事例紹介
Category 不動産
2018年08月15日 更新
売れない土地・売れにくい土地を売る方法と流れ
前編では売れない土地を売る方法として、主に不動産会社の活用の仕方や価格面での問題を取り上げました。後編では、土地の管理などに問題がある場合の対処法や自分で買い手を探す方法、高く売りたいという発想を変える視点の転換などについてお話をしていきます。
この記事でわかること
1. 土地の管理について考える
買主が興味を持った土地の下見に来た時に、その土地の管理状態が見るからに悪かったら、買いたいと思うでしょうか。買主からすると、管理が行き届いていない土地は間違いなく印象が悪く、しかも整地・整理にコストがかかると連想させます。
さらに、そのようないい加減な売主から買って、後でトラブルにでもならないかと不安になるでしょう。
1-1. 雑草がボウボウの荒れ地になっていないか
空き地は放置しておくとすぐに雑草で覆われてしまうので、定期的な管理を必要とします。少しくらいの雑草は仕方がないですが、地面が直接見えないほど生えているようでは、管理していないと思われてしまいます。遠隔地に住んでいて目が行き届かないケースは、管理を委託すると良いでしょう。
住宅と違って土地の場合には年に数回の草刈り程度で済むので、管理委託してもコストは小さく、高くても年間数万円程度と考えられます。
1-2. 不法投棄でゴミが散乱していないか
粗大ごみなどの回収が有料になり、その費用を払いたくないがために不法投棄が行われるようになりました。人気のない土地に車で乗り付け、大量のごみを棄てていく犯罪です。放置しているとゴミが散乱し、近所迷惑になったり、行政から撤去指導が入ったりします。
買主の印象も非常に悪くなるので、既にゴミが散乱している場合は片付け、新たに捨てられないように監視カメラを設置したり、管理会社に委託するなど、対策を取りましょう。粗大ごみの処分料が数千円かかるケースもあります。それを不法投棄された側が負担するのは理不尽ですが、仕方がないというのが現状です。
どんどんエスカレートするなど悪質な場合は、自治体や警察に連絡する必要があります。その際には、不法投棄の犯人を録画した映像などの証拠も提出するようにしましょう。
1-3. 売れない土地は看板を立てるだけでも効果がある
空き地に管理業者の名称が入った看板を立てて、私有地であることを主張するだけでも、一定の効果が見られる場合があります。さらに、不法投棄対策として、不法投棄の罰則内容を明記した警告文を設置するのも良いでしょう。不法投棄をすると、個人の場合「5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはこの両方」が科され、「法人の場合は3億円以下の罰金」が科されます。
さらに、監視カメラで録画していることをアピールするのも効果的でしょう。
2. 土地の境界はハッキリしているか
土地の境界がハッキリしていないと、紛争の元となります。空地でも住宅の敷地でもすべての土地の売買に共通して、隣地の所有者との境界が明確になっていないと、買主は嫌がります。境界の確定は、土地家屋調査士に測量してもらい、隣地(道路等の公有地を含む)の所有者との境界確認をして、全員から合意をもらう必要があります。そのようにして作られた図面を確定測量図と呼びます。
境界を確定させるためには「土地境界確定測量」と呼ばれる作業を行う必要があります。「境界の確定」はとても難しく時間のかかるものです。 基本的には法務局に提出されていることが多い「地積測量図」を基にし、それを現地で復元していく作業です。しかし、必ず法務局に地積測量図が提出されているとは限らず、提出されていない土地や境界の場合も多くあります。そのような場合には、市町村庁で保管されていることが多い「一元化される前の分筆図」等を参考に確定作業に入ります。
確定測量図の作成は売主の責務で、土地家屋調査士への報酬も安くありません。通常は数十万円から、広ければ100万円以上になることもあります。
