事例紹介

Category  相続税

2018年09月25日

不動産の相続税 控除について

動産を相続するかもしれないけど、どうすれば節税になるのかわからない、という方は多いかと思います。代々地主として不動産に携わっている方々であれば、専属の税理士の先生がいて、相続税を圧縮するような道筋を立ててくれるのかもしれません。税金対策は知っているのと知らないのとでは大きな違いが生じるものです。もちろん個別のケースについては、やはり税理士の先生に相談するべきだと思います。ここではいくつかの税控除や特例について紹介し、その手助けとなればと考えています。

1.不動産の相続税特例とは?

将来親から不動産を相続するかもしれないけど、どうすれば節税になるのかわからない、という方は多いかと思います。代々地主として不動産に携わっている方々であれば、専属の税理士の先生がいて、相続税を圧縮するような道筋を立ててくれるのかもしれません。税金対策は知っているのと知らないのとでは大きな違いが生じるものです。もちろん個別のケースについては、やはり税理士の先生に相談するべきだと思います。ここではいくつかの税控除や特例について紹介し、その手助けとなればと考えています。

 

2.相続税控除の基礎知識

相続税にはさまざまな控除があります。いくつかご紹介したいと思います。

 

2-1. 相続税の基礎控除

まず、相続税を計算するうえですべての方に関わってくるものが基礎控除です。相続税の計算は、被相続人(亡くなった方)のすべての財産を合計し、負債があれば差引をします。その結果出てきた金額が、遺産総額といわれるものです。この遺産総額の多寡によって相続税がかかるか否かが決まってきます。では、いくら以上なら相続税がかかるのでしょうか。それは相続税の基礎控除額よりも遺産総額が高かった場合です。相続税の基礎控除の計算式は

基礎控除額=(3,000万円+相続人数×600万円)

です。例えば相続人が3名だと基礎控除額は4,800万円です。相続税は遺産総額から基礎控除額を差し引いた部分にかかってきます。そのためこの場合は遺産総額が4,800万円以下でしたら相続税はかかりません。遺産総額が4,800万円以下で相続税がかからない場合は、税務署への申告も必要ありません。将来の相続税問題にどうやって対処すればいいんだろう、とお悩みの方も多いかと思いますが、まずは相続が予想される財産が全体でいくらになるのか、相続人が何名いるのかを把握されることをオススメします。恐らくほとんどの方は遺産総額が基礎控除額の範囲内に収まり、無税となるのではないでしょうか。国税庁での調べでは、平成28年に死亡した人数は約131万人で、課税対象となった被相続人はそのうちの8.1%、約10万6千人に留まっています。

 

2-2. 配偶者控除

続いて配偶者控除について説明します。正式には「配偶者の税額の軽減」といいます。これは、残された配偶者の老後の生活を保障すること、被相続人が財産を築き上げるうえで夫婦の協力は大きな影響を及ぼしていること、夫婦は同世代が多いためその下世代の相続人が短期間で2度にわたって相続税を課税されてしまう可能性が高いこと等々が考慮され、配偶者だけに認められた制度です。この制度は「遺産全体の中で配偶者が相続する割合が法定相続分以内、または相続する財産の額が1億6,000万円以内」の場合は相続税を無税とするという、非常に大きな効果をもたらす制度です。つまり配偶者は法定相続分以内であれば、極端な話、相続する財産の額が100億円でも相続税は無税となるのです。但し先ほどの基礎控除とは違い、税務署への申告が必要となりますので注意が必要です。

 

2-3. 未成年者の税額控除

相続税では未成年者保護のため、未成年者が法定相続を受けた場合、税額を控除する制度があります。控除額は20から相続人の年齢を引いた数に6万を乗じた数となります。計算式にすると

未成年者の控除額=6万円×(20-相続人の年齢)

となります。この場合の相続人の年齢は、1年未満の端数切捨てで計算します。また、控除額が課税額を上回ってしまい、引ききれない場合があるかと思います。この場合、余った控除額は扶養義務者の相続税額から差し引くことができます。

 

2-4. 障がい者の税額控除

障がい者への控除というものもあります。先ほどの未成年者の税額控除と似たような計算式で、障がい者控除の額は85から相続人の年齢を引いた数に10万を乗じた数となります。計算式は次のようになります。

