事例紹介

Category  不動産

2018年10月22日

借地料による収入で確定申告の義務が発生?計算方法や申告方法も解説

相続や売買などにより最近になって土地を手に入れられたという方、貸付により得た収入はちゃんと税務署に申告されていますか?

やっと土地の賃貸経営について準備が終わり一息という頃かと思われますが、油断するのはまだ早いですよ!土地の貸付が行われている場合、そこから出た利益をしっかり計上し申告するため、早めに動かねば後々面倒なことになるのです。

今回は、土地の貸付による借地料の確定申告方法についてご紹介したいと思います。

1.借地料の収入と確定申告義務の関係

所有している土地を他者に貸し出しており、そこから利益を上げている場合それは「不動産所得」となります。

給与などを中心に、現在日本では的確な課税のために収入がある限り「確定申告」を行う必要があります。会社勤めの方ならば、お勤めの企業の経理担当者などが年末調整を行なってくれるかと思われますが、それとは別に副収入がある方や、個人事業主の場合は確定申告書を自ら作成し所轄の税務署に提出する必要がある場合がほとんどです。

そして今回ご紹介する、土地を貸し出すことによってその借地料から得られた利益(=不動産所得)もきちんと計上し、必要に応じて税務署へ申告を行わなければなりません。

それではまず、不動産所得がある場合について確定申告を行う必要がある場合とそうでない場合、また相続により取得した土地の利益を申告せず放っておいた場合どうなるかについてご紹介したいと思います。

1-1.確定申告が必要な場合

土地の権利所有者が、その権利を他者に貸し付けることで得た権利金・賃料は不動産所得とみなされ、給与などとは別に確定申告が必要になります。

1-2.確定申告が不要な場合

もし不動産所得が発生している場合でも、その額が20万円以内である場合は申告の必要はありません。少額不追求の観点から、また事務処理簡略化の目的があるためです。

1-3.相続した土地に関する確定申告がされていなかった場合

親族が所有する収益物件を相続したり、相続された土地の権利を貸し付けてそこから収入が発生すれば、もちろん確定申告の対象となります。

もし申告が行われず放置されていると、税務署から通達があり、ペナルティを支払わなければなりません。無申告加算金と延納料で数十万円、また数年間に渡って無申告の場合は3~7年ほどまでさかのぼって税を一気に納付しなければならず、大変なことになります。

また相続税に関する申告漏れということで、通常クリーンな状態ならば受けることのできた相続税に関する軽減税率も手続きが難航することになります。もし当該不動産を宅地として使用しているならば、通常は借地権割合と借家権合わせて18%の控除と、敷地が200平米以下なら小規模宅地、200平米を超えるなら一般宅地として不動産評価額から大幅な控除が受けられるのですが・・・

ちなみに過年度申告として、過去5年以内のぶんの申告なら延滞料や無申告加算金、健康保険料・住民税・所得税の追加徴税分から債務控除の適用を受けることは可能です。

2.不動産所得の計算方法

不動産所得は、以下のような式によって算出されます。

不動産所得=当該不動産からの総収入金額−必要経費

次に、ここに登場するそれぞれのワードについて今一度確認しておきましょう。

2-1.収入金額とは?

前述のように、土地の権利を他者に貸し付けそこから得た利益のことを差します。

具体的に列挙しますと以下の通りです。

  • 地代収入
  • 家賃収入
  • 礼金
  • 権利金
  • 更新料

ちなみに敷金や保証金は必要に応じてプール(保管)しておき、契約終了時に借主へ返納しなければならないので収入金額には含めません。

2-2.必要経費とは?

収入を得るために投資した費用は必要経費として、収入金額から差し引かれます。

必要経費に挙げることのできる費用はいくつかありますが、参考としてその代表例を以下にご紹介致します。

  • 当該不動産の固定資産税・都市計画税などの公租公課
  • 修繕費(増改築などにより初期投資として認められるものは資産として計上される)
  • 不動産管理会社に支払う手数料
  • 賃貸開始後に支払った借入金の利息
  • 借主募集のための広告宣伝費
  • 税理士などへの報酬
  • 立退料
  • その他雑費

3.借地料の確定申告方法

借地料(不動産所得)に関する確定申告には、後ほどご紹介するような必要書類を持って期限内に所轄の税務署まで足を運ぶ必要があります。

最近ではインターネットを使った「e-tax」という便利な在宅申請の方法もありますが、税務署員との相談の元、より確実にクリーンな申告を行いたい方は直接訪庁での申告をお勧めいたします。