「隣人の土地とは既にブロック塀で仕切られているので、これでいいのではないか」と思う方もいます。しかし、仮に隣地とブロックなどで仕切られている場合に関しても、ブロック塀が境界線ということにはならないので注意が必要です。
2-1. 土地の境界確認済みと広告するだけで反応が良くなる
確定測量図が提出できる土地は境界トラブルがない証拠なので、買主に安心感を与え、購買意欲を刺激します。広告に「境界確認済」と入れるだけでも、買主の安心感がまるで違い、大きなアピールポイントとなります。
3. 土地の買い手を自分でも探す
不動産業者に頼るだけではなく、自分でも買い手を探してみると良いでしょう。意外と昔ながらの口コミが有効なケースもあります。さらに、インターネットの発達により、個人が情報を発信するコストも圧倒的に下がりました。情報化社会になり、あらゆる選択肢の幅か広がったといえます。
自分で買い手を探すときには、不動産会社との媒介契約の内容に注意が必要です。専属専任媒介契約では、必ず不動産会社を通さなければ売買できません。もし専属専任で契約していたら、自分で見つけた買い手でも不動産業者に手数料を支払わなければなりません。自分でも買い手を探す場合は、専任媒介契約か一般媒介契約で契約するようにしましょう。
3-1. 隣の土地の所有者に相談してみる
不要な土地というのは維持費などの負担がある上に大きな買い物となるので、親戚や知人であっても簡単には買ってくれません。そんな中で、唯一土地を買っても無駄にならない人が、隣地の所有者です。土地が繋がるので境界を意識する必要もなく、トラブルになりにくいのもメリットです。
隣地の所有者にしてみれば、特に必要な土地ではなくても、自分の土地と繋がっていれば、それほど邪魔にはなりません。家庭菜園にしたり、駐車場にしたり、大型犬などの場所を取るペットを飼ってみたりと、色々な使い道があります。
それでも、隣地の所有者が特に希望していなければ、市場価格で買ってもらうことは難しく、破格の金額か、諸費用をこちら負担で譲るくらいの気持ちが必要です。
3-1-1. 法人の場合は個人よりも難しい
個人と法人で、相続税の課税基準となる土地の評価額に違いが出る場合があります。特に、法人の場合、土地評価額の「3年縛り」があるので、相続税対策として法人化して不動産を購入する場合は注意が必要です。
通常、土地の評価額は路線価や固定資産評価額をもとに算出されます。しかし、3年を経過しないと評価が定まらないため、法人で不動産を取得した場合、この間は相続税評価額ではなく、より高い「時価」で評価されます。つまり、不動産による圧縮効果が得られず、高額な相続税が課される可能性があるということです。
一方、個人で土地を取得すると、3年縛りはありません。このような事情から、隣地の所有者が法人だと、相続税対策上不利になるとして、値引きされても要らないと断られる確率が高くなります。
3-2. 土地の買取業者に引き取りを相談してみる
最終手段に近い選択肢として、買取業者に引き取ってもらえないか打診してみる方法があります。買取価格は安いので、買い取ってもらえるとしても保険と考えましょう。値引きして売れた場合と比較して、実利の多い方を選ぶようにします。
3-3. 土地を自らWEBサイトで宣伝する
最近では、趣味や副業として、自分のホームページやブログを持っている人も増えてきました。集客力のあるWEBサイトを持っている場合は、売りたい土地について宣伝してみましょう。そのようなWEBサイトを持っていない人でも、グーグルアドワーズなどを使って、個人でインターネット上に広告を出すこともできます。
3-3-1. その土地のメリットを考えてアピールする
最終的にその土地に価値があるがどうかを決めるのは、売主でも不動産業者でもなく買主です。ほとんどの人にとって価値がなくても、買主にとって価値があれば良いのです。売りたい土地が、特定の分野のニッチな市場で価値がないかどうか、調べてみましょう。
前編の冒頭で紹介したように、世界には購買意欲にあふれた中間層・富裕層が多く存在します。彼らは日本人とは価値観が異なり、意外なものに価値を見出します。海外に向けて外国語でアピールすることも考えると、思わぬチャンスがあるかもしれません。
