農地を相続した時の6つの注意点

農地の相続は、普通の土地と比べると面倒なことも多いです。特に農家でなければ、農地を農地のまま利用することは難しく、利用方法に悩まされる人も多くなります。

利用できないからと放置していては、固定資産税の増税の対象となってしまうこともあり、所有者の負担も増えていくばかりです。

今回は、農地を相続した時の注意点をまとめました。農地を相続して困っている人はもちろん、今後農地を相続する可能性がある人も、農地の相続後の手続きや、その後の活用方法について、ここで確認していきましょう。

1. 相続でも農地取得の届け出が必要

通常、農地は農家でなければ所有できません。しかし、相続による取得であれば、農家でなくても農地を所有することができます。

相続により農地を所有することになった場合、たとえ農業を行わないとしても、自治体の農業委員会へ農地取得の届け出を行わなければなりません。これは、農地の権利を明確にすることで、農業委員会からの管理が適切に行われるようにし、しっかりと農地を活用されていくために必要とされています。

農業委員会への届け出は、相続してから10ヵ月以内に行わなければならず、きちんと届け出なければ罰則として10万円以下の過料が課せられます。届け出に期限が設けられているのは、相続により農地が放置され耕作放棄地となることを防ぐためでもあります。

届け出に必要なものは基本的に以下の3つがあります。自治体によって必要なものも違う場合があるので、実際の届け出の際には農業委員会へ確認してください。

1-1. 農地法第3条の3第1項の規定による届出書

届け出の手続きで最も重要な書類です。農業委員会の窓口で受け取れる他、自治体のホームページなどからダウンロードすることも可能です。農地法第3条の3第1項の規定により、届出書に記載する内容は以下の6つです。

  1. 権利を取得した者の氏名と住所
  2. 届出に係る土地の所在等(所在、地番、地目(登記簿と現状)、面積など)
  3. 権利を取得した日
  4. 権利を取得した事由
  5. 取得した権利の種類及び内容
  6. 農業委員会によるあっせん等の希望の有無

地番や地目、面積などは、法務局やインターネットから登記事項証明書を取得し、正確な情報を確認する必要があります。相続した農地を利用していくことが難しく、貸し出しや売却に関して農業委員会からのあっせんが必要であれば、届出書でそれを希望することもできます。

1-2. 農地取得者の印鑑

農地取得者の印鑑も用意しておきましょう。本人による申請で自署の場合は印鑑不要という場合も多いですが、万が一に備えて用意しておくと安心です。印鑑を持参しない場合は、本人確認のための書類(運転免許証や健康保険証など)も用意しておきましょう。

1-3. 相続を確認できる書類

相続による取得であることを確認するために、相続を確認できる書類が必要になります。具体的には、遺産分割協議書や相続登記済みの登記事項証明書の写しなどです。該当する書類の詳細については、農業委員会へ確認してください。

2. 農家以外が農地を取得した場合の問題点

法律上、農家でなければ農地は所有できません。そのため、農家以外の人が農地を購入することは、基本的にできなくなっています。このような制度の中で、農家以外の人が農地を取得する可能性があるのは、相続くらいです。

相続であれば、農家以外の人でも農地を取得することができます。相続による農地の取得を禁止してしまうと、相続権の侵害にあたるので、農家以外の人でも相続による取得であれば農地を所有できるようになっています。

しかし、その後の農地の利用には問題もあります。何度も確認している通り、農家以外が農地を所有することができないので、売却などを検討する際にも、農家を対象として探さなければなりません。また、農地として売却したり貸し出したりする場合であっても、自分たちの意志だけでは進められず、農業委員会の許可が必要となります。

また、農地を相続した人が農家ではないからといって、その農地が自由に使える訳ではありません。たとえ農家以外の人が農地を所有することになっても、農地は原則農業以外の目的で使用することができないのです。つまり、相続した人が農業を行わないのであれば、使い道のない土地を所有しているということになります。

農地をそのまま放置しておくと、次第に雑草が生えはじめ、害虫などが集まり、農地としての質が低下し、耕作放棄地へとなっていきます。農地を所有する個人にとっては、使わない土地のために税金を支払うことになるマイナス面に加え、固定資産税の増税というリスクもあります。

また、社会全体とっても、耕作放棄地が増えて様々な問題を引き起こす原因となってしまいます。

3. 相続した農地の転用が可能かどうか確認する

原則、農業以外には利用できない農地ですが、一部の農地は、農業委員会の許可がとれれば転用することができます。相続により農地を取得したものの農業をする予定がなく、農地の転用を検討している人は、農業委員会へ行き、農地の転用が可能かどうかを確認しましょう。

3-1. 農地の地域によって扱いが変わる

農地の転用ができるかどうかは、その農地のある地域によって扱いがかわります。具体的には、立地条件に応じて5種類に分類され、それぞれの種類によって転用のしやすさが異なります。

