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Category  不動産

2018年12月16日

太陽光パネル設置のために農地転用するために必要な書類は?

近年、太陽光発電が注目されています。太陽光は自然環境エネルギーとして効率がよく、地球温暖化対策にもなります。また、ソーラーパネルで発生させた電力を売却することで、収益を上げることもでき、ビジネス面でも高い関心が寄せられています。同じ発電システムでも、水力や風力と比べて設置コストも安く、新型の普通乗用車一台分の価格よりも安い場合も多いです。そのため、一般家庭でも導入する動きがあります。

田舎では、畑や農園だった土地内に、太陽光パネルを直接設置することが多いです。家屋の屋根よりも使用パネル数が多く、さらに地方は都会と違い日照を遮るものが少ないため、効率よく発電させやすく、電気を多く売却できるメリットがあります。そのため、田舎暮らしの人にとっては、太陽光発電は、重要な収益源として考えられ、今も太陽光パネルを畑や農園だった土地に設置したいと考える人はいるでしょう。

しかし、元々農業に利用されていた土地を太陽光パネルのスペースに変えるのは「農地転用」とされ、それには都道府県知事または農林水産大臣が指定する市町村長の許可を得なければなりません。

本記事では、太陽光発電設置のために必要な書類と手続きの方法について述べます。

1.太陽光設置で農地転用する場合の注意点

太陽光パネルを農地だった場所に設置するのは「農地転用」です。本来農地は、勝手に別の用途に利用してはならないと法律で定められています。これを守らない場合は農地法違反となり、公的機関の指導が入ります。それでも守らないと、懲役刑や罰金刑、さらに農地にふさわしい状態へ戻す義務などの処分が下される場合があります。

農地転用には、農業委員会に対し申請手続きを行い、農業委員会の意見書をもらい次第都道府県知事に提出し許可を待つ必要があります。

1-1.太陽光パネルが設置できる農地区分

まずは自身の土地が、法的に太陽光パネルを設置できる農地区分であるかを確認する必要があります。太陽光パネルを設置できる農地区分は、農用地区域外農地のうち、第2種および第3種農地となります。こちらは、農業があまり盛んな地域とみなされていないことから、白地」と呼ばれています。

農用地区域外農地には、甲種および第1種農地も存在しており、ここは今後10年以上にわたり農業ができる場所を一定にわたり押さえておくため、農地以外の土地利用に厳格な規定を設けており、「青地」とも呼ばれています。ここを農地転用するには、「農振除外」という別途の手続きが必要になります。

1-2.太陽光発電施設の種類

農地転用した土地に太陽光発電を設置する方法は二通りあり、土地全体に太陽光を置く「転用型」と、農地に支柱を立てて農業ができる状態を残したまま太陽光発電を並行して行う「営農型」です。

・農地全体を転用する方法

農地全体を太陽光発電用の土地に転用することは、転用型太陽光発電と呼ばれます。農地だった土地全体を太陽光パネルで埋め尽くします。家屋などの屋根の上に設ける場合よりも多くパネルを設置することができ、多くの発電量を得ることができます。もちろん発電量に応じて電気を売れば、多額の収益を得ることも可能です。

ただし、パネルの数が多くなるので、設置コストも家屋の場合と比べて高くなることも想定する必要があります。また、一度土地をパネルで埋め尽くせば、それ以降は農業をはじめとした他の用途には一切利用できなくなります。

・農地に支柱を立てる方法(営農型発電設備)

太陽光パネルを設けながらも、農作業を続けたいと考える人には、営農型発電設備 (ソーラーシェアリング)をおすすめします。営農型発電設備の場合は、農地内に支柱を組み、その上に発電パネルを設置します。その下で作物を育てるので、パネルで太陽光が阻害されないよう、高さや角度を調節する必要があります。

例えば、さつまいも、キャベツ、トマトなどの陽性植物は、直射日光に当たる時間が長いことが健全な発育の条件となります。パネルにより太陽光が遮られると、これらの作物はよく育たず、枯れてしまうこともあります。

対して、しそ、にら、しょうがなどの陰性植物は、1~2時間程度での日照時間でも充分に育つため、ある程度パネルで太陽光が防がれている状態が理想的です。

2.太陽光発電のために農地転用する場合の必要書類一覧

書類名 備考
①申請書
②申請書に係る別紙 申請書で書ききれない分を補う場合のみ
③登記事項証明書 (登記簿謄本) 全部事項証明書のみ有効
④位置図 市役所や支所からの位置関係が分かる市町村全図等。縮尺の明記も確認しておくこと
⑤案内図 申請地への案内図や住宅地図等
⑥地籍図・字図 税務課の地籍図もしくは法務局の公図
⑦現況図 申請地周辺の土地状況がわかるもの。公図等の写しに近くの地目・地積・名義人が記されていること
⑧配置図 境界からの距離・排水経路含め、建物の配置がわかるもの
⑨その他必要書類 被害防除計画書・誓約書などを必要に応じて
⑩添付書類 代理人に申請手続きをしてもらうための委任状など、必要に応じて

 

