夫婦間でも贈与税がかかる?夫婦間の不動産贈与の基礎知識

「贈与」とは人が金銭・動産・不動産を無償で人に与えることをいいます。基本的には生前に行われることから、生前贈与とも呼ばれます。ちなみに死後に財産を移す場合は「相続」と呼ばれます。

贈与は、贈与者と受贈者との間で「財産をあげます」「財産をもらいます」の意思表示がなされれば成立します。ここでなされた贈与が一定額を超えるもの、もしくは一定の条件下にある場合、税金がかかります。これが贈与税です。

1.贈与税がかかるって本当?夫婦間での不動産贈与に要注意!

贈与税とは個人間で行われた贈与によって発生する税金です。夫婦の財産は「夫婦のもの」と思いがちですが、法律的には「夫の財産は夫のもの」「妻の財産は妻のもの」と個別のものと解釈され、すなわち「夫・妻は別々の財産を持っている」という考え方になります。つまり夫婦間であっても「個人間」と捉えられ、夫婦間で贈与した場合でも贈与税が課税されます。

ただ、他の個人間と違い、夫婦間では贈与税がかかる場合と贈与税がかからない場合があります。特に不動産贈与については、課税対象であるかないかの要件等が複雑なため注意が必要です。

どのような時に贈与税が発生し、どのような条件下で贈与税が発生しないのかは非常に難しいのですが、次に具体例をあげながら贈与税の課税・非課税の違いを見ていきましょう。

1-1.夫婦間の贈与で贈与税がかかる場合

簡潔に言うと、夫婦間で「110万円を超える金品やものを贈与した場合」が贈与税の課税対象ということになります。贈与税は贈与額が年間110万円まではかからないという基礎控除が設けられています。この額を超えるような家などの不動産、車などの動産、金融商品などの購入資金などの贈与がこれにあたります。

夫婦間贈与で贈与税のかかる具体例としては、

・高価なものや金品の贈与

夫婦間であっても、車や家などの高価なものや金品は贈与税の対象となります。

・金融商品やその購入資金

株や証券などの金融商品や、それらを購入するための資金を贈与した場合、贈与税の対象となります。生活費や教育費として贈与した資金であっても、金融商品購入に回した場合は生活費や教育費のための贈与ではなくなり、贈与税の課税対象となります。

・金融口座間の移動、貸し借り

夫婦それぞれが持つ口座間で資金移動をする場合や、金銭の貸し借りの場合、贈与税の課税対象となることがあります。

最近では金融機関の預金限度額の関係や、金融機関の破綻対策(ペイオフ対策)において、夫婦間で財産の移動を行うことがあります。口座名義が「別口座」であるときに、この財産を移動する場合は贈与税の対象となり得ることを理解しておきましょう。

・生命保険金の受け取り

「妻のために夫が保険料を支払っている」ような、自分が負担していない生命保険の保険金を受け取った場合は贈与税がかかります。また、死亡を支払要因とする保険金は相続税の対象となりますが、存命中に生命保険金を受け取る商品は贈与税がかかります

1-2.夫婦間の贈与でも贈与税がかからない場合

次に、夫婦間の贈与で贈与税がかからない場合です。

まず「生活費・教育費の贈与」では、贈与税がかかりません。家族間には子どもや夫・妻を養う「扶養義務」が生じるため、生活費や教育費を渡す(贈与)する際には贈与税は発生しないとされています。

ここでも具体例を挙げて説明します。

・日常生活に必要な生活費・教育費

上記の「扶養義務」の観点から、生活費や教育費には贈与税がかかりません。

生活費は日常生活のための衣・食・住にかかる費用、教育費は学費・教材費・文房具費用などを指します。ただし、日常生活の範囲を超えた費用や貯蓄目的の費用であったり、生活費・教育費が余り貯蓄していたりする場合などは、その金額等によって生活費・教育費とみなされないことがありますので注意が必要です。

・生活利用品の購入費用

日常生活において必要な家具や家電、また生活する上で必要な車の購入費用は贈与税がかかりません。車の場合「妻の買い物用に使用する車」であれば生活上必要とみなされますが、生活利用からかけ離れたセカンドカーや、趣味嗜好品などの購入費用の贈与は、生活利用品の購入費用とはみなされない場合があります。

・110万円以下の贈与

これは先ほど説明した贈与税の基礎控除です。贈与した金額が年間総額110万円以下なら贈与税を納める必要はありません。

1-3.夫婦間の不動産贈与の場合

ここからは、注意が必要な不動産贈与の場合について解説します。

実は、夫婦間の不動産贈与では予期せぬ形で「贈与税がかかる」ことが多いです。この場合、様々なケースが考えられますが、ここでは代表的な事例で説明していきます。

・夫婦の共有名義で不動産を登記している

夫(もしくは妻)が居住用不動産を購入し、夫(もしくは妻)が全額支払ったにも関わらず、登記上は夫婦の2分の1ずつの共有名義としていた場合、自動的に贈与税の対象となります。これは購入額の半分を「購入金額を支払っていない登記者」に贈与した、と判断されるためです。