開発行為が制限されている地域(市街化調整区域)や、農業を促進する地域にある農地であれば、転用の許可をとるのは難しいでしょう。反対に、都市化を図る地域(市街化区域)にある農地は、比較的簡単に転用できるようになっています。全ての農地で転用が許可されていないのは、農業の維持や食糧生産の安定を図るためです。

立地条件による農地の分類は、以下にまとめました。まずは、相続した農地がどの地域にあるのかを確認しましょう。実際に確認する方法としては、農業委員会に問い合わせる方法が最も早くて確実です。

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3-2. 農用地区域内農地

農用地区域とは、今後農地として利用していくために確保すべき土地として認定されている区域です。農業振興地域の整備に関する法律(農振法)に基づき、自治体が定める農業振興地域整備計画により認定されています。一部例外もありますが、20ha以上の集団的農地などが対象となります。

農用地区域内にある農地は、農地として維持していく優先度が高く、原則転用はできません。例外として、自治体が定める農用地利用計画において、農業用施設などの指定された用途のための転用であれば認められています。実際に宅地などに転用するとなると、許可をとるのが非常に難しく、農用地区域からの除外や用途変更などの手続きも必要になります。

3-3. 甲種農地

甲種農地とは、市街化調整区域内にある農地で、その中でも特に、8年以内に農業公共投資(土地改良事業など)の対象となった、特に良好な営農条件を備えている農地を指します。高性能な機械による営農が可能であることなどが、特に良好な営農条件にあたります。

農地としての生産性も高く、維持していくべき農地としての優先度も高いので、原則転用はできません。しかし、道路や公共施設の建設など、土地収用法の認定を受け、告示を行った事業のための転用は、例外として認められています。

3-4. 第1種農地

第1種農地とは、10ha以上の集団農地で、土地改良事業など農業公共投資の対象となった、特に良好な営農条件を備えている農地です。第1種農地の条件を満たす農地であっても、この後に説明している第2種農地や第3種農地の条件も同時に満たす場合には、そちらが優先され第1種農地ではなくなります。

甲種農地と分類の条件が似ていますが、甲種農地は、第2種農地や第3種農地の条件を満たしていても甲種農地として扱われるので、第1種農地の方が農地確保の優先度が低いことが分かります。

それでも、質の高い農地として認められているので、原則転用はできませんが、土地収用法の対象事業(道路や公共施設などの建設)など、公共性の高い事業のための転用であれば許可されます。

3-5. 第2種農地

第2種農地とは、鉄道の駅が500m以内にあるなど、今後、市街地化していくことが考えられる地域にある農地や、生産性の低い小集団の農地を指します。これまで説明した3種類の農地と比べると、農地確保の優先度は低くなっています。

転用後の事業が、周辺の土地や第3種農地で行えない場合にのみ、転用が許可されています。条件付きではありますが、許可の条件を満たしていれば転用は難しくありません。

3-6. 第3種農地

第3種農地とは、鉄道の駅が300m以内にあるなど、既に市街地となっている地域や市街地化の傾向が著しい地域にある農地を指します。農地確保の優先度が最も低く、転用は原則許可されます。

特に、優先的に市街化を図るべき地域に認定される市街化区域内の農地であれば、農業委員会への許可申請ではなく、届け出で転用できます。

4. 農地として活用する

農地を活用していく方法として最もシンプルなものが、そのまま農地として利用するというものです。特に、転用ができない農地の場合は、農地として使う以外に方法はありません。
そのまま農地として利用する場合に考えられる方法は、主に3つあります。

4-1. 農家に貸す

まず、農家に貸すという方法があります。利用したいという農家がいるのであれば、この方法が確実です。当てがない場合でも、隣接する農地を所有する農家が借りてくれる可能性もあります。

たとえ農地として貸す場合でも、農業委員会の許可は必要です。民法では、賃貸借は20年が上限とされていますが、農地の場合は50年まで可能です。無償で貸すとしても農業委員会の許可をとらなければならず、賃貸借契約を解除する時にも同様に許可が必要になります。

4-2. 農地バンクを使う

農地バンクとは、農地を貸したい(売りたい)人と、借りたい(買いたい)人とを繋げるサービスのことです。農地集積バンクとも呼ばれ、各都道府県に設置された農地中間管理機構が運営しています。農地を利用してくれる農家を自力で見つけることが難しければ、農地バンクの利用を検討してみるのも良いでしょう。

農地バンクでは、農地中間管理機構が利用者を探してくれ、利用者が見つかれば賃料や協力金を得ることができます。一方で、農地バンクを利用するためには、ある程度の広さが求められており、利用者を選ぶことができないので誰が利用するか分からないという不安もあります。