障がい者の税額控除=10万円×(85-相続人の年齢)

障がい者の税額控除も未成年者の税額控除と同様に、余った控除額は扶養義務者の相続税額から差し引くことができます。

 

2-5. 相次相続控除

相次相続控除とは、過去10年以内に被相続人が相続税を支払っていた場合、被相続人が支払っていた相続税のうち一定額を控除するというものです。相続が重なったときに相続税が過重な負担とならないよう、定められています。計算はやや複雑なため、本題からそれないよう、ここではその説明は割愛させていただきます。

 

2-6. 相続税における控除まとめ

以上、相続税における基本的な税控除を見てみました。特に配偶者控除は額が大きいため注意が必要です。1億6,000万円間で無税なら、父の遺産総額は1億5,000万円だから遺産分割協議で全部母に相続してもらえば無税だ!と安易に考えてしまうと後々苦しむことになります。なぜなら次にあなたがお母様から相続を受けたときには配偶者控除は使えないからです。配偶者がいくら相続するのが一番節税になるのか、きちんと計算したうえで有効活用することをお勧めします。

 

3.不動産の相続税に関する特例

さて、不動産に関する相続税の控除というものはありませんが、特例が一つあります。それは「小規模住宅地等の特例」というものです。不動産というものは残された相続人にとっては自宅や事業を行う上での大切な生活の基盤であることがほとんどだと思います。この制度は自宅を相続したが相続税が払えず手放さなければならない、住む場所がなくなってしまう、家業を継ぎたくても相続税が払えないからお店を処分しなければならない、というような事態を防ぐためのものです。

 

3-1. 小規模住宅地等の特例の条件~自宅の場合~

この制度特例の条件は、被相続人の自宅の場合、

・配偶者が相続する

・同居している相続人が相続する

・配偶者も同居人もいないが、借家に3年以上住んでいる相続人が相続する

上記3つのいずれかに該当することが条件となります。該当すると自宅の土地の評価額は80%減額されます。

 

3-2. 小規模住宅地等の特例の条件~事業用の場合~

この制度は自営業者等が商売で使っていた不動産に対しても利用することができます。ケースごとに条件が異なります。

  • 被相続人の事業用地等のケース

被相続人が自分で使用していた土地の場合は

・被相続人が事業を営むために利用していた土地である

・相続人が相続税の申告期日までに事業を継承し、実際に営んでいる

・相続税申告期限までその土地を所有している

  • 生計を一にする親族が使用していた事業用地等のケース

使用していたのが生計を一にする親族の土地の場合は

・被相続人と生計を一にしていた親族が事業に使用している土地である

・相続の開始直前から相続税申告期限まで引き続き事業を営んでいる

・相続税申告期限までその土地を所有している

①・②いずれかに該当する場合、その土地の400㎡までは相続税の評価額を80%減額することができます。

 

3-3. 小規模住宅地等の特例の条件~特定同族会社事業用地の場合~

この特例は被相続人が所有していて、被相続人もしくは親族が経営する会社の事業として利用されていた土地も対象となります。条件は下記のとおりです。

・被相続人もしくは相続人と生計を一にしていた親族が半分以上の株式を持つ会社が事業を営むために使用していた宅地である

・相続人は相続税申告期限までその会社の役員である

・相続税申告期限までその土地を所有、かつ引き続き事業を営むために使用している

上記を満たした場合、その土地の評価額は400㎡までの部分が80%減額されます。

 

3-4.  小規模住宅地等の特例のポイント

この制度を使うことで相続税の不動産評価額を大幅に減額することができます。積極的に使っていきたい制度だと思いますが、この特例はなんと自宅と事業用の不動産で併用することができるんです。例えば、印刷会社の社長が亡くなって、後を継いだ息子が工場と自宅を相続することになったら、その両方で土地の評価額を減額できる可能性があります。ただ、この併用は自宅と事業用地それぞれの限度となる面積を足した730㎡までの範囲において、可能となります。

 

