事例紹介
所有している土地を貸して安定的な収入を得ている方が増えています。土地を有効利用させようとあらゆる可能性を探ると、土地を貸すことが有力な候補となります。自分で事業を始めることはとてもリスクが大きく、特に不動産の運用にはたくさんの法律など絡む要素が多岐にわたるため、プロであっても失敗することがあります。
素人が、収益を上げることは難しいと言わざるを得ません。
その点土地を貸して借地料を得る場合は、そんなに専門的な知識がなくても、安定的な収入が見込めます。では、土地を貸して得られる借地料の相場は、どれくらいなるのか見ていきましょう。
この記事でわかること
1. 土地を貸すメリット
土地はどうすれば最も有効に活用できるのでしょうか。土地を持つ人や、土地の活用について学んだことのある人なら、誰もが一番に考える事だと思います。
アパートやマンションのオーナーとなることは、昔からよく行われてきました。しかし、実際には思った以上に収益があげられないケースがとても多いのです。なぜでしょうか。それは、土地オーナーは集客や運用などのプロではないからです。
慣れないアパート・マンション運営に手を出した結果、多額の損失を出してしまう人も少なくありません。では、土地を貸すという活用方法は、どうでしょう。土地を貸す場合、土地オーナーが慣れない事業に手を煩わされるといったことはありません。では、具体的に土地を貸すメリットを見ていきましょう。
1-1. 借り入れなしで土地を活用できる
持っている土地で、アパート・マンション経営を始めるとします。まず当然、アパートやマンションを建設しなければなりません。必要な設備を揃え、内装も整える必要が有ります。大掛かりな工事をした上に、広告も打たなければ入居者を集めることはできません。
このように初期投資がたくさん必要となります。莫大な初期投資を自己資金でまかなうことができるほど貯金がある人はなかなかいませんので、金融機関などから融資を受けることとなります。つまり、多額の借り入れが必要となるのです。
借りた以上返さなければならず、万が一、運用で失敗をして返済不能となった場合、その土地だけでなく自宅まで失うことになるかもしれません。その点、土地を貸す場合は、借り入れが一切必要ないので返済不能となるリスクがありません。
1-2. 建物の維持管理費などが不要
アパートやマンションのオーナーとなる場合、多額の初期投資をして建物を建設し、設備機器を整え、広告費を使って広告を出す必要が有ります。このような初期投資だけでも大変な金額ですが、それだけでなくさらに建物の維持管理費も必要になります。
建物の維持管理費はとても多岐に渡ります。各種保険の代金や、修繕費、廊下部分などの光熱費など、本当に多くの費用がかかります。
土地を貸した場合、それらは全て必要ありません。毎月お金の計算をしなくて良いので、余計な心配をしなくて済みます。
1-3. 空室のリスクがない
土地を貸す時には、もちろんアパートやマンションの経営をしているのではありませんから、空室となりその部屋の賃料が入ってこないことを気にする必要はありません。
アパート・マンション経営で一番避けたい入居者が集まらないという事態を経験しなくて良いのです。収支計画を立てる際は、ある程度の空室は計算に入れますが、予想を上回る空室率となった場合、ローンの返済にも支障をきたす可能性があります。
1-4. 長期間の安定収入となる
土地を貸して地代を得る場合、一般的に契約は長期契約となります。借地借家法によると、定期借地権によって契約をした場合、一般的な契約では50年以上と期間が定められています。事業用の定期借地権を利用して契約した場合でも、10年以上と定められおり、ニーズに応じてどの契約にするかを決めることになります。
50年間安定した収入を得ることも簡単にできるのです。
1-5. 建物が建つと固定資産税が軽減される
所有する土地には毎年、固定資産税がかかります。また、都市計画法は市街化区域を定めていますが、その市街化区域内にある土地には、毎年土地計画税がかかります。毎年かかる固定資産税額は、その土地の課税標準額に税率の1.4%を乗じたものとなります。都市計画税は税率が0.3%であることが一般的です。
両方合わせると少なくない額の支払いが必要となることがわかります。
しかし、その固定資産税と都市計画税が大幅に減免される条件が存在します。それは、住宅やアパート・マンションなどを建設し、居住用に利用することです。敷地面積を住宅数で除すると一戸あたり敷地面積を求めることができますが、これの200㎡以下の部分は、固定資産税の課税標準額は元の額と比べて六分の一に、都市計画税は三分の一にまで下がります。
