事例紹介
Category 土地活用
2018年07月21日 更新
不動産の鑑定額と査定額の違いとは?
テレビの特集などで芸能人のお宅が紹介されることがあります。そのような時はコメンテーターとして不動産鑑定士の方が同席していることが多いです。その不動産鑑定士の方のコメントを聞いていて、「えっ、それは違うんじゃないの?」と思うことがあります。
不動産の鑑定額と実際に売れる価格に違いがあるのは、ある意味当然のことだとは思いますが、鑑定を鵜吞みにしてしまうのは危険かもしれません。このようにリフォームすると鑑定額が高くなると言われたとしても、実際に高く売れるかどうかには関係がない場合もあるからです。
もちろん、不動産鑑定士の方がおっしゃる通りの内容もありますので、テレビの情報が参考にならないと言うつもりははありませんが、これまでにテレビで見た「それちょっと違うんじゃないの?」と思ったことについてお話をしていきます。
この記事でわかること
1. 住宅設備を換えると不動産の鑑定額がアップ?
一例ですが、ガスコンロをIHクッキングヒーターに換えると鑑定額が100万円もアップすると紹介されているのを見たことがあります。結論から言うと、その番組では「70万円掛けてIHクッキングヒーターに換えることで鑑定額が100万円高くなるので30万円もお得になる。」と話していました。
たしかにガスコンロとIHクッキングヒーターを比べるとIHクッキングヒーターの方が販売時の価格を高く設定できます。しかし、売りだし価格が高く出来ても、その価格で売れるかどうかはわかりません。
極端な話をすると、IHクッキングヒーターをガスコンロに交換したいと考える買主がいるかもしれません。一般的に価値のあるものが、誰にとっても価値があるというわけではないからです。
自宅の鑑定を依頼するというのは、自己満足で価値を知りたいというのでなければ、売るための準備だと思います。そうだとしたら、より売りやすくなる方法を考えるべきです。
買主の立場から考えてみると、どうせお金を負担するなら(IHクッキングヒーターに換わることで100万円余分に払う前提の話です)自分の好きなものに換えたいと考えると思います。それは新しいガスコンロかもしれませんし、別のタイプのIHクッキングヒーターかもしれません。
もっというなら、そんなに料理はしないので換える必要はないと考えているかもしれません。つまり、買主が具体的にいない状態で、買主がどう考えるかなんて知りようがないということです。
買主が現れた時に、「ガスコンロをIHクッキングヒーターに換えましょうか?但し、その場合は100万円売値が高くなります。」と伝えた時のことを想像してみれば、その無駄が良くわかると思います。
自分で工事すれば、好みのものが付けられて(コンロが4つか3つかは料理をする人にとって大きな問題となる場合があります)、なおかつ、70万円で済むのに、100万円も払うということは考え難いです。
IHクッキングヒーターと同じような話となりますが、古い型式のトイレをシャワートイレに換えることで鑑定額をアップさせることができるというような紹介を見ることがありますが、こちらも高く売るという目的では意味がないと言わざるを得ません。
2. 一般的な間取りに変更すると不動産の鑑定額がアップ?
