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Category  不動産

2019年09月05日 更新

土地の期待利回りの相場と不動産経営の方法とその利回りの相場

不動産経営(土地活用)を行う際にぜひ知っておきたい言葉が土地の「土地期待利回り」です。この相場を知ることで、その土地で不動産経営を行う際にどの程度の利益が得られるかを知ることが出来ます。

ここでは土地期待利回りの種類と不動産経営(土地活用)の方法、そこから得られる利回りの相場などについて解説していきます。

1.土地の期待利回り相場はいくら?

土地活用を行う上で良く耳にする言葉に、「土地期待利回り」というものがあります。この土地期待利回りとは人に貸していない土地、いわゆる更地に対する土地の利回りのことを言います。土地を貸す場合の賃料は、不動産鑑定評価基準によって決められることがほとんどです。

この土地を貸す値段、いわゆる「地代」を算出するときに必要になるのが期待利回りです。期待利回りは土地の整地などで土地を貸しだすために投資した費用に対して、1年あたりの収益の割合を指すものです。

ここでは期待利回りについて詳しく解説していきます。

1-1.表面利回り(粗利回り)と実質利回り(NOI利回り)

期待利回りとは年間の賃料の総額を投資額で割った「表面利回り(粗利回り)」と、年間収益を投資額で割った「実質利回り(NOI利回り)」の2つの種類があります。NOI利回りとは、Net Operating Incomeの略で、直訳すると「実質の運用収入」となります。表面利回り(粗利回り)は一年間の借地料(地代)収入÷土地の購入価格×100で計算されます。なお、一年間の借地料(地代)は一年間空き地状態がなく、1年間を通して借地料(地代)が入ってきた時を想定して計算されます。

しかし、表面利回り(粗利回り)は土地の収益性を適正に表しているとは言えません。土地を貸しだす場合には借地料(地代)として収入が発生しますが、土地の固定資産税などで支出も発生します。さらに、土地を購入する際には、土地の価格自体ではなくその他の諸経費が必要になります。ですので、表面利回り(粗利回り)のみでは、土地から得られる収益の実態を正しく把握することが困難であるといえます。

実質利回り(NOI利回り)は年間の賃料の総額から年間支出を差し引いたもので、この年間支出の中には借入金返済金額と減価償却費は含まれません。減価償却費が年間支出に含まれないのは、減価償却費は実際にお金が発生しない費用であるためです。

借入金の返済前に手にした実質的に資産運用で得られた収益のことを実質利回り(NOI利回り)と言います。実質利回り(NOI利回り)は、ネット利回り、純利回りとも呼ばれ、実際に手にした借地料(地代)から土地固定資産税や都市計画税などを差し引いた金額により求められます。ですので、表面利回り(粗利回り)と実質利回り(NOI利回り)の関係は(表面利回り(粗利回り)-年間支出)÷投資額=実質利回り(NOI利回り)となります。

ですので、表面利回りのほうが実質利回り(NOI利回り)よりも大きくなります。

実質利回り(NOI利回り)という言葉は聞きなれないものなので、土地活用を始めようと思い始めたころは、表面利回り(粗利回り)のみに気を取られて土地の良し悪しを決めてしまう人が多いようです。しかし、表面利回り(粗利回り)が良い土地でも、実際には入居者募集の費用などがかさむことがあるため、実質利回り(NOI利回り)が悪い場合も考えられます。

そのため、土地活用を行うにあたっては表面利回り(粗利回り)よりも実質利回り(NOI利回り)に着目することが大切です。投資のプロは、表面利回り(粗利回り)よりも実質利回り(NOI利回り)に注目します。

1-2.実質利回り(NOI利回り)の相場は4〜6%

土地活用における実質利回り(NOI利回り)の妥当な水準は4%から6%です。これは土地を貸しだす場合だけではなく、アパートやマンション、オフィスや商業施設、ホテルや倉庫棟、不動産投資の実質利回り(NOI利回り)がこの範囲に含まれます。

