事例紹介
Category アパート・マンション経営
2018年01月31日 更新
マンションの隣の部屋で自殺者が出た場合に損害賠償請求は可能か
日本では年間の自殺者数は、平成15年の34,427人をピークに減ってきていますが、それでも平成28年度だけで21,897人の方が自殺でお亡くなりになっています。
自殺の場所で最も多いのが自宅で全体の59.3%となっています。また、自殺の方法で最も多いのは、首吊り自殺で全体の男性68.8%、女性60.4%となっています。
厚生労働省発表のデータによるhttp://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/jisatsu/16/dl/1-06.pdf
不動産業界では自殺や殺人事件があった物件を事故物件と呼んでいますが、上記のデータから計算すると、平成28年度だけで、約13,000件の住宅が自殺による事故物件となったことになります。
もちろん、これは一戸建てを含めた数字ですが、いつ自分が住んでいるマンションで自殺が起きたとしても不思議ではありません。多くの人が誰かが死んだことのある家には住みたいと思いません。その傾向は特に日本人に強いと言われています。
住みたいと思う人が少なければ、人気のない物件として価値が下がってしまいます。苦労して手に入れた自宅の価値が、そんなことで下がってしまったらとても悲しいですよね。
そのような時に価値が下がってしまった分の損失を誰かが保証してくれないかと考えると思います。そこで、自殺者が出てマンションの価値が下がってしまった際の損害賠償請求について考えてみます。
この記事でわかること
1. 自殺者の傾向
先ほど、自殺の場所と方法について少しだけご紹介しましたが、もう少し、詳しくみていきましょう。年代別の傾向がわかるとあなたの物件の危険度が少し見えてくるかもしれません。
厚生労働省自殺対策推進室と警察庁生活安全局生活安全企画課がまとめたデータを参照しながら説明をします。興味がおありの方はこちらを参照してください。
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/H28/H28_jisatunojoukyou_01.pdf
1-1. 年齢別の自殺者数
平成28年の年代別の自殺者数を見てみると、
19歳以下 520人 2.3%
20~29歳 2,235人 10.2%
30~39歳 2,824人 12.9%
40~49歳 3,739人 17.1%
50~59歳 3,631人 16.6%
60~69歳 3,626人 16.6%
70~79歳 2,983人 13.6%
80歳以上 2,262人 10.3%
不詳 77人 0.4%
となっています。
ニュースになりやすい若年層の割合がもっとも少なく、各年代ほぼ同じくらいの数だということがわかります。過去のデータを見てみても、数に違いはありますが、割合として同じような傾向が続いています。このデータからは、自殺をしやすい年齢というのは特に見て取れませんでした。
1-2. 職業別の自殺者数
年齢別では違いが見て取れなかったので、職業別のデータから危険な隣人像を考えてみます。
自営業・家族従業者 1,538人 7.0%
被雇用者・勤め人 6,324人 28.9%
学生・生徒等 791人 3.6%
無職者 12,874人 58.8%
不詳 370人 1.7%
こちらのデータからは、傾向が見て取れそうです。
無職者の数が一番多いのは、60歳以上の自殺者数が40.5%となっていることを考えても多い感じがします。仮に60歳以上の人が全員無職だとしても、まだ18%も残ります。
60歳以上の人が全員無職とは考えられないので、各年代の自殺者のうち20%くらいの人が無職であった可能性が高いように思います。もちろん、想像だけでどこにも書かれたデータがないので違う可能性もあります。
やはり職業的に見て多いのはサラリーマンのようです。長時間労働による過労や人間関係からのストレスが原因なのかもしれません。高齢者ではない現役世代で無職の人がいたらちょっと注意が必要かもしれません。
1-3. 自殺の原因・動機別の自殺者数
次に自殺の動機について見ていきましょう。
家庭問題 3,337人 15.2%
健康問題 11,014人 50.3%
経済・生活問題 3,522人 16.1%
勤務問題 1,978人 9.0%
男女問題 764人 3.5%
学校問題 319人 1.5%
その他 1,148人 5.2%
不詳 5,600人 25.6%
健康問題が一番多くなっているのは、60歳以上の割合が多いことと関係しているように思います。次が経済的な問題になっているので、やはり無職と関係があるのかなと思います。
それから家庭問題も多いので、ケンカが絶えないような不仲な家庭は自殺者がでる危険性があるかもしれません。もっとも、口もきかない冷戦状態のご家庭もありそうなので、外見での判断は難しいかもしれません。
