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Category  土地活用

2018年07月31日 更新

地盤調査方法の6つの種類とメリット・デメリットまとめ

地盤調査は、法律で義務化されています。特に、住宅を建てる際には、法律を守るためだけではなく、自分たちの暮らしや住宅自体を守るためにも、きちんと地盤調査を行い、必要に応じで地盤改良工事を行わなければなりません。

しかし、実際に住宅を建てる際、何も知らない状態で地盤調査と言われても、分からないことが多いです。そこで今回は、普段なじみのない地盤調査について、その種類やそれぞれの特徴、メリットやデメリットについて確認していきます。

1. 地盤調査(地耐力調査)は法律で義務化されている

2000年、建築基準法の改正に伴い、建物の基礎の構造は、地盤の長期許容応力度に応じて種類を選ぶよう定められました。地盤の長期許容応力度を確かめるためには、地盤調査(地耐力調査)を行う必要があるので、この改正に伴い、地盤調査(地耐力調査)が実質的に法律で義務付けられたということになります。

また、2009年10月にスタートした瑕疵担保履行法では、事業者に対し瑕疵担保保険の加入が義務付けられるようになりました。この保険に加入するためには、対象の住宅が保険法人の定める設計施工基準を満たしている必要があり、設計施工基準とは建築基準法に基づくものなので、こちらも実質的に地盤調査(地耐力調査)が義務付けられていることになります。

2. 地盤調査方法の6つの種類

地盤調査の方法は、いくつか種類があります。一般的に地盤調査の方法として有名なものは、スウェーデン式サウンディング試験やボーリング標準貫入試験などがあります。今回は、代表的な6つの方法について見ていきます。

①スウェーデン式サウンディング試験

スウェーデン式サウンディング試験とは、名前の通りスウェーデンで最初に導入された調査方法です。地層構成の概略の把握や、換算N値(土地の硬さや締まりを表す単位)の推定、地耐力測定に用いられます。

ロッドと呼ばれる鉄の棒にスクリューポイントと呼ばれるドリルをつけた機械が使用されます。この機械を地中に貫入し、そのときのドリルの回転数やおもりの重さで地盤の強さが判断されます。

地盤調査の方法の中で最も調査費用が安く、5か所程度の調査であれば、半日~1日程度で済みます。既存の建物があっても調査ができ、この手軽さから、一般的な戸建て住宅の地盤調査方法として、広く用いられている方法です。

ドリルの貫入が困難な地盤は調査することができません。調査できる深さは約10mとなっています。調査条件が設けられていることもありますが、液状化の判定も可能です。

②ボーリング標準貫入試験

ボーリング標準貫入試験は、地面に8cmくらいのボーリング孔をあけ、サンプラーと言われる鉄の筒を打ち込んで調査されます。サンプラーを打ち込むために、何回打ったかによって地盤の強さが判断されます。

ボーリング標準貫入試験は、これまで多くの地盤調査に用いられてきた方法なので、実績や調査結果も豊富で、信頼性も高いです。土壌の状態も分かるので、地質調査や液状化の判定も可能です。

10m以深の部分の調査もできます。その分、調査費用は高く、調査期間も長くなります。調査には広いスペースが必要になるので、大型の建物の地盤調査に向いています。

③平板載荷試験

平板載荷試験は、地盤に直接荷重をかけて地盤の強さを調べる方法です。建物の基礎となる部分まで掘り、そこに板を設置します。その板に対し実際の建物と同じくらいの荷重をかけ、板がどれくらい沈むかを見て、地盤の強さが判断されます。プレハブ小屋などの簡易建物や擁壁などの地盤調査に採用されることが多い方法です。

調査費用は、調査するポイントの数や使用する重機によって変動しますが、一般的にはスウェーデン式サウンディング試験より高く、ボーリング標準貫入試験よりも安いです。比較的短期間で調査を終えることもできます。荷重をかけるのには重機が用いられるので、重機が通れるくらいのスペースがないと調査できません。

④ポータブルコーン貫入試験

ポータブルコーン貫入試験とは、人力でコーンを貫入させて地盤の強さを調べる方法です。使用する機械の違いから、単管式と二重管式の2種類があります。貫入の際の抵抗度合い(貫入抵抗)をもとに、地盤の強さが判断されます。

この方法は、粘性土や腐植土といった軟弱な地盤の調査に用いられる方法です。戸建て住宅の地盤調査に使われることもありますが、一般的には建設機械のトラフィカビリティー(走行に必要な地盤の強度)の判定に使われることが多いです。

人力で行うので、固い地盤の調査は難しく、3~5m程度の深さまでしか測定することはできません。調査期間は極めて短く、1か所の調査に数分、複数個所の調査でも半日程度で終わるでしょう。調査するポイントが増えると、その分費用も高くなります。