なかには実質利回り(NOI利回り)がこのレンジから外れる物件も存在します。このレンジより低い実質利回り(NOI利回り)の物件はかなり高め、高い実質利回り(NOI利回り)の物件はかなり安めであると判断されます。都内など土地の価格が高い場所では、借地料(地代)も高くなるため、土地を購入するところから不動産投資を行うことが可能です。投資家が考える実質利回り(NOI利回り)は、土地を購入する段階から投資を行うことを前提として計算した利回りとなります。

ではなぜ、実質利回り(NOI利回り)は4%から6%が妥当な水準であるといわれているのでしょうか?それは土地を購入した際の借入金返済後の利回りにも関係してきます。一般的に不動産投資ではある程度の自己資金を用意し、後は銀行などから借り入れを行って投資したい物件を購入します。

自己資金と借入金の割合は一般的に3:7と言われています。借入金を物件に必要な投資額の7割にして不動産投資を行うと、借入金返済後の利回りはだいたい3%程度になります。実質利回り(NOI利回り)が4%台の物件である場合、借入金返済後の利回りは2%程度になります。

1-3.土地を所有している場合の期待利回りの相場

では、土地をすでに所有している場合で土地の価格が分からない場合の利回りはどのように計算すればよいのでしょうか?

土地をすでに所有している場合、建築する建物に投資した金額に対する利回り投資の可否を判別します。土地代がかからないため、土地から購入するケースと比べてかなり有利な条件で不動産投資を行うことが出来ます。ですので、もともと持っていた土地を活用する場合には、建物投資に対する実質利回り(NOI利回り)が7%から8%は得られるようにしたいところです。

しかし、土地を持っていても、実際に地方でアパート経営を行う場合には賃貸料が安いため、実質利回り(NOI利回り)は7%から8%に達しない場合がほとんどです。借入金の返済を考慮して、もともと持っている土地でアパート経営をする場合でも、建物投資に対して実質利回り(NOI利回り)が5%程度になるように、借入金額や返済方法を工夫しておく必要があります。

20年から30年前までは、土地を持っている人がアパート経営を行った場合、建物投資に対する実質利回り(NOI利回り)は5%が標準的であるとされてきました。しかし昨今では建築費の高騰のため、土地を持っている場合のアパート経営でも、実質利回り(NOI利回り)が3%を切ってしまうこともあります。

このような場合には、借入金額の返済を行うと利益がほとんど残りません。ですので、土地を持っている人がアパート経営を行う場合の実質利回り(NOI利回り)は、5%が目安の一つになります。5%を割り込むような土地活用は、投資金額が高すぎると判断できるので見送ったほうが無難でしょう。

2.不動産投資(土地活用)における利回りの特徴と注意点

不動産投資(土地活用)を始めるにあたって一番気になることは利回りでしょう。ここではさまざまな不動産投資(土地活用)の種類と、特徴について解説します。

2-1.初期投資を抑えたい方向けの不動産投資(土地活用)とその平均的な利回り

初期費用を抑えて不動産投資を行いたい人にとって重要なポイントは、不動産投資(土地活用)を行いたい土地に建物が建っているかどうかが大きなポイントになります。自分自身で建物を建築する必要がない、あっても軽微な投資額で済む不動産投資(土地活用)の方法としては以下の6つの方法があります。

2-2.定期借地

定期借地とは、所有している土地を店舗や賃貸住宅等の運営業者に10年から30年程度の長いスパンで貸し出し、定期的に借地料(地代)を得る形の不動産投資(土地活用)です。借り受けた事業者が建物の建築と事業を行うため、土地の所有者には初期投資の必要がほとんどなく、立地条件にもよりますが、見込まれる収益は当初に設定した借地用(地代)よりも高額になる可能性もあります。

自分で投資する必要がなく、土地から利益を得ることが出来るというメリットがありますが、長期間にわたり土地を提供する必要があるというデメリットもあるため、将来的に土地の持ち主自身が自分で活用する予定がない場合には有効な不動産投資(土地活用)法になります。

定期借地により不動産投資を行う場合には、自分が所有している土地で事業を行いたいという事業者を探す必要があります。そのため土地の持ち主が直接コンビニや飲食店、マンションディベロッパーに問い合わせたり、事業者誘致からまとめて自社開発を行ってくれるハウスメーカー等の建築会社などに相談することをお勧めします。