1-4. 都道府県別の自殺者数
平成28年の都道府県別の年間自殺者数についても調べてみました。
東京都が一番多く2,220人(16.4%)で、2位は埼玉県の1,254人(17.3%)、僅差で大阪府の1,238人(14.0%)、神奈川県の1,213人(13.3%)となっています。
これは平成27年の数字をみても同じような傾向がみてとれます。やはり、自殺者の数は人口の割合に比例するようで大都市に集中しています。
しかし、人口の割合に対する自殺者数で見ると、岩手県の322人(25.2%)が最も高く、ついで秋田県の263人(25.2%)、和歌山県の237人(24.6%)、新潟県の545人(23.7%)となっています。
岩手県は東日本大震災の影響で思い詰めてしまう人が多いのでしょうか。その他の秋田県、和歌山県、新潟県で自殺者が多い理由は良くわかりません。
以上のデータを総合して判断すると、自殺者がでる可能性が高い物件は、
・年代別の傾向はなし
・職業的には現役世代で無職、あるいはサラリーマン
・健康面での問題を抱えている人
・経済的な問題あるいは家庭面での問題がある人
・人口の多い地域
これらが関係する場所や人がいるところとなります。
2. 事故のあったマンションになってしまった場合の補償
結論から申しますと同じ建物内で自殺者が出て、物件が売りにくくなったとしても、それに対して何らかの補償を求めることはできません。
実際に何かが壊されたという場合には、修理や交換などの補償をしてもらうことができますが、このような場合(不動産業界では心理的瑕疵といいます)には、補償をしないというのが慣例となっています。
例え裁判をおこしたとしても勝ち目はないでしょう。そもそも、人は死ぬものであり、過去にその場所で死んだ人はたくさんいるので、そんなことは気にすることではないというのが根底にあるのだと思います。
確かに自然死と自殺は違いますが、京都では古くから戦があったり、辻斬りがあったりと非業の死を遂げた人は数え切れないほどいます。東京でも戦があり、空襲がありでたくさんの人が殺されています。
中には心霊スポットとなっている場所がありますが、大部分の場所が普通に住居となっています。ですので、気にし出したらキリがないということなのだと思います。人種的に日本人は人が死んだ家かどうかを気にする人が多いそうです。
日本では家は建て替えて住むものという意識が高いせいかもしれません。ヨーロッパやアメリカでは、リフォームして使い続けるのが当たり前です。そのため、過去に人が死んでいるのも当たり前で、わざわざ気にするほどのことではないのでしょう。
つまり、日本人に売ろうとすると安くしないと売り難いですが、外国人の方なら気にしない可能性が高いということになります。少し視点を変えてみると良いかもしれません。
3. 自分の部屋で自殺をされてしまった時の補償
あなたの部屋を貸している時にその部屋で自殺をされてしまった場合には、遺族に対して補償を求めることができます。
ただし、補償の範囲はかなり限られています。ケースバイケースの部分もありますので、一般的に認められる範囲についてのみお知らせします。
基本的に認められるのはこのふたつです。
・原状回復費用
・賃料の減収分
まず原状回復費用ですが、これは掛かった費用分はそのまま請求できると考えて良いと思います。自殺で体液が付いた床の張替えや壁紙の張替えなどは過去の判例をみても間違いなく認められています。
しかし、洗面台やお風呂など汚れが見た目ではわからない程度まで清掃できる部分については、認められるかどうかは状況による部分があります。交換したからといって遺族から回収できるかどうかわからないため、事前に良く話し合って確認をしておく必要があります。もちろん、清掃代は払ってもらうことはできます。
賃料の減収分については、将来にわたって建物がある限り補償してもらえるという訳ではありません。通常は、自殺があった後の空室期間とその後の賃料の減額分だけです。
具体的には、1年程度の賃料全額とその後1~2年間の賃料の半額分くらいとなります。
4. まとめ
本文中でもお伝えしましたが、日本人は特に人の死を気にすると言われています。私も日本人ですので、とても気になります。
ですが、友人の中にはまったく気にならないと言う人もいます。私は気が弱いので自殺の現場などできるだけ近寄りたくないのですが、彼女は気にせずにどこにでも出かけます。
彼女に言わせると、看護師をやっているので日常的に人が死ぬのは見ているから、そんなのイチイチ気にしてられないそうです。ですので、事故物件というだけで安く住めるのは非常にありがたいそうです。
つまり、日常的に死と近い仕事をしている人なら問題なく売れるかもしれません。消防士、お医者さん、救急救命士、葬儀屋さんなどを候補に探してみると良いかもしれません。