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Category  空き家活用

2019年09月05日 更新

空き家対策特別措置法(空き家法)とは?空き家所有者は要注意!

2016年11月に空き家対策特別措置法(通称:空き家法)が成立し、2017年2月から一部施行、そして5月に完全施行されました。

この法律は、全国各地で増え続けている空き家の対策について定めています。これまでにも、長年放置されている空き家が倒壊し、近隣住民が迷惑を受けるような問題がしばしばありました。しかし、空き家であっても個人の財産であるため、近隣住民や自治体はどうすることもできなかったのです。

そこでこの法律では、近隣住民に悪影響を与える空き家に対して、自治体が立ち入り調査や強制撤去などが行えるようになりました。

こちらでは、空き家対策特別措置法とはどのような法律なのか、そしてどのような影響があるのかについてくわしく説明いたします。もしも長年放置している空き家を所有している方なら、特に知っておくべき内容ですので。最後までご覧いただけたらと思います。

1. 空き家対策特別措置法(空き家法)とは?

空き家増加を背景に施行された法律

まず始めに、空き家対策特別措置法ができた背景として、全国的に空き家が増え続けていることが挙げられます。総務省統計局が発表した平成25年住宅・土地統計調査(速報集計)によると、全国の総住宅数6,063万戸の13.5%にあたる820万戸が空き家となっています。この13.5%という数字は過去最高で、今後も全国的に空き家が増え続けると予想されています。

空き家が増え続ける原因としては、世帯数と人口が減少している上、解体費用を負担しなければなりません。また、たとえ古くても建物がある土地の固定資産税は、更地よりも下がるしくみになっています。そして日本では中古住宅よりも新築住宅の方が需要が大きく、空き家はなかなか買い手や借り手がつかないということが挙げられます。

以下では、年々空き家が増加し続けるこれらの理由について、くわしく説明します。

空き家の増加原因①:世帯数、人口の減少

空き家が増え続ける1つ目の理由は、日本の世帯数と人口がともに減少していることです。世帯数が減少すれば、その家は空き家となります。また、高齢者の世帯が介護施設などに入所することによっても空き家は増えます。

そのため、空き家は地方だけでなく都市部でも、また1戸建てだけでなくマンションの空き家も増えています。このように、世帯数と人口の減少により、全国的に空き家が増えています。

空き家の増加原因②:解体費用の負担が大きい

空き家が増え続ける2つ目の理由は、住宅の解体費用の負担が大きいことです。空き家を解体して更地にしようと思うと、建物の構造や大きさ、地域により異なりますが、数十万円~数百万円の費用がかかります。

物件の所有者が土地を活用しようと考えているなら、費用を負担して解体します。しかし、不要な空き家だからという理由だけで多額の費用をかけて解体する人はわずかです。

そのため、空き家のまま放置され続ける物件が増えていくことになります。

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空き家の増加原因③:建物があると固定資産税が下がる

空き家が増え続ける3つ目の理由は、建物がある土地は固定資産税の優遇があることです。固定資産税は土地と建物のそれぞれに発生します。このうち土地の固定資産税は、建物が建っていれば本来の税額の最大6分の1まで下がるしくみになっています。この優遇は、建物がどれだけ古くても、たとえ空き家であっても対象になるのです。

もう1つの建物の固定資産税は、築年数によって下がっていきます。多くの空き家は築数十年が経っており、土地の固定資産税で優遇を受けている金額よりも低い固定資産税となっていることがほとんどです。そのため、空き家を解体することにより毎年の固定資産税が上がってしまいます。

上記で説明したとおり、建物を解体するためには多額の費用がかかります。その上固定資産税まで高くなるのであれば、空き家のまま放置しようと考える所有者が増えるのは仕方のないことです。

このように、固定資産税は空き家であっても建物があれば下がるしくみになっていることが、空き家が増える原因の1つになっています。

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空き家の増加原因④:買い手や借り手がつかない

空き家が増え続ける4つ目の理由は、売り手や借り手がつかないことです。都市部の空き家であれば売却や賃貸すればよいように感じますが、実際には空き家のままとなっている物件が多くあります。

買い手や借り手がつかない理由としては、中古住宅よりも新築住宅の需要の方が大きいためです。

同じ住宅を買うなら新築がよいと考える人は多くいます。また中古住宅は老朽化している箇所を見極めるのが難しいため、品質が信頼できる新築住宅の需要が大きくなります。

また賃貸でも、ほぼ同じことがいえます。冒頭でも説明したとおり、世帯数や人口が減少して住宅やマンションは余っているのが現状です。そのような借り手が多くの物件を選べる中では、建物が新しく家賃が低い物件に目が向きます。

これらの理由から、たとえ都市部であっても古い住宅には買い手や借り手がつかず、空き家になってしまうことが多くあります。

以上が、空き家が年々増え続ける理由です。

2. 空き家対策特別措置法(空き家法)の目的とは?