3-5. 小規模住宅地等の特例の注意点

この特例を使うにあたって気を付けたいのが、「賃料を受け取ってはいけない」ということです。例えば、被相続人と同居してる親族に事業用として土地を貸す際は、無料で貸さなければなりません。そうしないと貸付事業用地とみなされ、適用条件や減額割合が変わってしまうことがあります。

 

3-6. 小規模住宅地等の特例番外編~貸付事業用地の場合~

前項で述べたように、この特例にはもうひとつ、貸付事業用地にも適用されます。条件は下記のとおりです。

・被相続人が不動産貸付事業をおこなっていた

・被相続人が土地を相続し、その事業を引き継いだ

・相続税申告期限まで土地を保有し続けている

・相続税申告期限まで不動産貸付業を引き続き営んでいる

・地代や家賃は適正額を受け取っている

以上を満たすことで、その不動産の土地の評価額は200㎡までの部分が50%減額することができます。この、家賃の適正額とは、ちゃんと相場どおりの家賃かどうか、ということを問題にしています。要は親族等に相場より安く貸していた場合はこの特例が認められない場合もあるということです。

 

3-7. 小規模住宅地等の特例まとめ

以上、小規模住宅地等の特例についてみてみました。条件がケースごとに異なり、細かいですがメリットが大きいため、ぜひ利用してほしいです。

 

4.不動産相続税の特例の適用と計算方法について

ここからはおさらいもかねて実際に具体例を出して計算してみたいと思います。小規模住宅地等の特例の効果を分り易くするため、今回の登場人物は父と息子の2人だけ、他に相続人はいないものとします。

 

4-1. 具体例その1~すべて金融資産で相続した場合~

父は2億円の金融資産を残して亡くなった。自宅は借家です。この場合の息子の相続税は?

まず、遺産総額はそのまま時価総額の2億円となります。次に基礎控除は3,600万円となります。遺産総額から基礎控除額を差し引いた課税遺産総額は1億6,400万円となります。課税遺産総額が1億円超、2億円未満の場合は税率が40%、控除額が1,700万円ですから相続税は4,860万円となります。

 

4-2. 具体例その2~半分は金融資産、残りは自宅だった場合~

父は1億円の金融資産と1億円相当の自宅を残して亡くなった。自宅には息子が独身で同居していました。この場合の息子の相続税は?

先ほど述べました小規模住宅地等の特例が適用されれば、自宅の土地の評価額は80%減額することができます。自宅の半分が土地の値段だとしましょう。土地が5,000万円の80%減額ですから、評価額は1,000万円となります。土地建物合計6,000万円です。金融資産と合わせて1億6,000万円が遺産総額となります。基礎控除は先ほどと同じく3,600万円です。課税遺産総額は1億2,400万円、税率と控除額は先ほどと同様ですので相続税は3,260万円となります。

 

4-3. 具体例その3~半分は自宅、残りは事業用地だった場合~

父は会社の社長だが、無一文で1億円相当の自宅と、会社の事業で使っていた1億円相当の不動産だけを残して亡くなった。会社の社長は息子が継ぐことになった。この場合の息子の相続税は?

前項と同様に、自宅の評価額は6,000万円です。さらに事業を息子が引き継いで、引き続き事業を継続していれば、会社で使っている土地も評価が減額されます。自宅と同様、土地5,000万円、建物5,000万円の評価だったとして、減額後の様かは土地・建物合計で6,000万円となります。遺産総額は1億2,000万円、基礎控除後の課税遺産総額は8,400万円です。この場合の税率は30%、控除額は700万円ですので、相続税は1,820万円です。すべて現金で相続した場合よりも3,000万円以上相続税は少なくなっています。

 

5.まとめ

いろいろな相続税の控除についてご紹介しました。不動産の特例では、自宅や自分の事業で使っていた不動産が減税の対象になるということです。相続税対策としての不動産活用はこれに限らず、様々な方法があります。現金をそのまま相続するよりも相続税が安くなる方法がたくさんあります。ぜひ活用してほしいところですが、最後の具体例のように、全て財産を不動産に変えてしまうと、相続人が相続税を払うための現金が用意できない等の別のリスクが伴ってきてしまいますので、節度を保って利用されるのがよろしいかと思います。