
②相続開始前3年以内に子または子の配偶者が所有する住宅に住んだことがないこと
③当該土地を相続税の申告期限まで所有していること
以上のように、条件に当てはまっており小規模宅地特例の適用を受けると大幅な相続税の軽減措置が行われますが、こちらで相続税じたいを下げておくのが良いか、またはあえて下げずに相続不動産取得費加算特例のみの適用が良いのかはその都度判断しなければなりません。さすがにどちらが得なのかは基本的に税務署は教えてくれませんので、ご自身で計算なさるか、税理士などのプロに助力を求めるのが安心でしょう。
また前項でも記述致しましたが、こちらの「相続時取得費加算特例」と前項の「3,000万円控除」の特例の併用は不可ですのでご注意ください。
◆10年超所有軽減税率の特例
前項の特例は相続から早めに売却することが前提でしたが、対してこちらの特例はお持ちの不動産の所有期間が10年を超えていることが前提です。もし相続不動産の保有期間が10年を超えており一定の条件を満たしている場合は、譲渡所得の3,000万円超6,000万円以下の部分に対してかけられる税率が軽減されます。
この特例は「3,000万円控除特例」との併用が可能です。
◯制度の概要
保有期間10年超のマイホーム(自己居住用不動産)を売却する際、一定の条件を満たすことにより長期譲渡所得の税率を低くすることができる。
◯適用の条件
- 日本国内にある自己居住用不動産を売却する。もし当該不動産が以前住んでいたものであったり、災害などにより滅失している場合は、そこに住まなくなってから3年が経過する年の12月31日までに売却を行う。
後者の災害滅失や以前の居住先の場合、さらに以下の条件を満たさなければなりません。
⑴取り壊された家屋とその敷地については、取り壊された日の属する年の1月1日時点で保有期間が10年を超えていること
⑵家屋を取り壊してから譲渡するまでの間に、当該不動産を貸し駐車場など他の用に供していないこと
⑶家屋の取り壊しから1年以内にその敷地の譲渡契約を結んでいること
- 売った年の前年、前々年にこの特例を使用していないこと
- 売った不動産に対して、3,000万円控除特例以外のほかの特例を受けていないこと
- 親子や夫婦、内縁の人、生計を共にする親族、売却不動産でその後生活をする親族、特殊な関係のある法人などが譲渡取引相手の場合は適用されない
以上のような条件を満たした上で、譲渡所得申請の際に当該不動産の登記事項証明書を添えて提出することにより申請が可能となります。
◆特定自己居住用財産の譲渡損失の損益通算および特別控除
住宅ローンの残っているマイホームを売却して、その譲渡益が住宅ローンを下回った場合に、損失額をほかの所得と相殺できる制度です。
◯制度の概要
平成31年(2019年)までに売却した住宅ローンの残るマイホームで、その売却益が住宅ローンの額を下回って譲渡損失が発生した場合、その損失額を控除として給与所得や事業所得などほかの所得と損益通算し相殺することができる。もしそれでも控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年から以後3年以内は繰り越して控除を行うことができます。
◯適用の条件
- 売買契約日の前日時点での住宅ローン残高から住宅の売却金額を差し引いた額が、控除の限度額となる
- 自己居住用不動産を売却する、もしくは当該不動産が以前住んでいたものである場合などは、そこに住まなくなってから3年が経過する年の12月31日までに売却を行う。後者の以前の居住先である場合、さらに以下の条件を満たさなければなりません。
⑴取り壊された家屋とその敷地については、取り壊された日の属する年の1月1日時点で保有期間が10年を超えていること
⑵家屋を取り壊してから譲渡するまでの間に、当該不動産を貸し駐車場など他の用に供していないこと
⑶家屋の取り壊しから1年以内にその敷地の譲渡契約を結んでいること
また、この譲渡には譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けが含まれ、親族等への譲渡は除かれる。
- 日本国内にあるマイホームで、譲渡する年の1月1日時点で保有期間が5年を超える不動産であること。
- 災害などにより滅失した不動産を引き続き所有している場合は、1月1日時点で保有期間が5年を超えていることを前提に、災害があった日から※3年が経過する年の12月31日まで(住まなくなった家屋が災害滅失した場合は、住まなくなってから※3年が経過する年の12月31日まで)に売却を行う。
