農地の相続に関する5つのポイントと相続税の出し方

土地や遺産を相続した場合には、必ず相続税が発生してきます。農地を相続した場合も例外ではなく、その農地の評価額や基礎控除額などを考慮した上で課税対象額に応じて相続税を支払わなければいけません。しかし、農地は他の土地とは違って、一定の条件を満たした場合には納税猶予の特例を受けることができます。農地を相続した場合にどのような手続きが必要なのか、そもそも農地はどのように評価されるのか、納税猶予特例を受けるにはどのような要件が必要なのかについて以下で詳しく見ていきましょう。

1. 農地を相続した場合には農地法の許可は不要

通常、個人や法人が耕作目的で農地を売買したり貸借する場合には、原則として農業委員会の許可を受ける必要があると農地法にて定められています。この許可はいわゆる認可の性質をもっており、法律行為の効果を補充する役割がある行政行為です。そのため、許可を受けずに行った行為については無効になります。しかし、農地を相続として受け継いだ場合は農地法の許可を受ける必要はありません。

2. 農地を相続したら改正農地法により届け出が必要

農地を相続した場合、農地法の許可は必要ありませんが、農業委員会への届け出が必要です。農地法が平成21年12月に改正されたことにより、相続や時効取得で農地を手に入れた場合に権利取得を知った日から約10カ月以内に農業委員会へ届け出をしなければいけません。届け出を忘れた場合には罰則として10万円以下の罰金が科せられます。
農業委員会は農地の売買や農地の転用、遊休農地の調査など主に農地に関する事務を執り行っている機関です。農業委員会が農地の権利変動を把握するためにも忘れずに届け出を提出するようにしましょう。

2-1. 届け出書に記載する内容

届け出は各市町村に設置されている農業委員会へ提出します。届け出書は農業委員会の窓口に用意されています。農地を相続した場合はまず農業委員会へ行き、書類を入手しましょう。届出書に記載する内容は以下の通りです。

  • 届出者の情報(住所・氏名・電話番号)
  • 土地の権利を取得した人の氏名等(氏名・住所・電話番号)
  • 届出に係る土地の所在等(所在、地番・地目・面積。土地が2筆以上にわたる場合は別紙記入となります)
  • 権利を取得した日(相続の場合は、被相続人の死亡日)
  • 権利を取得した事由(相続・法人の合併や分割・時効・その他から選択してください)
  • 取得した権利の種類及び内容(権利の種類、現在の耕作状況などを選択してください)
  • 農業委員会による斡旋等の希望の有無(希望した場合、農地の賃借権や所有権の移転など農地を効率よく利用できるように斡旋してもらえます)

上記内容を記載し、権利書の写しや登記簿謄本の写しなど、その土地を相続したことが確認できる書面を添えて、提出します。

3. 農地の区分

農地にはそれぞれ農地区分と呼ばれる区分が設定されています。農地区分は農地法による区分と、相続税法による区分の2種類があります。それぞれの農地の特徴について、以下に説明していきます。

3-1. 農地法による区分

農地法では、それぞれの農地の立地やその農地に適した事業などによって以下の5つの区分に振り分けられています。農地の転用可否を判断するために必要な基準として定められていますが、相続税の評価を行う際にも関わってきます。

3-1-1. 農用地区域内農地

農業振興地域整備計画により、農用地区域であると指定された農地のことです。農地の転用は許可されていません。

3-1-2. 甲種農地

市街化調整区域内農地で、集団的に存在している農地のことです。営農に適した農地や、特定土地改良事業施工後8年以内の農地がこれに当てはまります。農地の転用は許可されていませんが、例外的に転用可能な場合もあります。

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2017.12.31

3-1-3. 第1種農地

その広さが10ヘクタール以上ある集合農地のことです。土地改良事業等の対象になっているような、営農に適している農地が当てはまります。農地の転用は許可されていませんが、国道や県道になったり沿線施設になりうる場合は転用が許可されます。

3-1-4. 第2種農地

鉄道の駅から半径500m以内にある土地で、市街地化が見込まれる農地のことです。また、生産性が低い農地もこれに当てはまります。他に利用できる土地がない場合は、農地の転用が認められています。

3-1-5. 第3種農地

鉄道の駅から半径300m以内にある市街地区域内、または、市街地として発展しそうな区域にある農地のことです。農地転用が原則として認められています。

3-2. 相続税法による農地区分

上記の農地法での区分とは別に、都市計画などを参考にして農地を4種類の区分に振り分けています。この区分によって農地の評価額が決まります。

3-2-1. 純農地

農用地区域内農地、市街化調整区域内の甲種農地の第1種農地、その2つに該当する農地以外の第一種農地は純農地に区分されます。

3-2-2. 中間農地

第2種農地、もしくは農用地区域内農地や市街化調整区域内の甲種農地の第1種農地に該当する農地以外の第2種農地は、中間農地に区分されます。

3-2-3. 市街地周辺農地

第3種農地、もしくは農用地区域内農地や市街化調整区域内の甲種農地の第1種農地に該当する農地以外の第3種農地は、市街地周辺農地に区分されます。

3-2-4. 市街地農地

農地法第4条、5条により転用許可を受けた農地、市街化区域内にある農地、転用許可が必要でない農地は、市街地農地に区分されます。

4. 農地の評価と相続税について

農地も他の土地と同じく、相続した際には相続税が課せられる対象となり、評価額と基礎控除額によって相続税率が決定されます。では、その評価額はどのような基準で設定されるのか、また、相続税の税率はどのようになっているのかを以下で見ていきましょう。

