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Category  不動産

2018年08月15日 更新

売れない土地・売れにくい土地を売る方法と流れ

相続などで、あまり需要が無い地方の土地を取得してしまったが、使い道がない、という場合、どのように売ったら良いでしょうか。三大都市圏へ人口が集中する一方で、地方では一貫して過疎化が進行しています。特に、東京圏では、人が流入し続け、土地の売買も盛んに行われているのに対し、地方では、人が減り続けており、土地も余る傾向にあります。

活用もできず、売れない状態が長く続くと、固定資産税などの維持費がかさんでしまい、経済的な負担となってしまいます。そうなってしまっては、もはや負債のようなものです。この記事では、そのような不要な土地を売る方法について、価格や不動産業者などの見直すべきポイントを紹介しながら、前編・後編に分けて、考えていきます。

1. 現在の土地市場の状況

世界では、先進国の不動産に投資する新興国の富裕層の動きが加速しています。新興国マネーの影響で、ロンドン、シドニーなどの住宅価格が急上昇し、現地の中流層には手の届かない価格になるなど、社会問題になっています。ロンドンの一等地は昔から富裕層に人気が高く、カタールの王族が不動産の買い占めを行ったこともあります。ロンドンの住宅価格の平均は、他の地域の2倍に達し、価格差は開くばかりです。

中国人富裕層ももともと海外の不動産購入に積極的ですが、中国の株式市場の混乱と元安が引き金となり、その動きが加速しています。チャイナ・マネーの流入を最も恐れているのがオーストラリアであり、今や住宅バブル崩壊の危険性を国際通貨基金からも指摘されているようです。

日本では、2020年の東京オリンピック開催をひかえ、国内景気が穏やかな回復基調にあります。そのような中で、国内はもとより世界中から日本の不動産マーケットに熱い視線が注がれています。長らく不景気が続き、物価の上昇が抑えられてきた日本では、円安も相まって、他の先進国に比べて不動産をはじめとしたあらゆる商品が割安になっているためです。住宅難の香港の中流層が円安で手頃となった東京のマンションを購入するようなケースも増えています。

2016年は、利回りの低下と物件不足で、「買いたくても良い物件がない。」「少しでもいい物件は、すぐに売れてしまう。」と、不動産市場が好調な年でした。

 

1-1. 一部地域の土地を除いて需要が減っている

このように、東京圏をはじめとした都市部の不動産が活況を呈する一方、地方の土地は買い需要が少なく、思ったように売れない場合があります。その原因の1つとして、日本では、三大都市圏への人口集中と地方の過疎化の進展が並行して進んでいることが挙げられます。過疎化が進む地域をみると、同地域全体の平均の人口は2005年(平成17年)の約289万人から2050年(平成62年)には約114万人に減少すると推計され、減少率は約61.0%と見込まれています。

需要が少ない土地はどうしても買主有利になってしまうので、相場よりも高い物件は見向きもされません。買いたい物件を選べる買主と、売りたい物件を選べない売主では、どうしても買主が有利になるのです。売れ残ってしまうと、固定資産税や管理費などの維持費がかかり、家計を圧迫してしまいます。このような場合、高く売るよりも、早く売ることを考える方が、出ていくお金を抑えられ、成功につながるでしょう。現状で売れなければ、何らかの行動を起こす必要があります。これから、そのような時に見直すべきポイントについて、順番に見ていきます。

 

2. 土地が売れないなら不動産会社や媒介契約の方法を見直す

売りに出している土地が売れない時、まず見直してみるべきなのが、以下の2点です。1点目が、土地の売却を頼んでいる不動産会社自体に問題がないかどうか、そして、2点目が、その不動産会社と結んでいる媒介(仲介)契約に問題がないかどうかです。では、順番に、詳しく見ていきましょう。

 

2-1. 土地が売れないなら営業方法に問題があるかも

不動産会社自体に問題がないかどうか確認するには、まず、不動産会社に、これまでに売りに出している土地への問い合わせがあったかどうかを尋ねてみましょう。問い合わせがあれば、興味を持っている人が確実にいる証拠です。一方、問い合わせがなければ、まったく需要がない、不動産会社の営業努力が足りない、価格があまりにも高くて話にならない、などの大きな問題があると考えられます。

原因が「まったく需要がない」以外であれば、まだ改善の余地はあります。

 

2-1-1. 土地が売れない時は媒介契約を見直す

不動産業者に売却・購入の仲介を依頼する場合は、必ず媒介契約を結びます。媒介契約は宅地建物取引業法によって定められている行為で、「専属専任」「専任」「一般」の3種類があります。宅地建物取引業者は、媒介契約を締結したときは、遅滞なく一定の契約内容を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者に交付しなければなりません。

