事例紹介
土地を所有している限り、その土地を寝かせていても活用してもリスクはつきものです。長年、土地活用の支援をさせてもらっていて感じることは、結局はどのリスクを選択し、いかにして事前対応するかに尽きるということです。
例えば、土地活用は初期費用が掛かるため今は寝かせているという場合でも、地価が下落し売却益が今よりも下がってしまうというリスクや、固定資産税を支払い続けなければいけないので収支はマイナスというリスクがあります。
初期投資額を減らすために、駐車場で土地活用した場合でも、マンションが建っている土地より駐車場の方が土地の固定資産税は高くなるため、長い目で見るとマンションの方がお得だったということもあります。
では、どのような基準で土地活用法を選択すればよいのでしょうか?
それは、あなたの土地活用をする「目的」です。目的を明確にすることで、対策すべきことの優先順位が変わり、優先順位の低いところのリスクを選択することが望ましいと言えます。
その目的に基づいたうえで、例えば「初期費用の少ない駐車場経営にしよう」といったリスクの選択をするようにしましょう。
また、いずれの手法を選ぶにしてもいくらの収入が入って、税金や経費でいくらの支払いがあって、手残りがいくらなのか、キャッシュフローを組み、無理のない計画を選択することが重要です。
この記事でわかること
1. 自己使用でリスクを避ける
土地活用のリスクを避ける方法のひとつに自己使用があります。
アパート・マンション・戸建て住宅などの賃貸経営は、建物を建てる費用がかかるために、初期投資の負担が大きくなりがちです。借主がいなかったり、空室が多ければ、収益が上がらないというリスクがあります。
この場合、建物を自己使用することで、空室のリスクを減らすことができます。借主が見つかるまで自分が居住することで、売却するタイミングをうかがうことができるので、土地活用の転用性が高くなります。
ただ、自己使用をしても収益には繋がりません。あくまでリスク回避の方法として考えてください。これから紹介する土地活用方法も、自己使用を検討しつつおこなうことで、リスクを軽減することができます。
2. 売却でリスクを避ける
土地活用のリスクを避ける手段として土地の売却も選択肢に入れておくと良いと思います。
土地を売却することで、確実に現金が入るため、短期間でまとまった収入を得ることができます。ほかの土地活用のように、数年~数十年単位での運用に比べると、赤字やトラブルなどのリスクを心配する必要もありません。初期投資に費用もかからず、売却することで固定資産税の支払いや、土地を管理する負担もなくなります。
売却して現金に換えることで、資産の活用をしやすくなるというメリットもあります。ただし土地や建物の収益性や立地が悪い場合は、そもそも買い手が見つからず、売却できない可能性もあるので注意が必要です。
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3. 初期投資額を抑えてリスクを減らす
初期投資にかかる費用が少ない土地活用の方法をみていきます。
土地活用には建物が必要と考える人もおられますが、建物の建設には多額の費用がかかります。多くの場合は借り入れをおこない、負債を抱えて土地の運用を始めることになります。そうなると、うまく収益が上がらなかった時の心配や、借入金を返済できないかもしれないという不安がでてくると思います。借入金がなかったとしても、多額の費用を投資して思うような経営ができなければ、精神的な負担になることも考えられます。
初期投資額を抑えるのであれば、建物を必要としない土地活用を検討する必要があります。駐車場経営や、レンタルボックス(貸しコンテナ)がこれにあたり、土地の広さによって変わりますが、数百万円ほどの初期投資ではじめることができます。
どちらも狭い土地でも活用可能で、初期費用もあまりかかりませんが、デメリットとして収益性が低いことがあげられます。ただ、更地に戻すことも容易にできるので土地活用の転用性が高く「具体的な活用方法が決まるまでの繋ぎ」として短期間の運用をおこなうこともできます。
駐車場経営やレンタルボックス・貸しコンテナを運営するにあたり、3つの経営方式が考えられます。
1つ目は、一括借り上げ方式。2つ目は、共同運営方式。3つ目は、土地所有者が直接運営する方法です。
一括借り上げ方式は、専門業者に必要な業務・運営をすべて委託して、土地所有者は地代として毎月固定の収入を受け取るという方法です。共同運営方式は、一括借り上げ方式のように専門業者に業務・運営を委託しますが、違うのは利益の受け取り方です。発生した利益は業者と分配するシステムになります。自身で運営する方法は、必要な設備の設置や整備を、すべて土地所有者がおこなう必要があります。
駐車場経営とレンタルボックス・貸しコンテナ、それぞれの特徴や、3つの経営方式について詳しく説明します。
3-1. 駐車場経営とは?