200㎡を超える部分は、固定資産税は三分の一となり、都市計画税は三分の二となるので、必要となる固定資産税と都市計画税が大幅に減ります。アパートやマンションの場合は、200㎡を超えることはおそらくないと思われますので、大幅な減税が期待できます。
1-6. 土地の管理をしてもらえる
土地を自分で管理することは多大な労力を必要とします。土地を管理する場合、自分一人で全ての管理を適切に行う必要があります。土地を貸した場合、それを自分で行う必要はありません。所有権はもちろん持ったまま、土地を適切に管理し続けてもらえるので、面倒な手続きや管理に手を煩わされることがありません。
2. 土地を貸すデメリット
土地を貸すことにはどのようなデメリットがあるのでしょうか。土地を貸すことにはメリットがある一方で、デメリットも存在します。メリットとデメリット両方をよく精査して、ご自身にあった方法を選択することが必要です。では土地を貸すことのデメリットについて詳しく見ていきましょう。
2-1. 契約期間中は土地を自由にできない
土地を貸す契約をしている期間は、土地を自分の自由に利用することができません。例えば、土地を貸す契約をしている期間中に、子どもや孫が土地を使って家を建てるなどということはできません。
定期借地権を利用して土地を貸す場合、期限がはっきりと決まっているので、途中で解約する手続きが難しくなります。そのため、土地を貸す契約を50年間で結んだ場合、10年が経過した時に土地を好きに使いたいと考えても、それは簡単にはできません。
2-2. 基本的に長期間となる
土地を定期借地権によって貸した場合、基本的にその契約は長期間となります。定期借地権で土地を貸す契約を結ぶと、10年間や50年間にわたって契約が有効となります。このため、長期的な視野で考えて判断をしなければなりませんが、そんなに先のことを考えるのは難しい場合が多いです。
2-3. 次世代のことも考えて検討する
土地を貸す場合、前項で述べたように長期間にわたって土地を貸し、貸している期間中地代を得るということになります。長期間の契約であるため、子どもが土地を受け継いだ場合に、自分で店を始める、または自力でアパートを運営したいと考えても、契約期間が終わるまでは使用方法を変更することが難しくなります。
土地に対する自由度が下がるので、相続税が減るとはいえ、子どもが自由に土地を使いたいという意識を持っているかどうかは確認をしておいた方が良いでしょう。
3. 借主が建物を建てる前提で貸す場合の借地料
土地を貸す契約をすると、借主はその土地を目的に応じて利用します。土地を貸す場合、どのような方法で土地を利用してもらうことになるでしょうか。それは、大きく二つの用途に分かれます。
借主が建物を建てる場合と、借主が建物を建てない場合です。まず借主が建物を建てる前提で貸す場合、どのようなケースがあり、どこがポイントとなるのかを見ていきましょう。
3-1. 借地権は長期間になることを理解しておく
建物を建てる前提で土地を貸す場合には、借地借家法の2条によって、借地借家法の対象となります。つまり、借主は借地権を利用して土地を借りることになります。借主が建物を建てる前提で土地を貸す場合、借地権での契約となるため必然的に長期間の契約となります。
3-2. 建物が建てられる土地か確認しておく
建物が建てられない土地を、建物が建てられるとして貸すことはできません。土地が市街化調整区域に指定されている場合、建物を建設することが難しいので注意が必要です。市街化調整区域とは、都市計画区域の中において、市街化を抑制すべきだと定められた区域です。開発・建設が制限されているので注意が必要です。
隣接する土地との境界がはっきりしていることも重要です。建築確認申請の際に土地の形状などが影響をする場合があります。また、電気、ガス、水道などが利用できる土地であることも確認しましょう。
建築基準法には、建築用の敷地にはいくつも制限が設けられています。例えば接道義務では、幅員4m以上の道路に2m以上接する必要があります。これらの基準に合致しているかどうかを把握しておくとトラブルを回避することにつながります。
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3-3. 必ず定期借地権とする
旧借地法による借地権しか利用できなかった頃は、土地の賃借契約が更新されていくために、土地を借主から返してもらえないという事態が多く発生していました。
また、過去地価が上昇した時に、地代がそれに伴って上昇せず、結果として土地の評価に見合う地代が得られないということがよくありました。旧借地法は、貸主が契約の更新を拒否することが難しいものでした。
しかし新しく借地借家法が定められ、土地が確実に返還される契約を結ぶことができるようになりました。