・不動産の名義変更

夫から妻への名義変更も、不動産を無償で贈与したことになります。

これは贈与の大前提である「贈与者(あげる人)が金銭・動産・不動産を無償で受贈者(もらう人)に与えること」になり、元々の名義人の不動産財産を新しい名義人に贈与したとされるため、贈与税がかかります。

・名義人ではない個人からの住宅ローン返済

夫(もしくは妻)の名義で居住用不動産を購入し、妻(もしくは夫)がローンの全額を返済している場合、贈与税がかかります。例えば毎月20万のローン返済をしている時、名義人ではない一方が年間240万のローン返済分を名義人に贈与したことになります。このように不動産の場合は、そもそも予期せぬ、そして意図しない形で贈与税の課税対象となることがよくあります。

当初、名義人が返済していたにも関わらず、リストラにあったり転職したりしたことで、返済が難しくなることもあります。そんな時は夫婦で助け合って難局を乗り越えようと考えるものです。しかし、そのことで「贈与」が発生し、今までかからなかった贈与税がかかったりすることは意外に知らない方が多いはずです。

このようなことを防ぐためにも、登記方法や名義変更手続き一つにしても、贈与税の対象となることをしっかり理解しておく必要があるでしょう。特に不動産の場合、は「夫婦で一緒に頑張って手に入れた」「夫婦一緒に所有している」と考えてしまいがちな財産です。ですので、贈与という考え方は持ちづらいのも確かです。

しかし、その不動産財産が「誰のものであるか」という見方をすると、所有者の変更、住宅ローン返済方法の変更によって贈与の対象になるかならないかの考え方が明確になってきます。

とはいえ不動産は、やはり「夫婦で一緒に頑張って手に入れた」「夫婦一緒に所有している」財産です。この点を踏まえ、夫婦間の不動産贈与については一定の範囲、条件下で控除されることがあります。それについてご説明していきましょう。

2.夫婦間で居住用の不動産を贈与した時の配偶者控除の特例

夫婦間で居住用不動産の贈与をした際、贈与税を控除される「配偶者控除の特例」というものがあります。

2-1.配偶者控除とは?

法律的には「夫の財産は夫のもの」、「妻の財産は妻のもの」と解釈され、夫・妻は別々の財産を持っている考え方を取っていると先に述べました。

しかし一方で、夫婦がお互いに助け合いながらその家庭の財産を築き上げてきた、という考え方も取れます。そのため、配偶者間で一定の範囲での贈与税の免除がなされています。これが「配偶者控除」です。

この配偶者控除は夫婦であれば誰でも適用できるものではありません。これが適用できるのは、マイホームの贈与、もしくはマイホームを購入するための金銭を贈与した時に限られ、かつ夫婦の婚姻期間といった要件もあります。

2-2.配偶者控除のメリット・デメリット

配偶者控除の特例を利用する際、どんなメリット・デメリットがあるのかを知っておく必要があります。

第1のメリットは「2,000万円が控除される」点です。これはこの特例のベースです。仮にこの特例を利用せず2,000万円の贈与を行なった場合、そこには約700万円もの税金が発生します。この特例の利用によりこの税金が0円になるのですから、非常に大きなメリットといえるでしょう。

第2のメリットは贈与税の控除額は「基礎控除と併用して2,110万円」となることです。贈与税には110万円の基礎控除があり、これを併用することで2,110万円の控除枠を確保できます。

第3のメリットは「3年以内の相続は相続財産に加算しない」点です。

他の贈与財産は、贈与者が亡くなる直前に贈与をして相続税の課税を逃れるといった節税行為を防止する目的から、贈与があってから3年以内に贈与者が亡くなり、受贈者が遺産を相続した場合でもこの贈与財産も相続税の対象になります。これに対し、この贈与税の配偶者控除を利用して贈与された財産は、3年以内に相続があっても相続財産に加算されません。

この特例は、不動産の持分の贈与にも利用でき、居住用不動産の評価額が特例で控除される2,000万円よりも大きく超えている場合、その不動産の持分のみを贈与することで贈与税を少なくすることもできます。このように贈与税を控除できるというメリットはいくつかあるのですが、正直なところあまり実用的ではなく、知らずに活用してしますと大きなデメリットになることもあります。これは相続税の基礎控除・配偶者控除と密接に絡んできます。

説明の通り、贈与税には110万円の基礎控除と2,000万円の配偶者控除がありました。相続税にも基礎控除と配偶者控除があるのですが、贈与税の基礎控除額が110万円に対し、相続税の基礎控除額は3,000万円+【600万円×法定相続人の数】贈与税の配偶者控除が2,000万円であるのに対し、相続税の配偶者控除は1億6,000万円と大きくその控除額が変わります。

控除額の差から考えると、贈与税の配偶者控除の特例を利用しても相続税の軽減効果は期待できず、贈与税の配偶者控除の特例を利用するより、相続税の配偶者控除を利用した方はメリットが大きいともいえます。