空き家問題の解決

上記では、年々空き家が増え続ける理由について説明しました。ただ、空き家とはいえ個人の財産です。その財産である空き家を放置するのは、基本的には所有者の自由です。

しかし、年々空き家が増加することにより、空き家やその敷地だけでなく、近隣に悪影響を及ぼす問題が起こるようになりました。そこで近隣住民への悪影響を防ぎ、迷惑とならないように空き家対策特別措置法が施行されたのです。

近隣への悪影響とは、景観の悪化や犯罪行為を招きやすくなること、倒壊による被害、土地が有効活用されないことの4つです。この法律では、近隣住民にこれらの悪影響を及ぼす空き家は、行政(市町村)が強制撤去できることになりました。なお、空き家の強制撤去については、後でくわしく説明します。

ここでは、空き家による4つの悪影響についてくわしく説明します。

空き家問題①:景観の悪化

空き家による悪影響の1つ目は、景観の悪化です。空き家の中には、所有者によって植栽や雑草の手入れがまったく行われないものがあります。このような空き家は周囲からの見栄えが決してよいとはいえず、街並みや景観が乱れてしまいます。

また、長年にわたって手入れがされないと、庭の木が近隣の敷地や道路にまで伸びることもあります。場合によっては交通の妨げになり、多くの近隣住民の迷惑になる恐れがあります。

このように、空き家の中には植栽や雑草の手入れがまったく行われず、景観を悪化させるものがあります。

空き家問題②:犯罪行為を招きやすい

空き家による悪影響の2つ目は、犯罪行為を招きやすいことです。空き家は誰も住んでいないため、放火や不法侵入、不法投棄などの犯罪が行われる可能性が高くなります。万が一空き家に放火されてしまうと周囲の住宅にまで被害が及びます。また、素性のわからない人が無断で住み着けば、近隣住民は大きな不安を感じます。

さらには、ひと目につきにくい立地条件の空き家であれば、不法投棄が平然と行われる恐れもあります。

このように、所有者が土地や建物の管理を行わないために、近隣住民にまで犯罪行為による悪影響を受けたり、不安を感じたりすることがあります。

空き家問題③:倒壊により近隣に被害を与える

空き家による悪影響の3つ目は、倒壊により近隣に被害を与えることです。人が住まない住宅は、通常の住宅よりも早く老朽化します。また、一切手入れがされないと倒壊する危険性が高くなります。

空き家が倒壊すれば、近隣住民がケガをしたり、近隣の土地や建物に損害を与えたりする恐れが十分にあります。また、空き家が道路沿いであれば、道路をふさいでしまい交通の妨げとなって多くの人の迷惑になることも考えられます。そして何よりも、老朽化した空き家があることにより、近隣住民はつねに「空き家がいつ倒壊するかわからない」という不安を抱き続けなければなりません。

このように、空き家が倒壊することにより、近隣の住民や建物、道路に損害を与えるという悪影響があります。

空き家問題④:土地が有効活用されない

空き家による悪影響の4つ目は、土地が有効活用されないことです。土地は多くの場合、住宅や店舗、工場、ビル、農地、公園、道路など、さまざまな形で活用されています。しかし、空き家はまったく活用されていない土地です。

そのため、近隣住民にとっては本来であれば新しい人が住んだり店舗やビルが建ったりする機会が失われてしまいます。また、全国的に空き家が増えて有効活用されない土地が増えていることは、日本全体としての損失だといえます。今後も空き家が増え続けると、都市開発や公共事業にまで悪影響を及ぼすことが考えられます。

このように、空き家が増えると有効活用されない土地がどんどん増えていきさまざま機会の損失となります。

以上のとおり、空き家は景観の悪化や犯罪行為、倒壊による被害、土地が有効活用されないことによる機会損失と、近隣に多くの悪影響を及ぼします。そしてこのような悪影響を防ぐために空き家対策特別措置法が施行されています。以下では、この法律の主な内容についてくわしく説明していきます。

3. 空き家対策特別措置法(空き家法)の3つの特徴とは?