駐車場経営は、月極駐車場とコインパーキングの2種類に分けられます。月極駐車場は、初期投資をほとんどかけずに運営することもできます。ただ、事業として行うのであれば、舗装や街灯の設置などの整備も必要となります。この場合、1台あたり10万円から30万円の費用が目安となります。
コインパーキングは月極駐車場に比べて、設備を整えるための初期投資がもう少しかかります。舗装や街灯の設置に加え、精算機の購入に80万円から90万ほどかかります。駐車場の規模によって違いがあるものの、これくらいの初期投資が必要です。
駐車できるスペースがあればいいので、土地の広さや形状も問いません。ただし、駐車場に入るための道路が狭すぎたり大きな段差や高低差がある土地には向きません。また、駐車場の需要がある住宅地や商業施設のある地域でなければ、安定した運営は見込めないでしょう。
駐車場経営は更地と同じ扱いになるため、節税効果は期待できません。収益については、経営方式によって差がでます。経営方式の違いによって初期投資に必要な費用も変わってくるので、合わせてご確認ください。
3-1-1. 駐車場経営の一括借り上げ
運営業者に土地を貸し出す一括借り上げ方式であれば、毎月固定の収入が得られるので、駐車場の稼働率を気にする必要はありません。すべての業務を業者がおこなってくれるので、管理・運営の負担もなくなりますが、その分収益性は低くなります。月極駐車場よりも収益性が高く、運営の手間がかかるコインパーキングの経営に利用されることが多いです。
3-1-2. 駐車場経営の共同運営
土地の所有者は土地を提供して、運営や管理は専門業者に任せる方法です。運営に必要な設備にかかる費用は業者が支払うので、初期投資の負担はありません。
土地所有者は利益や経費の内容を確認することができます。利益は業者と分け合う形で、稼働率が高ければ収入も増え、駐車場の空きが増えると収入も少なくなります。
3-1-3. 駐車場を自分で運営
土地の整備・メンテナンスや利用者の募集、クレームやトラブルへの対応などすべての業務を自分で行う必要があります。
収益性は高くなりますが、知識や経験がないと大きな負担になるでしょう。
運営のサポートをしてくれる業者もありますので、不安があればサポートを依頼してみるのも良いと思います。
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3-2. レンタルボックス・貸しコンテナとは?
レンタルボックスや貸しコンテナは、家に入りきらない荷物や、季節が限定されるレジャー用品などを収納するための収納スペースです。屋内に収納スペースを確保するタイプもありますが、ここでは屋外にコンテナを設置するレンタルボックスについてご説明します。
アパートやマンション経営が飽和しつつある一方で、レンタルボックスはこれから発展していく見込みのある事業です。ただ、現状では利用者を募集する手段が少ないことがデメリットとしてあげられます。
ホームページを作成したり、チラシや看板で集客する方法がありますが、どれもノウハウが必要で、自分でおこなうのは大変です。レンタルボックスや貸しコンテナの専門サイトに募集を載せてもらうにしても、アパートやマンション経営のような大手ポータルサイトの数が少ないのが現状です。
基本的に設備は、更地にコンテナを設置するだけなので、比較的費用が少なくても運営できます。コンテナ購入や設置工事、舗装工事などの初期投資にかかる費用は、コンテナ1基あたり80万円から130万円くらいが目安です。土地に置くコンテナは、建築物に該当するため、建築基準法に従っての設置・申請をおこないます。
ただコンテナを置くだけでは建築基準法違反になるため注意が必要です。
レンタルボックスを利用する人は、車を使用して荷物の出し入れをおこなうことが多いため、駐車スペースを確保する必要があります。また、車を使用する利用者が多いことから、立地の良さよりも、安さが重視される傾向があります。
それでは経営方式の違いによる、運営方法や収益比較していきましょう。
3-2-1. コンテナボックスの一括借り上げ
土地所有者が購入したコンテナと土地を専門業者に貸して、運営や管理といった業務全般をおこなってもらいます。賃料として毎月固定の収入を得ることができますが、収益性は低くなります。
3-2-2. コンテナボックスの共同運営
土地所有者は、コンテナの購入など設備に関する費用が多少必要です。運営は専門業者に委託するので運営に関する負担はありません。利益は業者と分け合います。
経営方法を学びながら、慣れてきたら自身で運営するように切り替えても良いと思います。
3-2-3. コンテナボックスを自分で経営
コンテナの購入から、設置する業者選び、運営にかかわる業務全般をすべて自分でおこなうため、相応の手間や負担がかかります。その分発生した利益はすべて自分のものになるので、この3つの方法の中では一番収益性が高い運営方法です。
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4. 安定した回収が見込める土地活用でリスクを減らす
ここまでに、初期投資などのリスクが少なくてもできる土地活用についてお伝えしました。ただ、ローリスクな分、得られる収益が少ないのが難点といえます。
駐車場やレンタルボックスは、稼働率が少なければ、ただでさえ低い収益がさらになくなってしまうという可能性もあります。
そこで、安定した収入を得られて、初期投資した分の費用回収が見込める土地活用についてもみていきます。
4-1. 太陽光発電
