事例紹介

Category  空き家活用

2019年09月05日 更新

古家の解体費用助成金の金額と対象となる6つの条件とは?

古くなった家の解体工事では、自治体から助成金を受け取れる可能性があります。これは、解体費用助成金というもので、自治体が定めた条件を満たす建物であれば、解体工事を行うことで助成金が受け取れるというものです。

解体工事を行う際には、この助成金が受け取れるかどうかを事前に確認しておくことで、工事費用を削減できる可能性があります。後から知って損をしないように、今回はこの解体費用助成金について、その内容や仕組みを確認していきます。

1. 古家の解体費用助成金とは?

1-1. 空き家問題

人口の減少や少子高齢化、都市部への人口の流出などを背景に、日本では空き家が増え続けています。2010年頃からは社会問題としても注目されるようになり、人口減少が進むにつれ、問題はより深刻になってきています。

空き家と聞くと、どうしても地方の問題であるように感じてしまいます。しかし、最近では都市部周辺でも空き家が目立つようになってきており、今後は、人口の多い都市部の方が空き家の数が増えていくことが予想されています。

そもそも空き家が増加することは何が問題なのかというと、犯罪の増加と周囲への悪影響の2つが挙げられます。空き家は、不法侵入や不法占拠、放火などのターゲットになりやすく、犯罪の増加に繋がってしまいます。人が住んでいない家は、野生動物や害虫の住処になりやすく、倒壊の危険性もあり、周辺の住宅にまでその影響が及ぶことも考えられます。

最近は、台風や豪雨、地震などの自然災害による空き家への被害も心配されています。台風で家屋の一部が飛散してしまったり、豪雨で浸水してしまったりしても、空き家はそのまま放置されてしまう可能性があり、二次被害の危険性や衛生面での問題が発生することも予想されます。

古く傷んだ家になっていると地震で家屋が倒壊し、他の住宅を壊してしまったり、道をふさいでしまったりすることも考えられます。空き家のある自治体では、このような被害が発生する前に、空き家を減らしたいと考えていました。

しかし、所有者は遠方に住んでいて空き家の状態を把握していないことも多く、売却や貸し出しをしてもうまくいかない、解体するための費用がない、固定資産税の負担が増えることなどを理由に、そのままにされている空き家が多く、なかなか問題に着手できずにいました。

そこで、解決策のひとつとして、空き家の解体のための費用をサポートする解体費用助成金が生まれ、注目を集めるようになりました。

1-2. 耐震化促進事業の一環

この解体費用助成金の制度は、耐震化促進事業の一環として行われています。耐震化促進事業とは、今後起こるかもしれない大きな地震に備え、旧耐震基準の下で建設された建物を現在の耐震基準に合わせて改修しようとする事業のことです。

この事業の一環として、現在の耐震基準を満たしていない建物や倒壊の恐れのある建物、老朽化した建物などの解体を進めるために設けられているのが、解体費用助成金です。

対象となる建物、負担額、助成金を受け取るための条件などは、それぞれの自治体によって異なります。

1-3. 全国で約300の自治体が古家の解体費用助成金を用意している

この解体費用助成金は、全国の約300の自治体で用意されています。現在、日本には自治体が約1700あるので、全ての自治体で補助金が利用できるという訳ではありません。

そのためか、この解体費用助成金について知らない人が多いという現状があります。助成金を受け取ることができるにも関わらず、その制度を知らずに受け取らないというのは、非常にもったいないことです。

空き家の解体工事の予定がある人は、自分の自治体が助成金を用意しているかどうかを確認してみる価値はあります。

2. 解体費用助成金の金額

助成金の具体的な金額は、助成金を受け取る条件以上に、自治体によって違いが出てくる項目です。正確な金額や計算方法が知りたい場合は、役所への問い合わせやホームページなどで直接確認してください。

金額の計算方法としては、工事費用全体のうち一部を負担するとし、その負担割合を決めているところが多いです。他にも、1戸あたりで金額を決めているところや、工事面積を基準に1㎡あたりで金額を決めているところなど、様々な計算方法があります。

ほとんどの地域で助成金の金額には上限が設けられていますが、少ないところでは約10万円程度、多いところでは100万円以上、条件付きで200万円まで支援してくれる自治体もあります。

