事例紹介
Category 不動産
2018年07月03日 更新
レインズへの登録を確認するようにした方が良い理由
家や土地、マンションの売却をする場合には、通常は不動産会社に仲介の依頼をするか、買取りの依頼をします。稀に友人、知人、親子など知り合いに対して売ることもありますが、そのようなケースは少ないです。
不動産会社と買取りの話をする場合には、関係ありませんが、仲介の依頼をする場合に確認をした方が良いことがあります。それがレインズへの登録がきちんと行われているかどうかです。レインズのことを知らない方も多いと思いますので、レインズがどんなものなのか、なぜ、登録されないケースがあるのかについてお話をいたします。
この記事でわかること
1. レインズとは
そもそも、レインズをご存知ない方のために簡単に説明をいたします。ご存知の方はこの章は飛ばして次の章から読んでいただければと思います。
レインズとは、不動産流通標準情報システムの略称です。なぜ、レインズかというと、英語の表記が、Real Estate Information Network Systemとなっており、その頭文字をとってREINSと呼ばれています。
このレインズは、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が建設省と共同で開発し、運営しているコンピュータ・ネットワーク・システムの名称です。不動産流通機構には、関東甲信越より北側を管轄する東日本レインズと中部圏を管轄する中部レインズ、関西地区を管轄する近畿レインズ、中国地方、四国地方、九州地方を管轄する西日本レインズの4つがあります。
これらの間で情報が共有されているため、北海道の物件であっても、沖縄の不動産会社が情報を掴むことができるようになっています。毎年、10万件以上の物件がレインズを通して売買されています。
レインズは全国の不動産情報がたちどころに手に入るとても便利なサービスです。もし、あなたが売りたい不動産を登録すれば、あなたの不動産が希望する条件に当てはまる人からの問い合わせがくることになります。この時に、エリアのしばりはまったくありませんので、日本中の購入希望者が対象となります。
このように非常に便利なサービスなのですが、残念なことに敢えて活用しない不動産会社が存在しています。なぜ、レインズに登録しないのかをお話する前にレインズへの登録の義務について説明をいたします。
2. レインズへの登録義務
レインズがとても素晴らしいサービスだというのは、お判り頂けたと思います。しかし、どんなに優れたサービスであっても、物件が登録されなければ、見つけてもらうことはできません。逆に、買いたいという人も、物件が見つけられなくては手の打ちようがありません。
このような問題を防ぐために、宅地建物取引業法(宅建業法)の第三十四条の二項でレインズへの登録が定めてられています。宅地建物取引業法の説明の前に仲介契約の内容についてお話をします。
不動産の売却依頼の際に不動産会社と結ぶ仲介契約のことを媒介契約といいます。媒介契約には3つの種類があります。ここではそれぞれの違いについて、詳しくはお話をしませんが、専属専任媒介契約、専任媒介契約、一般媒介契約の3つとなります。最初の2つの専属専任媒介契約か専任媒介契約を締結した場合は、不動産会社は一定期間ないにレインズへの登録が義務付けられています。
媒介契約による違いについてはこちらのページで詳しく説明していますので参考にしてください。
http://tochikatsu.site/baikyakukeiyakushurui/
レインズへの登録について書かれている具体的な条文はこちらになります。
宅地建物取引業法の条文を引用します:
第三十四条の二 5項
宅地建物取引業者は、専任媒介契約を締結したときは、契約の相手方を探索するため、国土交通省令で定める期間内に、当該専任媒介契約の目的物である宅地又は建物につき、所在、規模、形質、売買すべき価額その他国土交通省令で定める事項を、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣が指定する者(以下「指定流通機構」という。)に登録しなければならない。
とあります。この定める期間は、専属専任媒介契約の場合は5日以内、専任媒介契約の場合は7日以内となっています。
尚、一般媒介契約の場合は登録の義務はありません。一般媒介契約の場合は、売主は複数の不動産会社と契約をすることができるため、更にライバルを増やすようなことを積極的にしたいとは考えていません。