4. 土地が市街化調整区域内にある
土地にはそれぞれに所有者がいますが、所有者だからといってその土地を完全に好きなように使えるわけではありません。都市としての機能や秩序を維持するために、一定のルールが決められているのです。そのルールの基本となるのが「都市計画法」と呼ばれる法律です。「市街化調整区域」とは、この都市計画法に基づいて指定される区域区分の1つです。
市街化調整区域は、都市計画法で「市街化を抑制すべき地域」と定義されています。つまり、自然環境や景観を守るなどのさまざまな目的から、市街化につながる土地の開発などが制限されているのです。例えば、市街化調整区域では、自由に建物を建てることができません。こうした制限により、市街化調整区域の土地は一般の土地に比べて用途が限られてしまうので、市場価値が大幅に下がるのが通常です。
市街化調整区域だからといって、絶対に売却できないというわけではありません。売却を検討する際は、まず「自治体による区域指定の有無」と、「農地であるかどうか」を確認しましょう。
市街化調整区域でも、自治体による「区域指定」で開発が許可されている場所もあり、そこなら誰でも建築などの許可を得ることができます。こうした不動産であれば、比較邸売却がしやすいと言えるでしょう。
[kanren postid=”1395″]
その土地が農地であった場合、農地法による制限が生じます。農地は原則として農業を営む人しか購入できず、宅地などにする場合は「転用」と呼ばれる複雑な手続きが必要になります。市街化調整区域の開発許可以前に、農地であった場合はかなりハードルが高くなってしまうので、事前に確認しなければなりません。
[kanren postid=”1225″]
5. その土地に他の使い道がないか考えてみる
売れない上に維持費ばかりかさんでいくと、うんざりしてだんだん投げやりになってくるかもしれません。そんな時こそ、本当にその土地の活用方法がないのか、もう一度考えてみましょう。遊休地の活用方法としては、主に「建てて貸す」、「土地を貸す」、「太陽光発電」の3つが考えられます。
「建てて貸す」とは、移住者、転勤者、旅行者、高齢者などの方に貸す建物を建てて、賃料を得る方法です。 大きな投資を必要としますが、建物や土地を担保にして費用をローンで調達することもできます。成功すれば安定的な収益に繋がる一方で、規模に応じたデメリットも発生するため、土地活用の中では、ハイリスク・ハイリターンだといえるでしょう。
「土地を貸す」とは、土地をそのまま貸して賃料を得る方法です。代表的なものに事業用地や駐車場があります。初期投資が少なくて済む反面、土地を「平面」としてしか活用できないので、成功した場合でも「建てて貸す」よりは収益が少なくなるでしょう。比較的ローリスク・ローリターンなので、初心者にとって始めやすいといえます。
「太陽光発電」は「土地を貸す」の一種であるともいえます。地方では太陽光発電に適した土地が多く、遊休地の活用方法として優れています。日照が確保できる土地で送電に問題がなければ、収益を得られる手堅い事業です。大きな投資を必要としないので、自分で行う選択肢もあるでしょう。
5-1. 研究・趣味の環境を求める人もいる
研究や趣味に没頭したい方の中には、あえて手付かずの自然を求めていたり、都会の喧騒に邪魔されない場所を求めていたりする場合もあります。研究者や読者好きの人の中には、蔵書置き場として住まいとは別に部屋を借りるようなケースもあり、空き地を活用した貸倉庫などをよく見かけるようになりました。最近では、休日だけ農業が出来るような畑を欲しがる方もいます。売りたい土地の周辺の土地がどのように活用されているか見て回り、アイディアを得るのも良いでしょう。
6. 土地を売る利益よりも損失を抑えるという視点で考える
これまでの項目では、土地が売れない場合に、見直すべきポイントについて見てきました。最後に、資産運用という視点で、売れない土地について考えてみましょう。
投資の世界では損切りという考えがあります。投資が回収できない状態、つまり含み損の状態に対して、損失を確定して取引を終わらせてしまうことです。あえて損切をすることで、損切りをせずにそれ以上の損失を広げてしまうリスクを回避することができるのです。