助成金の金額は、自治体の財政状況や、他の事業との優先順位なども影響しています。

3. 古家の解体費用助成金は後払い

助成金を受け取ることができれば、解体費用の負担が減り、資金の準備も楽になると考えてしまいます。しかし、助成金は、基本的に後払いとなっているので注意してください。

多くの自治体が、最終的に工事にかかった費用や実際に工事した範囲などを基に、助成金の金額を計算します。そのため、工事が完了し、解体業者への支払いも済ませた上で、領収書や解体工事の完了を示す証明書などを提出してからではないと、助成金を受け取ることができなくなっています。

助成金として受け取る金額は、結果的に戻ってくるお金ではありますが、一時的には支払わなければならない金額です。資金の準備などは計画的に進めておきましょう。

また、助成金の受け取りがいつ頃になるかも事前にきちんと確認し、受け取りが完了するまで必要な資料などは大切に保管しておくようにしましょう。

4. 古家の解体費用助成金を利用する方法

4-1. 自分の住んでいる地域の解体費用助成金の調べ方

助成金が用意されているかどうか調べる方法はいくつかありますが、一番確実な方法は役所へ直接問い合わせて確認することです。都市整備やまちづくりを担当している部署に確認すると良いでしょう。

インターネットでも検索することはできます。「解体工事助成金 自治体名」や「解体工事 補助金 自治体名」などで検索してみてください。助成金を用意している自治体であれば、ホームページでも確かめることはできますが、助成金の制度がない自治体では、助成金の有無を調べるだけでも時間がかかってしまうことがあります。

「解体費用助成金」で検索すると、解体費用助成金の制度がある自治体をまとめたサイトもあるので、そちらで確認することもできます。このようなサイトで確認する際の注意点としては、調べた時点で、助成金が受け取れなくなっている自治体も掲載されている可能性があるということです。

また、逆に補助制度が出来ている場合もあります。自治体によっては期間限定で助成金を受け付けていたり、予算がなくなり次第終了となっていたりするところもあります。最新の情報を確認するためには、役所へ直接問い合わせる方法が確実です。

解体工事を依頼している業者へ確認するという方法もあります。その地域を中心に工事を請け負っている業者であれば、助成金についても詳しく知っている可能性が高いです。既に見積りや依頼を進めているという方は、業者へ確認してみるのも良いでしょう。

4-2. 古家の解体費用助成金を受けることができる条件

自治体によって、助成金を受け取ることができる条件は異なります。ここでは、多くの自治体で採用されている条件をいくつか取り上げました。詳しい条件を確認するためには、役所へ問い合わせて確認をしてください。

①空き家であること

最低でも半年から1年、もしくはそれ以上の期間、誰も使用していない空き家であることが条件という自治体が多いです。空き家問題を解決したいと考えている自治体が多いため、空き家であることを条件としているところが多くなっています。

しかし、全ての自治体が空き家を条件としている訳ではありません。居住中の住宅のみを対象としている自治体や、空き家も居住中の住宅も対象という自治体もあります。

②建物が古い

古い建物は、地震が起きた場合に倒壊する危険性が高いので、助成金の対象となっていることが多いです。

古いかどうかのひとつの目安になるのは、1981(昭和56)年です。この年は耐震基準の法律が改正された年であり、これ以前の建物は、旧耐震基準の下で建てられた住宅ということになります。耐震化促進事業の一環ということで、旧耐震基準の建物のみを対象とするため、1981年5月31日以前に建てられた住宅を条件としている自治体も多いです。

また、旧耐震基準下で建てられた住宅以外でも、事前の耐震診断で倒壊の恐れがあると判断されれば、助成金の対象となる自治体もあります。現在の耐震基準の下で建てられた住宅でも、木造のもので古くなっている家であれば、対象となる可能性も高いです。

③税金をきちんと払っている

助成金を受け取るためには、固定資産税をはじめとした税金をきちんと納税していることが前提となっています。これは全ての自治体で助成金を受け取るために必要となる条件です。滞納や未納があれば、助成金は受け取れません。

④前年度の所得が基準以下

解体費用助成金は、空き家を解体したいけれど費用が確保できないという人をサポートするためのものでもあるので、受け取りに所得制限が設けられている自治体もあります。

できるだけ多くの空き家をなくしたい自治体にとって、所得や資金がある人は自費で解体してもらい、資金の確保が難しい人から支援をしていく方が、問題解決のための限られた財源を効率よく使うことができます。
所得制限の基準額は自治体によって様々で、所得以外の貯金やその他の資産を確認する自治体もあります。