利回りは所有している土地を個人に住宅建築用として貸し出すよりは、事業者に貸し出して事業を行ってもらうほうがはるかに高くなります。ですので、所有している土地がロードサイドであるなど事業を始めるにあたり適した土地である場合には、事業者向けに貸し出すようにしましょう。

2-3.駐車場経営

駐車場経営は、所有している土地を車の駐車ができるように駐車区画割りし、区画ごとに利用者に貸し出す方法で利益を上げる不動産投資(土地活用)です。

この駐車場経営には大きく分けて2つの方法があります。それは月極駐車場方式とコインパーキング方式です。さらにそれぞれ2つの方法があり、月極駐車場方式には業者に利用者の募集や管理を委託する管理委託方式、業者に整備した駐車場すべてを一括して貸し出し業者が一般の利用者へ転貸しする一括借り上げ方式があります。

コインパーキング方式には業者に土地のみを貸し出す土地賃貸方式と自分で投資を行い駐車場を整備して、管理・運営を業者に委託する自己経営方式があります。初期投資から管理と運営までのすべてを自分で行うという方法もありますが、ノウハウを持たない一般人である土地の所有者がそれを行うことはリスクが高いので、上記の4つの方法のいずれかを選択することが一般的です。

駐車場経営は自分の土地に車が停められるように区画割りするだけでも始めることが出来るため、少ない初期投資額で始めることが出来る不動産投資(土地活用)です。コインパーキングの土地賃貸方式に至っては全く初期投資の必要がなく始めることも可能です。収益性は、エリアによっては一台分の区画当たり数千円から数万円程度の収益しか望めない場合もあり、固定資産税などの税金を支払うと手元にはほとんど残らないような場合もあるため、あまり高いとは言えません。

しかし、駐車場が不足している地域などで駐車場経営を行うことで、高い利回りを得ることが出来る可能性もあるので、所有している土地の立地が駐車場経営に向いているかどうか十分検討してみることをお勧めします。

将来的にどのように活用するかまだはっきりとは決めていないなどといった場合に、土地を遊ばせておくのはもったいないのでとりあえず…という方にとっては最適な不動産投資(土地活用)であるといえます。

2-4.ソーラー経営

ソーラー経営とは、土地や建物の屋根などにソーラーパネルを設置し、太陽光発電を行うことにより発電した電力を既存の電力会社に売電することです。

「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」という法律が定められており、設置したソーラーパネルの発電規模にもよりますが、10年間から20年間の間、固定価格で電力を売ることが可能です。そのため、マンション経営など他の不動産投資(土地活用)と比べて空室リスクなどのリスクが低く、長期的に安定した収入を得ることが可能です。

ソーラー経営を行うためには、土地に架台を組んでその上にソーラーパネルを設置する必要があります。その費用はソーラーパネル1kW当たりの単価が40万円から50万円程度なので、設置する土地の地形などにもよりますが、仮にかなり大きい30kW分のソーラーパネルで経営を行う場合、初期投資は1,200万円から1,500万円程度になります。

利率は安定していて、5%から10%の利回りが期待できます。

2-5.賃貸住宅経営

アパートやマンションの経営は、ほとんどの土地で行うことが出来る、居住系の建物建築による土地活用の中では最も手軽に始めることが出来る不動産投資(土地活用)であるといえます。投資額は数千万円から時には数億円という大きな額になりますが、相続税対策をお考えの方には多額の投資を行わないと相続税を圧縮する効果が薄くなってしまうという側面もあります。

土地の所有者の資産状況に合わせて適切な規模の投資を行うことでリスクを軽減、相続税対策を行うことが出来ます。利回りはアパートやマンションを建てる場所により得られる家賃収入が大きく変わるため、一概に何%ということはできませんが、おおむね5%から15%の利回りが期待できます。