専属専任媒介契約とは、特定の不動産業者に仲介を依頼し、他の不動産業者に重ねて依頼することができない契約です。依頼を受けた不動産業者は、依頼主に対して、1週間に1回以上の頻度で売却活動の状況を定期報告する義務があります。さらに、目的物件を国土交通大臣の指定する流通機構に登録しなければなりません。専属専任契約の場合、他の2つの契約の場合と異なり、依頼主は自分で購入希望者を探すことはできません。

専任媒介契約とは、専属専任媒介契約と同じく特定の不動産業者のみに仲介を依頼する契約です。不動産業者は、依頼主に2週間に1回以上の頻度で売却活動の状況を定期報告する義務があります。さらに、目的物件を国土交通大臣の指定する流通機構に登録しなければなりません。依頼主は、自分で購入希望者を探すことができます。

一般媒介契約とは、複数の不動産業者に重ねて仲介を依頼することができる契約です。不動産業者に報告義務はない上に、依頼主も自分で購入希望者を見つけることができます。

自分だけのお客様と誰にでも声をかけるお客様とでは、不動産会社の力の入れ方が違います。そのため、専任媒介や専属専任媒介のほうが、より親身になって販売活動をしてくれるところが多いです。一般で契約するのは、複数の不動産会社と契約する意図がある場合のみになります。1社と一般で契約している場合、専任に切り替えた方が良いでしょう。しかし、成果をあげていない場合、不動産会社の変更も視野に入れましょう。

 

2-1-2. 売れなくても不動産会社から定期報告があるか

専属専任は1週間に1回以上、専任では2週間に1回以上、依頼主へ活動状況を定期的に連絡する義務があるので、定期報告がなければ法令違反です。連絡方法は、メールも許されているため、簡易的な定型文で、進展がないことを伝える程度になりやすいです。いつまでも結果しか伝えず進展がない場合、不動産会社の変更を検討しても良いでしょう。一般では定期報告の義務がないので、報告してくれるなら良心的と言えます。

 

2-1-3. 指定流通機構(レインズ)へ登録されているか

レインズ(REINS)とは、Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)の略称です。国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピュータ・ネットワーク・システムの名称になります。専属専任は契約日翌日から5営業日以内、専任では契約日翌日から7営業日以内の登録義務があり、登録されると不動産会社を通じて登録証明書が依頼者に渡されます。

レインズに登録することにより、希望条件に合った購入相手をスピーディーに発見できる、市場の動向に基づいた合理的且つ適正な価格の把握が可能、といったメリットがあります。しかし、登録は法定義務であるにもかかわらず、守られない場合があります。業者からすると、広く流通させることで別の不動産会社が介在し、買主に対する仲介手数料を自社で受け取れなくなる可能性があるからです。中には売主も買主も自社で仲介し、両方から手数料を受け取る(両手取引)ことで利益を伸ばそうとする悪質な業者もあります。

 

2-2. 売れない時は土地活用が得意な業者に相談してみる

不正を働いていない場合であっても、不動産会社にも得意不得意があります。あまりにも成果が上がらない場合は、土地活用が得意な業者に相談し、他に良い方法がないか探してみましょう。

 

3. 土地の売り出し価格が適正か見直す

不動産会社にも媒介契約にも問題がない場合、次に見直すべきは価格です。住宅ローンの返済資金など、値下げに踏み切れない事情があり、価格だけは絶対に譲れないという方は多いです。しかし、売れずに時間が経過するほど、固定資産税や都市計画税の負担が増えていき、損失も大きくなります。売り抜けて損失を小さくするのも大事な考え方なのです。

土地を売るときには、査定価格・売出し価格・実際の売却価格の3つの価格があります。

査定価格は、「この土地は今どのくらいの価値があるか」を不動産会社に査定して出してもらう価格です。土地の路線価と面積、過去の売買取引実績、所在地(立地)、土地上の建物有無、といった項目を基に算出されます。

売出し価格は、その物件を実際に売りに出す価格です。売出し価格は査定価格とは別に、自分で決めることができます。市場の反応を見るため、また、必ず買主は値下げ交渉をしてくる事を考えて、最初は相場より少し高めの値段設定で売り出すことが多いようです。

実際の売却価格とは、買主と合意に達し、実際にその値段で土地を売る価格です。買主側の不動産屋が「○円値下げしてみてもらいましょう」と買主にアドバイスするため、値下げ交渉はされるものだと思っておきましょう。

 

3-1. 土地の価格と相場があっているか確認する

立地は悪くないのに売れないなら、ほとんどの場合、価格が原因と考えられます。まずは、価格が相場よりも高くないかどうか、調べてみましょう。

 

3-1-1. 土地の相場を正しく把握する

こちらのサイトで地名を検索すると、その付近の土地の相場を調べることができます。相場より2割も下げれば、たいていの不動産は買い手がつくとする意見もあります。

国土交通省が不動産の売買価格を検索できるシステムを提供しているので、実際の売買価格を確認してみましょう。

 