実際に利用する際には、自治体の担当部署や農業委員会、JAなどから問い合わせが可能です。窓口で貸付希望の申し出を行うと、農地バンクを利用できる農地かどうかの調査や農地の現状確認が行われます。

利用できる場合、貸付期間や賃料などについての希望の確認が行われ、利用者の公募を待つことになります。公募により、利用希望者が現れると貸付条件などの確認と交渉が行われ、その後、農地中間管理機構を通して貸し出されます。

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4-2. 農家に売る

農家に貸し出すだけではなく、売るという方法もあります。利用したいという農家がいて、今後農地を利用する予定がなく、手放したいというのであれば、売却が最善の方法でしょう。

売却の際も、貸す時と同様に農業委員会の許可が必要です。この時、購入する農家について、購入する農地も含め一定の面積以上の農地を所有していることが条件とされています。また、購入後、農地がきちんと利用されるかどうか、利用の計画を問われることもあります。

このように、売却の場合は、農家の中でも、売却の条件を満たしている農家を探さなければなりません。特に新たに農業を始めようとしている人への売却は、既に農業を営んでいる農家への売却以上に大変なことも多いです。

4-3. 市民農園にする

賃貸借でも売却でもない方法として、市民農園にするという方法があります。

市民農園とは、主に都市部に住む人が、レクリエーションや体験学習、生涯学習の一環として利用する農園のことです。ヨーロッパなどでは古くから利用されていた仕組みで、近年、日本でも市民農園の利用が広がっています。都市部に近い場所に立地する農地であれば、市民農園として十分に活用できる可能性が高いです。

 

5. 農地転用してから活用する

相続した農地を活用する場合、農地転用後の活用を検討する人が多いです。転用が可能な農地であれば、許可申請(届け出)の手続きを行い、普通の土地として利用できます。

元農地なので、活用方法によっては整地や地盤改良工事、土盛・土留などが必要になることもありますが、農地のまま活用していくよりも選択肢は広く、自由度も高いです。

5-1. 貸して地代を得る

転用後は農地として貸し出す訳ではないので、地域の規制の範囲内であれば、自由に利用方法を選ぶことができます。

公道などに隣接する農地であれば、水道や電気、ガスなどが引きこみやすいので、個人向けの住宅用地として利用できるでしょう。広い農地であれば、分筆して貸し出すこともできますし、高齢者向け住宅地や賃貸住宅用地として貸し出すこともできます。他にも、企業の店舗や事務所用、駐車場や資材置き場としての貸し出しも可能です。

様々な形で貸して活用していくためには、それに合った立地条件かどうかも影響してきますが、農地として貸し出すよりも自由度が高い分、様々な選択肢を検討することができます。

5-2. 自分で使う

貸し出さず自己活用することも、十分可能です。

農地を転用し自宅を建てるというケースは多いです。立地によっては、水道や電気、ガスの引きこみが大変になってしまうことはあります。許可が下りれば、事務所や駐車場、資材置き場としての利用も可能です。

また、転用後の活用方法として注目されているのが、太陽光発電です。日当たりが良いという元農地ならではの利点を活かした活用方法として注目を集めています。初期投資にかなりの費用がかかり、その回収にも時間がかかりますが、長い目で見ると有効な選択肢になるでしょう。

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6. 農地転用を前提にして売る

農地を手放したいというのであれば、転用を前提にして土地を売却することができます。もちろん、転用が可能な農地であることが条件です。

この場合、買主とは農地の転用を前提にした契約を結ぶことになります。また、農地転用の許可申請(届け出)は、売主と買主とで行う必要があります。

6-1. 農地転用には転用後の計画が必要

農地の転用には、転用後の計画が必要になります。目的のない農地転用はできないのです。つまり、とりあえず売りに出したいから転用したい、転用後に活用方法を考えるというようなやり方では、転用の許可をとることはできません。

転用を前提とした売却の場合も、許可の際には買主の購入後の事業計画や資金計画の確認が行われます。住宅を建てる場合は、住宅ローンの融資証明や建設許可の確認ができているかなど、厳しくチェックされます。事業を行う場合も、融資証明や講座の残高証明など、資金の裏付けも必要となります。

7. まとめ

農地の相続は、普通の土地の相続と比べると、届け出が必要であったり、利用に制限があったりと面倒な点も多いです。さらに、扱いに困り手を付けずにいると、罰則の対象となったり、固定資産税が増えてしまったりとマイナスな面も大きいです。

農地を相続した場合には、届け出を済ませた後、農地の分類や立地などの条件を考慮し、最善の方法を考えていきましょう。最も利益を上げることができる方法を探すことも良いですが、損が少ない方法や安定して長く続けていける方法を探すことも大切です。

また、農地を相続する可能性がある場合は、相続が決まる前に、転用や売却ができないか検討しておくことも重要です。