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Category  アパート・マンション経営

2018年05月22日 更新

アパートに対する固定資産税の軽減措置と固定資産税計算の基本

不動産を所有していると、毎年固定資産税を負担しなくてはなりません。

自分が住む土地や建物などについて税金が発生するのはまだわかりますが、まったく利用していない状態の不動産にも税金がかかるとなると、とても損をした気分になりますよね。

そのような場合には、賃貸アパートとして不動産を有効活用することを検討してみるとよいかもしれません。

アパートとして不動産を使う場合には各種の税優遇措置が認められているからです。

以下では固定資産税について、アパートとして不動産を使う場合に認められる優遇措置を具体的に解説させていただきます。

1. 固定資産税計算の基本:固定資産税評価額を確認する

固定資産税は土地や建物などの不動産の価格に税率をかけて計算します。

この「価格」は具体的には固定資産税評価額という数字を使って計算します。

固定資産税評価額はあなたが現在所有している不動産についてであれば、毎年贈られてくる固定資産税の納付書の課税明細書の「価格」の欄に金額が書いてありますので、そちらをご確認ください。

自分が所有している不動産でない場合や、固定資産税の納付書が手元にないような場合には、実際に土地や不動産がある場所の役所に備え付けてある固定資産課税台帳という資料を閲覧させてもらうことで確認できます。

ただしこの固定資産課税台帳を閲覧させてもらえるのは、当該不動産について発生する固定資産税の納税義務者で、その不動産の共有名義者となっている人で、その人の相続人、あるいはその不動産を借りている人に限られるので注意しましょう。

実際に閲覧をするときには、市区町村のホームページなどからダウンロードできる申請書様式を取得したうえで記入し、本人確認書類に閲覧手数料をそえて申し込みをしなくてはなりません。

その他、固定資産税評価額を知る方法としては、固定資産評価証明書を新たにとりよせるなどの方法も考えられます。

固定資産評価証明書には、上で説明させていただいた固定資産台帳の情報に基づいて、固定資産の評価額や所有権者、所在地などが記載されています。

1-1. 税率をかけて固定資産税の金額を計算する

上で取得した固定資産税評価額の金額に、固定資産税率1.4%をかけると固定資産税の金額を計算することが可能です。

なお、固定資産税はその年の1月1日現在で不動産の所有権者となっている人に対して課税されます。

なので、1月1日より後の日に不動産を取得したような場合には、その取得した年の分の固定資産税については納税する必要がないのが原則です。

ただし、不動産取引の慣習として、売主がいったん負担した固定資産税については、売主と買主とが日割り計算で負担しあうということが行われる可能性があります。

例えば、10月31日付で不動産の売却が行われた場合、11月1日以降の所有者は買主でそれ以前は売主が不動産の所有者となります。

このような場合、年初~10月末までの10か月分は売主、それ以降の2か月分は買主が固定資産税を負担します。

実際には売主がすでに固定資産税1年分を納めてしまっていることが多いですから、すでに納めた分を12等分し、2か月分について買主が売主に支払うというかたちになります。

なお、固定資産税は1年間で4期に分けて支払うか、一括払いするかによって納めます。

一括払いしても安くなるなどの特典は残念ながらありません。

2. アパートに対する固定資産税の軽減措置【一覧】

賃貸アパートを所有する場合に認められる固定資産税の軽減措置を一覧にすると、次のようになります。

  • 小規模住宅用地に対する固定資産税の軽減
  • 一般住宅用地に対する固定資産税の軽減
  • 店舗併用住宅等に対する固定資産税の軽減
  • アパートを新築した場合の固定資産税の軽減
  • 特定市街化区域農地を転用してアパートを新築した場合の固定資産税の軽減

以下、それぞれの内容について順番に解説させていただきます。

なお、これらの適用は自分では何もしなくても、固定資産税の計算を行う市区町村が自動的に適用を行ってくれます。

固定資産税の納税通知書を見て、これらの特例が適用されていることを確認できるようにしておけば問題はありませんが、これから取得するアパートについてどのぐらいの税金負担があるのか?を知りたいときには以下の知識を理解しておくと役立ちます。

2-1. 小規模住宅用地に対する固定資産税の軽減

住宅を建てるために使っている土地のうち、一定の広さまでは固定資産税の金額を大幅に軽減してもらうことができます。

これが「小規模住宅用地に対する固定資産税の軽減」です。

必ずしも賃貸アパートとして建物を建てている場合にのみ適用される特例ではなく、普通に自分が住むための住宅を建てている土地についても適用されます。

ただし、下で説明させていただくようにアパートに適用した時には戸別にこの適用範囲を判断することになりますから、より大きな節税効果を得ることができます。

具体的には、住宅用地として使っている土地の200㎡までの部分について、課税標準額を6分の1にしてもらうことが可能です。

計算式にすると「固定資産税評価額×6分の1=課税標準額」となります。

※課税標準額とは、税率をかける前の金額のことですから、課税標準額が小さくなるほど税額も小さくなります。

例えば、固定資産税評価額6000万円の土地の場合、通常であれば固定資産税の金額は6000万円×1.4%=84万円ですが、この土地が住宅用地であった場合には税額は以下のようになります。

