事例紹介

Category  空き家活用

2019年09月05日 更新

空き家が引き起こす数々の問題

空き家の増加は、よく社会問題として取り上げられていますが、そもそも空き家が増えることにはどういう問題があるのでしょうか。日本では今後、人口や世帯数が減少していくことで、更に空き家が増え、その問題はより深刻になると言われています。

そこで今回は、空き家が引き起こす数々の問題についてまとめました。現在空き家を所有している人も、今後空き家を所有する可能性がある人も、空き家が引き起こす問題について、ここで理解していきましょう。

1. 放置すると老朽化が早くなる

空き家は、放置することでどんどん老朽化していきます。老朽化の原因は、定期的なメンテナンスを行わないことにもありますが、最も大きな理由は湿気です。

ほとんどの空き家が、生活する人がいないため、窓やカーテンも締め切られた状態で放置されていることが多いです。そうすると、風通しも悪くなり、空気の入れ替えができない状態が長く続くことになります。締め切った室内には、日光が当たることもほとんどないので、どんどん湿気がたまっていきます。

日本の住宅は木造住宅が多いので、湿度の影響を受けやすくなっています。木造住宅でなくても湿度や風通しの悪さなどの影響を受け、人が住んでいる住宅よりも早く老朽化していきます。

 

1-1. 資産価値が下がる

住宅は、時間が経つにつれ資産価値は下がっていきます。人が住んでいる家であっても、新築の住宅であっても、時間とともに資産価値が下がっていくので、老朽化が進む空き家であれば、資産価値が下がることは明らかです。

特に都心部から離れた地方では、過疎化が進んでいくことで、今後、空き家が建っている土地の価値も下がっていくことが考えられます。そうなると、空き家と土地の資産価値よりも、税金や定期的な清掃などにかかる維持費の方が高くなってしまう可能性も出てきます。

 

2. 近隣への悪影響

たった1軒の空き家であっても、近隣の住民や、地域全体に悪影響を与えると言われています。

空き家による近隣への悪影響については、アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリングによる割れ窓理論を用いてよく説明されています。割れ窓理論とは、建物の窓ガラスを割れた状態のまま放置すると、それが地域への関心のなさを表すサインとなってしまい、軽犯罪が増え、ゆくゆくは大きな犯罪を引き起こすというものです。

たとえ窓ガラスが割れていなくても、空き家であることが外からも分かる状態であれば、犯罪を起こしやすい環境を作ってしまうことになります。

 

2-1. 空き家率と犯罪の関係

空き家率が高い地域は、犯罪件数も多くなっています。実際に総務省などが発表しているデータからも、空き家と犯罪に関係があることが示されています。もちろん犯罪の原因は、空き家の増加以外にもあります。しかし、空き家が多い地域では犯罪の件数も多くなっていることは、理解しておかなければいけないポイントです。

空き家が増え、人がいなくなるということは、監視の目が少なくなることを表しています。監視の目が少なくなると、単純に空き家自体が犯罪に使われてしまうことも増えますが、空き家とは関係のないところでも軽犯罪が増えていくのです。このようにして、空き家が多い地域では犯罪の件数も増えていきます。

 

2-2. 青少年犯罪の増加の一因

空き家の増加が引き起こす治安の悪化は、青少年犯罪の増加の一因にもなっています。

空き家は人目につきにくいため、落書きのターゲットに狙われやすい建物でもあります。また、見つかりにくい場所ということで、未成年による飲酒や喫煙、いじめなどを行う現場にも使われてしまう可能性もあります。

中には空き家が薬物栽培や詐欺の拠点として利用されたこともあり、そのような犯罪に地域の青少年が巻き込まれることも考えられます。

 

2-3. そのエリアの地価への影響

空き家が多い地域は、居住地としての人気もなくなってしまい、人口が流出し、地価が減少していく傾向にあります。実際に空き家があると聞くと、活気や人気がない地域のようにと感じる人も多いです。更に犯罪も多い地域であると分かれば、その土地を利用したいとい人はますます少なくなってしまいます。

一度悪いイメージがついてしまうと、そのイメージを払拭するのは難しいです。1軒だった空き家が2軒3軒と増えていき、犯罪件数も増加していくと、周辺の住宅だけでなく、隣接するエリア全体の地価に、マイナスの影響を与えることになります。

 

3. ゴミの不法投棄

空き家は、ゴミの不法投棄場所としても利用されてしまいます。庭や駐車場があるような広い敷地の空き家は、特に注意が必要です。

廃棄されるゴミには冷蔵庫や洗濯機、自転車などの分別しにくいものや、大きな家具など処分が大変なものが多いです。中には住宅工事の廃材が放棄されていたというケースもあります。

一度不法投棄されてしまうと、その後の片付けや対策はとても大変です。他にもゴミが捨ててあると、捨てる側の罪悪感もなくなってしまい、その場所に捨てるのが当たり前になってしまいます。

不法投棄されたゴミは、周辺地域の景観の悪化に繋がります。生ゴミなどが捨てられていると悪臭の原因となってしまい、近隣の住人からクレームが入ることもあります。

 

