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Category  空き家活用

2018年08月17日 更新

空き家を民泊として活用するための3つの問題点

親から譲り受けた実家。築年数が古いので売却が難しかったり、有効な活用方法が見つからなかったりして困ってはいないでしょうか。

たとえ空き家であったとしても、毎年固定資産税を支払わなければなりません。また、地域や物件によっては庭の草刈りのような最低限の管理が必要になることもあります。

空き家は年々増加し、全国的な問題となっています。具体的には、全国の総住宅数6,063万戸のうち、13.5%にあたる820万戸が空き家となっています。この13.5%という数字は過去最高であるため、今後も空き家は増え続けるものと予想されています。

このような年々増え続ける空き家を活用する方法の1つとして、「民泊」が注目されています。民泊とは、住宅の1棟すべてまたは一部を観光客に宿泊施設として有料で貸し出し、収入を得ることです。空き家を活用して民泊を行えば、得られる収入で物件の管理費用を賄うことができます。さらには利益となって、副収入を得ることもできます。

しかし、日本での民泊は2010年頃から急速に広まった新しい形態であるため、さまざまな問題点があります。

そこでこちらでは、民泊による空き家活用の可能性と懸念されるトラブルや問題点についてくわしく説明いたします。

1. 空き家を民泊として活用するための3つの問題点

実際に民泊に取り組むときには、以下のことを前もって知っておくことにより、問題やトラブルを防ぐことができます。

1-1. 民泊を利用する観光客とのトラブル

民泊による1つ目の問題点は、宿泊する観光客とのトラブルです。民泊はほとんどの場合、物件の所有者が不在のところに外国人をはじめとする観光客が訪れて利用し、そして帰っていきます。そのため、建物の壁や備品が壊れたり備品が持ち去られてしまう恐れがあります。

また、宿泊する観光客が物件をAirbnbで見て想像していたものと実際が異なり、苦情があることも考えられます。

これらのことがないよう、Airbnbではできるだけくわしく物件を紹介するようにしましょう。そして建物内が壊されたり備品がなくなっていないかを、宿泊客が帰る際に立ち会って確認したり、遠方で立ち会えないなら管理会社や知り合いにお願いして確認してもらうようにしましょう。

1-2. 民泊の利用者と近隣住民とのトラブル

民泊による2つ目の問題点は、近隣住民とのトラブルです。外国人をはじめとする観光客が、宿泊のために入れ替わりやって来ることに不安を感じる近隣住民は少なからずいます。特に観光客があまり訪れない地域や山間部では、その傾向が強くなります。

また、宿泊客が建物内で騒ぎ、近隣住民とトラブルになることも考えられます。このようなことを避けるため、物件の所有者自身が普段から近隣住民と交流を図り、民泊に理解が得られるようにしましょう。また、物件が遠方の場合でも、近隣住民とはできる限り関係を深めるようにしましょう。

近隣住民も、知っている人の物件であれば、ある程度のことならトラブルにならずに済みます。

1-3. 民泊利用者と貸主とのトラブル

民泊による3つ目の問題点は、貸主とのトラブルです。所有している空き家を民泊に活用するなら関係ありませんが、マンションなどを賃貸して民泊に利用する場合、貸主とトラブルになります。ほとんどのマンションは、無断転貸が禁止されているからです。最悪の場合、賃貸契約を強制的に解除されてしまいます。

このようなことを避けるため、賃貸契約を結ぶときに転貸できる物件かどうかを確認しましょう。

2. そもそも民泊とは?

民泊とは住宅の1棟すべてまたは一部を他人に有料で貸すことにより、収入を得ることだと説明しました。「民泊」という言葉は本来、一般の民家に宿泊する行為全般を指します。つまり、親戚や友人の家に泊めてもらうことも民泊になります。

しかし、2010年頃から民泊という言葉は、有料で他人を泊めるという一種の事業活動を指すことが多くなっています。そのため、こちらのページで使っている民泊という言葉は、すべて後者の事業活動という意味合いです。

この民泊は、公的機関の営業許可を受けることなく、住宅を外国人をはじめとする観光客に貸し出すことにより、宿泊料を受け取ることができます。民泊の最大の特徴は、営業許可が不要であるため、空き家の本格的な改修や大きな設備投資は不要だということです。そのため、まとまった資金を用意せずに、手軽に始めることができます。

ここまでの内容だと、民宿や体験型の民泊と同じように感じられるかもしれません。民泊と民宿、体験型の民泊との最大のちがいは、建物に事業としての宿泊設備があるかどうかです。