こちらも住宅設備と似たような話となります。分譲マンションなどで多いのですが、住む人が自分の好みに合わせて間取りを変更している場合があります。例えば、部屋数を減らしてリビングを広くしている場合などです。
元々10畳だったリビングを他の部屋と繋げることで、20畳とか24畳に変えている場合に、それを元の10畳のリビングに戻して部屋数を1つ、2つ増やすことで鑑定額が高くなると奨めているケースがあります。あるいは、逆にリビングの中に和室を作っていたケースでは、和室を壊してリビングを広げることを推奨していました。
鑑定という面からみれば、一般的な間取りの方が売りやすいので、鑑定額が上がるのだと思いますが、“売る”という視点から考えるとほとんどの場合、意味はありません。新築に近いようなマンションでリフォームなしで住むことが前提であれば、意味があるかもしれませんが、多くの中古マンションを購入される方はリフォームを考えておられます。
先ほどの住宅設備と同じように、お金を掛けてリフォームするなら自分の好きなようにしたいと考える方が圧倒的に多いです。分譲マンションを購入される方の中には、こだわりを持っておられる方も多いので、キッチンやお風呂、トイレなどの住宅設備だけなく、建具や壁紙なども好きなものを使いたいと考えていることが多いです。
まだ見ぬ買主の希望はわかりませんし、リフォーム費用分売値に上乗せするくらいなら、リフォームなしでその分価格を下げてあげた方が喜ばれる可能性が高いです。それに売値が安いことは売主にとってのメリットがあります。
売値が安ければ、その分、仲介手数料を低く抑えることができます。一般的に仲介手数料は、売買価格に一定の率を掛けて算出します。このため、売買金額が高くなるほど仲介手数料が増えることになります。これは買主側にも言えることです。
買主も売主と同様に不動産仲介業者に対して仲介手数料を支払う必要があり、その仲介手数料は購入価格に一定の率を掛けて算出するのが一般的です。売主にとっても買主にとっても売買金額が低いことはメリットとなります。
売主にとっては別のメリットが出る可能性もあります。通常、購入額よりも売却額の方が高い場合には、その差額に対して所得税がかかります。所得税に関しては、控除の要件などが色々とあるので、必ずしもかかるとは言えませんが、ここでは差益があれば税金がかかると考えさせていただきます。
いつ頃購入したマンションかで差額が高くなるのか低くなるのか大きく変わってきますが、間違いなく言えることは売値が安ければ、売買差益は少なくなるということです。状況によっては、リフォーム費用を建物の取得費用に算入できる場合もありますが、条件があるのでここでは考えないでお話しています。
このように間取りを変えて鑑定額をあげたとしても、売値が高くなるとは限りませんし、高く売れたとしても税金で持って行かれる額が増えることになるかもしれません。一番の問題はリフォームに掛けた費用の回収ができない可能性があることだと思います。私の個人的な見解ですが、高く売るためにリフォームをすることはリスクでしかないと考えています。
3. 建物が古くなると不動産の鑑定額は低下する?
以前、見ていたテレビ番組である不動産鑑定士の方が、「建物が古くなると価値が下がるというのは、都市伝説であって建物の構造しだいで変わります。」と話しているのを聞いたことがあります。
たしかに建物の構造で価値は変わってきますが、築15年を過ぎると建物の価値は極端に下がることが多いです。法律上は建物の構造毎に耐用年数が定められており、この耐用年数で固定資産税の評価額が算出されます。
ちなみに建物構造毎の耐用年数はこちらのようになります。
軽量鉄骨造 19年
木造 22年
鉄骨造 34年
鉄筋コンクリート造 47年
このように鉄筋コンクリート造の建物が一番耐用年数が長く設定されています。耐用年数が長いということは、長く使えるということですので、鑑定額は高くなっても当然だと思います。
しかし、いくら頑丈な建物であってもいつかは建て替えの時がきます。建て替えの際には、頑丈な建物ほど解体費用が高くなります。古い建物を購入される方は解体費用についても考えていることが多いです。
例え買主の方がずっと住むつもりがない場合でも、そういう方は自分が売る時のことを考えているので、やはり解体費用のことは気にしています。ですので、建物は古くなると価格が下がると考えておいて間違いありません。
たまに中古住宅の方が新築時よりも高くなっているケースがありますが、この価格の上昇分は土地の価格の上昇分が建物の減額分よりも大きいだけで、建物の価格は下がっていると考えて間違いありません。
4. 不動産の鑑定額と査定額の違いまとめ
ご紹介したように鑑定額と売値は違うものです。鑑定額は、資産評価や相続額の査定には有効かもしれませんが、実際の売買の際にはあまり有効ではないと考えてください。特に絶対にしないで頂きたいのは、鑑定額を上げるために行うリフォームです。
リフォームで上げた価値分がそのまま売却額に反映されるケースはほぼ無いと考えておかれた方が良いでしょう。とはいえ、解体して建て替えしかないと考えていた物件がリフォームすることで、そのまま住みたいという人に売れた例もありますので、絶対にリフォームが無駄とは言い切れない面があります。
大切なことは、テレビなどの情報を鵜吞みにしないで、情報を収集して分析して判断することだと思います。参考にしていただけますと幸いです。