使っていない山林を活用するには

相続などで山林を取得し、そのままにしている方が多いのではないでしょうか。使用していない山林はそのままにしておいても固定資産税が発生し、毎年納税しなければなりません。

山林の活用方法には多くの種類があり、キャンプ場などのレジャー施設にするなど使い方によっては収益を見込めるものもあります。現在注目を集めている太陽光発電を行うこともできます。

せっかく大きい土地を手にされているのであれば、そのまま放置するのではなく、さまざまな方法でその土地を活かしていきましょう。

1. 保安林には制限がある

水量を安定させたり洪水などを緩和するための水源涵養や、土砂の崩壊やその他の災害を防いだり、生活環境の保全や形成などの目的のための森林を保安林と呼びます。保安林は農林水産大臣や各都道府県知事によって指定されており、水源涵養保安林、土砂流出防備保安林、防風保安林、防雪保安林など全部で17種類に分類されています。

また、それぞれの目的にそって森林の機能を確保できるように、立木の伐採や土地形質の変更などに規制が設けられています。

保安林は国土保全の意味で大切な役割があるため、立木の伐採や形質の変更、保安林の解除などに様々な制限があり、それぞれに許可が必要です。例えば立木を伐採したい場合は各都道府県知事への届け出や許可が必要ですし、立木の種類によって何年間は伐採禁止と決められている地域もあります。

2. 山林の固定資産税は安い

日本では、土地やマンションなどの不動産を所有していると固定資産税を払う義務があります。固定資産税は市区町村が課税価格を決めて、税額が決定されるという仕組みになっています。

税額を決定する際に重要となってくるのが地目と呼ばれるもので、その土地がどういった目的で使用されているかによって、例えば宅地、公園、牧場、墓地、農地、保安林、山林などのように種類分けされています。基本的に、農地や山林にかかる税率よりも宅地にかかる税率の方が高くなります。

山林を所有している場合も固定資産税を支払う必要がありますが、宅地を所有している場合と比べて支払い金額が安価なため、山林を保有したまま放置していたとしても金銭的な負担はあまりありません。

そのため、活用されずに放置されている状況が多くみられます。しかし、せっかく山林を所有しているのであれば活用方法によっては収益が見込めるものもあるので、放置するのはもったいないです。

3. 山林活用の具体的な方法を考える

使用していない山林を活用するにあたっては、まずその山林をどういった視点から見るかによって活用手段も異なってきます。

山林の立木を資源としてとらえる、山林を自然としてとらえる、その土地自体を別の方法で活用する、の大きく3つに分類され、それぞれに適した活用方法が存在します。

どの活用方法が自分の希望に合っているかを判断してから手法を選ぶことが大切です。

3-1. 木材の販売で生計を立てるのは難しい

山林の立木を資材として考えた場合、一番メジャーな方法としては立木を伐採して木材を資源として売る、いわゆる「林業」とを経営するという方法です。

しかし、林業に今まで携わったことのない人が林業で利益を得て生計を立てるというのは非常に困難ですので、よほどの理由がないのであればこの方法はお勧めできません。

3-1-1. 育成までには時間と手間がかかる

林業を営む場合はまず資源となる木材を育てる必要がありますが、苗を植えればあとは勝手に育っていくというわけではありません。また、苗を植えてから木材として伐採できるようになるには約10年の年月がかかり、育成から販売までに長い時間が必要です。

立木がしっかりと育つためには日照を確保することが重要なので、その10年間の間に枝打ち(下部にある不要な枝を取り除くこと)や除伐(不要な樹木を取り除くこと)、間伐(樹木を間引くこと)と呼ばれる作業が必要で、この手入れを怠ると木が育たないため木材を売る事ができません。

質のいい木材を作るにはそれなりのコストと膨大な手間がかかりますし、農作物のように1年で育つわけでもありません。林業が農作物を育てるのに比べても簡単なことではないのが分かるかと思います。

