事例紹介
Category 所得税
2018年06月27日 更新
【所得税】不動産の収入計上時期の決め方
不動産での収益を得られるようになると、しっかりと記帳していく必要があるので、いつ収益が発生し、計上するのはいつなのか把握しておく必要があります。
家賃収入が入るようになると、いつ計上していくのかという基本的な疑問は実は多くの人が考えている問題です。
そこでこの記事では、不動産所得の収入をいつ計上するのが良いのか考えていきます。
この記事でわかること
1. 所得税計算における不動産の収入計上時期はいつにするのか
所得税を計算する時には、記帳をしていきます。それにはいつ収入が発生し、どのようにお金が動いたのかを記帳という形で、残しておく必要があります。
しかも、所得税法第26条第1項では、「不動産、不動産上に存ずる権利、船舶、または航空機の貸付けによる所得を不動産所得とする」と規定されており、2項では「不動産所得の金額は、その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする」と書かれているだけで、収入の計上時期については、明記されていません。
そうしたこともあり、多くの人が収入計上時期について疑問を持っているのです。それでは、収入が発生するいくつかのパターンから、収入計上時期について見ていきましょう。
1-1. 通常は契約時に定めた収入発生日
通常は、契約時に定めている収入が発生した日になります。それも所得税基本通達36ー5には、「契約または慣習により支払日が定められているものについては、その支払日(請求があったときに支払うべきとされているものはその請求日)」とされています。
簡単に説明すると、2月の家賃を前月の1月31日までに支払うという契約をされているのであれば、2月分の家賃は1月31日の収入として計上するという決まりです。この計上方法では、契約上の支払日が収入としての計上する日になるので、借りている人が家賃の支払いを遅らせた場合も1月の収入として計上する必要があります。
実際の入金が2月になっても、この方法であれば1月に収入として計上していくので、簡単な計上方法と言えます。
しかし実際の入金が1月にあっても、2月の収入をして計上する方法も存在します。その計上方法や条件は、後程解説していきます。
1-2. 支払日が定められていない場合
支払日が定められておらず、その月によって収入がある日が違うという事もあります。その場合には、2つの場合が考えられます。
請求をして支払ってもらう場合
請求をして支払ってもらうというケースです。この場合には請求をした日が収入として計上する日になります。まだ請求をしているだけで、実際に収入は入ってきていませんが、それでも請求をした日に収益として計上する必要があります。あまり多くないケースかもしれませんが、支払日が定まっていない一つのケースとして覚えておきましょう。
支払いをそのまま受けた場合
支払いをそのまま受けたという場合です。支払日が決まっておらず、そのまま入金があった場合は、支払いを受けたその日が収入として計上する日になります。
1-3. 賃貸借契約存否の係争等があった場合
先ほどの所得税基本通達36-5には以下ようにあります。
「賃貸借契約の存否の係争等(未払賃貸料の請求に関する係争を除く。)に係る判決、和解等により不動産の所有者等が受けることとなった既往の期間に対応する賃貸料相当額(賃貸料相当額として供託されていたもののほか、供託されていなかったもの及び遅延利息その他の損害賠償金を含む。)については、その判決、和解等のあった日。」
この場合の基本的な事として、和解して解決するまでは、収入として計上しないという事です。
賃貸契約で係争などは、明渡請求と値上げ請求のどちらかが考えられます。
明渡請求の場合は、和解するまでは収入金額を計上せずに、和解した時に一括計上していきます。
値上請求の場合は、和解するまでは、供託金額として収入金額に計上しておき、和解次第差額を計上していきます。
値上請求の場合は、元の金額を計上しておく必要があります。基本を抑えながらも、状況によって計上の方法が異なりますので、覚えておきたい点です。
1-4. その他の収入計上時期
その他の不動産に係る収入の計上時期についても考えてみます。
頭金や権利金などは、その引き渡しがあった日に、もしくは契約の効力が発生する日に属する年の総収入金額に計上していきます。これは未収の場合であっても、計上が必要になる項目です。
頭金、権利金、さらに礼金などは資産の引き渡しを要するものは、引き渡しの日に計上していきます。反対に、名義書換料や更新料などの資産の引き渡しを要しないものに関しては、契約更新の効力が発生する日に計上していきます。
さらに不動産に関係しての収入として、敷金や保証金があります。
これらは返還必要でなくなったと、確定した金額をその年の収入金額に計上していきます。