多くの不動産会社が専属専任媒介契約か専任媒介契約を結びたがりますので、これらの契約を結んだ場合はレインズへの登録が自動的になされるものだと考えてください。
3. なぜレインズへ登録しない業者がいるのか
法律に従って正直に営業している不動産会社はすぐにレインズへの登録をしていますが、中にはレインズへの登録を故意に遅らせたり、登録してもすぐに取り消しをする、あるいは、商談中として探している人の目に触れさせないようにすることがあります。
普通に考えると不思議に思われると思います。買主が現れなければ、売れないので、仲介手数料が入らないからです。仲介で不動産会社が手にする利益は仲介手数料によるものだけで、それは成功報酬と決まっています。
では、なぜ情報を隠す不動産会社がいるのでしょうか。それは、両手取引をしたいと考えているからです。両手取引とは、売主と買主の両方を自社でまとめて契約をすることを言います。
不動産の仲介手数料は法律で上限の金額が決まっています。上限が決まっているだけですので、0円にしても法律上は問題ありません。
詳しくはこちらのサイトでご確認ください。
http://tochikatsu.site/tyukaitesuryou/
例えば3000万円の売買契約を結んだ場合の仲介料の上限は、96万円と消費税となります。消費税は国に納めるものですので、最大96万円が不動産会社の収入となります。ここから販売に掛かった広告宣伝費や人件費などの経費を除いたものが利益となります。
仲介手数料は売主と買主の両方からもらうことができますので、両方の代理人をしていれば、倍の192万円の収入となります。しかも、手間はほとんど変わりません。他社とやり取りをしないでよい分、ある意味では楽な場合もあります。楽して倍も稼げるなら、こんな美味しい話はないですよね。
その為には、他社にお客様を連れて来ないようにするしかありません。それで、情報を囲い込んで外に出さないようにする悪徳業者が存在するのです。大手の有名な不動産会社ならそんなことをしないのではと考えられるかもしれませんが、私はそれについては微妙だなと思っています。
情報の囲い込みをしているかどうかはわかりませんが、株式会社住宅新報社が発表している「不動産売買仲介実績2016」を見ると次のようになっています。
第3位 東急リバブル
手数料収入 518億円 平均手数料率 4.7%
第2位 住友不動産販売
手数料収入 612億円 平均手数料率 5.1%
第1位 三井不動産リアルティ
手数料収入 773億円 平均手数料率 5.2%
平均の手数料率が3%を大きく超えています。売買金額によって手数料率は違いがありますが、一番手数料率が高い200万円以下の場合でも上限は5%です。400万円以上の売買契約を結んだ場合はの手数料の上限は3%です。
200万円以下の取引ばかりで、500億円を超える売り上げを上げられるとは考えにくいですし、5%を超えている会社については確実に両手取引をしているものといえます。
ただ、この数年が情報の囲い込みに直結するものではありません。大手の不動産会社は自社のホームページが充実しているため、自社のホームページから来た引き合いは両手取引となるためです。
ただ、大手の不動産会社の自社サイトよりも、スーモやホームズなどのポータルサイトを利用する人の方が多いと言われていますので、そちらにも掲載する方が売主にはメリットがあります。ただ、不動産のポータルサイトに掲載するには、費用が掛かるため、自社サイトを持っている不動産会社では、ポータルサイトへの掲載は別料金となるケースも多いようです。どちらが良いか相談しながら決めようにされると良いと思います。
4. レインズへ登録されているか確認する方法
このような事情から、本当にレインズに登録されているのか不安に思われる売主が増えてきました。このような声が増えてきたことを受けて、2016(平成28)年1月より売主限定ではありますが、自分の物件の状態を確認できるようになりました。
基本的に機構に登録している不動産会社しか見ることができない情報ですので、売主が確認することができるのは自分が依頼した物件のみとなります。また、確認するためには、不動産会社からレインズへの登録証明書を入手する必要があります。
レインズに登録されているかどうかの確認する方法について近畿レインズを例にお話をします。近畿レインズのホームページへは下記のリンクから移動してください。