3-1-2. 赤字経営の可能性が高い

このように、膨大な手間と高いコストをかけて木を育てたとしても、木材の販売価格はそれほど高いわけではありません。実際に林業を営んでいる専門家であっても、赤字経営の人が多いです。例えば、平成25年度の森林・林業白書によると、スギ人工林を50年育てた場合の経費が1ヘクタールにつき平均231万円であるのに対し、販売収入は1ヘクタール平均143万円となっています。かかるコストに対しての収入が低く、採算が取るのは非常に難しいのが分かります。

3-1-3. 燃料として販売する

相続として山林を受け継いだ場合、一から苗木をして育てるまでもなく立木があるケースもあります。その場合は、先に述べたような育成に時間を取られることもないので、木材を薪や炭などの燃料として販売するという方法がおすすめです。

薪や炭としての販売になりますが、販売するためには原木を加工する必要があるので加工費が発生します。通常は育成にかかる年月やコスト、加工費などを鑑みて採算が取れるかを判断しますが、すでに山林に立木がある場合は育成コストがかかりません。

林業を営まず別の用途に使用するため土地だけを残したいという場合も、すでにある立木を伐採してそのまま加工してもらい、燃料として販売するという方法は非常に有効です。

3-2. 特用林産物を販売する

所持している山林の種類によっては自然のものとして捉えた方が良いケースもあります。自然を活かして林産物を育てたり採取したりして売ることもできます。

山林にある資産は立木だけでなく、松茸や椎茸などのきのこ類、タケノコ、わさび、木の実、山菜などの特用林産物と呼ばれるものがあります。これらの特用林産物を利用して収入を得るという方法もあり、日本の林業における生産額の50%以上は特用林産物が占めています。

松茸はもちろん、椎茸などのきのこ類は日本国産品であるというだけで価値が高くなり、外国産と比べても需要がありますし、山菜採りのツアーなども人気があります。

また、木の種類によってはクワガタやカブトムシなどの昆虫が獲れることもあります。自分自身での収穫や販売が大変な場合や、遠隔地にいて頻繁に戻れないなどの場合は、きのこ採りや山菜採りのツアーや昆虫採集ツアーのために山林を開放するという方法もあります。

その場合は、ツアーを企画してくれる旅行会社に相談することをおすすめします。

3-3. レジャー施設として活用する

都心から大きく離れていたり、相当の僻地などでない場合はレジャー施設として山林を使用するという方法もあります。キャンプ場や釣り堀、ハイキングコース、アスレチック場を作るなどして、来訪者を呼び込む方法です。

キャンプ場やコテージを設置すれば、新しくできたキャンプ場でキャンプをしたいという人の来訪も見込めますし、アスレチック場を併設すると家族連れでの利用にも人気がでるかもしれません。ハイキングコースであれば、年配の方でも趣味として行っている人もいます。

綺麗な川が流れているのであれば、釣り堀を作るのも効果的です。キャンプ場やコテージなどであれば、利用料として収益を得ることもできます。規模を広げて大掛かりなものにすればするほど収益は上がりますが、その場合は個人での対応が難しくなるため、レジャー施設を取り扱っている事業主に土地を貸して経営してもらう方法をとると良いでしょう。

3-4. 森林ボランティアに使ってもらう

日本には全国各地に600を超える「森林ボランティア」と呼ばれるNPO法人や市民団体があります。森林ボランティアとは、森林の整備をしたり、一般人に森林への興味を持ってもらえるよう関心を高めるような活動をしたりして、健全な森林の育成や森林の保護を目指すという団体です。

森林ボランティアは国土緑化推進機構という社団法人に登録されていることが多く、主に地域の森林を活動拠点にしています。

林業を営んだりレジャー施設にしたりする予定がない場合、収益を得ることはできませんが、森林ボランティアの活動拠点として山林を提供するというのも一つの方法です。しっかりと管理をしてもらえるわけではありませんが、定期的にボランティアの人が入ることによって不法投棄などの迷惑行為を防いだり減らすことができる可能性があります。

3-5. 地元の自治体などに使ってもらう

大掛かりなレジャー施設やキャンプ場を設置するほどのことではなく、ちょっとしたレクリエーションができる場所として提供したいといった場合は、地元の自治体や町内会に山林を提供するといった方法もあります。