・契約の時から返還しない金額が定められている場合、もしくは中途解約した場合に返還しない金額が定められている場合:物件の引き渡しをした年に計上
・返還しない金額が貸付期間の長さで定まっている場合:返還不要と確定した年に計上
・貸付期間が終了して始めて返還金額が決定する場合:貸付終了時の年に計上
2. 法人税の場合の収入計上時期
不動産事業を法人でしているのであれば、計上時期には違いがある事を理解しておく必要があります。法人税の場合には、不動産の譲渡をどのタイミングで計上するのかで、譲渡所得が大きく変化します。
譲渡日がずれるだけで、法人税や所得税の確定申告での申告額が変わってきますので、大きな問題となります。
特に年度の所得が変わるタイミングで、不動産の明渡などがあると、どのタイミングで計上するのかは、各年度の所得に影響を及ぼします。
法人税の場合ではいつ計上するのかも、個人の時とは別で知識を持っておく大切さがあるのです。
法人の場合には、譲渡をした日に所得を計上しますが、その譲渡日は原則として引き渡した日になっています。もし引き渡した日が不明の場合には、代金のおよそ半分を受け取った日か、もしくは所有権移転登記申請の日のどちらか早い日で計上することができます。
建物の場合であれば、鍵を受け渡しするので、引き渡し日が不明という事は無いことが多いのですが、土地だけという場合には引き渡し日が不明というケースも存在します。その場合は、先ほどの2つの日の内の早い日を計上する日にしておきましょう。
法人税という事は、不動産の売買を主な事業としているケースがほとんどでしょう。その場合に、収入を言計上するのが難しいケースとして、仲介手数料という収入があります。不動産会社は、仲介手数料が収入になります。一般的には、契約の際に50%の仲介手数料を、そして決済の際に残りの50%を受け取るという事が多いです。
これに関しては、通達で取り扱いについて以下のように言及されています。
「法基通2-1-11(不動産の仲介あっせん報酬の帰属の時期)
土地、建物等の売買、交換又は賃貸借(以下2-1-11において「売買等」という。)の仲介又はあっせんをしたことにより受ける報酬の額は、原則としてその売買等に係る契約の効力が発生した日の属する事業年度の益金の額に算入する。ただし、法人が、売買又は交換の仲介又はあっせんをしたことにより受ける報酬の額について、継続して当該契約に係る取引の完了した日(同日前に実際に収受した金額があるときは、当該金額についてはその収受した日)の属する事業年度の益金の額に算入しているときは、これを認める。」
基本的には、契約の効力が発行した日に売り上げも計上していきます。しかし特例として決済時に売り上げ計上することも認められています。
3. 収益と費用の計上時期にズレがある理由
では、収益と費用の計上時期にズレが生じるケースについても考えてみましょう。いくつかの理由で、収益と費用の計上時期にズレが生じることが認められることがあります。
もし家賃収入計上時期がズレていると、アパートやマンションなど部屋数が多い不動産の場合は特に、収入のズレが明確になります。この家賃収入時期のズレは、見た目に分かりやすい違いですので、指摘を受ける事が多くなるものです。
主な収益と計上時期のズレは、オーナーが直接家賃をもらう場合と、管理会社を通して家賃をもらう場合で、処理が異なります。しかし家賃の収入計上時期は、入金とは関係なく収入は別として計上することもあります。
一般的に多いのは、1月分の家賃は1月に計上しているという場合です。この場合は、シンプルにその月の分を、収入計上していくとよいので、それほど難しくありません。しかし次の月の分を、前の月に入金してもらう場合には、税務上の経理が異なります。
例えば、4月入金分(5月分)が入ってきており、4月分は3月にすでに入金済みという事です。次の月5月入金分は6月分になります。5月分は、先ほどの4月に入金済みというケースになります。
上記の場合の税務上の経理は、翌月分が当月入金された場合に(現金・預金)/(前受け金)という形で処理をし、翌月の経理処理で、前月の入金済み家賃が該当月になったので、(前受け金)/(家賃収入)という処理になります。
しかしこれは管理会社を通さなかった場合の話で、管理会社を通すと前受け金として入金済みの家賃も、当月家賃として該当月に入金されることもあります。
このように、不動産管理会社と通しているのか、それとも直接家賃を受け取っているのかで、経理処理が異なることもあり、よく賃貸借契約書を確認して経理作業を行う必要があります。
4. まとめ
不動産収入は、その年の確定申告に大きな影響を及ぼす内容ですので、いつ計上するのが正しいのか理解しておく必要があります。少しの時期がズレるだけで、申告すべき税金の額が変わってくることも多く、さらに税務署からも指摘される危険性があります。
よく賃貸借契約書を確認し、いつ計上するのが正しいのか確認しながら、正確な経理を進めていきましょう。