⑤指定地域内であること

同じ自治体内でも、特定の地域の住宅のみが対象となっている自治体もあります。例えば、災害時の輸送道路となる道路沿いの住宅、災害危険区域内の住宅、住宅密集地にある住宅などがあります。

このような地域は、地震などの自然災害が起こり、家屋が倒壊した場合、その周辺の地域にも大きな被害を及ぼす可能性がある地域です。そのため優先的に解体費用助成金の対象となっているところが多いです。

⑥その他

この他にも、自治体によって様々な条件が設けられています。

例えば、自治体の担当者による現地調査が必要なところもあります。解体後の土地には何も建設しないことが条件となっているところもあれば、反対に、その土地か自治体内の別の土地への建て替えが条件となっているところもあります。

他には、自治体内の解体業者を利用すること、限られた期間内に解体工事を完了させること、面積や高さなどの条件を設けている自治体もあります。中には、年間で助成金を支給する数が決められている自治体や、予算がなくなり次第、助成金の申請の受付を終了する自治体があります。

どの自治体でも、基本的に年度ごとに助成金にあてられる予算が決められているので、解体を検討している人は、早めに申請の流れや手続きを確認し、確実に助成金が受け取れるよう準備を進めましょう。

4-3. 家屋以外の解体工事が対象の自治体もある

中には、家屋の解体工事は助成金の対象外という自治体もあります。このような自治体では、ブロック塀の撤去工事が助成金の対象となっていることが多いです。

助成金の対象となるブロック塀は、古くなってヒビが入っていたり、傾いていたり、高い位置まで積み上げられていたりするような、危険ブロック塀と言われるものです。このようなブロック塀は、災害時はもちろん、日常生活の中でもいつ壊れてきて人に被害がでるか分からないので、全撤去や一部撤去を進める自治体があります。

特に、大きな通り沿いや通学路沿いの危険ブロック塀が対象となっていることが多いです。
家屋の解体に加えブロック塀の撤去が必要な場合も、助成金について調べてみると良いでしょう。

5. 古家の解体費用助成金以外にも固定資産税の減免などの優遇も活用できる

空き家や古くなった家を解体するにあたって、解体費用助成金を支給するという方法以外にも、土地の固定資産税を減免するという優遇措置があります。

そもそも住宅の持ち主が解体工事をためらう理由として、工事費用がかかることも1つですが、更地にすることで固定資産税の負担額が上がることも大きく影響しています。住宅が建っている土地は、その土地の固定資産税が軽減されるようになっているので、住宅を解体することでこの軽減措置がなくなり、負担額が増える可能性があるのです。

土地の広さや地域によっては、負担額が増加しない可能性も十分あります。しかし、解体後の固定資産税は、解体前の4倍から6倍になるとも言われており、税額が増える可能性がある地域に住宅を所有している人の中は、あえて解体工事をしないという選択をしている人もいます。

このような理由で、空き家や古くなった家をそのままにしておく人が増えないよう、解体後の土地の固定資産税の負担を減らす措置を設ける自治体が出てきました。具体的には、工事後2年間は固定資産税や都市計画税の負担額が増えないようにする優遇措置や、工事から5年後までは住宅があった時と同じ負担額で、6年後以降は段階的に引き上げていくというような優遇措置などがあります。

一定の期間内に工事をした場合のみ優遇措置が受けられるようにしている地域もあるので、解体工事の予定がある人は早めに確認をしてみてください。

6. 古家の解体費用助成金を利用する方法まとめ

古くなった家を解体するのには、できるだけお金はかけたくないと多くの人が考えています。費用を抑える方法は、他にもいろいろとありますが、解体費用助成金を利用するという方法が、最もシンプルで分かりやすく、より多くの費用を確実に減らすことができる方法です。

助成金を受け取ることができる自治体は、まだまだ少ないですが、空き家問題の深刻化や耐震化促進事業の強化が進めば、導入する自治体が増える可能性もあります。

制度があるにも関わらず、知らずに利用しないのはもったいないことなので、解体工事を検討する際には、一度、自治体が解体費用助成金の制度を設けてないか、確認してみてください。