※東日本大震災による被災滅失の場合は災害から7年が経過する年の12月31日。
以上がこの特例の主な内容ですが、適用外となる例外的なケースがあったり、手続きは損益通算特有のものとなったりと条件が様々です。
詳しくは国税庁のページも一緒にご覧ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3390.htm
◆その他の特例
相続した不動産を売却するときに適用の可能性のある特例は以上にご紹介してきたものが代表的なものですが、そのほかにも以下のような特例が存在します。
いずれも平成31年(2019年)までに売却された物件に限られますので、ご検討中の方はお早めに手続きください。
- 特定のマイホームを買い換えた時の特例
保有期間が10年を超える居住用不動産を2019年までに売却し新たに住宅を買い換える時、売却した不動産の譲渡益にかかる税を先延ばしにできます。ここで払わなかった税は、その買換え不動産を将来的に売却する際に繰り延べされます。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3355.htm
- マイホーム買換えの場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除
似たような特例(「特定自己居住用財産の譲渡損失の損益通算および特別控除」)
を前述していますが、自己居住用物件を買い換える時、以前まで使用していた不動産売却において損が出た時、その譲渡損失をほかの所得と損益通算で相殺することのできる特例です。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3370.htm
2. 相続した不動産を売却した時の所得税の計算方法
最初に軽く申し上げました通り、相続不動産を売却する際にかかってくる税金は、その不動産を手に入れるのにかかった費用と売却にかかった諸々の費用を、不動産売却で得た額から引いて出た額を元に計算が行われます。わかりやすく計算式にすると以下の通りです。
売却(譲渡)価格−(取得費+譲渡費用)=譲渡所得【課税標準】
譲渡所得×税率=譲渡所得税
それでは、ここに出てくるワードそれぞれが具体的に何の金額を指すのかを確認していきましょう。
2-1.取得費
その不動産を取得するのにかかった費用のことです。相続の際は、原則として被相続人が当該不動産を手に入れるのにかかった費用をそのまま引き継いで計算を行います。
取得費と計算方法の基礎としては以下の2つの方法がありますが、どちらか額の大きい方を一般的には取得費とします。
①概算法 売却価格×0.5%
②実額法 当該不動産の購入・建築代金、仲介手数料や後述する取得に要した費用の合計金額−建物の減価償却費
もし取得費用が不明の場合は売却価格の5%を取得費とする①の概算法を採用し、不動産の購入時の価格が売却価額の5%に満たなかった(安かった)場合でも、売却価額の5%を取得費として計上します。
ただし、購入当時の価格がわからなくても、契約書・領収書以外に参考になる書類がある場合は、実額での計算が許される場合があります。
以下の①から⑤に該当するような証明事項、購入した時の状況説明、契約書類等の紛失理由を書いた「申述書」を確定申告書に添付して税務署に提出し、その内容に信憑性があると認められると実額申告での譲渡所得税を算出することができます。
①通帳等の出金により購入価額として支払った金額が明らかに証明できる
②住宅ローンの支払い状況が通帳などにより認められる
③住宅ローンを借りた金銭消費貸借契約書のコピーやローンの償還表等がある
④全部事項証明書の乙欄で抵当権(ローンなど借金に対して当該不動産を担保としそこから優先的に徴収されるための権利)の設定金額の状況がわかる
⑤購入当時の不動産業者の、価格が記載されているパンフレット等
以上のような証明事項がなかったり、もっと確実に申告を通したい場合は、更に以下の要領で有力な資料を作成しましょう。
土地…市街地価格指数(財団法人日本不動産研究所が公表)から、土地の売却価格に指数の割合を掛けて当時の購入金額を推定する
建物…前述の「建物の標準建築価額」当該年度資料から当時の購入金額を推定する
ちなみに、②実額法の取得費として扱われるものとしては、当該不動産そのものの購入代金以外に以下の費用がかかっていた場合も該当します。
1.当該不動産取得の際に支払った登録免許税や不動産取得税、印紙税など
2.立ち退き料(購入時に賃借人がいた場合など)
3.埋め立てや土壌の入れ替え、地ならし・土盛りなどの土地造成費用
