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Category  空き家活用

2019年09月05日 更新

空き家を活用する4つの方法

空き家を活用する方法は、主に4個あります。具体的には、売却、賃貸、自己活用、寄付という方法です。この中でどの方法が最適かは、空き家の状態や所有者の意志によっても異なります。

今回は、この4個の活用方法について見ていきます。加えて、空き家の活用をサポートする空き家バンクや、事前の住み替えについても確認していきましょう。

1. 空き家の活用方法

たとえ空き家であっても大切な資産です。放置して何らかのトラブルが発生したり、維持や管理にたくさんの費用をかけたりする前に、活用できる方法を見つけていきましょう。

 

1-1. 空き家に家族の誰かが住んで活用する

最もシンプルな活用方法が、自分や家族の誰かが住むという方法です。

賃貸や売却のように購入者や利用者を探す手間もなく、手続きなどの時間もかかりません。古くなっている部分も、身内であればある程度大目に見て使用でき、どうしても必要な部分だけにお金をかけるという選択も可能になります。

また、居住用ではなく、セカンドハウスとして使う方法もあります。この場合、使用頻度によっては定期的な管理が必要になりますが、空き家が使われず無駄になるということはなくなります。このように、家族内で活用するという選択肢もゼロではありません。

 

1-2. 空き家を賃貸にして活用する

賃貸として貸し出す方法には、居住用と事業用の2種類があります。居住用の賃貸であれば、一軒家として貸し出すこともできますし、シェアハウスとして貸し出すこともできます。事業用であれば、借主の業者によって利用方法も異なります。

どちらの場合も、空き家を貸し出して家賃収入を得ることには変わりません。しかし、家賃収入の安定度や改装の必要性、契約方法、貸し出し中のリスクについては異なる部分も多いので、どのように貸し出すかは事前に検討が必要です。

 

1-3. 空き家を売却してお金に換える

空き家を売却すれば、不動産という資産を、使い方に制限のない現金に換えることができます。空き家の使い方に悩んでいる人や、空き家の存在が負担になっている人の中には、売却を望んでいる人も多いでしょう。

しかし、空き家や土地を売却したときの価格が、全額手元に残る訳ではありません。不動産の売却には、後に記載しているように費用がかかります。購入者が見つかり空き家を売却できても、そのための費用が売却価格を上回ってしまえば、不動産をお金に換えるどころか、マイナスになってしまうのです。

とにかく空き家を手放して現金に換えたいという理由だけで売却するのは危険です。

 

1-3-1. 空き家はリノベーションした方が得か?

古くなった空き家は、リノベーションしてきれいにした方が早く売れるとは限りません。

例えば、一切リノベーションしていなくても、価格を安くしたり、購入者がリノベーションする際の費用を一部負担したりすることで、買い手が見つかることもあります。自分たちの好みに合わせてリノベーションしたい人にとっては、売主の事前のリノベーションが邪魔になってしまうこともあるのです。

また、リノベーションして売却価格を高く設定しても、売れなければ値下げを検討せざるを得ません。売却し手元に残った金額でリノベーション費用を支払うと、ほとんど残らなかったり、足りなくなったりすることも考えられます。

このように、リノベーションした方が必ず得になるとは限りません。中には、手を加えなければならない場合や、手を加えた方が良いという場合もあるので、一概にどちらが良いか判断することは難しいです。売却の際には、リノベーションが必要かどうか、依頼する不動産会社とも相談しながら進めるようにしましょう。

 

1-3-2. 空き家の売却にかかる費用は?

不動産の売却には、主に以下のような費用がかかります。

・仲介手数料
・印紙税
・登記費用
・譲渡所得税
・住宅ローン支払い中の場合は繰り上げ返済及び返済手数料

この中でも、空き家の売却時、特に大きな金額となるのが仲介手数料です。仲介手数料の額は上限が法律で決まっていますが、不動産会社によっては上限以下で仲介してくれるところもあります。どのような場合でも、売却価格に対して不動産会社が定めた割合分が仲介手数料として引かれるので、高く売れれば売れるほど仲介手数料も高くなってしまいます。

この他にも、リノベーションが必要であればその費用もかかりますし、解体して更地として売るのであれば解体工事の費用もかかります。買い手との交渉で、耐震診断や境界の調査などを求められると、その分の費用も必要になります。

 

1-4. 空き家を売却する時の不動産会社の探し方

不動産の売却では、依頼する不動産会社選びがとても重要になります。特に空き家は、所有者が遠方に住んでいて、空き家の周辺地域について詳しくないという場合も多いので、安心して任せられる不動産会社を探しましょう。

