事例紹介
古家・空き家付きの土地の売り方には、そのままの状態で売る、解体して更地にしてから売る、リフォーム・リノベーションをしてから売るの3つの方法が考えられます。
しかし、売り方によって対象となる買主は変わってきますし、事前に費用がかかるなど多少なりともリスクを伴うものもありますので慎重に見極める必要があります。
また、個人の問題だけではなく、空き家は放置をしてしまうと周辺地域に悪影響を与えてしまうことがあり、近隣住民とトラブルにつながることがあります。このため、適切な対応をとることが求められます。
ここでは古家・空き家付きの土地を売る際にどのような方法で売るのが一番損をしないのか、どのような点に注意する必要があるのかを考えていきます。
この記事でわかること
1. 古家を売りたい場合に知っておくべき注意点
築20年~20年以上経過するなど資産価値がほとんどない建物を古家と言います。中古住宅と古家には明確な基準はなく、一般に築年が耐震基準が変わった1981年の以降かどうか、平成築か昭和築かなどで区切られることが多いようです。
古家には人が住んでいない空き家となっている場合も多く見受けられます。そのような、誰にも管理されない空き家は周辺地域に悪影響を及ぼしかねない存在です。
例えば、建物の老朽化が進んだり、ゴミが不法投棄されたりすることにより、周囲の景観を損ねてしまいます。また、放火や不法侵入、不法占拠などの犯罪が起きる場所になってしまうことで周辺地域の治安が悪化することや、地震などの災害が発生した際に倒壊することで地域住民の避難の妨害になることなどの問題が生じる懸念もあります。
空き家の数は年々増加していて、現在では世帯数を超えるほどになっており、早急な対応が求められています。近年、空き家対策特別措置法が制定され、空き家の活用や取り壊しなど、行政が中心となって問題の解消に向けていく積極的な動きも見られます。
1-1. 古家の解体に関する法律
古家には「既存不適格」や「再建築不可」と呼ばれる物件があり、その場合には一度解体してしまうと新しく立て直すことができなくなったり、建てることができる建物の大きさが小さくなってしまうことがあります。
建物を建てるときは、建築確認申請というものがあり、その時の法律に適合する必要があります。一方で、既存不適格と呼ばれる建物があります。既存不適格とは、建てたときの法律に適合していても、その後、法改正が行われ、現在の法律に適合していない建物のことを言います。
この場合、解体してしまうと新しく建てる建物は現在の法律に従う必要があることから、以前と同じものは建てることができなくなってしまいます。
例えば、建ぺい率、容積率の変更など法改正により、以前の大きさで建物を建てることができず、小さくなってしまうことは良くあります。
また、都市計画区域内で建物を建てる場合、原則としてその土地は幅4m以上の道路に2m以上接している必要があるという接道義務があります。この接道義務を満たしていない土地は建物を建てることができず、再建築不可物件と呼ばれます。
接道の義務は規定に合わせることが難しいため、建物が建てられない死に地となってしまうことがあります。この場合は、接道をしている隣地の所有者に購入してもらうか、野積みの資材置き場などにするくらいしか方法がありません。
売却価格の交渉をする前に解体工事の費用を把握しておくと良いでしょう。そうすることで、買主が古家の解体を希望した際に解体費用を含めた柔軟な交渉が可能になります。
ただし、不動産業者から紹介された業者に解体工事を依頼する場合は注意が必要です。不動産業者が普段から取引のある、信頼できる業者であれば問題ないかもしれませんが、工事の費用に不動産業者のマージン分が上乗せされ、費用が高くなることがあります。
時間に余裕があれば自分で解体業者から直接見積もりを取るという方法もあります。その際は複数の業者に依頼するようにすると良いでしょう。知り合いに解体業者がいない場合は、インターネットで検索すれば見つけることができます。
多くの業者は親切で丁寧ですし、大抵無料で対応してくれます。見積もりの依頼の際は物件の詳細を伝え、分かりやすように住宅地図のコピーなどに印を付けて渡すと良いと思います。