6-1. 土地を高く売ることだけが利益ではない
土地は、運用してランニングコスト以上の収入を得て利益を上げることで、初めて資産といえます。運用せずに固定資産税や維持費を払い続けるだけでは、負債を抱えているのと同じことなのです。損切りをして安値でも売ってしまい、次の投資へチャレンジしていくというのも、投資では当たり前の戦略です。
例えば、売れない800万円の土地を保有していて、固定資産税が毎年10万円だとすると、10年後に売れても700万円しか残りません。今すぐに700万円で売れば、100万円の損はしますが、10年後には同じ状況です。むしろ、今すぐ手元に700万円が入ることで、もっとリターンの良い、別の投資をすることができます。このように、高く売ることだけが利益ではないので、総合的に判断することが重要です。
6-2. 中間利息控除とは
本来は将来支払うべきお金を前払いする場合、前払いする側は、その間にそのお金を運用していたら得られたであろう利益を失います。一方、前払いしてもらう人は、本来の受け取り時まで発生する利息分を得ることができます。よって、前払いする側と前払いされる側の公平を期するための方法が考え出されました。それが、中間利息の控除です。
年利3%で運用できるとして、10年後に800万円になるためには、現在はいくら必要でしょうか。800万円÷{(1.03)の10乗}=5,952,751.319円≒595万円となります。この差額の800万円-595万円=205万円が、「本来の受け取り時まで発生する利息分=中間利息」です。
中間利息の控除とは、本来は将来受け取るべきお金を前払いしてもらう場合に、将来にわたって発生するはずの利息分を差し引くことです。中間利息控除では、特定の利率で複利運用したときの利息を控除します。
上記の例では、800万円を年利3%で10年間運用した場合、中間利息を控除すると、595万円となります。つまり、年利3%で運用できるなら、「10年後に800万円で売れること」は、「現在595万円で売れること」と同じだということです。損切りしても、上手く運用すれば取り返せるということです。
中間利息控除を計算する際には、ライプニッツ係数が用いられます。利率=i、年数=nとすると、ライプニッツ係数は以下の計算式で求められます。
ライプニッツ係数
i=3%、n=10年とすると、ライプニッツ係数=1/1.03+1/{(1.03)の2乗}+1/{(1.03)の3乗}+・・・+1/{(1.03)の10乗}=8.5302となります。
中間利息控除額=売れた額×年利×ライプニッツ係数=800万円×3%×8.5302=2,047,248円≒205万円となり、先ほど計算した205万円と同じ数字が出てきました。年利と年数ごとのライプニッツ係数の一覧表があれば、売れた額と年利をかけるだけで、中間利息控除額を計算することができます。
年利1%で10年間とすると、中間利息控除額=800万円×1%×9.4713=757,704円≒78万円となります。さらに、年利2%で10年間とすると、中間利息控除額=800万円×2%×8.9826=1,437,216円≒144万円となります。800万円の土地を700万円に値下げして売った場合、10年後に定価で売れた場合と比較して、年利1~2%で運用できれば、元が取れるということになります。損切りというのは受け入れがたいかもしれませんが、このように考えると、損切りの有効性が分かるでしょう。
7. 売れない土地・売れにくい土地を売る方法のまとめ
この記事では、前編・後編の2回にわたって、売れない土地を売る方法について、くわしく見てきました。不動産会社にも媒介契約にも立地にも特に問題がない場合、売れないのは価格が一番の原因であることが多いです。
自分の土地には愛着があり、ひいき目に見てしまいがちですが、他の土地といくらでも比較できる買主には、相場以上の価格ではまず売れません。何年も売れない場合は、損切りも視野に入れて、効率的な資産運用を行うようにしましょう。