加えて、贈与税に配偶者控除の特約があるのと同様に、相続税にも居住用不動産に対する特例「小規模宅地等の特例」というものがあります。自宅を相続した場合、土地の330㎡までの部分について税額計算上の価格を80%減額できるという制度です。仮に1億円の評価額を80%減額したら2,000万円の評価にすることができますので、多額な相続をしても相続税が課税されない場合が多くなるのです。

この特例は贈与税には活用できず、相続の時に80%も評価額を下げられるのに、あえて贈与税の配偶者控除を利用する必要があるのか?という疑問も出てきます。要するに、贈与税より相続税の配偶者控除を利用した方が、実は「お得」といえてしまうのです。

また、手続きにかかる費用もデメリットとなりえます。

贈与の際には宅地・建物の固定資産税評価額に応じて不動産取得税(宅地1.5%、建物3%)と登録免許税(2%)が発生します。相続の際、不動産取得税はかからず、かつ登録免許税は贈与時2%かかるのに対し、相続時は0.4%で済みます。このように、財産を与えるという点で同じであっても、財産を生前に与える贈与税と、財産を死後に与える相続税では基礎控除・配偶者控除に大きな違いがあります。結果として、相続税の控除と特例を活用した方が贈与税の配偶者控除の特例を活用するより有効だと言えてしまいます。

贈与税と相続税の関係性から、相続税における控除のメリットが大きいのは確かなのですが、贈与税の配偶者控除の特例を利用するメリットもあります。それは「新規取得不動産購入のための金銭を贈与する場合」です。これから不動産を購入するための費用なので、贈与の際にかかる不動産取得税や登録免許税はかからず、別途税金が発生することもありません。

相続税はその性質上、夫婦間で所有財産の差がある夫婦よりも、ほぼ同額ずつ持っている夫婦の方が安くなります。例えば、夫婦間に所有財産の差がある夫婦において、財産を多く所有している方から財産の所有が少ない方へ、贈与税の配偶者控除の特約を利用して2,000万円分の金銭を贈与することで、贈与税が控除され、相続税も減らすことができます。

いずれにしてもこれらのメリット・デメリットを十分に理解し、贈与税の配偶者控除の特約を利用するのかどうかを判断することが大切です。

2-3.配偶者控除の適用要件

これまでの説明を理解し「贈与税の配偶者控除の特例を適用したい」と決めたならば、次に必要となってくるのはこの特約を活用できるのかどうかを知る必要があります。

贈与税の配偶者控除の特例は、下記要件を満たす必要があります。

(1)夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと

(2)配偶者から贈与された財産が、居住用不動産であること、又は居住用不動産を取得するための金銭であること

(3)贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産又は金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けたものが現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みがあること

がその要件です。

(出典:国税庁No.4452夫婦の間で居住用の不動産を贈与した時の配偶者控除2特例を受けるための適用要件)

つまり結婚して20年以上経過し、夫(もしくは妻)から不動産か不動産を手に入れるためのお金を貰い、貰った時点から翌年の3月15日までその不動産に住んでいること、がこの特例を利用できる条件となります。

ちなみにこの制度は、同夫婦間では一度しか利用できませんのでご注意ください。(離婚して別の配偶者と再婚し、また20年以上経てば利用が可能です。)

2-4.配偶者控除の申告方法

次に贈与税の配偶者控除の特約の利用を検討し、適用条件を満たした場合、その申告に必要な書類を揃える必要があります。

この特例を利用するためには、提出する申告書と併せて、下記の公的書類の添付が必要となります。

(1)財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以降に作成された戸籍謄本又は抄本<婚姻期間が20年以上であることを確認する書類>

(2)財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以降に作成された戸籍の附票の写し<居住用不動産に住んでいることを確認する書類>

(3)居住用不動産の登記事項証明書その他の書類で贈与を受けた人がその居住用不動産を取得したことを証するもの<贈与が行われたかどうかを確認する書類>

※金銭ではなく居住用不動産の贈与を受けた場合は、上記の書類のほかに、その居住用不動産を評価するための書類が必要となります。

(出典:国税庁No.4452夫婦の間で居住用の不動産を贈与した時の配偶者控除3適用を受けるための手続き)

※(2)に記載されている住所が居住用不動産の所在地と異なる場合は住民票の写しも必要となります。

贈与税の配偶者控除の申告の場合はこれらの書類を揃え、管轄の税務署に申告書とともに提出しましょう。

3.夫婦間での不動産贈与のメリット・デメリットまとめ

夫婦間での不動産贈与について贈与税がかかる場合とかからない場合、メリットとデメリットについてご紹介してきました。

不動産の場合は知らないうちに「贈与」を行い、意図しない形で贈与税の課税対象となってしまうことがあります。贈与税には一定の要件のもと、2,000万円に配偶者控除があり、多額な金銭を移す必要がある場合は検討に値するかと思います。

ただ贈与税を控除できるメリットはあるものの、相続税の軽減にはあまり効果はありません。場合によっては余計な税金がかかったりします。不動産贈与の場合は「贈与税がかからないから利用しよう」と思う前に、どのような効果があり、どんなデメリットがあるかを知り、贈与税の配偶者控除を利用するかどうかの判断は贈与・相続に詳しい専門家の意見を必ず取り入れましょう。

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