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Category  土地活用

2018年08月15日 更新

土地活用の成否を握る建築費、コンストラクション・マネジメント方式とは?

土地活用において、建築費の大小は事業全体に大きな影響を与えます。この建築費について、適切な価格で取引をするための発注方式として、コンストラクション・マネジメント(CM)方式というものがあります。

現在、日本でも徐々に広まりつつある方式ではありますが、まだ詳しく知らないという人も多いです。そこで今回は、このコンストラクション・マネジメント方式について、土地活用における建築費の影響なども踏まえながら確認していきます。

1. 建築費で土地活用の利回りが変わる

土地活用と聞くと、真っ先に賃貸経営を思い浮かべる人が多いでしょう。アパートやマンション、戸建て住宅などによる賃貸住宅経営は、比較的安定して収益を得ることができる土地活用の方法です。また節税対策としても効果が期待できるため、土地活用を始めようとする多くの人が一度は検討する選択肢になっています。

このような賃貸経営のように、何らかの建物を建築しそれを利用して土地を活用していく場合、初期投資となる建物の建築費の違いが、土地活用全体の利回りに大きな影響を与えます。

利回りとは、不動産に限らず株式や国債などの取引にも使われる言葉です。投資した金額に対しどれだけの収入を得ることができるか、その割合を表しています。投資を行う際には絶対に確認しなければならない数値であり、投資先の選択や優先順位を決めるための判断材料になります。

賃貸住宅経営のような不動産投資には、表面利回りと実質利回りの2種類があります。それぞれ以下の式で求めることができます。

表面利回り=年間の家賃収入÷建物の建築費・購入費×100
実質利回り=年間の家賃収入-(ランニングコスト+空室による収入減額)÷建物の建築費・購入費×100

表面利回りはグロス利回りとも呼ばれており、不動産投資や土地活用の広告によく使われているものです。計算がシンプルで分かりやすい点が特徴ですが、ランニングコストや空室の可能性を考慮している実質利回りと比べると、高い数値になってしまいます。

この2つの式をみると、建築費は利回りを求める際の分母にあたることが分かります。したがって、同じ条件の物件であれば、建築費が高くなると利回りは低くなり、建築費を安く抑えることができれば利回りは高くなります。

また、どれだけ家賃収入が多くても初期に投資した建築費が高額であれば、利回りは低くなり、建築費の回収にも時間がかかってしまいます。一方で、家賃収入が少なくても建築費が高額でなければ、利回りが高くなり早期に建築費の回収が終わるということもあります。

このように土地活用の利回りは、建築費に大きく左右されるのです。

 

1-1. 建物の構造で変わる建築費

土地活用の利回りに大きく影響を与える建築費ですが、物件によって価格が様々であり、依頼する業者によっても違いが出てしまいます。こうした違いが出てくる理由のひとつには、建物の構造の違いが考えられます。

建物の構造は主に、木造、鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の4つに分類することができます。どのような建物にするかによって、最適な構造が異なり、建築費にも違いが出てきます。

木造は古くから日本にある伝統的な構造で、戸建て住宅やアパートの建設によく採用される構造です。5つの構造の中では、最も安い費用で建築することができます。反対に最も費用が高くなる構造が、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)です。高層マンションや高層ビルの建設に採用される構造で、高さを支えるために頑丈な造りが求められる分、費用も高額になります。

鉄骨造(S造)には、使用する鉄骨の種類によって軽量鉄骨造と重量鉄骨造の2種類があります。軽量鉄骨造はアパート、重量鉄骨造はマンション、その他オフィスビルや工場などの建設に採用される構造です。費用面では、木造の次に安い構造となります。鉄筋コンクリート造(RC造)は、強度が高く、マンションや商業ビルなどの建設に採用されています。費用は鉄骨造(S造)よりも高くなることが多いですが、場合によっては同等、もしくは鉄骨造(S造)以下になることもあります。

このような構造の違いによって、広さや間取りが同じでも、建築費に大きな差がでてきます。土地活用の利回りを意識するのであれば、ターゲットや建築費を確認しながら、最適な構造はどれか検討しなければなりません。

 

1-2. 坪単価で計算するデメリット

建築費を計算したり比較したりするとき、坪単価をもとに計算した金額を用いることが多いと思います。坪単価による計算はシンプルで分かりやすく、建築費の目安を簡単に知ることができるというメリットがあります。一方で、坪単価で出した金額は、実際の建築費と大きく異なることがあるというデメリットもあり、坪単価による計算結果を鵜呑みにすることは危険です。

そもそも建築費は、建物の構造以外にも、高さや広さのような規模、形状、使用する材料や設備のグレードなどによって決まります。また、建設する地域や時期、期間によっても違いが出てきます。この他にも、電気・水道・ガスの引き込み工事、照明などの内装、地盤改良工事といった付帯工事の費用も含まれます。