以下で、民泊と民宿、体験型の民泊とのちがいについて説明します。

2-1. 民宿は宿泊設備を備えている

民泊と民宿のちがいは、上記で説明したとおり建物が事業としての宿泊設備を備えているかどうかです。民宿であれば、自宅を多くの宿泊客が泊まれるように拡張しています。具体的には、民宿の建物には宿泊者用の部屋をいくつか用意しています。

そして、民宿は営利目的でこのような宿泊設備を用意しています。そのため、ホテルや旅館と同じように旅館業法という法律が適用され、営業許可を受ける必要があります。

一方の民泊は、通常の民家を貸し出します。有料で建物全体や部屋を間貸ししているとはいえ、日常生活を送るための設備しか備えていません。そのため、旅館業法が適用されずに許可は不要だと解釈されています。

ただ、民泊に旅館業法が適用されるかどうかは、法整備がされていないためさまざまな解釈があります。これについては、後ほどくわしく説明します。

以上のとおり、民泊と民宿のちがいは、建物に事業用の宿泊設備があるかどうかです。

2-2. 体験型の民泊は民宿と同じ扱い

年々過疎化が進んでいる地方の自治体では、都市部の自治体とともに地域交流や移住者を受け入れなどを行っています。その1つとして、田舎体験(田舎ツーリズム)や農業体験(グリーンツーリズム)のような、その地域の生活を体験できる「体験型の民泊」が全国的に行われています。

これらは、体験型の「民泊」といっていますが、上記で説明した民宿と同じ扱いになると解釈されています。体験型の民泊で提供される宿は、宿泊料を受け取る前提で宿泊設備を備えて運営されているからです。

ただ、体験型の民泊も過去になかった新しい形態なので、完全に法整備が遅れています。そのため異なる解釈があるのも事実です。

以上のとおり、一般住宅を貸し出して収入を得る民泊は、営業許可や特別な設備がなくても行えるという長所があります。一方で、民宿や体験型の民泊は、旅館業法が適用されるため、営業許可や必要な設備の整備が必要だという点で、ここでいう民泊とは大きく異なります。

3. 民泊ビジネスが増えている4つの理由

ここまで、民泊では営業許可や特別な設備が不要で手軽に始めることができ、収入を得ることにより空き家を活用することができると説明しました。

中には、民泊のこれらの長所に注目し、民泊で収入を得るために建物を購入して事業を行っている個人や会社もあるほどです。さらには、民泊のための建物の管理運営を行う会社も出てきています。

民泊は簡単に始めることができるにも関わらず、2010年頃になって急激に広がり出した理由があります。それは、世界中で利用されているAirbnbの存在が大きなきっかけになっています。

また、日本国内ではホテルや旅館のような宿泊施設が不足しているという問題を解決でき、しかも観光地でない地方都市や山間部でも民泊は事業として成り立つという大きな特徴もあります。

さらには、民泊のための法律が2017年頃から整備され始めたことから、合法的に行うことができるようになりました。

これらの理由から、民泊はビジネスの1つとして知られつつあります。以下では、民泊がビジネスとして増えている4つの理由について説明します。

3-1. 世界中で利用されている民泊(Airbnb)の存在

民泊がビジネスとして増えているもっとも大きな理由は、世界中で利用されているAirbnb(エアービーアンドビー)の存在があります。Airbnbとは、世界一の規模を持つ民泊のマッチングサービスの名称です。具体的には、Airbnbのサイトには、世界中の民泊ができる物件が数多く登録されています。そのため、Airbnbに自分の物件を登録すれば、世界中の人々に見つけてもらえ、利用してもらうことができるのです。

通常、個人が民泊で収入を得ようとしても、顧客を見つけることができずに成り立ちません。しかし、Airbnbが登場したことにより、その問題が解決されたのです。

Airbnbは世界中で有名なサイトです。そのため、ここに登録することにより、世界中から自分の物件に泊まりたい顧客を見つけることができます。

なお、民泊はホテルや旅館とくらべて安価で利用することができるため、日本国内の旅行や出張でこのAirbnbを活用し、自分の予算に合った物件に泊まる人も増えています。

以上のとおり、Airbnbというインターネットサービスの登場により、民泊がビジネスとして簡単に成り立つ環境が整いました。

3-2. 民泊で国内の宿泊施設の不足を解消

民泊がビジネスとして増えている2つ目の理由は、日本への外国人観光客が年々増加しているにも関わらず、それを受け入れられるホテルや旅館のような宿泊施設が不足していることが挙げられます。