幼稚園や小学校での芋ほりや栗ひろい、遠足などのイベントに使ってもらうことができます。使用方法や用途についてはそれぞれの団体と相談して活用方法を決めることをおすすめします。

なお、こちらの方法は基本的に無償で山林を提供することになるので、森林ボランティアに提供した時と同様に収益を見込めるものではありません。

3-6. 太陽光発電用に使用する

土地が広く余っている場合は、立木を伐採して整地した後に太陽光発電のシステムを取り入れるといった方法もあります。現在日本では燃料の枯渇が懸念されており、再生エネルギーへの取り組みを強化しています。

その中でも太陽光発電は長期にわかって安定収入が見込めるとして人気を集めています。

3-6-1. 太陽光発電に向いている理由

太陽光発電を行うには、発電装置を設置するための広い土地と、太陽光を遮断するような障害物がないことが大切です。立木を伐採した後の山林は広く障害物もないため、太陽光発電に非常に適していると言えます。

ただ、地盤が柔らかすぎたり、傾斜がきつすぎる場合は装置の設置が難しいため、その部分の整地から始めなければならず、通常より初期費用が発生する可能性があります。

3-6-2. 太陽光発電に必要な費用

太陽光発電を始めるにはまず、発電装置を設置する必要があります。太陽光を集めるためのパネル(モジュール)、電力を交換するパワーコンディショナーや接続ボックス、電気を送る集電ボックスなどです。

太陽光発電システムを導入する際の費用ですが、資源エネルギー庁の調べによると平成27年度の時点で10kW以上の発電の場合、1kWにつき約31万円となっています。

野立てで太陽光発電システムを設置する場合は、10㎡~15㎡につき1kWの設置が一般的ですので、300㎡の土地に設置する場合は31万円/kW×20kWで620万円の初期費用がかかるという計算になります。

これは太陽光発電システム自体の費用になるので、必要な場合は立木の伐採や整地などの工事費用がプラスされます。

3-6-3. 太陽光発電の収益

太陽光発電で得られる収益ですが、基本モデルとしては10年間で元が取れて10年目以降は純利益が得られるという仕組みで考えられています。太陽光発電を普及させるにあたって、平成21年11月から国が買取りを行うという制度が設けられました。

太陽光発電を行っている人に対して、電力会社が一定の価格で電力を買い取るという制度で、需要が満たない場合でも固定価格の電力の買取りが保証されているので安心です。

買取り価格は平成26年度においては1kWにつき税込み34.56円と決められています。1kWの発電パネルからは1000kWhの発電を見込めるので、34.56×1000で約3万円の収入を得ることができます。

3-7. 民間企業に貸す

3-1から3-6では山林を利用した施設などを紹介してきましたが、活用方法はそれだけではなく、民間の企業に貸すという方法もあります。山林に住みたいという人は少ないように思われがちですが、自然が好きで山林に住みたいという人も増えてきています。

また、最近では会社の事業所や福利厚生施設、社員寮などに使用する企業もあります。

建物の建築や土地の開発は土地計画法という法律によって制限が設けられています。都市計画法によって市街化区域・市街化調整区域に振り分けられている区域の場合は、建物の建築や土地開発に制限がかかり、知事や市長から許可を得なければならないことがあります。

また、建築基準法による制限もあるので、自分の所有している山林がどの区域に属しているのか、制限がかかるのかを調べてから貸し出す必要があります。

4. 山林を売る

山林を相続したけれど管理をしたり土地活用したりするのは面倒で、できれば次の代に資産として残すのではなく処分してしまいたいという人もいるかと思います。山林も不動産ですので、買い手がいれば手続きを踏んで売却することももちろん可能です。

しかし、家を売るのとは違って山林を売却するには様々な問題点や注意点があるので知っておくことが大切です。

4-1. 測量に費用がかかる

山林を売買においては所有権移転登記が必要になりますが、それは公募面積を元にした取引になります。公募面積と実測面積は同じでなければならないのですが、どちらかが広い、どちらかが狭いといったケースもよくあります。