このように様々な要素が影響し合って価格が決まるため、木造はいくら、鉄骨造(S造)はいくらというような坪単価による計算では、正確な建築費を計算することはできません。また、坪単価の計算基準は、メーカーによって異なっているので、単純な比較では正確に良し悪しを判断することもできません。

利回りを確認するときに、坪単価で計算した建築費を基準にする場合は、このような特徴から大きな違いがでる可能性があることを把握しておかなければなりません。

 

1-3. 事業計画から建築費を逆算する

土地活用の方法を検討するときには、一度、理想の利回りや事業計画をもとに掛けられる建築費を逆算してみましょう。理想を叶えるためには、実際にどのくらい建築費が必要なのかを把握することができます。

ここからは実際に、4部屋のアパートを建設予定で、年間の家賃収入を400万円、利回りを10%とした事業計画を例に、建築費を逆算してみます。表面利回りの計算式を用いると、建築費=年間の家賃収入×100÷利回りとなります。これに数値を当てはめてみると、建築費=400万円×100÷10=4000万円となります。

この逆算によって、利回り10%を実現させるためには、建築費全体を4000万円以下に抑えなければいけないことが分かりました。この4000万円には、電気・水道・ガスの引き込み工事のような付帯工事も含まれていることから、建物の建築費は、付帯工事分を引いた価格にしなければなりません。

また、ランニングコストや空室による収入減を考慮できていないので、実質利回り10%を達成するためには、さらに建築費を抑える必要があることが分かります。

このように建築費や利回りについて考慮する際には、事業計画から建築費を逆算してみることも有効です。

 

2. ゼネコンが建築工事を請負う際の方法

建築費は、どの業者に工事を依頼するかによっても大きく異なります。業者によって差が出る理由には、業者の能力の差や料金体系の違いなどが考えられますが、大きな理由のひとつとして請負う際の方法の違いも挙げられます。ここからは、建設業者に工事を発注する際の方法として、ゼネコンを例に、建設業者が建築工事を請負う際の3つの方法を確認していきます。

ゼネコンとは総合建設業者とも呼ばれており、元請業者として建設工事の発注から施工管理、建物の品質管理など、建設工事に関わるあらゆる業務を総合的に行う業者を指します。日本では、スーパーゼネコンやそれに次ぐ準大手ゼネコンのイメージが強いこともあり、鉄道や空港、スタジアムなどの大規模な建設工事をイメージしてしまいますが、一般的な住宅やマンションの建設を行っているところもあり、土地活用を行う際にゼネコンを利用することも可能です。

 

2-1. 設計施工方式

建設業者に相談に行った場合、基本的に最初に提案されている方法が設計施工方式です。設計施工方式では、名前の通り、依頼された業者が設計と施工の両方を請負うことになります。

依頼者は、設計と施工を任せる建設業者1社と契約するだけでよく、依頼や調整などにかかる手間を省くことができます。そのため、土地活用やマンション経営がはじめてという人、面倒な手間は省きたいという人には、とても魅力的な方式です。

しかし、この設計施工方式は、業者側のメリットが大きい方式でもあります。ゼネコンのような元請け業者に対し、設計施工方式で発注したとしても、実際の設計や施工を行うのは元請け業者の傘下や協力関係にある下請け業者です。

建築費に関わらずあらゆるものにおいて、生産者と消費者の間をつなぐ業者が増えるほど、利益が上乗せされ価格が高くなります。つまり、ゼネコンのような元請け業者に依頼しても、工事を行うのが下請け業者やさらにその下請け業者であれば、依頼者(消費者)と工事業者(生産者)との間に業者が増える分、建築費は高くなってしまうのです。

また、全てを1社に任せていることから、業者が利益を上乗せしやすい仕組みになっており、コストに対する透明性にも欠けています。さらに、複数の元請け業者の見積りを比較しようとしても、それぞれの業者が独自の設計・施工プランを提示してくるため、完全に同じ条件で比較することができず、適正な価格を把握することもできません。こうした建築する側のメリットが大きい分、できるだけ早く契約を結ぼうと多くの業者が積極的に設計施工方式による契約をすすめてきます。

このように、設計施工方式は建築費が高くなりやすいことに加え、その詳細も不透明なことから、本当に最適な方法なのか検討することが難しくなります。1社に全てを任せることによる安心感や手間の削減はありますが、それに伴うマイナス面も把握しておく必要があります。

 

2-2. 相見積方式

設計と施工を1社に任せる設計施工方式に対し、設計は設計事務所に、施工は建設業者に依頼する方法を相見積方式といいます。この相見積方式では、先に設計事務所と契約を結び、建物の設計図を作成します。その後、作成した設計図をもとに、ゼネコンなどの建設業者複数社に対し見積りを依頼し比較する、相見積を行います。

受け取った見積書は、設計事務所の設計士が簡単に確認をしてくれます。見積書の確認や比較には専門的な知識も必要です。おかしなところはないか、見積り漏れがないか、必要な工事の単価は許容範囲内かどうかなど、建築のプロである設計士が確認をしてくれるので、土地活用などの経験が浅い人でも安心して任せることができます。