3-1-2. 不動産会社の査定を鵜呑みにしていないか

1社の不動産会社の査定だけでは、悪質な不動産会社に騙される危険があります。一括査定を利用して複数の不動産会社の査定を依頼して、査定額を比較すると良いでしょう。事前に上記のサイトなどで自分でも相場を調べておくと、査定価格と相場が違った場合に、不動産会社にその理由を聞くことで、その土地個別の問題点を知ることができます。

 

3-2. 自分が買主なら買いたいと思う土地の価格になっているか

自分が売り出している土地を、その価格で自分が買いたいと思えるか、買主の立場になって考えてみましょう。多くの場合、どうしても自分の土地に思い入れがあり、あまり価値のない土地でさえ、価値があると思い込んでしまいます。

不動産の売買のメインは売主ではなく、買主です。その買主が「欲しい」と思わなければ売れません。価格を設定するときには、できるだけ売りに出す土地に対する思い入れなどを排除する必要があります。

 

3-3. 土地の造成に必要な費用を考慮した価格にしているか

傾斜地などで建築前に造成が必要である場合、買主は土地を購入した後に、平らに造成しなければならず、さらに費用がかかります。このような買主の負担が多い土地は、相場よりも割安でないと売れない傾向にあります。

 

3-4. 税金や手数料まで考えた価格にしているか

売主は土地の価格にのみ意識が行きがちですが、買主にとっては、そのほかにも税金や手数料の負担があるので、売主が思っているよりも多くの費用がかかります。なかなか土地が売れない場合は、これらの負担も勘案して、価格を決めてみましょう。

 

3-5. 立地が悪くないのに土地が売れない理由はほぼ価格

交通の便が悪い土地というのは探している人の母数も少ないので、なかなか売れないでしょう。また、用途が非常に限られる「市街化調整区域」にある土地も、売るのが難しくなります。このような立地の悪条件が無いにも関わらず売れない場合は、価格が原因である場合がほとんどです。損切りをしてでも手放すほうが得な場合もあることは理解しておきましょう。

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4. 土地が広すぎないか確認する

事業目的なら広い土地が必要な場合もありますが、個人を相手に土地を売るときは、広すぎると手に余るため、買主に避けられやすくなります。

 

4-1. 広すぎる土地は敬遠される

戸建住宅(持ち家)の敷地は、全国平均でも279㎡(84坪)となっています。田舎では広くなるとしても、400㎡(121坪)を超えていくようなら、買い手が制限されてくるでしょう。不必要に広すぎる土地の場合、固定資産税などの維持費もかさんでくるため、買主に敬遠されます。

 

4-2. 土地を分筆して求められるサイズにする

広すぎる土地の場合は、分筆して一部の売却も可能だと不動産会社に伝えておけば、個人の買主からも広く関心を集めることができます。

 

4-3. 土地の分筆の際に注意すること

土地が広すぎる場合は、分筆して切り売りするとニーズに応えやすくなります。しかし、宅地を分筆するときには、いくつか注意が必要な点があります。

 

4-3-1. 土地の接道の義務

建築基準法第43条の規定により、建物の敷地は幅4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければなりません(道路についての規定は第42条)。これを「接道の義務」といいます。分筆して接道義務に違反すれば、建物が建てられない土地になり、買主にとって価値がなくなってしまいます。必然的に、道路に接している面に対して縦に分筆しなくてはなりません。横に分筆すると、奥の土地に接する道路がなくなるからです。

 

4-3-2. 土地が2方向以上接道している場合は路線価に注意

角地で路線価の異なる道路に2方向以上接道している場合は、分筆方向に注意が必要です。角地なら縦に分割しても横に分割しても、2本の道路のどちらかに接しますが、分け方によって土地の価値が変わります。

例えば、角地の西に路線価30万円/㎡の道路、南に路線価25万円/㎡の道路が接しているとします。2つの土地が路線価の高い道路に接するように、東西方向の線で分筆すると、路線価の高い角地と、同じ路線価の隣地ができあがります。一方、2つの土地が路線価の低い道路に接するように、南北方向の線で分筆すれば、路線価の高い角地と、路線価の低い隣地ができあがります。この場合、東西方向の線で分筆した方が、土地の価格が高くなります。

分筆に失敗し自ら価値を下げてしまうと、分筆後の2つの土地の価値を足しても、一筆の角地には及ばない、などということになりかねません。分筆しなければ路線価の高い角地で存在していたので、値下げ以上の損失になってしまうこともあります。

 

4-3-3. 土地の形状

土地の形状が長方形で、一辺を道路に接しているような場合は、比較的分筆が容易です。しかし、土地が細長いなど、特殊な形をしており、道路にギリギリ2メートルしか接していないような場合、分筆が困難になります。

 

ここまでは、主に不動産会社の活用の仕方や価格面での問題を取り上げました。後編では、土地の管理などに問題がある場合の対処法や自分で買い手を探す方法、高く売りたいという発想を変える視点の転換などについてお話をしていきます。