さらに、日本政府は観光立国推進基本計画を定めました。この計画では、平成32年初めまでに2,500万人の観光客を達成目標にしています。政府がこの目標を達成するためには、民泊を活用するしかないのです。多くの外国人観光客が日本を訪れたいと感じても、宿泊施設の予約が取れなければ実際に訪れることはありません。そのためにホテルや旅館を整備しようとしても、莫大な建設費用や土地取得費用、運営費が発生する宿泊施設が急激に増えることはまずありません。

そのような問題点を解決する方法として、民泊が注目されています。民泊であれば個人でも比較的手軽に始めることができるため、政府としても多くの人が民泊を行うことにより、多くの外国人観光客を受け入れることができます。

また、宿泊施設が不足しているということは、営利を目的とするなら大きな収入が見込めます。そのため、多くの個人はもちろん、企業なども民泊を始めるのです。

このように、民泊により国内で宿泊施設が圧倒的に不足しているという問題を解決することができます。また、民泊を行う側にとっても、大きな収入を期待することができます。

3-3. 民泊は観光地以外でも成り立つ

民泊がビジネスとして増えている3つ目の理由は、観光地でない地域でも成立することです。ここまでの説明だと、民泊を行う地域は東京や大阪、名古屋のような都市であったり、外国人観光客が好みそうな京都や奈良、北海道のような観光地に限られるように感じられます。

しかし、民泊はこれらの都市部や観光地でなくてもビジネスとして利益を出すことができます。日本人が旅行先としてあまり興味を示さない地方や山間部であっても、外国人観光客にとっては魅力的で行きたいと感じることが多くあります。日本と外国では文化や価値観が大きくちがうため、日本人にとっては魅力を感じない景色や風土であっても、外国人観光客にとっては大きな価値があることが往々にしてあります。

このような地域では、旅館やホテルは利益が見込めないためほぼ存在しません。そのため、外国人観光客は必然的に上記で説明したAirbnbというサービスを利用して民泊の物件を見つけ、訪れるのです。

このことから言えるのは、都市や観光地でない地方や山間部に空き家を持っていたとしても、民泊で活用することにより収入を得ることができるということです。これまでであれば、特に山間部は地価が低く、建物や土地を売却しようと思っても買い手がつかないという悩みがありました。しかし、民泊ならこのような物件であっても活用することができます。

また、観光地ではない地方や山間部の自治体の中には、民泊を活用して積極的に外国人観光客を受け入れることにより、地域の活性化を目指すところもあります。

このように、民泊は都市部や観光地ではない地域の空き家であっても活用することができるため、全国的に民泊を行う人が増えています。

3-4. 民泊は法律で規制緩和・整備されつつある

民泊がビジネスとして増えている4つ目の理由は、法律で規制緩和や整備が行われていることです。ここまで説明したとおり、民泊は空き家活用はもちろん、ビジネスとしても可能性があるものです。しかし、民泊の魅力や可能性に興味を持ちながらも、法律が不安で行わなかった人が多かったのも事実です。

上記でも書いたとおり、民泊は新しい形態であるため法律の整備が追いついていませんでした。そのため、法的にグレーな状態で広まっていたのです。

具体的には、ホテルや旅館、民宿に適用される旅館業法が適用されるのかどうかが不明確でした。そのため、民泊に興味を持ちながら始めなかった人の多くは、法整備により民泊が禁止されたり、営業許可が必要になったりすることを警戒していたのです。

しかし、国家戦略特区の指定や旅館業法施行令での規制緩和、そして2017年の民泊新法の制定により初めて法整備が行われたことにより、民泊は旅館業法が適用されない合法のものとなりました。

以下では、民泊について規制緩和や整備を行っている国家戦略特区と旅館業法施行令、民泊新法についてくわしく説明します。

・国家戦略特区での民泊の解禁

まず、民泊の規制緩和として、特区民泊があります。特区民泊とは、国家戦略特区での民泊のことです。国家戦略特区(正式名称:国家戦略特別区域)とは、地域振興と国際競争力を向上するために定められた地域のことです。具体的には、民間企業が新しいビジネスを展開しやすいよう、さまざまな分野で規制が緩和されています。

この国家戦略特区で自治体が条例を制定していれば、旅館業法が適用されないことが定められています。このような民泊を特区民泊といいます。

この国家戦略特区で民泊条例を制定しているのは、東京都大田区、大阪市を含む府の一部、北九州市です。

特区民泊は国内でも特に外国人観光客が多い自治体が、できるだけ多くの宿泊施設を確保するために自治体の判断で定められています。なお、特区民泊だからといって外国人しか利用できないわけではありません。日本人であっても利用することができます。

