事例紹介
Category 相続税
2018年04月03日
不動産で相続税の節税対策をする3つの方法とメリット、デメリット
「相続税対策には、財産を不動産にしておくとよいらしい」という話を聞いたことがある方は多いと思います。
しかし、具体的に何をしておけばいいのか?になるとなかなか難しい部分がありますよね。
今回は、不動産を使った相続税の節税対策の方法について、具体的に解説させていただきます。
この記事でわかること
1. 不動産相続税の節税対策はこんな人におすすめ!
相続税には一定の非課税部分があります。
簡単に言うと、「一定額以上の財産を持っている人でない限り、相続税が課税されることはない」ということですね。
具体的には、以下の金額の財産までであれば、相続税が課税されることはありません。
相続税の非課税部分=3000万円+法定相続人の数×600万円
例えば、相続人として子供3人がいるという人であれば、3000万円+600万円×3人=4800万円までであれば、相続税は1円もかかることはないということになりますね。
一方で、上の計算式で計算した金額よりも多くの財産を所有している場合には、その部分について相続税を負担しなくてはならないことになります。
その場合には何らかの形で相続税の節税対策を行う必要があります。
以下で説明させていただくように、不動産を使うこと(現金などの形で所有している財産を、自宅や賃貸アパートの形に変えておくこと)は相続税の対策として有効ですから、 具体的にどのような方法があるのかについて知っておくとよいでしょう。
2. 不動産で相続税の節税対策をする3つの方法
具体的に、不動産を使って相続税を節税する方法としては、以下のようなものがあります。
・自宅用の住宅として土地や建物を所有する(小規模宅地等の特例)
後で説明させていただく「小規模宅地等の特例」により、相続税評価額を最大80%オフとしてもらうことができます。
・賃貸アパートとして土地や建物を所有する
賃貸アパートとして不動産を所有する場合、自宅などよりも低い相続税評価額としてもらうことが可能です(具体的な計算方法については後述しています)
相続税評価額が下がればそれだけ相続税は安くなりますから、賃貸アパートの形で不動産を所有することは相続税対策として有効な方法といえます。
・広大な土地の評価を使った節税方法
利用している土地一つで500㎡を超える比較的大きな土地を所有している人は、「地積規模の大きな宅地の評価」という評価方法を使うことができます。
具体的には、500㎡(三大都市圏以外の地域においては1,000㎡)以上の地積で、一定の条件を満たす土地の場合、「規模格差補正率(土地の大きさについての特殊な計算)」を通して相続税評価額を下げてもらうことが可能になるのです。
3. 不動産の相続税対策のメリット
不動産を使って相続税対策を行っておくメリットを理解するには、次のような基本的な知識について知っておく必要があります。
- 現金から不動産にすることの意味
- 土地の相続税評価額の計算方法
- 建物の相続税評価額の計算方法
- 小規模宅地等の特例の意味
- 貸家にしておくことの意味
- 借金がある場合の処理
以下、これらの項目について順番に解説させていただきます。
3-1. (現金から不動産にすることについて)
相続税は、相続が発生したときにおける「相続税評価額」に対して課税されます。
ごく簡単に言えば、この「相続税評価額」を少しでも低く抑えることができれば、相続税の金額も低く抑えることができます。
相続財産の評価額を低く抑えるためには、財産は現金の形で持っているよりも、不動産のように「相続税評価額が低く見積もられる傾向のある財産」の形で持っておくのが有効です。
現金以外の形の財産としては、株式などの形にしておくことも考えられますね。
しかし、株式の相続税評価額は常に時価(取引額)と同じ金額(相続が発生した日の市場価値など)になりますので、株価が高騰しているようなときに相続が発生したとすると、想定外に高い金額の相続税を課せられてしまう可能性があります。
一方で、不動産の場合には1年に1回というスケジュールで決まる「路線価」で決まりますので、相続税評価額を予測しやすいという特徴があります。
さらに、路線価というのは土地、家屋ともに取引価格よりも低い金額で評価される傾向がありますから、相続税の節税対策にもなるというわけです。
3-2. (土地の相続税評価について)
不動産とは土地と建物のことをいいますので、それぞれの相続税評価額の計算方法について簡単に見ておきましょう。
まず、土地の相続税評価額についてですが、上でも少し説明させていただいたように、土地の相続税評価額は「地積」と「路線価」に基づいて以下のように計算します。
土地の相続税評価額=地積×路線価
上の計算式で、まず「地積」の数字を知るためには、毎年4月~5月ごろに市役所から送られてくる「固定資産税の納税通知書」をチェックします。
