事例紹介
Category 不動産
2018年12月16日
不動産投資の割引率と還元利回りって?
経済のグローバル化の影響を受けて、不動産投資にチャレンジしようと思う人も増えてきました。では実際に不動産を投資した際、どのくらい収益が出るのかというのは気になるところです。
「還元利回り」、「割引率」、「収益価格」、これらは全て不動産投資においてどれも重要なワードです。不動産投資をしている人の中にも、この3つのワードを正しく理解していない人もいます。
まずは、還元利回りと割引率の違いについてからご説明します。
この記事でわかること
1.還元利回りと割引率の違いとは?
「還元利回りと割引率」と言われても、この2つの何がどう違うのかわからない人の方が多いでしょう。
不動産投資において「還元利回りと割引率」、この2つはどちらも収益性のことを指しています。還元利回り(キャップレート)とは、将来の収益に関する変動予測と、それによる不確実性を含みます。
一方、割引率には変動予測は含まれません。そのため、純収益が永続的に得られることと、今後どのように変動するのかがだいたいわかると想定される場合は、「還元利回り=割引率-純収益の変動率」の方程式が成り立つのです。
還元利回りと割引率は運用利回りと密接な関連があります。
それと同時に、都心、郊外等の地方別、商業地、住宅地等の用途的地域別、築年数、グレード、仕様、維持管理の状態、テナント構成等の品等別等によって変わってくる傾向があります。
◆還元利回りと割引率の求め方
還元利回りと割引率は、以下のように求められます。
- 投資家調査
- 類似の不動産の取引事例と比較してから算出する方法
- 借入金と、自己資金に係る割引率から算出する方法
- 不動産の個別性を金融資産の利回りに加味して算出する方法
- トータル的に、不動産インデックス等を勘案して求める方法
実務上一般的な方法は、最も投資リスクが低いと言われている不動産の利回りを基準にして、対象となる不動産の立地条件や建物条件、契約の条件、権利関係などの個々の要因に基づいてリスクプレミアムを加算しながら出していく方法が取られています。
1-1.不動産投資で重要な収益価格
不動産投資をしようと思った時、「収益価格」という言葉をよく聞きます。「収益価格」とは、不動産から得られる家賃などで対象の不動産の価値を評価する方法です。つまり、対象となる物件を、投資の利回りから見た時の評価額のことです。
これに対し、積算価格は原価法によって算出しますので、建物の再調達価格から築年数分の価値を減価し、求めたい時点の価格を導き出す方法です。
もう1つの比準価格として、取引事例比較法により算出する方法があります。直近で実際に売買実績がある近隣の類似物件を参考にしつつ、いろいろな条件を加味して、対象物件の価格を導き出していく方法です。
◆収益の計算方法とは?
収益価格の計算方法は、「直接還元法」と「DCF法」に分かれます。
- 直接還元法
直接還元法は、半永久的に不動産を所持し続けた場合、1年間にその不動産から生み出される「純収益」から不動産価格を評価するという手法です。
- DCF法(「Discounted Cash-Flow」)
DCF法とは、不動産を投資の対象と考え、所持している中の一定期間の収益と、最終的に売却する時の収益まで考えて、対象物件の価格を評価する方法です。
直接還元法では、不動産の純収益を還元利回りで割って収益価格を算出します。この不動産の純収益とは、賃貸収入等の年間総収入から、維持管理費、修繕費、損害保険料、公租公課、空室損失などの年間支出の総費用を差し引いたものです。
直接還元法とDCF法のどちらで決めるのが良いかというのは、ケースバイケースであり、状況によって異なります。
<直接還元法とDCF法、見極めポイント>
直接還元法とDCF法のどちらかで迷った時は、以下のポイントを押さえておくと良いでしょう。
- 売買のため、証券化に係る鑑定評価のためなど依頼目的であるケース
- 物件の属性によって異なる
- 物件に関する収集可能な資料の範囲
これらの見極めポイントを押さえておくようにします。近年では多くの場合、不動産の証券化に係る鑑定評価など、毎期の純利益の見通しについて詳細な説明を求められる場合もあります。
DCF法の中でも「空室損失」とは、実際の空室のことでなく、一定の割合で想定した空室のことです。
空室率は、以下の3つの考え方があります。
- 時点空室率
ある時点でのリアルな空き状況をそのまま採用する方法です。例えば、ある時点で5室部屋があるうちの1室が空室なら、空室率は20%という風に計算します。
- 稼働空室率
1年間のうち、空室月数が全体の何%かで計算する方法です。
例えば、アパートの3部屋を12カ月稼働させた場合、部屋の稼働総月数は36カ月、1部屋の空室が5カ月続いた場合、稼働しなかった月数は5カ月なので、5カ月 ÷ 36カ月 × 100 で、空室率約145%という風に計算します。
- 賃料空室率
賃料空室率とは、稼働空室率の計算にあった月数の分母・分子を、それぞれ賃料の分母・分子として計算します。不動産投資では通常、稼働空室率と賃料空室率のどちらも利用することになります。
◆収益価格の仕組みとは?
