事例紹介

Category  不動産

2019年02月25日 更新

借地借家法の適用外と適用の賃貸借の違いとは

土地や建物の賃貸借契約の場合、借地借家法の適用がされるのか、適用外になってしまうのか契約内容を確認する必要があります。借地借家法は、借主の保護規定を多く設けていますので、適用されるのと適用外になったのと場合とでは大きく違います。

借地借家法においてどのような場合に、適用外になるのか解説していきます。

1.借地借家法の適用外となる場合

土地や建物の貸し借りにおいて、全て借地借家法に適用されるわけではありません。それでは、借地借家法の適用外となるのはどのような場合でしょうか。

適用外となるものについては、法律によって以下のようなものが定められています。

  • 「建物の所有を目的」としないもの
  • 一時使用目的であるもの
  • 賃料を払わず無償で借りているもの

これらいずれかに当てはまる場合は、借地借家法の適用対象外となり、借主保護の対象から外れてしまいます。このようなことから、適用に関する内容で、裁判となってしまうケースも少なくありません。具体的に適用になるか否かは最終的には裁判で判断されることになりますが、これまでの判例からどのような場合に適用され、どのような場合に適用されないかということがある程度わかっています。

1-1.借地借家法の適用範囲

借地借家法とは、平成4年8月1日に施行された法律です。「借地権」と「借家権」の権利を定めている法律で、土地や建物を賃貸借する際に適用されます。家を借りている方や、土地を借りている方は、一般的にオーナーに比べるとどうしても弱い立場となってしまいます。そのため、その借主に権利を保護してあげようという目的で民法の特別法として、借地借家法が制定されました。

1-1-1.借地借家法第1条

借地借家法の第1条(趣旨)において、「建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続きに関し必要な事項を定めるものとする」としています。これは簡単に言うと借地借家法の適用を受けるためには、「建物の所有を目的」としているのが大前提でなければなりません。

1-2.借地以外の建物所有が目的ではない場合は適用外

土地賃貸借において、「建物所有が目的」のものは借地借家法の対象となります。適用のある土地賃借は借地とされています。しかし、「建物所有が目的」ではない場合は、適用外となります。

1-2-1.借地借家法における「建物」の定義

借地借家法の1条(趣旨)において「この法律は、建物の所有を目的とする地上権および土地の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続きに関し必要な事項を定めるものとする」とされています。これは簡単に言うと借地借家法の適用を受けるためには、「建物」の所有を目的としていなればなりません。

借地借家法における「建物」というのは、「土地に定着し、屋根・柱・壁を有し、住居用・事業用に用いることができ、独立の不動産として登記ができる」という建物になります。そこの条件に当てはまる建物であれば、借地借家法の適用を受けることができます。「建物」は、アパートやマンションなどの居住目的やオフィス、倉庫などの事業目的などその用途に関する目的は特に関係はありません。構造上や経済上独立していることが必要になってくるのです。

1-2-2.建物の構造について

最高裁の判例では、土地の地面に丸太を立てトタン葺屋根をつけ、周りに板を打ち付けて壁としている場合、土地に丸太を立てトタンで覆った掘立式の書庫、土台や 柱もなく、建物の面積も2平方メートルであった露店については、「建物」とみなさないとしています。

1-2-3.「建物の 所有を目的とする」 について

農耕作をするのを目的とした場合、建物以外の工作物をその土地に所有するのを目的や使用しようとしている場合は、当然「建物の所有を目的とする」という意義に反していますので、借地借地法の適用はできないとしています。

1-2-4.建物を所有していた場合について

建物がその主たる目的でなく、従たる目的とみなされた時は、借地法の適用はできません。最高裁の判例を見ると、認められなかったものとして以下の敷地に付随している建物になります。主に広い土地があるのにも関わらず建物がある一部として建てられている場合に当てはまります。

  • ゴルフ練習場
  • バッティング練習場
  • 自動車展示場販売・修理
  • 作業場、物品・資材置場
  • 露天造船用建造物
  • 養魚場、釣堀

これらの建物の場合、その規模や実際の運用方法にもよりますが借地法の適用が認められない可能性が高くなっています。

1-3.一時使用目的の賃貸借契約も適用外

建物以外にも借地借家法の対象とならないものがあります。それは、土地または建物が「一時使用目的」とみなされた場合です。借地借家法25条(一時使用目的の借地権)の「臨時設備の設置その他一時使用のための借地権を設定したことが明らかな場合には適用しない」、借地借家法40条(一時使用目的の建物の賃貸借)の「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、適用しない」というのがあります。土地の借地権、建物の賃貸借ともに、それぞれ規定されていますので、これらの一時目的に該当するものは適用対象とはなりませんので注意が必要です。

2.借地借家法適用外の場合の法律

借地借家法の「建物所有目的」ではない場合は、適用外となります。その場合は、民法上の期間の上限が適用されることになります。

2-1.土地賃貸借の契約期間

民法上においては、賃貸借契約の期間の上限は20年とされています

2-1-1.民法604条

民法第604条(賃貸借の存続期間)

1)賃貸借の存続期間は、20年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、20年とする。

2)賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から20年を超えることができない。

2-1-2.民法617条

民法第617条(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)

(1)当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。

一 土地の賃貸借 1年

二 建物の賃貸借 3か月

2-2.土地賃貸借契約の中途解約

土地賃貸借契約の中途解約は、期間の途中で無条件で契約を解除するというのはできないようになっています。しかし、解約申入条項において途中で解約できる旨が記載されている場合は可能です。

ただし、借地借家法において賃借人からの解約申入条項は、保護ルールに反するとされ無効と考えられています。そのため賃借人が途中で解約できるという特約については有効となります。

3.まとめ

土地賃貸借においては、一般的には借地借家法が適用されます。この特別法は、借主の権利保護を目的とした法律です。今回はこの借地借家法が適用される場合とされない場合の基本的な説明を解説してきました。しかし、最高裁の判例にあるように、適用対象に明確な判断基準はなく、ケースバイケースで判断されていくこととなります。

基本的な借地借家法の定義と考え方を理解し、賃貸借契約をする際には、しっかりと確認しましょう。