4. 不審火・自然発火の危険

誰も住んでいない空き家から、火災が起こることはないと思いこむのは大変危険です。

火災の原因の第1位は放火です。誰も住んでいない空き家は、この放火の対象として狙われやすいと言われています。また、空気の乾燥する冬場などは特に、何らかの原因で自然発火して火災になることも多くなっています。このように、空き家は、人が住んでいる住宅と同じように火災の危険性があります。

空き家の火災では、発見が遅れてしまうことも多く、古くなっているのですぐに燃え広がってしまいます。すぐ隣に建物があれば、火が燃え移ってしまい、火災の規模が大きくなってしまうことも考えられます。

 

4-1. 失火責任法

失火責任法とは、火災が起きて周辺の住宅にも被害が広まってしまった場合、重大な過失がない限り火元の住人にその責任は問われないことを示した法律です。つまり、過失の有無やその度合いによっては法的責任を問われる可能性もあるということです。決して、空き家で火災が起きた場合には責任を問われることがないという訳ではありません。

仮に、重大な過失がなく法的な責任を問われなかったとしても、火災の火元となってしまった以上、道義的責任として、被害が出た住人にはお詫びや謝罪をする必要はあります。

 

4-2. 重大な過失があると判断されたら

失火責任法において、重大な過失があるかどうかは、それぞれの火災ごとに判断されるので、簡単には判断できません。

空き家場合は、住んでいる人がいないという性質上、所有者がきちんと管理をしていたかどうかを中心に詳しく調査されます。管理状況によっては重大な過失があったとして、賠償責任を問われる可能性もあります。

重大な過失が認められると、賠償金を支払わなければなりません。賠償額は、火災の被害の大きさにもよりますが、個人ではとても支払うことができないような膨大な額になることが多いです。

 

4-3. 空き家火災保険

重大な過失が認められ賠償金を支払わなければならない場合に、その支払いを助けてくれるのが保険です。火災による賠償責任を問われた際の保険には、火災保険や個人賠償責任保険、施設賠償責任保険などがあります。

しかし、これらの保険には、空き家であれば保険適用外になってしまったり、保険料が高くなってしまったりするものもあります。中には、空き家であれば加入できないものもあるので探すのがとても大変です。

そこで、空き家でも加入できるような空き家火災保険を利用する人もいます。誰も住んでいない家に保険をかけるのは無駄だと感じてしまう人も多いですが、万が一のリスクを考えると加入しておいた方が安心です。

 

5. 伸び放題の庭木

手入れをしないまま放置しておくと問題になるのは、家屋だけではありません。庭がついている住宅は、庭の放置についても考えなくてはいけません。

庭木などは、手入れされないと、あらゆる方向に伸び広がってしまいます。地面からは雑草が生えてきて、時間が経てば経つほど手入れも大変になってしまいます。

 

5-1. 隣地の枝は切れない

庭木が大きくなりすぎて、隣の住宅の敷地にまで伸びてきたとしても、法律上、隣の住人は枝を切ることができません。そのため、木が原因で日が当たらなくなったり、葉っぱが落ちてしまったりと迷惑をかけてしまい、最悪の場合は近隣トラブルへと発展してしまうこともあります。

近隣の住人との関係性ができていれば、邪魔になったら切ってもらうことも可能ですが、所有者である以上、任せきりにするのは良くありません。仮に庭木が折れて、近隣の住人にケガを負わせてしまったり、住宅を傷つけてしまったりするようなことがあれば、責任を問われることもあります。

 

5-2. 空き家だとすぐにわかる

手入れされていない庭は、空き家だとすぐにわかってしまいます。明かりのついていない、締め切られた住宅は、単に外出中という可能性もあるので、すぐに空き家であるとは判断できません。しかし、伸び放題の庭木や雑草は、すぐに住人がいないということを知らせる目印になってしまうのです。

空き家だということがわかってしまうと、放火や不法占拠のターゲットとして狙われやすくなったり、不法投棄場所として利用される可能性も高くなったりと、良いことはありません。

 

5-3. 害虫・害獣の発生

放置された庭には、害虫や害獣が発生し住み着いてしまう可能性があります。スズメバチやシロアリ、ネズミ、ネコ、ハクビシン、イノシシなどがその例です。人の気配のしないところに好んで住み着く害虫や害獣にとって、空き家やその庭はとても良い環境なのです。

庭木に害虫が住み着いてしまうと、そこを拠点にどんどん数を増やしてしまい、被害を大きくしてしまう可能性があります。害獣は、悪臭の原因にもなりますし、家屋の基礎をもろくして、屋根や壁などを壊してしまう危険性もあります。

これらの被害は、所有している空き家だけにとどまらず、近隣の住人の生活にも影響を与えることがあります。一度住み着いてしまったものは駆除するのが難しく、専門の業者に依頼する必要が出てきます。

 

5-4. 地域の景観を損なう

庭を手入れがされていない状態で放置してしまうと、地域の景観を損ねてしまいます。その地域で生活をしていない所有者にとっては大きな問題ではなくても、近くで生活している人たちにとっては気になる問題です。