業者によりますが、だいたい1週間程度で見積書を出してもらえます。ただし、地下に予想外の埋蔵物が存在する場合もあり、その際は別途費用がかかりますので注意が必要です。
1-2. 古家のトラブル
古家付きの土地には大きな庭が付いている場合があります。建物は手入れがされていても。庭までは行き届いていないケースも多く、そうなると整備をしなければなりません。
大きな樹木は、根から掘り出すのに大変な労力を必要とするため、樹木の処分も含めて専門業者に依頼する必要があります。また、樹木の他にも、大きな石が置かれている場合もあります。人が持ちあげることができないサイズの石であれば、相応の業者に依頼して処分する必要があります。
下水道が整備される以前は、多くの家で浄化槽を用いた下水処理をしていました。下水道の整備によって、浄化槽は撤去するのが基本ですが、衛生処理をした後で、地中に埋めたままにされている場合や、以前建っていた建物の基礎や瓦、岩、タイヤなどの廃棄物が人為的に地中に埋められている場合があります。
地中に埋められていることに気がつかずに、売却した後に買主が発見した場合、瑕疵担保責任に問われ、撤去費用の負担が生じる可能性があります。
隣接した敷地を経由して水道管が敷設されている場合や、逆に隣接した敷地の水道管が自分の敷地の一部を経由して敷設されている場合があります。その他にも解体して初めて越境物が発見される場合もあります。
全ての土地には、境界線が必ずあります。しかし、土地の購入から時間が経ち、当初に境界を決めた人が亡くなっている場合などは、境界があいまいになっていることがあります。また、測量と境界の決定には、大きな手間と費用がかかります。
上水道は、どのくらいの量の水を使うかによって水道管の口径を決め、道路から敷地に引き込みます。古家付きの土地を買う人が、二世帯など水量を多く必要とするなら、太い水道管に換える必要があります。仮に口径が十分でも、古家では劣化している可能性もあり、交換しなくてはならないケースもあります。
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2. 古家付き土地として売却する方法
2-1. 古家付き土地として売却するメリット
更地は更地希望者しか対象にならないのに対して、古家がリフォームやリノベーションをすればまだ住めそうな物件の場合、リフォーム物件としても売ることができます。
特に、既存不適格(再建築不可)の物件では、古家を解体してしまうと、新しく建物を建て直すことができなくなってしまったり、以前より建てられる建物の大きさが小さくなってしまったりする可能性があります。
そのため、土地の価値が下がってしまい、売れにくくなってしまいます。このようなケースでは、解体せずに古家を残しておくことで再建築不可の物件でも売れやすくなります。
更地希望者に対しても、古家があることで窓からの眺めや日当たり、風通しなどを体験することができ、建てられる建物や暮らしのイメージをつかみやすくなるなどのメリットがあります。事前に解体工事を必要とする場合にかかる費用を調べて把握していると、有利に交渉できる場合もあります。
また、土地購入の場合ですと、買主は住宅ローンを組むことはできません。しかし、古家があれば住宅の扱いとなり、住宅ローンを利用することができます。住宅ローンは通常のローンよりも金利が安いなどのメリットがあるので、買主も検討しやすくなります。
売主にとっても解体にかかる費用や手間がかからない上、すぐに売れなくても土地に建物が残っていれば、住宅用地の特例などにより土地にかかる固定資産税を安く抑えることができます。
2-2. 古家付き土地として売却するデメリット
売却した物件に後から欠陥が見つかった場合、買主から責任を問われる可能性があり、これを瑕疵担保責任といいます。売主と買主の間で取り決めた期間内に瑕疵が見つかった場合、修理などの責任が課せられることとなります。
しかし、古家であることから不具合があることはある程度予測できますので、売主と買主との打ち合わせの中で瑕疵担保責任の内容を協議することは可能です。