http://www.kinkireins.or.jp/sell_request/
こちらのページに操作方法も詳しく紹介されていますので、併せて参考にして頂ければと思います。
レインズのサイトに入るためには、媒介契約を締結した不動産事業者から受け取った登録証明書が必要となります。登録証明書の下の方に記載されている「確認用ID」および「確認用パスワード」を入力してください。このサイトで確認できる内容は下記の通りです。
①現在のレインズ登録内容
基本的な物件情報が記載されています。番地や面積、建物の築年数など登録されている内容に間違いがないか確認をしましょう。
②登録されている図面
図面は登録されていないこともあります。マンションなど住宅の場合は、間取り図面がないと極端に引き合い件数が少なくなります。また、図面は載せてあるけど、間取りが良くわからないほど、縮小された図面を載せているケースもあります。
これらは囲い込みの手口のひとつです。故意に他の不動産会社への情報を少なくして引き合いが来ないようにしているのです。買主の代理をしている不動産会社からしてみたら、間取りのわからないような物件を紹介することはできないからです。
買主の立場になったつもりで必要な情報がきちんと記載されているか確認をしましょう。
③現在の取引状況と取引状況の補足
レインズ登録物件の取引の状態を表す項目は次の3つとなります。
1:公開中
他の不動産業者から問い合わせを受付けている状態です。この状態になっていれば、興味を持つ買主候補に対して情報が公開されています。公開中に他の不動産会社から来た引き合いを拒否することはできません。ただし、案内自体は拒否できませんが、案内の日時や売却方法などについては条件を付けることができます。
2:書面による購入申込みあり
不動産業者が書面による購入申込みを受けた状態です。この状態にしている時は、他の業者からの引き合いを拒否することができます。売主の意向により、引き合いを受ける場合もあります。もし、媒介契約を結んだ不動産会社から引き合いの連絡がないのに、このような状態になっている場合には、囲い込みの可能性が考えられます。
早々に不動産会社に確認をされることをお勧めします。
3:売主都合で一時紹介停止中
売却依頼主の事情により一時的に物件を紹介できない状態です。もし、あなたが依頼していないにもかかわらず、このような状態になっている場合は、囲い込みの可能性が強く疑われます。すぐに確認の連絡を入れましょう。
④取引状況の履歴
これまでにあった問い合わせなどの引き合いの履歴が記載されています。中には不動産会社の判断で連絡がないものがあるかもしれません。そのような場合は、報告しなかった理由を確認しておくと良いでしょう。
あなたが確認していることがわかれば、担当の営業も後回しにできないので、速やかに動いてくれることでしょう。
5. レインズを使う際の注意点
注意点というほど大袈裟なものではありませんが、いくつか知っておいていただくと良い点についてお話をします。
5-1. レインズで確認できる物件
売主が確認できる物件は、媒介契約の種類が、専属専任媒介契約もしくは専任媒介契約を結んでいた場合で、平成28年1月4日以降に登録、更新がされた物件のみとなります。この条件に当てはまらない物件については確認することができません。
また、確認できる内容は、物件の登録情報と図面、取引状況の3つとなります。
5-2. システムの休止
毎日23時から翌日午前7時まではシステムが休止となります。この間は確認することができなくなりますので、時間を確認して状況の確認をするようにしてください。
6. まとめ
レインズがどんなものなのか、どんなメリットがあるのかについてお知らせをしました。広く買主を集めるためには必須のものだと思います。最近では買主が自分でインターネットを使って検索をして物件を探すことも増えていますが、まだまだ、全体からみたら少ないです。不動産会社に依頼して物件を探してもらう人の方が多いです。
高く売るためには買主間で競争してもらうのが一番良いのですが、物件の情報を隠されてしまうと売る機会が減ってしまいます。そうならないように売主が自分で登録情報を確認できるようになりました。依頼した不動産会社を信じたい気持ちがあると思いますが、念のため、確認をしておくことが必要です。
家や土地、マンションなど大切な資産を売るのですから、慎重に取り組んでいただければと思います。わずかなことで、何十万円も変わることもありますので、確認をするようにしてください。