⑤オートマチック・ラム・サウンディング試験

オートマチック・ラム・サウンディング試験も、スウェーデンで開発された調査方法です。先端角90°のコーンを自動連続貫入装置にて貫入し、貫入に必要な打撃回数をもとに地盤の強さを測定します。

調査結果は、ボーリング標準貫入試験とほぼ同等の結果が得られると言われています。調査費用は、ボーリング標準貫入試験と比べると安いです。スウェーデン式サウンディング試験が調査できない20~30mの深さまで調査ができ、小型の機械なのでボーリング標準貫入試験のように広いスペースも必要ありません。自走式の機械なので調査期間も短時間で済みます。

機械の仕組み上、高低差の大きい現場での測定作業が難しく、ボーリング標準貫入試験のように土壌を採取することはできません。

⑥レイリー波探査(表面波探査法)

レイリー波探査(表面波探査法)は、振動が伝わる範囲や速さによって地盤の強さを判断する方法です。調査には、振動を起こす起震器と、振動を捉える検出器の2つの装置が用いられます。

ドリルなどを貫入させる必要がないので、石が多いところや、コンクリートのところでも調査が可能です。広いスペースを必要とせず、短期間での調査が可能なので、比較的軽い戸建て住宅のような建物の地盤調査に適しています。調査費用はスウェーデン式サウンディング試験よりもやや高めです。

3. 種類別!地盤調査方法のメリット

6つの地盤調査の方法の概要をふまえ、それぞれの方法のメリットを見ていきましょう。6つそれぞれが、どのような場合の地盤調査に適しているのかは異なります。それぞれの調査方法の強みを知ることで、知識や選択の幅を広げましょう。

①スウェーデン式サウンディング試験のメリット

スウェーデン式サウンディング試験の大きなメリットは、調査作業が比較的簡単で、時間も短く、地盤調査の中では安い費用で調査ができるという点です。また、機械が小型なので、狭いところでも作業ができ、作業道具も持ち運びやすいところも特徴で、これまで多くの戸建て住宅の地盤調査で活躍してきました。

調査作業が簡単な分、1日で何箇所も調査ができ、地盤のデータを蓄積するのに向いているというメリットもあります。

②ボーリング標準貫入試験のメリット

ボーリング標準貫入試験は、これまで、たくさんの地盤調査に用いられてきた方法です。そのため、過去のデータがたくさん蓄積されており、調査結果の精度が高いことが最大のメリットです。土壌の採取もできるので、地質調査にも活用することができます。10m以上の深い層や、硬い層の調査ができるのも、ボーリング標準貫入試験の強みです。

世界基準で見ると、たくさんの国で基準化されている試験方法なので、調査結果の評価や対比しやすいというメリットもあります。ボーリング標準貫入試験によって得られる結果はN値と呼ばれ、様々な分野で地盤の安定性を図る基準となっているので、幅広い建物を対象に調査ができます。

③平板載荷試験のメリット

平板載荷試験は、地盤に直接荷重をかけて地盤の強さを測定できるところが、1番のメリットです。他のどの方法を用いても、地盤の強さを直接確認できる方法はありません。

また、基礎を設置する部分の調査には強く、調査結果からは沈下量、支持力、反力係数などを求めることができます。比較的短時間で調査を終えることができるので、地盤改良工事が終わった後、強度を確認するための試験方法としても使えます。

④ポータブルコーン貫入試験のメリット

ポータブルコーン貫入試験は、圧倒的な調査時間の短さがメリットです。小型な機械と人力による調査なので、小回りがきき、一度に複数のポイントを調査することも簡単です。調査結果からは、地層構成や土壌の厚さ、粘着力などを把握することができます。

費用も比較的安く、専用の機械のみのレンタルができるところもあり、専門の知識がある人であれば自力で行うことができる手軽さも強みです。

⑤オートマチック・ラム・サウンディング試験のメリット

オートマチック・ラム・サウンディング試験は、スウェーデン式サウンディング試験が貫入できない深いところまで調査ができるところがメリットです。ボーリング標準貫入試験のように、広い場所を必要としない機動力と、調査時間の短さや価格の安さもメリットになります。

また、オートマチック・ラム・サウンディング試験によって得られたNd値(土地の硬さや締まりを表す単位)は、ボーリング標準貫入試験によって得られるN値とほぼ同等の値になります。設計などに必要な値が、ボーリング標準貫入試験よりも手軽に簡単に求められるのもオートマチック・ラム・サウンディング試験のメリットです。

⑥レイリー波探査表面波探査法のメリット

これまでの方法は全て、掘ったり穴をあけたりと地盤の一部を壊すことが調査の大前提となっています。

しかし、レイリー波探査表面波探査法は、振動の伝わり方による調査なので、土壌を壊す必要がありません。また、地盤の状態に左右されず、コンクリートなどの硬いところでも、簡単に調査ができるのも大きなメリットです。