古民家に住みたいという需要は増えていますが、古民家の分類にあてはまる物件は少ないので、現実的には新築需要の方が多くなります。買主が新築を希望した場合は、購入後に解体費用や建物の抹消登記費用を負担しなければならないので、同じ地域にある更地よりも優先度が落ちてしまいます。そのため、更地にする為に必要な費用分を売却価格を下げることで相殺することが多くなります。
老朽化した古家があることで土地の印象が悪くなることもあります。また、売却する古家が自宅や実家の場合には、家族との想い出がある家を売却することに罪悪感を抱き、精神的に大きな負担がかかる人もおられます。
3. 古家をリフォーム・リノベーションしてから売却する方法
古家を解体して更地にするのではなく、今ある建物をリフォームやリノベーションをした場合、中古住宅を目的とする買主も対象となります。一方、更地希望の人は対象外となる可能性が高くなります。
また、かけた費用に見合った金額で売却できるとは限りません。壁紙だけなど簡単なリフォームだけなら大きな費用はかかりませんが、水回りや間取りを対象に行う本格的なリフォームの場合は費用も高額となります。
しかし、行ったリフォームが買主の好みに合うとは限らず、購入費用にリフォーム・リノベーション分の費用が上乗せされるなら、買主自身が自分の好みで行う方が良いと判断される場合もあります。
将来の買主の好みを想定することはできないため、手をつけずに現状のままで買主の判断に任せる方が得だという考え方が一般的です。
それでも、手入れがされていない古家と比べて、リフォーム・リノベーションされた綺麗な建物の方が印象も良く、実際に住むイメージも湧きやすくなります。購入層が限定されてしまう代わりに、買主の条件に合えば売れやすくなります。
また、全国古家再生推進協議会は古家を再生することで地域の防犯や活性化をすることを目的としており、それぞれの専門分野の専門委員の知識と経験により、古家・空き家の再生をしています。
物件の調査の同行や収益モデルの提案、リフォーム・リノベーション時には、古家物件活用専門業者・専門家の紹介もしてもらえます。古家の再生を検討する際は相談してみると良いかもしれません。
4. 古家を更地にしてから売却する方法
更地にしてから売る方が良いかどうかは、一概にどちらが良いとも言えず、難しい判断となります。それぞれにメリットとデメリットがありますので、どちらが良いかご自身の状況に合わせて検討して頂ければと思います。
4-1. 古家を更地にして売却するメリット
売れるまでの間空き家として放置してしまうと、周辺地域に悪影響を及ぼす可能性があり、定期的な手入れが必要となります。空き家対策特別措置法が制定され、老朽化に伴う倒壊の危険性など、周辺に大きな影響を与える空き家と判断された場合は、行政による指導が入り、最終的な命令に従わなかった場合は強制的な撤去が行われることもあります。
建物を解体していれば、空き家対策特別措置法の対象とならなくなり、指導を受ける心配がなくなります。管理の手間も費用もかからずに済みます。また、売却時に建物に関する登記などの手間も省くことが可能です。
売却する際も、整地されていると日が当たりやすいなど、古家があるよりも土地の印象が良くなり、高く早く売却できる傾向にあります。
さらに、古家を解体することで古家の瑕疵担保責任が発生せず、売却後に欠陥が発見されて損害の請求をされるといったトラブルになる心配がありません。
また、古家の状態によっては、行政から解体費用の補助が出る可能性もあります。解体費用は安いものではないので、補助を利用できるのはかなりのメリットとなります。補助制度は各自治体によって違いがありますので、古家のある地域の行政(市町村)に相談をされると良いと思います。
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4-2. 古家を更地にして売却するデメリット
解体してから売却する場合、売却の前に解体するための費用を捻出する必要があります。建物の構造や立地によって大きく異なりますが、解体には大きな費用がかかります。