平成4年8月に施工された借地借家法によって定められた定期借地権を利用して土地を貸した場合、契約の更新が発生しないので、確実に土地の返還を受けることができるなど、貸主に有利な内容で契約を結ぶことができます。
また、建物を借主が建てた場合、借主が更地にして返還する義務を負うので、貸主は返却後はすぐに土地の運用をすることができます。
3-4. 住宅用として貸すケース
住宅用に土地を貸す場合には、固定資産税の節税が見込めます。また市街化区域内の土地においては都市計画税の節税も見込めます。地域によっては住宅地はとても需要が高いので、一般的な土地の有効活用方法となっています。
店舗を構える場合には、大通りに面しているかどうか、また交通量が多いかどうかが重要となります。しかし、土地が大きな道路に面していない場合や人・車通りの少ない場所でも、住宅地としては魅力的です。
3-4-1. 戸建用
1戸建てを要望される方は、長く住みたいと考えている方が多いので、比較的長期の契約が見込めます。また、要望される場所も閑静な環境や賑やかな環境など、住む方には色々な志向がありますので、戸建て住宅用に貸し出すことは借主を探しやすいというメリットがあります。
日当たりが良い、あるいは角地など条件が良いと地代収入も多く見込めます。また、事業用に土地を貸した場合、その事業がうまくいかなければ契約が終了してしまいますが、住宅ではそのようなことが起こりません。
但し、広い土地をお持ちの場合は、分筆をする必要もあり、戸建て用地にはあまり適しません。他の方法を考えると良いでしょう。
3-4-2. 集合住宅用
集合住宅用に土地を貸す場合は、どうでしょうか。集合住宅を建設することができる土地の場合、確実に、土地を貸す契約は長期になります。集合住宅の建設には、必要な条件が多いものの、その分収益が出ると判断されれば、安定した収入となる可能性があります。
3-4-3. 高齢者向け集合住宅
土地を高齢者向け集合住宅用に貸すことは、国が補助金を出していることもあり、今がチャンスかもしれません。高齢者向けでない集合住宅と比較して、高齢者向けの集合住宅では、交通の便が良いことやスーパーマーケットなど商業施設が近くにあることが重要視されません。利便性がそこまで高くなくても、バリアフリーな構造が可能で、診療所など各種設備が供えられる土地であれば、高齢者向け集合住宅が建てられます。
3-5. 店舗用として貸すケース
店舗用とすることを前提にすると、様々な業種で土地を適した用途に使用することが考えられます。自分で建物を建てて事業を行う場合、多額の初期投資が必要ですが、土地を貸した場合その必要がありません。
事業用定期借地権を利用して土地を貸した場合は、契約期間が10年以上50年未満となっています。また、店舗用の建物は20年以上の償却期間が設定できるので、土地を借りた事業者が、長期間にわたって利用するための建物を建設することができます。
4. 借主が建物を建てない前提で貸す場合の借地料
将来的な土地の活用が決まっていない、あるいは決められない場合は、建物を建てない前提で土地を貸すようにされると良いでしょう。建物を建てない前提で土地を貸す場合には、どのようなことがポイントとなってくるかを見てみましょう。
4-1. 建物が建てられない契約をする
建物を建てない前提で土地を貸したのに、建物を建てられてしまったらどうなるでしょうか。一度建物が立つと、土地に借地権が発生して、借主が土地を引き続いて利用する権利を得てしまいます。そうすると、貸主の不利益になることがあります。
そのような事態を防ぐには、建物の建設が不可能であるような契約を締結しておくことが必要です。
4-2. 駐車場として貸すケース
駐車場として貸すのは、ご自身で駐車場の経営をするのが難しい場合が多いです。コインパーキングなどの設置から経営までを請け負う会社がありますので、一括して依頼することが可能です。
ご自分で経営することに比べると収入は減りますが、その分、何もしないで収入だけを得ることができます。マーケティングなどの知識がなくてもできることと、契約の解除が行いやすい点がメリットとなります。
4-3. 資材置き場として貸すケース
資材置き場として土地を貸す場合は、どのような土地でも、また整っていない土地でも、有効に活用することができます。建物が建てられないので活用を諦めていた土地でも、資材置き場としてならば利用ができます。
4-4. 太陽光発電用に貸すケース
太陽光発電用地として貸す場合には、まず何よりも陽当たりが大切となってきます。一日中、日照を遮るものが少なく安定して陽当たりが良い土地は、住宅や事業用には適さない場合でも、太陽光発電用地には最適です。
かえって田舎の方が土地も安く、日照を遮るものがないので有利になります。太陽光発電の設備の耐用年数は20年程度と言われていますので、最低でも20年くらいは安定した収入が見込めます。
5. 土地を貸した時の借地料の相場