このように、特区民泊により、日本全国のわずかな地域ではありますが、民泊が正式に認められています。

・旅館業法施行令で民泊が規制緩和

国家戦略特区に続き、旅館業法施行令の改正によっても民泊の規制緩和が図られています。

上記で、民泊は法整備がされていないため、旅館業法が適用されないと解釈されていると書きました。

これは、もし仮に民泊が旅館業法の規定どおりに営業許可を受けようとした場合、現実的に条件を満たすことができないため黙認してきたものと考えられます。民泊が旅館業法の適用を受けると決めてしまえば、日本から民泊がなくなり、政府としても外国人観光客を受け取れることができないという大きな問題が起こります。

もしも民泊が旅館業法の規定どおりに民宿として営業許可を受けようとした場合、客室の延床面積が一律33㎡以上でないと許可が受けられないことが旅館業法施行令で決められていました。この規定だとマンションを利用した民泊は許可が受けられません。

そのため、面積が33㎡以下のマンションでも営業許可を受けようと思えば受けることができるよう、宿泊客が10人未満なら3.3㎡×宿泊人数の広さを確保すればよいことになりました。

また、これまでホテルや旅館などで見られるフロントも、民泊では貸主が不在で物件を貸し出すことが多いことを考えると、大きな問題でした。そのため、このフロントも、宿泊人数が10人以下なら事故や緊急のときにすぐに対応できる体制を整備すれば、設けなくてもよいことになりました。

これらの旅館業法施行令の改正は、直接的に民泊を行ってもよいという内容ではありません。しかし、延床面積やフロントなど、広く民泊が行えることを意識した改正だと判断できます。

・民泊新法による法整備

ここまで説明した特区民泊の設置や旅館業法施行令の改正により、民泊が地域限定、または間接的に認められてきました。しかし、どちらもあくまで限定的で、実際に行われている一般の住宅を貸し出すという民泊については、法律では一切触れられないままでした。

しかし、2017年6月9日に、民泊について正式に定めた「住宅宿泊事業法(通称:民泊新法)」が成立しました。この法律は、早ければ2018年1月に施行される予定です。

この民泊新法では、民泊を「住宅宿泊事業」として位置付け、民泊を行いたい人は都道府県知事に届け出を行うことなどが決められています。

この民泊新法で気をつけなければならないのは、1年の営業日数が180日以内という条件があることと、地域によっては条例で民泊が禁止されていることの2点です。

年間180日以上民泊を行う場合や、民泊が禁止されている地域の場合は、民宿として運営を行う必要があります。具体的には、必要な施設などの基準を満たした上で、都道府県知事から営業許可を受ける必要があります。

このように、2010年頃から急激に普及した民泊は、特区民泊や旅館業施行令、そして民泊新法により、合法なものになりました。このことも、新たに民泊を始める人が増える大きな要因となっています。

4. 空き家を民泊として活用するための問題点まとめ

こちらでは、民泊による空き家活用の可能性と懸念されるトラブルや問題点についてくわしく説明いたしました。

親から譲り受けて空き家となっている物件は、地域によっては売却しようとしても売り手がなかなか見つからず、有効な活用方法がないものです。しかし、2010年頃から注目されている民泊であれば、そのような物件でも外国人をはじめとする観光客向けの宿泊施設として有効活用できる可能性が十分にあります。

民泊は営業許可が不要で、建物に宿泊のために最低限必要なものを揃えるだけで始めることができ、中には営利目的で民泊を行っている個人や企業もあるほどです。

民泊が増えた背景として、Airbnbというサイトが登場したこと、国内のホテルや旅館のような宿泊施設が不足していること、都市部や観光地ではない地方や山間部でも民泊は成り立つこと、2017年には法律が整備されて民泊は正式に合法になったことが挙げられます。

しかし一方で、宿泊する観光客や近隣住民、貸主とのトラブルに気をつけなければなりません。ただ、どれも少しの工夫や注意で避けることができるので、前もって知っておくことにより大きな問題にはなりません。

民泊を始めることにより、宿泊料による収入を得ることができる可能性は大いにあります。また、多額の資本金は不要なので、民泊は地方や山間部の空き地を活用するために有効な手段だといえます。もしこのような空き家をお持ちで悩んでおられるなら、民泊を始めてみるのも1つの手段です。

また、最近注目されているシェアハウスとして空き家を活用する方法もあります。シェアハウスと聞くと10代20代のニーズが高いように思われますが、最近は単身層の30代からのニーズも多なくなり、様々なコンセプトを持たせることで成功しているところが出てきました。詳しくは下記の記事でご紹介していますので、ぜひこちらも参考にしてください。

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