浄化槽など地下に埋設物がある場合にはその撤去費用がかかることや、敷地前の道路に重機やトラックが入れないほど狭い場合には、解体はすべて手作業となり、料金が割り増しとなることもあります。
解体をして更地にしても必ず売れる保証がない中で、多額の費用を負担しなければならないのはツライかもしれません。しかし、先ほど、ご説明したように行政の補助を受けられる可能性もありますので確認をすることをお勧めします。
解体工事をしたのに土地を売却できなかった場合は、解体費用が掛かった上に固定資産税が高くなってしまいます。固定資産税は一般に3~4倍に増える場合が多いです。そして売れるまでの期間が長いほど負担が増します。
土地の固定資産税は1月1日の状況によって金額が決まります。そのため更地にして売却する場合には、解体する時期を考慮すると良いでしょう。
解体後は建物が無くなったことを申請する滅失登記の必要があります。滅失登記は、建物が解体されてから1ヶ月以内に法務局に申請しなければならないと不動産登記法で規定されています。滅失登記の申請は義務ですので、その義務をおこたった場合には10万円以下の過料に処されるという罰則もあります。
滅失登記は比較的簡易的な登記と言われており、登録免許税などの費用は発生しません。自分で行う場合にかかる費用は、登記事項証明書をとったり、印鑑証明書を取得する費用と交通費(または郵送費)くらいです。これが面倒な場合は、司法書士に依頼することもできます。その場合は、5~10万円くらいの費用がかかります。
4-3. 古家付き土地と更地の違い
土地購入希望者の中で、更地を絶対条件としている人は少なく、比較的安く買えることが多い古家付きの土地を購入の候補にあげている場合が多くあります。古家があることで建て直した際の土地のイメージをしやすいなどのメリットもあります。
売主としても、古家付き土地で売りに出した後、更地希望の買主が現れた際に解体に応じる方法もあります。前述のように場合によっては古家がある方が有利に交渉できることもあります。
稀な状況かもしれませんが、古家を解体してしまうと、古きに趣を感じる層の「古民家」としての需要に応えることができず、買主の幅が狭くなってしまう可能性もあります。
また、技術の向上により、築年数が経っても住みやすい、リフォーム・リノベーションをすれば新築と同じような環境になる物件も多数あり、築年数だけにこだわるのではなく性能を重視するという考え方を持つ人も増えてきています。
中には、更地が良いという人もおられますが、引き渡し前に解体を約束すれば問題ないことが多いでしょう。
4-4. 古家の解体費用は販売価格に上乗せできる
古家を解体してから売りに出す場合、販売価格は売主が決めるので、建物の解体費用を上乗せすることは可能です。ただし、その価格が更地の相場から大きく離れていると、売れにくくなってしまいますので注意が必要です。
また、解体費用を売主と買主が折半をするという方法もあり、交渉の余地は十分にあります。
5. 古家付き土地を売りたい方のための3つの売却方法まとめ
古家・空き家付きの土地を売りに出す際に、そのままの状態で売る、解体して更地にしてから売る、リフォーム・リノベーションをしてから売るの3つの方法をあげましたが、一概にどの方法がベストとは言い切ることはできず、それぞれにメリット・デメリットが考えられます。
このため、古家が既存不適格であるかどうか、解体する際にどのくらいの費用がかかるのか、リフォーム・リノベーションをすれば高く売れるような物件なのか、相場はどのくらいなのかなど一通り調査をしてから判断する必要があります。
また、場合に応じて専門家の意見を取り入れることも大切になります。
ただ一般的に、一旦、古家付き土地として売りに出して様子を見る方が得策という見方をされていることが多いようです。古家付き土地の場合、中古物件希望者も土地購入希望者も購買層に入る上、固定資産税を安く済ませることができるためです。
また、その後必要に応じて解体をするという方法も取ることができます。ただ、空き家となってしまった古家を放置することは周辺地域に悪影響を及ぼしかねなので、定期的な手入れを怠らないようにすることが必要です。