4.土地の取得に際して負担した測量費
5.不動産の所有権を確保するため支払った訴訟費用
6.建物付きの不動産を、当初から土地入手目的で購入していた場合の建物取り壊し費用
7.当該不動産取得のために借り入れたローンなどの利子(不動産を実質的に利用し始めるまでの期間にあたる部分のみ)
8.以前の契約者との締結を解除し、より有利な条件で他の物件を取得した場合の契約違約金
また、取得費計上の際に注意すべきは、住宅の減価償却。土地はこれに該当しませんが、住宅は年月とともに原則として価値が落ちていくものであり、必ず減価償却が行われているためこの費用を取得費から差し引かなければなりません。
減価償却率の計算方法はその不動産が事業用なのかそうでないかで変わってきます。
2-2.非事業用資産の減価償却費
非事業用不動産の減価償却費=建物購入代金など取得に要した費用×90%×償却率×経過年数
まず、マイホーム・セカンドハウスなど事業用でない不動産については以上のように算出されます。償却率については以下の通り。
耐用年数 | 償却率 | ||
建物の構造等 | 木造 | 33年 | 0.031 |
軽量鉄骨 | 40年 | 0.025 | |
鉄筋コンクリート造 | 70年 | 0.015 |
続いて事業用の不動産については、以下のように減価償却率が算出されます。
当該不動産の購入代金×償却率
事業用不動産の償却率算出は以下の表を参照してください。
耐用年数 | 償却率 | 耐用年数 | 償却率 | 耐用年数 | 償却率 | 耐用年数 | 償却率 | 耐用年数 | 償却率 |
2 | 0.500 | 12 | 0.084 | 22 | 0.046 | 32 | 0.032 | 42 | 0.024 |
3 | 0.334 | 13 | 0.077 | 23 | 0.044 | 33 | 0.031 | 43 | 0.024 |
4 | 0.250 | 14 | 0.072 | 24 | 0.042 | 34 | 0.030 | 44 | 0.023 |
5 | 0.200 | 15 | 0.067 | 25 | 0.040 | 35 | 0.029 | 45 | 0.023 |
6 | 0.167 | 16 | 0.063 | 26 | 0.039 | 36 | 0.028 | 46 | 0.022 |
7 | 0.143 | 17 | 0.059 | 27 | 0.038 | 37 | 0.028 | 47 | 0.022 |
8 | 0.125 | 18 | 0.056 | 28 | 0.036 | 38 | 0.027 | 48 | 0.021 |
9 | 0.112 | 19 | 0.053 | 29 | 0.035 | 39 | 0.026 | 49 | 0.021 |
10 | 0.100 | 20 | 0.050 | 30 | 0.034 | 40 | 0.025 | 50 | 0.020 |
11 | 0.091 | 21 | 0.048 | 31 | 0.033 | 41 | 0.025 |
2-3.譲渡費用
譲渡費用は、前述の土地・建物の取得の際とはまた別に、当該不動産の「譲渡」に際してかかった額のことをさします。あくまで譲渡のための支払い費用であり、固定資産税や修繕費などが費用として認められます。
1、土地の売却時、建物を取り壊したときの費用
2、不動産売却のために支払った仲介手数料
3、不動産の所有権移転費用や売渡証書作成費用など登記費用
4、売主が負担した印紙税
5、地主から借地権売却について承諾を得るために負担した名義書換料
6、入居者に立ち退いてもらうために負担した立退料
7、売却に際して行った測量費用
8、既に締結した売却契約を破棄し、他者へ高い価額や更に有利な条件で売るため、以前の契約者に支払った違約金
2-4.復興特別所得税
この項にて末筆になってしまいましたが、今の時期だからこそ課税される特別な所得税として、「復興特別所得税」が挙げられます。平成25年から平成49年まで、震災特例法に基づき課税される税で、東日本大震災の復興のための行政予算となります。
そのため、平成49年までは基本的な譲渡所得税は下記の通りとなり、少し額が平常時よりも増えることとなるのです。
◆長期譲渡所得の税率
○所得税15%
○住民税5%
○復興特別所得税:所得税率×0.21%=0.315%
税率合計 20.315%
◆短期譲渡所得の税率
○所得税30%
○住民税9%
○復興特別所得税:所得税率×0.21%=0.63%
税率合計 39.63%
3. 相続した不動産を売却する時の所得税対策とは?