空き家対策特別措置法では、全国的に増え続ける空き家による上記のような悪影響を防ぐため、まず空き家について定義しています。そして周囲に悪影響を及ぼす恐れのある空き家は、行政が強制撤去できることが定められています。

これまで空き家は、個人の財産であるという理由から行政でも具体的な対応ができないという実態でした。自治体によっては空き家対策条例を定めていましたが、指導が行える程度で根本的な解決は難しいものだったのです。そのため、法律により行政に強制撤去という権限を認めたことが、この法律の大きな特徴だといえます。

また、上記で説明した空き家がある土地の固定資産税の優遇も、以前から空き家が増える大きな原因だと問題視されていました。この優遇も、悪影響を及ぼす空き家は適用除外されます。

ここからは、空き家対策特別措置法の大きな特徴である空き家の定義と行政が空き家を強制撤去できること、固定資産税の優遇がなくなることの3つについてくわしく説明します。

特徴①:空き家の定義

空き家対策特別措置法の大きな特徴の1つ目は、「空き家」をはっきりと定義していることです。この法律では、悪影響を及ぼすかどうかで空き家を「空家等」と「特定空家等」に分けて定義しています。

「空家等」とは、私たちが日常的に使う空き家と同じ意味です。法律では、以下のように決められています。

「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)」

一方で「特定空家等」とは、上記で説明したような悪影響を及ぼしたり、悪影響を及ぼす可能性が高い空き家のことです。この法律では、特定空家等は以下のように定義されています。

「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等」

先ほど、この法律では行政が空き家を強制撤去できるようなったり、固定資産税の優遇がなくなったりすると書きましたが、これらの対象になるのがこの特定空家等です。

ですから、少しの期間空き家となっている住宅が行政に強制撤去されたり、すぐに固定資産税の優遇がなくなったりするということではありません。この法律で対処しようとしているのは空き家そのものではなく、近隣に悪影響を及ぼす空き家なのです。ですから、たとえ空き家であっても、近隣に悪影響を及ぼさなければ、何の問題もありません。

以下では行政による空き家の強制撤去と固定資産税の優遇がなくなることについて説明しますが、これらは近隣に悪影響を及ぼす「特定空家等」が対象です。

特徴②:行政は空き家を強制撤去できる

空き家対策特別措置法の大きな特徴の2つ目は、行政は近隣に悪影響を及ぼす空き家を強制撤去できるようになったことです。これにより、近隣住民が迷惑を受けている空き家を行政が撤去する権限を持ちました。

ただし、いくら近隣に悪影響を与えている空き家だからといって、行政が突然空き家を強制撤去することはできません。段階的な手順を踏んだ上で、最終的に強制撤去される形になります。段階的な手順とは、まず行政は空き家の所有者に対して助言・指導を行い、改善がなければ勧告します。次に改善命令を出し、それでも改善がなければ強制撤去を行います。

ここからは、空き家の強制撤去に至るまでの手順についてくわしく説明します。

・立ち入り調査

行政が助言・指導に始まる段階的な手順を踏むためには、空き家が近隣に悪影響を及ぼすものかどうかを知る必要があります。また、空き家の所有者がわからなければ助言・指導や勧告、命令などを行えません。そのため行政は、空き家の立入調査を行えるようになりました。

・助言・指導

行政が調査を行い、その空き家が近隣に悪影響を及ぼす「特定空家等」だと判断されると、まず始めに改善するための助言・指導が行われます。具体的には、所有者に対して近隣への悪影響の原因となる立木を除去したり、建物の解体や修繕を行ったりするよう助言・指導します。もしも所有者が助言・指導を受けても改善しない場合、次で説明する勧告が行われます。

・勧告

行政からの助言・指導を受けて改善しない場合、この勧告が行われます。行政から勧告を受けると、固定資産税の優遇が受けられなくなります。上記で土地の固定資産税は、建物があれば本来の税額の6分の1になると書きました。勧告を受けると、この優遇から除外され、本来の固定資産税が課税されるのです。

・命令

そして上記の行政からの勧告を受けても改善しない場合、改善命令が出されます。改善命令は行政からの最後の通告です。具体的にいつまでに改善しないといけないのか期限が設けられ、その日までに改善をしないと、強制撤去が行われます。

・代執行(強制撤去)

行政からの改善命令の期限までに改善を行わなかった場合、行政が強制的に空き家を撤去します。なお、改善命令の期限までに改善が完了していなければ、たとえ取り掛かっていたとしても強制撤去の対象となります。

具体的には、行政が近隣への悪影響の原因となる部分を改善します。たとえば、もし植木が伸びて道路に差し掛かっているのであれば、植木の道路に差し掛かった部分が除去されます。また、建物が倒壊する恐れがある場合、建物の解体が行われます。

ここでもっとも気をつけなければならないことは、行政からの命令までの段階で所有者が改善を行った場合はもちろん、行政が強制撤去を行った場合も費用は所有者が負担するということです。