太陽光発電は、太陽エネルギーを電力に変換するシステムです。再生可能エネルギーの固定価格買取制度を利用して、変換したエネルギーを電力会社に買い取ってもらうことができます。
20年間は固定価格で買い取ってもらえるため、収益回収の見込みが立てやすいのが特徴です。その一方で年々買取価格は低くなっており、これからもその流れが続くことが予想されます。そのため、「太陽光発電を始めるのであれば早いうちに」というセールスもみられますが、買取価格が下がったのは太陽光発電の導入コストが下がったためです。
このため、これからの参入だと収益が上がらないとは言い切れません。ただ、地域によっては買取り制限を受ける場合がありますので、採算性の確認が重要です。
日当たりや周囲への光の反射などは確認する必要がありますが、他の土地活用にくらべるとそれほど立地を気にする必要もなく、むしろ田舎の何もない土地の方が有効に利用できるケースも多くあります。賃貸や駐車場経営のように、部屋の空きや稼働率を気にする必要がなく、滞納などのトラブルも心配ありません。しかし、雪が多い地域などの日照時間が少ないところや地盤が悪い土地では、太陽光発電をおこなうことが難しい場合もあります。
太陽光発電は、ソーラーパネルを設置する必要があるので、初期投資に費用がかかります。1kW当たり40万円から50万円くらいが目安ですが、自治体によっては補助金が用意されているところもあります。
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4-2. 定期借地権
定期借地は、所有している土地を貸し出して収入を得る方法です。建物の建設や運営は借主がおこなうので、土地の所有者は初期投資の必要がありません。
定期借地には、住居用として個人に貸し出すケースや、店舗など事業用地として貸し出すケースがあります。事業用地として貸し出す場合は、立地が良く収益性が見込める土地であることが条件になるでしょう。
土地に建物を建てることで、更地の場合より固定資産税が安くなります。また、定期借地として貸している土地は、土地所有者が勝手に使うことができないために、土地の評価額が大きく下がります。その分相続税が安くなるので節税対策としても有効です。
ただ、借地の残存年数により、減額になる割合が変わるので注意が必要です。借地の残り期間が多いほど相続税の減額率が多くなり、残り期間が少なくなるほど、減額の割合は少なくなるのです。
定期借地権は「土地活用に十分な費用を用意できない」「でも借入金返済のリスクは負いたくない」という人におすすめの運用方法です。契約期間が終了したら、借主は建設した建物を取り壊して土地の所有者に返却することになります。
数十年単位の契約になるので、長期間安定した収入が見込める反面、土地活用の転用性は低くなります。契約期間が長いために、地代滞納などのトラブルが起きるリスクも高くなります。地代を一括で受け取る前払地代方式で契約しておくと、滞納トラブルを避けることができて安心です。
前払地代方式で地代を受け取っても、税務上は土地を貸し出す期間に分けて計上することが可能です。
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5. 等価交換でリスクを減らす
土地活用で十分な利益を得たいのであれば、マンションなどの賃貸経営は魅力的です。ただ、建物の建築が必要な賃貸経営は、一般的に多額の初期投資を必要とします。資金がないために賃貸経営をあきらめていたという人は、等価交換を利用するといいでしょう。
等価交換は本来、等しい価値のものを交換することを言います。土地活用の場合は、土地の所有者が開発業者に土地を提供して、開発業者が建築費用を提供します。建物はそれぞれが負担した割合に応じて所有権をわけ合うのです。
自分で建築費用を負担するより利回りは低くなりますが、このシステムを使うことで、資金がなくても賃貸経営ができるようになります。資金調達の必要がないため、借入金返済のリスクを負うこともありません。もちろん自己使用するのもいいでしょう。
土地を開発業者に譲渡したことになるため、通常は譲渡益に対して譲渡税がかかります。ですが等価交換の場合は、一定の条件を満たすことで譲渡税を100%繰り延べることができるのです。
※あくまでも繰り延べなので、売却時に税金を支払わなくてはいけない可能性もあります。
アパートやマンションを建てておくことで、相続の時に部屋の数で分けることもできるので、更地の状態よりも遺産の分割がしやすくなるというメリットもあります。
6. リスクの少ない土地活用方法まとめ
土地を活用するのであれば、できるだけリスクは避けたいものですが、土地活用では「この方法ならノーリスク」ということがありません。どの方法でも少なからずリスクはあるものです。リスクの少ない土地活用方法をご紹介しましたが、リスクが少なければその分収益が少なくなるのも土地活用の側面です。
ただ、多額の初期投資が必要だと思われていた賃貸経営でも、定期借地権や等価交換を利用することで、借入金不要でおこなうことができるのです。
所有している土地に最適な活用方法というのは、土地の規模や条件によって異なります。土地を活用する目的や活用期間によっても変わるでしょう。土地活用を行うのであれば、それぞれのメリット・デメリットをよく理解して、ベストな活用方法を検討する必要があります。
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また、最適な土地活用の方法を見つけるには、土地活用を専門とする不動産会社やセミナーに参加してみるのもおすすめです。
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