固定資産税の金額:6000万円×6分の1×1.4%=14万円

さらに、賃貸アパートの場合は、この特例はアパート1戸ずつについて適用されます。

例えば、アパートを10戸建てている土地を所有している場合、200㎡×10戸=2000㎡まで課税標準額を6分の1としてもらうことができるのです。

2-2. 一般住宅用地に対する固定資産税の軽減

上の「小規模住宅用地」では、所有している土地のうち200㎡を超えない部分について課税標準額が6分の1にしてもらえる特例が認められます。

一方で、同じ土地のうち200㎡を超える部分については「一般住宅用地」としてこちらも特例措置を認めてもらえます。

具体的には、住宅地として使っている土地のうち、小規模住宅用地に該当しない部分については、課税標準額を3分の1としてもらうことが可能です。

例えば、1000㎡の土地1億円を持っている場合に、200㎡までの部分については小規模住宅用地として課税標準額を6分の1とし、それを超える800㎡の部分については課税標準額を3分の1としてもらうことが可能です。

この場合の税額を計算すると以下のようになります。

軽減措置が無い場合:1億円×1.4%=140万円
軽減措置がある場合:4万6666円+37万3333円=約42万円

小規模住宅用地部分:1億円×200㎡÷1000㎡×6分の1×1.4%=4万6666円
一般住宅用地部分 :1億円×(1000㎡-200㎡)÷1000㎡×3分の1×1.4%=37万3333円

アパートの場合には小規模住宅用地のときと同様に、1戸当たりについてこの特例の計算を行います。

例えば、10戸のアパートを建てるために使っている3000㎡の土地がある場合、200㎡×10戸=2000㎡までは小規模住宅用地、残りの1000㎡については一般住宅用地として扱ってもらうことができるのです。

このように、所有土地を賃貸住宅アパートとして使う場合には、固定資産税を大幅に安くしてもらうことが可能ですから、遊休状態になっている土地をお持ちの方は賃貸アパートとして活用することも検討してみると良いでしょう。

2-3. 店舗併用住宅等に対する固定資産税の軽減

上では純粋に住宅用地として土地を使っている場合の固定資産税の軽減措置について説明させていただきましたが、土地の上に立っている宅地が店舗併用住宅である場合にも、特例を適用してもらうことができます。

具体的には、小規模住宅用地の特例、一般住宅用地の特例を用いて計算した固定資産税の課税標準額に対して、一定の「住宅用地率」をかけて計算した値がこの場合の課税標準額となります。

この住宅用地率は建物のうちどれだけの割合を住宅として使っているかによって、以下のように代わります。

住宅部分の割合が25%~50%の場合:住宅用地率は50%
住宅部分の割合が50%以上の場合:住宅用地率は100%

店舗併用住宅の総床面積のうち、住宅として住むために使われている部分が25%未満である場合にはこの特例は適用されませんので注意しておきましょう。

2-3-1. 一定の条件に該当する店舗併用住宅の住宅地率

土地の上に立てている店舗併用住宅が「地上5階以上の建物で、耐火建築物」の条件に該当するときには、以下の区分に従って住宅用地率を定めます。

住宅部分の割合が25%~50%の場合:住宅用地率は50%
住宅部分の割合が25%~75%の場合:住宅用地率は75%
住宅部分の割合が75%以上の場合:住宅用地率は100%

2-4. アパートを新築した場合の固定資産税の軽減

賃貸アパートを新しく建てたときには、3年間にわたって、1戸当たり120㎡の住宅部分について固定資産税を2分の1にしてもらうことができます。

なお、新築したアパートが3階建て以上の耐火または準耐火建築物である場合には、5年間にわたってこの軽減措置を受けることが可能です。

2-4-1. アパート建築で固定資産税を節税する場合には床面積に注意!

アパートを新築した場合には、上記の通り3年間または5年間にわたって固定資産税の軽減措置を受けることができます。

ただし、この特例を適用してもらうにあたっては、建築するアパートの床面積に注意しておく必要があります。

具体的には、建築するのが戸建ての住宅である場合には床面積は50㎡~280㎡以下、賃貸用のアパートやマンションである場合には40㎡~280㎡である必要があります。

2-5. 特定市街化区域農地を転用してアパートを新築した場合の固定資産税の軽減

一定の条件に該当する農業を行うために使われている土地を、賃貸アパートを建てるための土地へと用途変更した場合、固定資産税の軽減措置を認めてもらうことができます。

都市計画法上、すでに市街地となっている地域や、10年以内に市街地にする予定となっている地域のことを「市街化区域」といい、この市街化区域の中にある農地のことを「特定市街化区域農地」と呼びます。

この特定市街化区域農地を所有している人が、転用の届け出を市区町村に対して行ったうえで、賃貸アパートを建てたときには、5年間にわたって固定資産税を軽減してもらえます。

ごく簡単に言うと、役所が「この地域は市街地として活用する」と決めた場所に、まだ農地が残っていたら都合がよくないので、農地をアパートなどの市街地に適した建物を建てるための土地に転用してくれるなら固定資産税を安くしますよ、という仕組みになっているわけです。

具体的には、アパートの床面積100㎡について、初年度と2年目の固定資産税は3分の2を減額、それ以降の3年間は2分の1を減額してもらえます。

農地をアパートに転用する場合には慎重な判断が必要になりますから、不動産取引に詳しい税理士などに相談しましょう。

3. まとめ

今回は、不動産を賃貸アパートを建てるのに使う場合に認められる、固定資産税の優遇措置について解説させていただきました。

詳しい内容については本文で解説させていただいた通りですが、これまでに税金や不動産取引にたずさわった経験のある方でないと内容をこまかく理解するのは手間がかかると思います。

そして、不動産に関する税金は金額的にも大きくなることが多いですから、どのようなときにどのような税金が発生するのか?については慎重に判断しなくてはなりません。

固定資産税など、不動産の税金に関しては不動産取引に関する税務を得意にしている専門の税理士などに相談してみてくださいね。