ここまで、相続した不動産に関する譲渡所得税のシステムについてざっと確認して参りましたが、それではここで、お手持ちの相続不動産売却に向けて少しでも税金を安くするポイントをまとめておきましょう。
- 取得費には「実額法」を
不動産を手に入れた際にかかった金額「取得費」には、概算法と実額法の2種類がありましたね。
もし相続した不動産が相当古かったり、書類が見当たらない場合でも、あっさりと概算法で売却額×5%算出してしまわず、少しでも取得費の参考になる資料が無いか考え探し出しましょう。分譲時のパンフレットや通帳の履歴など、どんな些細な資料でも構いません。前述致しましたリストを参考に、できるだけ実際の取得費を反映して譲渡益から控除できるよう努めてください。
- 相続の申告期限から3年以内に売却する
不動産を相続する前、あるいは相続して早い段階で売却を考えたなら、すぐにアクションを起こしてこの期限内に売ってしまいましょう。相続時売却の取得費加算特例は、既にご紹介したように譲渡益から相続税を控除できる優れものです。
この2つのポイントを軸に、ご自身の相続された不動産に適用される可能性のある税制特例を徹底的に洗い出しておきましょう。
4. 相続した不動産を売却する時の注意点
それぞれの項目で少しずつ注意点は書き添えてありますが、この他にも以下のようなちょっとした留意すべきポイントがあります。
◆分離課税
譲渡所得税は通常の確定申告と同じく、所得が発生した翌年の2月16日~3月15日に税務署に自己申告することで税制上の手続きが進むこととなります。ただし、譲渡所得税は一般的な所得である給与や報酬などとは別枠での計算「分離課税」方式で税の計算が行われますので注意してください。
◆印紙税
不動産売却の際に主にかかる税金の一つが今回のテーマである譲渡所得税ですが、第二の代表的な課税がこの「印紙税」です。これは不動産の売買の際に、印紙を購入して売買契約書に貼付するという形で納付を行います。
契約金額によって納付しなければならない印紙税は異なってきますので、以下の表を参考にしてくださいね。
契約金額 | 印紙税 |
500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 6万円 |
5億円超10億円以下 | 16万円 |
10億円超50億円以下 | 32万円 |
50億円超 | 48万円 |
5. まとめ
いかがでしたでしょうか?
両親などから不動産を相続し、その後売却を行う場合の譲渡所得税を中心にご説明させていただきました。なかなか長い内容となってしまいましたので、お疲れでなければ良いのですが……
とは言え、なんとなく概要を知るだけならまだしも、頭では理解できたのに実際には不明瞭な点も多く出てくるかもしれません。口を酸っぱくして申し上げますが、そんな時には無理せず、税理士さんなどプロの手を借りることを恐れないでください!
お手持ちの物件に、良い引取先が見つかりますよう祈っております。