 

1-4-1. 空き家に対してのノウハウを確かめる

一般的な一戸建てやマンションと違って、空き家の仲介には壁も多いです。特に、売却の場合はその影響も大きくなります。

古くなっている空き家は、購入を検討する際に、建て替えや改修工事のことを考えなくてはなりません。そのため、どうしても購入を検討してくれる人は少なくなってしまいます。また、空き家は、建物自体の価値がほとんどないというケースもよくあり、一般的な物件と同じように買い手を探すことは難しいです。

そこで、依頼する不動産会社には、売却価格の設定はもちろん、リノベーションが必要かどうか、交渉の際の条件づくりなど、空き家の売却に関して幅広く対応できる力が求められます。賃貸の場合も同様に、空き家の状態に合わせて柔軟な提案をしてくれるかがポイントになります。

このように、依頼する不動産会社には、空き家に対する知識や経験、ノウハウが欠かせません。その不動産会社の過去の実績などをもとに、十分な力があるかどうかを確かめましょう。

 

1-4-2. 複数の会社に依頼する

依頼する不動産会社を決める際には、複数の不動産会社に依頼する必要があります。

不動産の価格設定には決められた基準がないので、不動産会社やその担当者によって価格が大きく変わってきます。そのため、1社に限定して依頼すると、適切な価格かどうか判断することが難しくなります。

実際に不動産会社を利用するときには、複数の不動産会社に見積りを依頼し、1番納得できる価格や売却のプランを提示してくれた不動産会社を選ぶようにしましょう。

 

1-5. 空き家の売却依頼をする不動産会社を見極める方法

良い不動産会社かどうかは、インターネットの口コミなどを見ても判断できません。1番確実な方法は、自分の目で確かめるということです。

悪徳業者を除外するために、不動産会社の基本情報や許可については事前に確認しておきましょう。実際に見積りを依頼したら、その内容もじっくり確かめます。追加費用や販売価格の値下げの可能性を黙っていたり、詳細を記載せず質問しても曖昧にしか答えてくれなかったりする不動産会社は、良い不動産会社とは言えません。

また、取引終了後、良い不動産会社だったと思うかどうかは、依頼した人が納得して取引できたかどうかでもあります。どんなに見積りが丁寧でも、担当者との相性が悪ければ、納得した取引にはならないでしょう。担当者との相性も含め、自分で直接確認し見極めることが大切です。

 

2. 空き家バンクを活用する

空き家バンクとは、空き家の所有者と利用者とをつなげるサービスのことです。自治体や、自治体から依頼された団体によって運営されています。

不動産会社を利用して購入者や利用者を探す方法と違い、空き家を探している人やその地域で暮らしたい人に向けてサービスが展開されています。空き家の所有者にとっては、ターゲットが絞られているので、購入者や利用者とマッチングしやすくなるというメリットがあります。

 

2-1. 空き家バンクを利用する時の流れ

空き家バンクは、自治体によって運営方法が異なります。正確な情報は、空き家のある自治体のホームページや窓口で確認してください。

空き家バンクを利用するためには、必要な書類をそろえ、空き家バンク登録申請を行わなければなりません。その後、提出された資料をもとに、自治体による審査が行われます。審査を通過し空き家バンクに登録されると、ホームページなどで物件の情報が公開されます。このとき、犯罪防止や個人情報保護のために、住所や所有者の情報などは伏せた状態で公開されます。

空き家バンクの情報を見て利用希望者が現れると、担当者から所有者に連絡が入ります。その後の交渉や契約は、不動産会社を通して行われるのが一般的です。基本的に、交渉や契約に関しては、自治体や運営団体は関与しません。

仲介する不動産会社は、自治体から指定されることもあれば、自分たちで探すこともあります。不動産会社を利用せず当人同士で契約することも可能ですが、トラブルを避けるために、不動産会社を通すことが条件になっているところも多いです。

 

2-2. 空き家バンクの課題

空き家バンクの大きな課題は、利用率の低さです。残念ながら全ての自治体に空き家バンクが存在している訳ではありません。また、空き家バンクがある自治体でも、登録してある空き家の数が少なすぎて、上手く活用できていないところも多いです。

空き家バンクの登録は、基本的に所有者からの申請がなければできません。そのため、登録数を増やし利用者を拡大しようと思っても、規模の小さな自治体では、職員の数や使える費用が少ないため、積極的な取り組みができません。

また、空き家バンクを利用する人が限られすぎているという課題もあります。空き家バンクの利用者は、実際に移住を考えている人や改装した空き家での生活を望んでいる人がほとんどです。今後、更に空き家が増えていくことを考えれば、利用者が極端に限定されるのは、必ずしも良いことではありません。