固定資産税の納税通知書には、あなたが所有している土地の面積(地積)が記載されていますから、これをメモしてください。
なお、固定資産税の納税通知書には1筆の土地全体の地積が記載されていますから、もしその土地が他人との共有になっている場合には、ご自分の持ち分割合で掛け算をする必要があります。
例えば、100㎡の土地を兄弟で2分の1ずつ共有しているという場合には、あなたの所有土地の地積は100㎡×2分の1=50㎡ということになります。
自分の持ち分がいくらかわからないという場合には、法務局で不動産登記簿を取得すれば正確な持ち分割合を知ることができますよ。
地積の数字がわかったら、次に「路線価」を調べます。
ヤフーやグーグルなどで「路線価図 平成◎年 国税庁」というように検索してみてください(「◎年」には今年の年度を入れます)URL:http://www.rosenka.nta.go.jp/index.htm
地図が表示されている国税庁のページにいきつくと思いますので、ご自分の所有土地の近辺を表示させます。
地図を表示させたら、所有されている土地が面している道路上に表示されている数字をチェックします。
例えば「200D」というように表示されていると思います。
これは「1㎡あたり200千円」つまり「1㎡あたり20万円」という意味になります(これが「路線価」です)
ここまでであなたの土地の「地積(固定資産税の納税通知書でチェック)」と「路線価(国税庁のホームページでチェック)」がわかりました。
後はこの2つを掛け算するだけであなたの所有土地の相続税評価額を知ることができます。
例えば、「地積が300㎡で、路線価が1㎡あたり20万円」となっているのであれば、この土地の相続税評価額は「300㎡×20万円=6000万円」ということになるわけですね。
3-3. (建物の相続税評価について)
次に、建物の相続税評価額についてみていきましょう。
建物の相続税評価額の計算はいたって簡単で、固定資産税の納税通知書に記載されている建物の評価額そのものが、建物の評価額となります。
建物の相続税評価額=固定資産税の納税通知書に記載されている「固定資産税評価額」
なお、固定資産税評価額そのものについては3年に1回、市役所が決めて通知してきますから、必ず最新の固定資産税の納税通知書を確認するようにしてくださいね。
3-4. (小規模宅地等の特例について)
上では相続財産としての土地を評価するときの方法について説明させていただきましたが、この土地を自宅として使っている場合には、さらに相続税評価額を下げてもらうことが可能です。
具体的には、亡くなった人が自宅などを建てるために使っていた土地の相続税評価額は、路線価から計算した金額からさらに最大で80%オフとしてもらうことができます。
例えば、上で「300㎡×路線価20万円=6000万円」と計算した土地を、亡くなった人が自分が住む家を建てるために使っていたという場合には、相続税評価額は6000万円×(100%-80%)=1200万円としてもらうことができるのです(これを「小規模宅地等の特例」と呼びます)
この財産をもし現金として持っていた場合には、相続税評価額は6000万円ということになりますから、小規模宅地等の特例を使うことで4800万円も相続税評価額をさげることができ、大きな節税につなげることが可能になります。
ただし、小規模宅地等の特例を適用してもらうためには、以下のような条件があります。
それぞれの条件の具体的な内容については税理士などに相談しましょう。
- 相続人がなくなった人の配偶者、同居親族、賃貸アパートに住んでいる別居親族のどれかであること
- 宅地面積が330㎡までが適用の範囲
- 宅地の用途に制限あり
- 相続税の申告期限までに遺産分割協議が完了していること(申告期限から3年以内であればさかのぼって適用OK(ただし届出が必要))
3-5. (貸家にすることについて)
上では住宅として不動産を所有することによる相続税対策の方法について解説させていただきましたが、賃貸アパートなどの貸家として不動産を所有することにも相続税対策としての高い効果が見込めます。
具体的には、土地については自宅として所有する場合には路線価で相続税評価額を計算するのに対して、
貸家を置くための土地(貸家建付地といいます)として所有する場合には「自宅としての評価額×(1-借地権割合×借家権割合)」という形で評価してもらうことができます。
実質的には時価の6~7割程度の価額で評価されるので、相続税の負担がかなり小さくなります(自宅地の場合は時価の8割程度です)
建物についても同様です。
自宅用の建物は固定資産税評価額が相続税評価額となりますが、貸家とした場合には「自宅としての家屋の評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)」という計算式で相続税評価額を計算しますから、実質時価の3~4割程度の価額で評価してもらうことが可能になるのです(自宅用の家屋の場合は、時価の5~6割程度の評価額となるのが相場です)