しかし、相見積方式でも、建築費が本当に適切な価格か判断することは難しいです。設計士による確認では、それぞれの単価や費用が、予想していた価格や相場に近い価格になっているかを確認することが精一杯です。ゼネコンなどの元請け業者が下請け業者に対し、どれくらいの単価で発注しているのか、どれだけ利益を上乗せしているかを確認することはできません。

つまり、相見積方式では、設計施工方式ほどたくさん利益が上乗せされ建築費が上がる可能性は低くなりますが、適正な価格まで抑えることができるとは言い切れません。また、設計施工方式と同様に、建築費や下請け業者への発注費に対する透明性も低く、最終的には建築費が割高になってしまうことも多いです。

 

2-3. ゼネコン活用型コンストラクション・マネジメント(CM)方式

設計施工方式や相見積方式による建築費の不透明さを解消するため、現在注目を集めているのが、コンストラクション・マネジメント(CM)方式です。

コンストラクション・マネジメント方式は、アメリカから始まった建設工事の発注方法で、欧米では古くから一般的な方法として採用されていました。日本では、1990年代後半頃から徐々に普及しはじめ、現在も多様なニーズに対応すべく様々な形に発展しています。

2002年に国土交通省が発表しているCM方式活用ガイドラインによると、コンストラクション・マネジメント方式とは「米国で多く用いられている建設生産・管理システムの一つであり、発注者の利益を確保するため、発注者の下でコンストラクションマネージャー(CMR)が、設計・発注・施工の各段階において、設計の検討や、工程管理、品質管理、コスト管理などの各種のマネジメント業務の全部または一部を行うものである」とされています。ガイドラインは現在も確認することができるので、気になる人は確認してみてください。

国土交通省「CM方式活用ガイドライン(中間とりまとめ)-日本型CM方式の導入に向けて-

コンストラクション・マネジメント方式では、依頼者はコンストラクションマネージャーと契約を結びます。その後、コンストラクションマネージャーと共に、設計事務所や建設工事に携わる専門業者の中から発注する業者の選定を行います。発注する業者が決まれば、その業者と直接契約を結び、実際に工事を行っていくことになります。

業者と直接契約を結ぶことで、建築費に対する透明性が高くなり、より適正な価格での取引が可能になります。設計施工方式や相見積方式で発生していた中間業者や元請け業者による利益の上乗せもなくなるので、その分建築費を抑えることができます。

このコンストラクション・マネジメント方式と、ゼネコンによる元請け・下請けのシステムの良い点を活用していく方法が、ゼネコン活用型コンストラクション・マネジメント方式です。ゼネコン活用型コンストラクション・マネジメント方式では、コンストラクションマネージャーと共に、工事を依頼するゼネコンの下請け業者に関して、業者の推薦や組み換えを行うことができます。

依頼するゼネコンについては、相見積方式のようにコンストラクションマネージャーと相談しながら決めることができます。ゼネコンに依頼する安心感や手間の少なさというメリットもありつつ、価格に対する透明性も保つことが可能です。この他にも、ゼネコンとコンストラクション・マネジメント契約を結び、依頼する下請け業者の確認や組み換えを行うことができるような仕組みもあります。

こうしたコンストラクション・マネジメント方式は、日本ではまだまだ発展途中の方式であり、法律面や保証・保険などに関する課題も残されています。しかし、建築費の透明性を求める声はますます広がっていくことが考えられるので、今後の法整備や制度改革への注目が必要です。

 

3. コンストラクション・マネジメントで建築費の見直し

土地活用を進めていく上で、建築費は、利回りにも大きく影響することから、事業の成否の鍵を握っているといっても過言ではありません。建設業者を選ぶときや、見積書を確認するときには、建築費が適切かどうか、しっかり見極める必要があります。

こうした建築費の見直しを手助けしてくれるのが、コンストラクション・マネジメントです。建設費の透明化を図り、依頼者の利益を守ることが大切にされているコンストラクション・マネジメントは、土地活用における建設費の見直しには最適な方法です。ゼネコンを利用したマンション建設だけではなく、アパートや戸建て住宅の建築費の見直しにも役に立ちます。

建築費の見直しを行うことで、土地活用の方法として本当に最適な選択肢かどうかも、確認することもできます。建築費を抑えたいという人、活用方法を一度考え直してみたいという人は、コンストラクション・マネジメントによる建築費の見直しを行ってみましょう。

 

4. まとめ

今回は、土地活用の成否を握る建築費について、利回りへの影響や、コンストラクション・マネジメント方式による建築費の見直しなどを確認してきました。

建築費は、様々な条件が影響し合って決まることから見込みや比較が難しく、適切な価格を把握するのは、経験が少ない人にはとても難しいことです。だからこそ、今回取り上げたコンストラクション・マネジメント方式を利用して、建築費を見直すことが重要になります。

その他に、建築費を削減するためには4つのポイントがあります。下記の記事で詳しくご紹介していますので、こちらもぜひご確認ください。

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