では実際に土地を貸した場合に得られる収入、借地料はどのように決められるのでしょうか。土地を貸せば安定的な地代収入が得られますが、その安定的な収入は具体的にどのくらいなのかについて、土地所有者は知る必要があります。
では、借地料は実際にどのように決められているのかを見ていきましょう。
5-1. 地代は地域や利用の仕方で変わる
地代は、土地のある地域や土地の利用のされ方など、さまざまな要素が絡み合って決定されます。そのため固定資産税額とも関連があります。
地代を計算するには方法がいくつかありますので、具体的に見ていきましょう。
5-2. 借主の得られる利益によって地代を決める
地代はどのように決められるのでしょうか。それを知るには、国土交通省の不動産鑑定評価基準が非常に参考になります。
土地の地代は、土地の評価額や、その土地から見込まれる収益によって決定されます。借主が得られることが見込まれる収益は、周辺環境も含めて、これまでの経験から判断されます。それによって、地代が総合的に決定されるのです。
それでは実際に地代を決める方法を、今から見ていきましょう。
5-2-1. 積算法による算出
積算法によって地代を求めるには、まず土地の更地価格に期待される利回りを乗じ、それに必要経費を加えます。土地の更地価格は、建物がない状態でのその土地の評価価格です。期待利回りは、土地を取得した金額と、その土地から見込まれる収益との関係で決められます。
どのような場合に積算法で地代を算出できるのでしょうか。それは、その土地の更地価格や、期待される利回り、そして必要経費を、確実に算出できる場合です。そうでない場合は、別の算出方法が有効となります。
5-2-2. 賃貸事例比較法による算出
賃貸事例比較法は、その名の通り、他の物件の地代を参考にして地代を決定する方法です。賃貸事例比較法を用いる条件としては、過去や現在に、当該の土地に似ている条件の土地に対する地代の資料が複数手に入ることが挙げられます。
また、手に入れた地代の情報は、それが過去のものであれば修正をする必要があります。よく似た状態の地代に関する情報が得られない場合は、賃貸事例算出法は利用できません。
5-2-3. 収益分析法による算出
収益分析法は、店舗として利用するなど、事業用に土地を利用する場合に適した地代の計算方法です。その土地を使って行われる企業経営の結果、生み出されることが期待される純利益が基本となります。この純利益から算出された収益純賃料に、賃貸借時の必要諸経費を加えると地代が求められます。
企業が事業を行う前提条件が必要となることに注意が必要です。
5-3. 公租公課の一定率
固定資産税額を元にして公租公課の一定率を利用した地代の算出方法は、計算が比較的理解しやすいため、広く参考にされています。
では公租公課の一定率を利用して、実際にどのように地代を算出するのかを見ていきましょう。
5-3-1. 固定資産税+都市計画税の2~4倍程度
固定資産税と都市計画税を合計した額に一定の倍率を乗じて、地代を算出します。そのため、土地を持つ人が自分で簡単に計算をして見ることができます。一般的に、固定資産税と都市計画税を加えた額の2〜4倍の範囲が年間地代の目安となります。
5-4. 路線価から算出した更地価格の1.5~3.0%
路線価から算出した更地価格を利用して求める方法も、地代の目安としてとてもよく参考にされています。路線価から更地価格を算出するにはどうしたら良いでしょうか。これは、国税庁の発表する路線価図で調べることができます。路線価格に、0.8を掛けたものが更地価格の目安となります。
しかし、道路への接合状況や、土地の形状、間口や奥行き、土地の規模などによっても修正されますので、プロに依頼をした方が間違いない金額を把握することができるでしょう。
路線価格については、国税庁ホームページで確認することができます。
国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表
5-5. 太陽光発電用の土地は年間150円~500円/㎡
太陽光発電用の土地は、1㎡あたり、年間で150円から500円とすることが多いようです。主に収益額から算出した価格ですので、そのくらいの収益が見込める土地かで価格が変動します。
その地域の電力の買い取り価格や借主が建設する太陽光発電設備などにも影響されます。
6. 土地を貸して得られる借地料の相場 まとめ
土地を貸す目的は地代収入を得ることですが、いかに安定して高く貸せるかが気になるところです。地代の算出方法をいくつかお知らせしましたが、いくらで貸せるかは借主の運用方法によるところも大きいです。
借主と協力して収益が高くなる方法を模索するとご自身のプラスにもつながりそうです。
良い方法が見つかることを願っております。