利用者が少なければ、わざわざお金をかけてサービスを発展させる必要性がありません。今後の空き家バンクには、より多くの人に利用してもらえるような工夫が求められています。

 

3. 空き家になる前に住み替えを検討する

空き家の活用方法を考えるにあたって、空き家になる前に住み替えを検討しておくことは非常に重要です。空き家を所有している人の多くが、突然空き家を所有することになり、その管理や活用方法に頭を悩ませています。こうした空き家の悩みを未然に防ぐ唯一の方法が、空き家になる前に住み替えるという方法です。

実際に、両親が2人で暮らしていた住宅を住み替え後に売却したというケースもあります。売却後、両親は子ども家族と一緒に住んだり、高齢者専用の集合住宅に住んだりという選択をされます。

事前に住み替えを行うことには、選択肢が多いうちに自分たちの意志で決めることができるというメリットがあります。その後、資産価値の下がっていく空き家の活用に悩まされることもなくなります。

 

4. 空き家を寄付することで活用する

空き家の活用方法として、建物やその土地を寄付するという選択肢もあります。寄付先としては、自治体、個人、法人、自治会・町内会の4つがあります。どこに寄付をするにしても、簡単には寄付できないので注意が必要です。

 

4-1. 空き家を自治体へ寄付して活用

自治体に寄付をする際には、担当窓口に相談後、必要な資料を提出し、寄付の受け入れ可否の判断を待つことになります。ここで注意しなければならないのが、全ての寄付が受け入れてもらえる訳ではないということです。

自治体にとって、固定資産税や都市計画税による税収は貴重な財源です。制限なく寄付を受け入れると、税収を減らしてしまうことになります。また、寄付された土地や建物には、管理費用もかかります。たくさん寄付を受け入れてしまうと、維持や管理に膨大な財源を費やすことになるので、明確な使用目的がある土地や建物以外の寄付は断られてしまうのです。

実際に寄付が受け入れられたものには、広大な土地や歴史的な価値のある家屋、建設途中の公共施設周辺の土地などがあります。このように、他にはない大きなメリットや特徴がない限り、ほとんどの空き家が寄付をしても断られる可能性が高いと考えておきましょう。

 

4-2. 空き家を個人へ寄付して活用

個人への寄付の場合、寄付先には、知り合いや親戚の他にも、近隣に住む人という選択肢があります。近隣に住む人であれば、来客者用の宿泊場所やセカンドハウス、解体して駐車場や庭にするなど、活用方法にも幅が広がります。維持や管理の負担も少なくて済むので、遠方に住む知り合いや親戚よりも受け入れてもらえる可能性は高いでしょう。

いずれの場合も寄付を受ける側に贈与税が課税されるので、その点を理解してもらわなければなりません。その他、登記費用の負担や贈与契約書の内容などについて、お互いに納得して進めなければ、トラブルになってしまうこともあります。

 

4-3. 空き家を法人へ寄付して活用

法人への寄付は、一般企業への寄付と公益法人への寄付があります。

一般企業への寄付は、通常その企業の関係者が行うものです。寄付を受け入れると、企業側に税金を納める義務が発生するので、無関係の人からの寄付を、税金を納めてまで受け入れてくれる可能性は、極めて低いと考えておきましょう。また、寄付をした側にも譲渡所得税が課税されることがあるので、注意が必要です。

公益法人への寄付は、一般企業への寄付に比べると受け入れてもらえる可能性は高いです。必要な手続きを行うと、譲渡所得税を非課税にすることができます。この手続きは少し面倒ですが、社会の役に立てたいと思うのであれば、公益法人への寄付も考えてみましょう。

 

4-4. 空き家を自治会・町内会へ寄付して活用

自治体では使い道がなかった不動産も、周辺で活動する自治会や町内会であれば何か使い道があるかもしれません。空き家のある自治会や町内会も寄付先のひとつとして検討してみましょう。

寄付ができるのは、自治体の長に認可地縁団体として認められている自治会・町内会のみです。認可地縁団体への寄付は、公益法人への寄付と同様に、譲渡所得税が非課税になります。

 

5. まとめ

ここまで4個の活用方法について見てきました。最適な方法は、空き家の状態や、所有者それぞれの事情によって異なります。しかし、どんな空き家でも、放置しておくだけでは老朽化していき、リスクやマイナス効果を生みだす可能性が高いことには変わりありません。

様々な活用方法を見ていきながら、最適な選択肢は何かを考えていきましょう。