3-1.確定申告の種類

借地料の具体的な確定申告方法について、まずは白色申告と青色申告の違いを知っておく必要があります。

それぞれの申告方法にメリット・デメリットが存在しますので、下記のポイントを加味しながらご都合に合わせてどちらが良いか早めに選択しておきましょう。

◆白色申告

青色申告に比べて比較的楽に手続きを行え、小規模な不動産運営に向いています。

青色申告の承認を得ていなければ、全員自動的にこちらの形式となります。

帳簿のつけ方は単式簿記でも複式簿記でもよいのですが、簿記に関わる必要書類は5~7年は置いておく必要があります。また専従者に対する給与を経費化して計上する特例には白色の場合大きな制限があり、配偶者なら86万円まで、それ以外なら50万円までと定められています。

貸倒引当金の計上についても制限があり、こちらは個別貸倒引当金しか対象となりません。

損失の繰越に関しては、事業用資産が災害損失を受けた場合や変動所得の場合に限られます。

◆青色申告

白色申告に比べてかなり手続きは面倒ですが、その代わりに税制上の優遇や多数のメリットがあります。

青色申告のメリットで一番大きな、65万円の青色申告特別控除を受ける際は、以下のような事業規模でなければなりません。

  • 戸建て家屋なら5棟以上
  • マンション・アパートなど集合住宅ならおよそ10戸以上の貸付物件を所有
  • 駐車場経営なら50台分以上貸付

売り上げや経費の記帳についてですが、こちらは複式簿記と呼ばれる方式を用います。損益計算書と貸借対照表を作成し、帳簿と領収書などの書類は申告から7年間保存する必要があります。

慣れてくれば記帳は一人でもできるようになりますが、白色申告に比べかなり細かいので最初は税理士さんに助力を求めましょう。また最近ではパソコンを使った会計ソフトで複式簿記が行えるようになっていますので、こちらを使用するのも手の一つですね。

まず基本的にここまでの条件を満たしていなければ、青色申告のメリットはほぼありません。

次に挙げられる大きなメリットは、「青色専従者控除」です。家族などを含む従業員に対して支払う給与を経費として計上することができます。

ただし、この控除を受けるためには、以下のような条件を満たす必要があります。

  • 15歳以上の働ける人のみを家族従業員として扱える
  • 従業員の所得が原則として事業主の所得を超えないこと
  • 当該事業に従事する期間のうち半分以上勤務していること
  • 毎月の給与支払いに伴い源泉税を1月10日までに申告、また所得が103万円以下の場合でも別途納付書・源泉徴収票の提出が必要

また、家族に給与を支払う場合は配偶者控除を受けられませんのでご注意ください。

青色申告での大きなメリット3つめは、損失繰り越しができること。

不動産所得における赤字は給与など他の所得と相殺し税の還付を受けることができますが、青色申告の場合、この損益通算で引ききれなかった額を以降3年ぶんに渡って繰越せたり、逆に前年の黒字から繰り戻したりすることができます。

3-2.確定申告に必要な書類

税務署に確定申告を行う場合に必要となる主な書類は以下の通りです。

①青色申告の場合は決算書、白色申告の場合は収支内訳書

②現金出納帳、契約書面、通帳など収入のわかるもの

③借主の氏名や一ヶ月あたりの賃料などがわかる資料

④通帳、領収書、請求書等、経費に関する書類(維持管理費、銀行振込書、借入金の支払明細など)

3-3.確定申告の期限

当該年度が終了した翌年の2月16日~3月15日が提出期間となっており、もし期日が土日である場合は翌開庁日まで延びます。

この期間を過ぎてしまうと、前半でお話ししたような延納料・無申告加算などのペナルティが発生します。もし前年度以前の所得に申告漏れがあった場合は、過去5年までさかのぼって過年度申請を行い、7年ぶんほどまでは追加徴税が課されます。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか?

土地を貸して得た借地料の、確定申告に関するあれこれをお話し致しました。

確定申告というとなんとなくややこしそうなイメージがありますが、青色申告の帳簿管理などを除いて、実際やってみるとそこまで複雑でないことがお分りいただけるかと思われます。

それよりも、無申告・申告漏れのペナルティの方がずっと怖いので、年末年始の忙しい時期かもしれませんが早め早めのご準備をおすすめ致します。特にはじめのうちは税理士などのプロフェッショナルへの相談も怠らないようにしましょう。