この方法は地価や賃貸物件の家賃相場が高いところに土地を所有していて、相続税対策をメインに不動産投資(土地活用)を行いたい方にお勧めの方法です。

また、土地に居住用の建物を建てると固定資産税や都市計画税が軽減されるため、節税対策として賃貸住宅経営を始める方もいらっしゃいます。

2-6.トランクルーム経営

トランクルーム経営とは、自分が所有している土地にトランクルーム業者と共同でトランクルームとして使用するコンテナを設置したり、既存の建物や新しく建てた建物の中を区切って収納スペースとし、一般の利用者に貸し出す方式の不動産経営(土地活用法)です。運営法式にはリースバック方式(一括借り上げ方式)、業務委託方式、事業用定期借地方式の3つの種類があります。

トランクルームの規模や経営方式にもよりますが、コンテナ型のトランクルーム経営であれば数百万円からの初期投資で始めることが出来るため、需要次第では利回りも高く、多ければ30%程度の利回りが期待できることもあります。

2-7.コンビニやロードサイド店舗などの商業系施設経営

商業系施設経営とは、自分が所有する土地にロードサイド店舗などの事業者と共同で店舗や商業施設を開発または出店する形式の不動産経営(土地活用)の方法です。所有する土地の前を通る道路に、人通りや交通量が多いほど有利な不動産経営(土地活用)であり、土地の広さに応じてコンビ二などの大型商業施設までさまざまな活用法があります。

商業施設経営の方法には、自分が所有する土地に自分で建物を建て、土地と建物を貸す「リースバック方式」と、土地のみを貸し出す「事業用定期借地方式」の2つの方法が一般的です。土地のみを貸し出す「事業用定期借地方式」の場合でも、貸し出す土地を整地したり、ライフラインの引き込みを行ったりする必要がある場合もあります。

この方法での不動産経営(土地活用)は、土地の立地条件が事業者側に厳しく審査されるため、どのような土地でもできる方法ではありませんが、事業者側の希望と自分の所有している土地の立地条件が一致すれば、可能な不動産経営(土地活用)です。この方法で不動産経営(土地活用)を行うと、住宅の建設用に土地を貸しだす場合に比べて賃料の相場がかなり高いため、10%から20%という高い利回りが期待できます。

3.リスクの少ない不動産投資(土地活用)の方法

不動産経営を行うにあたって一番気になるのがリスクの存在でしょう。しかし、更地のままにしておくと草刈りなどの手入れが必要になったり、固定資産税がかかってしまい、負の財産となってしまいます。なので不動産経営(土地活用)を行いたいと思っていても、リスクが存在するために踏み切れない方も多いと思います。

リスクが低い不動産経営(土地活用)はリターンも少ないのですが、そのまま土地を寝かせておくよりは…とお考えの方には向いている方法であるといえるでしょう。そのような不動産経営(土地活用)の方法としては、少ない投資で始めることが出来る駐車場経営やトランクルームの経営があります。この方法のもう一つのメリットとしては、使用している土地が別の理由で必要になったときに比較的更地に戻しやすいという点です。

しかし、これらの方法は稼働率が低ければもともと低い収益がさらに低くなり、初期投資した分を回収することが難しくなることも考えられます。

このようなリスクを避けるためには安定した収入を得ることが出来、初期投資分を回収することができる可能性が高い不動産投資(土地活用)を行うことがお勧めです。その方法とはソーラー経営と定期借地方式です。ソーラー経営は前述したとおり、発電の規模によっては10年から20年間は発電した電力を固定価格で買い取ってもらうことが出来るため、安定した収入を得ることが可能です。

また、定期借地は土地を貸しだすだけで毎月決まった額の借地料(地代)を手にすることが出来るので、安定した不動産投資(土地活用)であるといえます。

4.まとめ

ここまで、不動産経営(土地活用)を行う場合に注意すべき利回りの種類や、土地をもともと所有している際の一般的な利回りの相場、不動産投資(土地活用)の方法やその利回りなどについて解説してきました。どの程度初期投資にお金をかけることが出来るかや土地の広さや立地条件などにより、リスクとリターンは変わってきます。

不動産経営(土地活用)を始める前に、どの程度の利益が得られるか、不動産経営(土地活用)法が本当に自分が所有している土地に向いているかなどを検討してから、不動産経営(土地活用)を始めるようにしましょう。