2-1.①申請書

農地法第4条、第5条に基づいた、農地転用の許可を申請するための書類です。正本3部が必要で、コピーも可能です。

・取得方法、費用

各市町村や都道府県の公式サイトにある農地転用に関するページから、PDFダウンロードより印刷することができます。市役所を訪れて手に入れることも可能です。もちろんいずれの場合も無料です。

2-2.②申請書に係る別紙

申請書のなかで書ききれない部分を補うための別紙です。特に様式は指定されていませんが、元の申請書と同じサイズであることが望ましいです。

・取得方法、費用

ノートのページのような罫線のない白紙の紙があれば無料で用意できます。

2-3.③登記事項証明書 (登記簿謄本)

土地の全部事項証明書とも言われます。土地の所有者・面積・所在などを示したものです。しかし登記が義務でない関係上、登記簿の情報が必ずしも取り寄せた地点の状態と一致しているとは限らないので多少の注意は必要になります。

・取得方法、費用

法務局で取り寄せられます。窓口では手数料が600円、オンラインの場合は郵送で500円、最寄りの登記所や法務局証明サービスセンターで受け取る場合は480円となります。

2-4.④位置図

都市計画図内の申請地を赤ペンで囲っておきます。

・取得方法、費用

市役所の都市計画課において、100円で買えます。

2-5.⑤案内図

申請地が載ってある地図です。申請先とともに示されていることが望ましいです。

・取得方法、費用

Google Mapsなどを印刷することで事足りるため、実質的な費用はかかりません。

2-6.⑥地籍図・字図

税務課の地籍図もしくは法務局にある公図のことです。主に土地の形と地番、道路や水路などを簡易的に示した図面です。

・取得方法、費用

税務課または法務局、もしくはそれぞれのホームページより請求し取り寄せてもらえます。ただし相応の手数料がかかります。

2-7.⑦現況図

土地家屋現況図です。地籍図または公図の写しに近くの地目・地積・名義人が記されている必要があります。

・取得方法、費用

⑥に同じです。⑥の分だけ注文し、コピー利用することで手数料の節約も可能です (コンビニなどの店舗でコピーする場合は10円単位の金額が必要になります)。

2-8.⑧配置図

建物配置図のことです。申請地に対し、その配置状態や、境界からの距離、排水経路が分かる図です。

・取得方法、費用

法務局で、相応の手数料を払うことで取得できます。

2-9.⑨その他必要書類

申請地やその所有者の状況に応じて必要となる諸々の書類のことです。太陽光パネルを原因とした近隣へのトラブルも想定して、被害防除計画書・誓約書は必ず必要になります。

このほか、登記住所と現在の住所が異なる場合に戸籍附票や住民票、土地改良区内にある場合の土地改良区の意見書など、太陽光パネルの建設を予定する土地や所有者の状態に合わせて、用意すべき書類が異なります。

・取得方法、費用

⑨は人によって用意すべき書類とその数が異なるため、基本的にケース・バイ・ケースです。ただし、被害防除計画書・誓約書は都道府県および各市町村のホームページで無料ダウンロードできます。

2-10.⑩添付書類

農地を建物、駐車場、資材置き場、山林に変える場合は相応の図が必要になりますが、太陽光パネルを建設するだけの場合はその必要はありません。

申請手続きを行政書士に任せた場合は、代理人の委任状が必要になります。

・取得方法、費用

委任状は行政書士の事務所において、依頼したその場で作成してもらうことがほとんどです。相応の費用を請求されますので、事前に確認しておきましょう。

3.太陽光設備のための農地転用手続きの流れと費用

上記の書類を全て農業委員会へ提出したあと、農業委員会はその都道府県の知事に対し、意見書を添えて送付します。知事は県農業会議からの意見を受けたあと、知事から申請者へ許可通知が出れば、農地転用が成立し、太陽光パネルを建設することができます。

この間、早ければ1ヵ月で全てのプロセスが成立しますが、書類の不備や申請地の条件などにより不許可になる可能性もあります。1日でも早い農地転用の成立のため、書類や申請地などの状態を厳重に確認することが重要です。

4.農地転用手続きに困った場合の相談先

農地転用の手続きは、多数の書類が求められるなど複雑なので、人によってはどうすればいいか悩むところでしょう。その場合に最も頼りになるのは、行政書士事務所です。行政書士はインターネットでも農地転用について解説している人が多いため、最適な相談先と言えます。

このほか、不動産屋や土地家屋調査士に相談することも考えられます。知人や近隣に実際に農地転用をした人がいる場合は、専門家と同等の有力な相談先にもなりえます。

5.まとめ

農地だった場所に太陽光パネルを建設することは、無許可ではできません。必要書類を揃えて農業委員会に申請し、都道府県知事から農地転用の許可を得てから、業者に太陽光パネルを建設してもらう必要があります。

太陽光パネルで発生した電気を売ることによる収益は魅力的ですが、農地法などの正しいルールを守らないと、刑事告訴される恐れもあります。それを避けるために、太陽光パネルを稼働させるまでの正しい手順を把握しておきましょう。