4-1. 2つの評価方式

農地の評価額を算定は、倍率方式と宅地比準方式という2つの方法によって行われます。どちらの算定方式が適用されるのかはその農地の区分によって異なります。それぞれの算定方式と適用される農地について以下にまとめます。

4-1-1. 倍率方式

倍率方式とは、固定資産税評価額を基準にして、決められた倍率をかけて算出する方式です。純農地と中間農地区分の農地はこの倍率方式にて評価額が決まります。土地の固定資産税評価は毎年郵送される納税通知書や市区町村の専門窓口にて確認することができます。
かける倍率については、国税局長が定めていて農地のある地域ごとに異なっています。国税庁のホームページや、所轄の税務署で調べることができるので確認しておきましょう。例えば固定資産税評価額が20万円の土地で、定められた倍率が9であった場合の評価額は180万円となります。

4-1-2. 宅地比準方式

もうひとつの算出方式として宅地比準方式と呼ばれるものがあります。宅地比準方式とは、その農地が宅地であると仮定した場合の1㎡あたりの価額から、その農地を宅地へ転用した場合に必要な1㎡あたりの造成費を引いた金額をベースにして、その農地の地積をかけた金額が評価額となります。式であらわすと以下のようになります。

(その農地が宅地であるとした場合の1㎡あたりの価額-1㎡あたりの造成費)×土地の面積=市街地農地の評価額

市街地農地には基本的に宅地比準方式が適用されます。市街地周辺農地の場合は、上記の計算式で算出された評価額の80%が評価額となります。市街地付近の農地は、今後農業生産ではなく宅地として使用されたり転用が見込まれるものが多いです。そのため市街地の農地は宅地をベースに評価される仕組みになっています。

宅地であると仮定した場合の価額は、その土地の路線価を基に計算されます。路線価が設定されていない地域については倍率方式にて算出されます。なお、1㎡あたりの造成費についても倍率と同じく国税局長が定めており、国税庁のホームページにて確認することができます。

4-1-3. 税率や造成費の調べ方

倍率方式や宅地比準方式にて必要になってくる倍率や造成費は、先に述べたように国税局長が定めています。農地のある場所によってそれぞれ異なってくるためホームページにて該当の地域を調べる必要があります。

財産評価基準ページにて所有している農地がある都道府県を選択してください。その中にある「評価倍率表(一般の土地等用)」にて倍率方式で使用する倍率が記載されています。宅地比準方式にて使用する造成費に関しては、「その他土地関係」の項目にある宅地造成費の金額表にて確認することができます。

4-2. 相続税の基礎控除額

そもそも相続税とは、故人からの遺産や財産などを相続した際に受け取った個人に対してかかる税金のことを言います。相続した財産のすべてに対して相続税が発生するのかというとそうではなく、相続した資産や金額が基礎控除額を上回った場合にのみ、相続税の納税義務が発生します。基礎控除額は以下の計算式で求められます。

3000万円+600万円×相続人の人数=基礎控除額

例えば、遺産を相続した人数が自分一人の場合は3600万円が控除額となり、相続人が3人いる場合は4800万円が控除されます。相続人が多いほど、ベースとなっている3000万円に上乗せされる額が増えるため、基礎控除額が高くなります。相続税の対象となる金額が基礎控除額を下回る場合には、税金が一切かからないというケースもあります。

4-3. 相続税の税率

日本では、所得税や相続税には累進課税という方式がとられています。累進課税とは、累進税率によって税金が課せられ、課税対象の金額が大きければ大きいほど、税率が引き上げられる仕組みになっています。
相続額が基礎控除額を超えた場合は相続税が発生し、各相続人に分配された総額に応じて税率が定められています。相続税の税率は以下の8段階に分けられています。

  • 課税価格が1000万円以下の場合…税率は10%、控除額はなし
  • 課税価格が3000万円以下の場合…税率は15%、控除額は50万円
  • 課税価格が5000万円以下の場合…税率は20%、控除額は200万円
  • 課税価格が1億円以下の場合…税率は30%、控除額は700万円
  • 課税価格が2億円以下の場合…税率は40%、控除額は1700万円
  • 課税価格が3億円以下の場合…税率は45%、控除額は2700万円
  • 課税価格が6億円以下の場合…税率は50%、控除額は4200万円
  • 課税価格が6億円超の場合…税率は55%、控除額は7200万円