小型の機械による調査なので、スペースを問いません。調査にかかる時間も、比較的短くて済みます。

4. 種類別!地盤調査方法のデメリット

ここからは、6つの地盤調査方法のデメリットを確認していきます。調査方法によって、向いていないもの、調査できないものが出てきます。また、費用面や時間面での差もデメリットとして挙げられます。

①スウェーデン式サウンディング試験のデメリット

スウェーデン式サウンディング試験のデメリットは、N値15以上の硬い土壌や10m以深の土壌は貫入が難しく調査ができないという点です。また、深くなればなるほど、機械の性質上、摩擦の抵抗が大きくなり、調査結果に影響が出てしまうことがあります。

レキ質の盛り土などがある場合も、正確なデータをとることが難しく、地盤改良工事が必要と判断されやすくなります。また、土壌の採取はできないので、推定の地質判定しかできません。

②ボーリング標準貫入試験のデメリット

ボーリング標準貫入試験は、大規模な調査になるので、時間や費用かかってしまうことが最大のデメリットです。作業のために、広いスペースが必要になるので、戸建て住宅にはあまり適していません。

また、調査するポイントが少ないと、地層の横の広がりや平面的な分布の把握が難しくなります。より正確に、確実な調査を求めると、更に時間がかかってしまいます。

③平板載荷試験のデメリット

平板載荷試験は、深い部分の地盤調査には不向きというデメリットがあります。平板載荷試験では、設置した板に荷重をかけて測定します。この板が小さいと、調査する面より深い部分に、軟弱層があったとしても、それを見抜けないことがあるのです。

また、もともと硬いレキ層は、平板載荷試験を用いた調査では、支持力などが過大評価されてしまうこともあります。他にも、複数個所調査をしなければ、地層の勾配を読み解くことも難しいというデメリットもあります。

④ポータブルコーン貫入試験のデメリット

ポータブルコーン貫入試験は、粘性土や腐植土などの軟弱な地盤の調査にしか活用できないというデメリットがあります。もともと軟弱な地盤の調査用に作られたものなので、一般的な地盤をポータブルコーン貫入試験で調査すると、他の調査結果と比べデータが大きくなり、信ぴょう性にかけてしまいます。

また、人力で行うものなので調査できる深さも3~5mと浅く、広大な土地や重量のある建物の地盤調査には向いていません。

⑤オートマチック・ラム・サウンディング試験のデメリット

オートマチック・ラム・サウンディング試験は、高低差の大きい現場での作業が困難というデメリットがあります。また、ボーリング標準貫入試験のように土壌の採取ができないので、実際の調査では、周辺の地質のデータを参考にしなければなりません。

また、ボーリング標準貫入試験ほど広いスペースが必要ないことがメリットではありますが、調査する地盤によっては使用する機材が大型になり、調査の期間が長くなることもあります。スウェーデン式サウンディング試験と比べると、費用もやや高めです。

⑥レイリー波探査(表面波探査法)のデメリット

レイリー波探査(表面波探査法)は、深い部分の調査精度が低いというデメリットがあります。特に、地表近くに分厚い軟弱層がある場合には、振動が深部まで届かず、正確なデータがとれなくなることがあります。そのため、重い建物の地盤調査には不向きです。

また、調査の際、基礎や骨組みなどが邪魔をすることや、交通振動などに影響されることもあります。費用もやや高めで、スウェーデン式サウンディング試験に比べると扱っている業者が少ないというデメリットもあります。

5. 地盤調査報告書のデータ改ざん防止

地盤調査を請け負う業者の中には、地盤調査の結果を改ざんする悪質な業者も存在します。このような悪徳業者の被害にあってしまうと、住宅を建てた後に建物が沈下したり、必要のない地盤改良工事を行うことになったりと、良いことがありません。依頼者がデータの改ざんを見つけることができれば良いですが、地盤調査の経験や知識がない人がほとんどなので、業者の言いなりになって進めてしまうというケースがほとんどです。

そこで、地盤調査報告書のデータ改ざんを防止するために、第三者機関に地盤調査を依頼している業者もあります。また、地盤改良工事が必要と判断された場合に、その工事が本当に必要かどうかを調査してくれる第三者機関も存在します。

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6. 地盤調査方法の6つの種類とメリット・デメリットまとめ

今回は、地盤改良のための地盤調査の種類と、それぞれの方法のメリット・デメリットを確認してきました。地盤調査は、日ごろから専門的に扱っている人でなければ分からないことが多いです。

依頼する業者の説明を聞いたり、質問したりすることも大事ですが、自分で調べある程度の知識を持っておくことも重要です。今後、地盤調査が必要になる人は、少しずつ知識を増やしていきましょう。また、地盤調査後には地盤改良工事が必要になる場合があります。詳細については「家を建てる際の地盤改良工事の3つの工法と選び方のポイント」こちもご確認ください。