3-6. (借金について)
借金をして不動産を取得することが、相続税対策につながるケースがあります。
というのも、相続税の課税される相続財産というのは、「不動産や現金などのプラスの財産-借金などのマイナスの財産」で計算されるからです。
具体的には、借金したお金で、評価額が時価よりも低い不動産を取得したようなケースが該当します。
例えば、3000万円を借金して、市場価値3000万円の不動産を取得できたとしましょう。不動産の相続税評価額は時価の8割程度の金額とします。
この場合、相続財産としては3000万円×80%=2400万円のプラスの財産が残ることになりますが、マイナスの財産として3000万円の借金があることになります。
したがって、プラスの財産2400万円からマイナスの財産3000万円を差し引きして、相続財産を-600万円とすることができるのです。
もちろん、借金は返済しなくてはなりませんからメリットになるかどうかはケースバイケースで判断する必要がありますが、相続税対策として考えた場合には上のようなメリットが生じるケースがあることも知っておきましょう。
4. 不動産の相続税対策をしなかった場合のデメリット
不動産の相続税対策しなかった場合には、以下のようなデメリットが生じてしまいます。
・家族に残す財産額が減ってしまう
まず、相続税の負担が大きくなることによって、家族に残してあげられる財産が少なくなってしまうのが第一です。
自分の死後についての計画は、相続税の負担を織り込んだうえで検討しなくてはなりません。
・最悪の場合、土地などを失う可能性がある
相続税は、決められた期限(相続が発生してから10か月)以内に、現金で納付しなくてはなりません。
もし適切な相続税対策を行っておらず、必要な納税金額を工面することができない場合、先祖代々の土地を売却してなんとか用意する…というような事態にもなりかねません。
・せっかく利用できる特例措置を放棄することになる
上でも解説させていただいたように、不動産をうまく活用すると、相続税の負担をぐっと少なくすることができます(小規模宅地等の特例等)
このように不動産活用による相続税対策が認められているのは、国(政府)が「もっと不動産の形で財産を残す人を増やしたい」と考えているからに他なりません。
せっかく用意されている特例措置を使うチャンスをみすみす逃すことはとてももったいないことですから、不動産を使った節税対策はぜひ活用するようにしたいところです。
5. 不動産の相続税対策の注意点
不動産を使った相続税対策を具体的に進めていくときには、以下のような注意点についても気を付けておきましょう。
・不動産の管理をどのように行うか決めておく
自宅の形で不動産を所有する場合には、不動産の管理についてはそれほど問題となることはないでしょう。
一方で、賃貸アパートなどの形で不動産を所有する場合には、不動産の管理をどのように行うかは重要な問題となります。
具体的には、賃貸アパートの管理会社をどこにするかを慎重に判断することが大切です。
賃貸アパートの不動産管理を怠っていると空室リスクなどにうまく対応することができませんから、管理会社の得意分野や、地域ごとの実績などについてはしっかりとリサーチしておきましょう。
・遺産分割でもめないように、遺言書を残しておく
上で具体的に見てきたように、不動産を使うと相続税の負担を大幅に減らすことができます。
しかし、不動産の形で残った相続財産は、現金や有価証券の形で残っている相続財産に比べて分割が難しいというデメリットがあります。
後に残すことになる家族のためにせっかく相続税負担を少なくしたとしても、残された家族同士が相続財産をめぐって相争う…などということになっては本末転倒です。
不動産の遺産分割でトラブルが発生しないようにするためには、遺言書などの形で「元の所有者が生前にどのような意思を持っていたのか」を明確にしておくことが大切です。
・専門家に相談すること
このように、不動産を使って相続税対策を行う上では、専門知識と実績のある専門家をパートナーとして選ぶことが大切です。
相続税対策については税理士がアドバイスをしてくれる他、不動産活用については管理会社をどこに依頼するかといったこともよく検討しておく必要があります。
まとめ
今回は、不動産を使って相続税対策を行う方法について、基本的な知識について解説させていただきました。
財産は「どのような形で所有しているか」によって、負担しなくてはならない相続税の金額が全く違ってきます。
現金や有価証券(株式など)の形で所有している財産は、土地や建物などの不動産に比べると相続税の負担が大きくなる傾向があります。
家族が負担する相続税の金額を少しでも小さくしたいとお考えの方は、不動産を使って相続税対策を行うことを選択肢に入れてみてくださいね。