住宅を購入したり、賃貸物件を選んだりするときには、その建物はもちろん、周辺の環境も含めて選んでいます。近隣の住人にとって、荒れている庭がある住宅が近くにあることは、防犯上の心配はもちろん、精神的にも良いものではありません。

 

6. 台風などの際の危険

老朽化が進んでいる空き家は、台風や地震などの自然災害の被害にあう可能性も高く、とても危険です。台風や地震などによって、空き家が倒壊したり、一部が飛散し住宅や住人に危害を与えた場合には、所有者が責任を問われることになります。

また、自然災害の被害にあったとき、空き家はすぐに片付けられないことも多く、近隣の住人に大きな迷惑をかけてしまうことも考えられます。家屋が倒壊し道をふさいでしまっても、空き家であれば持ち主に連絡をするのに時間がかかってしまい片付けが進まなかったり、豪雨で浸水被害にあっても、片付けにいく時間がなくしばらく放置され、悪臭や病原菌など衛生上の問題を生み出してしまったりと、非常時に危険な状態が長続きしてしまう可能性があるのです。

 

7. 空家等対策の推進に関する特別措置法

このように、空き家が引き起こす問題はたくさんあり、それによる影響もとても大きなものです。今後、人口や世帯数の減少、過疎化、高齢化が進むと、空き家の数は更に増えることになり、このような問題が更に深刻になる可能性が高くなってきました。

そこで政府は、空き家の増加を食い止めるために、平成27年2月26日に空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家対策特別措置法)を施行しました。この法律は、地方自治体の空き家対策をバックアップするためのもので、国が定めた基本方針に沿って、自治体が空き家対策を推進していく環境を整えるものになっています。

この法律によって大きく変わったことは、特定の空き家が税金の特例から除外されること、行政代執行による強制解体が可能になったことの2点です。詳しい内容については、国土交通省のホームページからも確認できます。

国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html

 

7-1. 住宅用地の特例から除外される

土地を住宅用地として利用している場合、固定資産税や都市計画税を軽減する措置が設けられています。この軽減措置があるので、空き家を解体して更地にすると税負担が増えてしまうために、危険な状態の空き家でも解体をためらう人がいました。

そこで、空き家対策特別措置法では、特定の空き家についてはこの特例の対象外にすることを定めました。この特定の空き家とは、倒壊の危険があるものや衛生上問題のあるもの、著しく景観を損ねているもの、周辺の生活環境を守るために放置しておくべきではないものが該当します。

 

7-1-1. 固定資産税・都市計画税が3~4倍になる

固定資産税と都市計画税の特例は、以下のようになっています。

・住宅の敷地200㎡までの部分
固定資産税は6分の1、都市計画税は3分の1に軽減。

・200㎡を超える部分
固定資産税は3分の1、都市計画税は3分の2に軽減。ただし床面積の10倍を上限とする。

この特例がなくなることによって、特定の空き家については税額が3~4倍になると言われています。住んでいない住宅の税金が3~4倍になるのは、家計にも大きな影響が出ます。住宅の固定資産税が高い場合には、空き家を解体した方が、税額が安くなるという場合もあるので、一度計算してみるという方法もあります。

 

7-2. 行政代執行による強制解体

もうひとつのポイントは、行政代執行による強制解体ができるようになったことです。これにより、かなり危険な状態の空き家や衛生上問題のある空き家を、行政が撤去できるようになりました。

もちろん、すぐに撤去されることはありません。まずは行政による助言や指導が行われ、改善が見られなければ勧告、さらに改善が見られなければ命令というように、手順を踏んで進んでいくことになります。

命令の段階になると猶予期間が設けられ、その期間内に指定された撤去工事や解体工事を完了させなければなりません。この期間では、所有者に対し意見書の提出や意見聴取の機会も設けられています。猶予期間内での改善が見込めない場合や、改善命令を無視した場合にのみ、行政代執行による強制解体が行われます。

倒壊の危険性がない空き家や衛生上問題のない空き家は、行政代執行の対象になることはありません。行政代執行による解体の費用は、所有者負担であり、所有者が払わない場合には、一旦自治体が建て替えをして、後に所有者に請求する形になっています。この際は、給与や銀行預金の差し押さえなど思い切った手段が取られる可能性があるので、支払いの義務から逃れるのは難しいと考えておいた方が良いです。

 

8. まとめ

このように、空き家が引き起こす問題はたくさんあることがわかりました。空き家を所有することになったきっかけは人それぞれですが、全てに共通して言えることとしては、空き家の問題は所有者だけの問題ではなく、近隣の住人や周辺の地域にまで影響を与えるものであるということです。

空き家の増加はこれまで、地方の問題とされてきましたが、今では都心部でもその数が増え続け、今後はその問題がより深刻になることが予想されます。既に空き家を所有している人も、今後空き家を所有することになる可能性がある人も、空き家が引き起こす問題について、所有者としてきちんと理解しておくことが求められています。