仮に、2500万円の相続額であった場合は、2500万円×15%-50万円=325万円の相続税が課せられるということになります。

4-4. 相続税の計算手順

相続税を計算する際には、まず最初に相続税の総額を算出し、その後、相続人個々人の税額を算出するという流れになります。具体的には以下のような手順になります。

  1. 課税価格の合計額を計算する(相続や遺贈によって財産を得たそれぞれの課税価格を合計します)
  2. 基礎控除額を計算する
  3. 課税遺産額を計算する(①で算出した課税価格の合計額から基礎控除を引きます)
  4. 各相続人の法定相続分に対する取得金額を計算する
  5. 各相続人ごとに、税額の速算表から仮の税額を計算して合計する
  6. 各相続人の按分割合を計算する(その人の課税価格÷課税価格の合計額で算出できます)
  7. 各相続人の税額を計算する(⑤で算出した相続税の総額×按分割合で計算します)

5. 納税猶予制度について

農地の相続の場合は、相続税の納税が猶予される納税猶予制度と呼ばれるものがあります。一定の要件を満たしていれば、農地を相続した相続人が継続して農業を行う場合に相続税額の一定部分の納税が猶予されるという特例です。
農地を相続した場合、基礎控除額の範囲内に収まる場合は納税の義務が発生しませんが、基礎控除額を上回る価額の農地であった場合は相続税を納めなければなりません。ただ、農地を相続した場合は現金を直接相続した場合と違って、手元に現金がなく納税が難しい場合もあります。相続税を支払うために相続した農地を売却してしまった場合は、日本における農業人口や農業従事者が減ってしまいます。そういった状況を防ぎ、農業経営の持続化を目的として税制面から優遇を行っています。

5-1. 納税猶予を受けるには

農地を相続すれば必ず納税猶予を受けられるというわけではなく、納税猶予を受けるには以下の2つの要件を満たしていることが前提です。

・被相続人が死亡するまでに農業経営をしている。もしくは、被相続人が生前に当事者である相続人に一括贈与した場合や特定貸し付けをしていること。
・被相続人から相続か遺贈によって農地を譲り受けた相続人が、相続税の申告期限までに農業経営を開始しており、その後引き続き農業経営を行うと認められること。

上記2つの要件に該当していると、農業委員会に証明してもらう必要があります。

5-2. 納税猶予の対象となる農地

納税猶予を受けるには、相続人の要件だけでなく、農地そのものにも要件が設定されています。納税猶予の対象となる農地は以下の農地です。

  • 被相続人から相続もしくは遺贈によって譲り受けた農地であること
  • 被相続人が農地として使用していた土地であること
  • 遺産分割協議によって期限内に相続された農地であること

5-3. 納税猶予となる期間

納税が猶予される期間は、次の3つの中で一番早く訪れた日までのとなります。

  • 被相続人から農地を相続した相続人が死亡した日
  • 相続人が生前一括贈与をした日
  • 相続税の申告期限から、20年間農業を継続した20年目の日

なお、納税猶予の期限内でも以下の場合には猶予を失効し、猶予されていた分の税額と利子税を払う必要があります。

  • 相続した農地を譲渡、貸付、あるいは転用、耕作放棄をした場合
  • 農業経営をやめた場合
  • 継続届出書を提出しなかった場合

5-4. 農地を生前贈与するメリット

上記で説明してきた相続税の納税猶予の他にも、贈与税の納税猶予制度というものもあります。この特例は、農業を経営している人が、生前に農地を一括して贈与した場合に贈与税の納税を猶予するという制度です。一括贈与する対象は、農業を引き継ぐ推定相続人となります。
要件を満たして納税猶予を受けることができた場合は、生前贈与した農地に対しての贈与税が猶予され被相続人が死亡するまで猶予されます。被相続人が死亡した場合は、贈与税が免除となり、その農地は相続税の課税対象に切り替わります。しかしこの際、一括贈与を受けた相続人が相続税の納税猶予を受ける要件をみたしている場合は、相続税の納税猶予を受けることができます。贈与税と相続税の納税猶予を両方利用することができるため、推定相続人が農業を引き続き行うことが分かっている場合は生前一括贈与を選択肢に含めることをお勧めします。

6. まとめ

農地を相続した場合の相続税と納税猶予について説明してきました。農業を行う場合でも行わない場合でも、土地を所有しているだけで固定資産税は毎年発生してきます。相続した農地で農業を行わない場合は、農業委員会に届出を提出してその農地の土地活用方法を見つけたり土地利用希望者を斡旋してもらうなどの協力をしてもらうといいでしょう。引き続き農業経営を続けていく場合には、忘れずに納税猶予の特例手続きを行うようにしましょう。すでに農業経営の継続を考えている場合には、生前贈与を行って贈与税の納税猶予を受けるという方法も視野に入れるといいかもしれません。

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