収益価格とは、以下の2つの価値を合わせて考えられたものです。
- 対象の不動産が、将来生み出すだろうと予測される純利益
- 現在価値をトータルで考え、不動産の価値を決める
このように、収益価格から価格を考えていく算出方法を「収益還元法」と呼びます。
1-2.不動産鑑定評価基準とは?
不動産鑑定とは、国家資格を持つ不動産鑑定士が、対象の不動産に対して、適正であると思われる価格を客観的に判断しながら、相場より高値になったり、安値になったりしないように総合的判断のもと調整しつつ、不動産の市場価格を安定させています。不動産売買の経験がある人も多いでしょうが、所持している不動産を売ったり、または誰かから買い取ったりする際、対象になる不動産の価格は、売主が自由に設定することが出来ます。
しかし、誰もが自由に価格を決めてしまっていては、市場価格は安定しませんし、相場より高値すぎる物件や、逆に安値すぎる不動産が横行してしまうことにもなりまねません。そして、なんと言っても経済の安定がないままです。
そこで、不動産鑑定が重要になるのです。
不動産鑑定評価基準は1964年制定の基準で、資格者である不動産鑑定士が不鑑定評価を行う際、実質的であり統一的な行為規範となるように設定されました。
不動産鑑定評価についての流れは以下のようになっています。
◎不動産鑑定評価の流れ
1.鑑定評価をする対象不動産の物的確定
2.どのような権利を評価するのかという権利の確定
3.どの時に合わせた価格を評価するのか
4.どのような地域なのか、どのような画地であるのか
5.最も使用価値があるのはどのような使用方法であるのか
6.該当案件に即して適切に適用
上記のことをトータルで判断して、不動産の鑑定評価が進められて、不動産の価格が決まっていくのです。
1-3.還元利回りの意味
賃貸不動産の価値の鑑定をする際は「収益還元法」という方法があります。収益還元法とは、その不動産を所持することによって得ることが出来ると予測される利益から、不動産の価値を鑑定する手法です。
還元利回りとは、その不動産を所持することによって得ることが出来ると予想される利益のことです。
不動産においての利回りとは、不動産の価格とその不動産を所持することによって得ることが出来る家賃収入などの利益の割合を表しています。
価格が安く、たくさん収益がある(儲けることが出来る)不動産ほど、利回りが高いと評価されます。
1-4.割引率の意味
割引率という言葉をよく聞きますが、そもそも割引率とは、将来の価値を現在時点の価値に割り引く時に使われる「係数」のことです。
例えば、現時点の100円と、将来手に入る100円の価値の違いを、定量的に示す際に表される率が「割引率」となります。
2.不動産投資における還元利回りと割引率の考え方
それでは、不動産投資における還元利回りと割引率の考え方をご説明します。
3.還元利回りの求め方
◆還元利回りを求める方法
還元利回りを求める方法は、以下の通りです。
- 類似の不動産の取引事例と比較して求める方法
- 取引利回りから求める方法
- 借入金の返済のカバー率から求める方法
- 自己資金と借入金にかかる還元利回りから求める方法
- 割引率から求める方法
不動産鑑定評価基準では、上記の方法が挙げられています。
4.割引率の求め方
不動産売買でよくある具体例で説明してみましょう。
あなたが所持する不動産をAさんに1億円で売却した場合、入金期日を契約から1年後に設定しました。しかし、半年後に急にまとまった資金が必要になってしまい、契約から1年経っていないのですが、半年経った時点で Aさんに「前倒しで1億円を払って欲しい」とお願いします。
しかし、Aさんの立場からしてみると、半年分も前倒しでお金を払うことになってしまうため、 1億円をそのまま払うということは出来ません。
その結果、Aさんは1億円より低い金額であなたに支払うことになります。
この時に、あなたがどこまで減額してあげるかを定量的に示したものが「不動産投資においての割引率」です。
5.まとめ
不動産投資についての、還元利回りと割引率についてご説明しました。不動産投資で成功するには、売買のタイミングをしっかり見極めることと、合理性がある利回りの物件の価格設定が重要になります。
そのためには、還元利回りと割引率について、しっかり理解しておくことが重要になります。