そのため、山林売買にあたっては正確な山林面積を測量する必要がありますが、この測量には費用が掛かります。

森林組合が管理している森林簿や森林施業資料などに土地の面積が参考になることもあるので開示してもらう方法もありますし、最近ではインターネット上で土地面積を無料で測量するといったサービスもあります。

測量によるトラブルや悪徳業者も存在するため、測量を依頼する際にはしっかりと事前に調べる事が大切です。

4-2. 都市部に近いほど売りやすい

山林は場所によって、都市近郊林地・農村林地・林業本場林地・山村奥地林地の大きく4つの地域に分類されます。山林を売却する際には自分の山林がどの地域に属しているかを把握しておきましょう。

1つ目の都市近郊林地は市街地や都市部に比較的近い地域で、宅地化に影響を受けやすい特徴があり、売却価格は高くなります。

2つ目の農村林地は農村地域の近辺の里山と言われる地域で、売却価格は都市近郊林地ほどではありませんが、やや高くなります。

3つ目の林業本場林地は名前の通り林業が盛んにおこなわれている地域で、売却価格はやや低くなります。

4つ目の山村奥地林地は山の奥深い地域で、交通の便などが悪い地域で、売却価格は低くなります。

4-3. 森林組合や森林組合連合会の斡旋サービスを利用する

いざ山林を売却しようと思っても、個人で探すにはなかなか買い手が見つからず売れないことがあります。全国には森林組合という団体があり、その中では山林売買斡旋サービスを行っているところもあります。

また、山林バンクという山林売買の仲介を行ってくれる民間企業もあります。やはり山林は特殊な土地のため、通常の不動産会社では扱っている会社は少ないです。専門的に扱っている業者を見つけて登録することで、売れる可能性は高まります。

ホームページ内では他の山林の情報も閲覧できるので、自分の売りたい山林の近辺がどのくらいの価格で売られているかの相場を確認することもできます。

4-4. 土地だけでなく立木の売却にも税金がかかる

一般的に宅地では土地と上物(その土地に建っている建物)に分けて考えられますが、山林も同じで土地(山林そのもの)と立木に分けて考えられています。そのため、山林にある立木は伐採して売却することもできますし、立木のままでの売却もできるようになっています。

山林を丸ごと売却したときにかかる税金の内訳は土地部分が譲渡所得、立木部分が山林所得として扱われます。

4-5. 宅建業法が適用されない

山林は一般の宅地とは区分が異なるため宅地建物取引業法(以下、宅建業法)が適用されません。宅建業法が適用されないとどのような問題が起こるかというと、仲介手数料についての制限がなくなります。

通常、宅地として扱われている土地の場合は仲介手数料に上限があるため高額になりすぎることはありませんが、山林の場合は宅地扱いではないため仲介手数料に上限がありません。

無料にすることも、逆に高額にすることもできてしまうため悪徳業者が絡んでくることもあります。売却時にはそういったトラブルに巻き込まれないよう、信用のおける業者に仲介を依頼するようにしましょう。

5. まとめ

山林の活用方法について説明をしてきました。どれも大掛かりな方法にはなるので個人での対応が難しいものもあります。山林に詳しい会社や団体、各自治体などに相談して活用方法を決めると良いでしょう。

山林は広い土地なので活用方法が多くあります。せっかく手に入れた広い土地を使わず無駄にするのは非常にもったいないです。様々な活用方法を知識として知っておくだけでも、いざ行動に移す際には選択肢が広がります。

土地を余らせることなく、有効的に活用していけるよう、判断することが大切です。

監修general editor

藤岡聖大

平成4年のバブル末期に大手住宅メーカーに就職し宅建の資格を取得する。そこで不動産の基礎を学ぶ。入社半年でバブルが崩壊し、ローンの返済にあえぐお客様、相続税対策でアパートを建てて失敗し、家や土地を失ってしまった人など、大変な思いをしている人に遭遇し、一般の方であっても最低限の不動産の知識が必要であることを痛感する。 それら経験を元に、ユーザー視点の不動産の情報を提供する当サイトを運営。