行政による強制撤去では、費用を一旦行政が負担し、そして所有者に請求するのです。ですから、空き家を放置しておけば行政の費用で解体してくれるという意味ではありません。つまり、この法律が施行されたことによって建物の所有者は、近隣に悪影響を及ぼさないという義務を負ったといえます。

このように、空き家対策特別措置法の大きな特徴の2つ目として、行政は空き家を強制撤去する権限を持ちました。強制撤去であっても費用は所有者の負担なので、とても厳しい規定だといえます。

特徴③:固定資産税の優遇がなくなる

上記で、行政からの勧告を受けると土地の固定資産税の優遇がなくなると説明しました。土地の面積や地域により異なりますが、この優遇がなくなると、固定資産税が最大約4.2倍増額されることになります。

ここまで説明したとおり、空き家対策特別措置法では、空き家についてはっきりと定義がされた上で行政が近隣に悪影響を及ぼす空き家を強制撤去できるようになりました。また、行政から勧告を受けると固定資産税の優遇がなくなることも定められている、とても厳しい法律です。

4. 空き家対策の4つの方法

ここまで、空き家対策特別措置法ができた経緯や目的、3つの特徴について説明しました。もしまったく使用しておらず、近い将来近隣に悪影響を及ぼす空き家になりそうな建物を所有している場合は注意が必要です。そのままの状態で所有していると固定資産税の優遇が受けられなかったり、行政に強制撤去されて解体費用を負担したりすることになってしまいます。

空き家対策特別措置法の特徴を踏まえると、空き家は売却や改修して再利用、解体して更地にしておく、最低限の維持管理は行うという選択肢が考えられます。以下でこれらについてくわしく説明します。

①売却する

今後の空き家の対処法の1つ目は、売却して手放すことです。空き家が自分のものでなくなれば、行政から指導や勧告、強制撤去のような処分を受けることは絶対にありません。ですから、今後活用するつもりがないのであれば、売却を検討しましょう。もしすぐに売れなかったとしても、長期的に売りに出せば買い手が見つかるかもしれません。

②改修して再利用する

今後の空き家の対処法の2つ目は、改修して再利用することです。古い空き家であっても、ある程度手を加えることにより、賃貸物件として借り手が見つかる可能性があります。また、2010年頃から急激に普及し始めた民泊の宿泊施設として活用する方法があります。

改修には費用がかかりますが、空き家のまま放置して将来強制撤去されても、結局は解体費用を負担しなければなりません。同じ負担するのであれば、賃貸や民泊ではいくらかの収入か得て物件を有効に活用した方が得だと考えることもできます。

③解体して更地にする

今後の空き家の対処法の4つ目は、解体して更地にすることです。将来強制撤去で解体費用を負担するのなら、先に自分で解体するという考え方です。上記で説明した改修による活用をしようとしたとき、あまりに建物が古く費用が膨大な場合は、解体するという選択肢もあります。なお、解体した後の土地は駐車場などで利活用するか、そのまま所有するかの2つの選択肢があります。

・駐車場などで利活用

更地を駐車場などで利活用する方法があります。近隣住民に有料で駐車場として貸し出せば収入が見込めます。長期的にみれば、解体にかかった費用を改修することができます。

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・更地にしてそのまま所有

更地をそのまま所有すれば、空き家ではないため行政から何らかの処分を受けることはありません。更地のまま所有していればほとんど手がかからないので、将来何か利活用方法が見つかるまで待つのも1つです。

④空き家のまま最低限の維持管理を行う

今後の空き家の対処法の4つ目は、空き家の維持管理を最低限行い所有する方法です。たとえ空き家であっても、近隣に悪影響を及ぼさなければ何の問題もありません。そのため、空き家のまま所有し、草刈りや庭の手入れ、建物が倒壊しないための処置のような維持管理を行えば、解体費用をかける必要はありません。もちろん行政から強制撤去のような処分を受けることもありません。

そのため、定期的な最低限の維持管理を行い、空き家を所有するのも選択肢の1つです。

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5. 空き家対策特別措置法(空き家法)と空き家対策の方法まとめ

こちらでは、空き家対策特別措置法とはどのような法律なのか、そしてどのような影響があるのかについてくわしく説明いたしました。

この法律は、全国的に増え続ける空き家が近隣に悪影響を及ぼしているという問題を解決するためにつくられました。具体的には、行政が近隣に悪影響を及ぼす空き家を強制撤去できることと、行政から勧告を受けた空き家は固定資産税の優遇が受けられなくなることを定めています。行政が強制執行できる法律は数が少ないことから、この法律はとても厳しいものだといえます。

もし現在空き家を所有しているなら、今後この法律による勧告や強制執行を受けないように心がけながら所有するか、売却して手放すことを考えましょう。