耐震リフォーム費用の相場

日本はもともと地震が多い国ですが、1995(平成7)年の阪神・淡路大震災や2011(平成23)年の東北地方太平洋沖地震では多くの住宅が倒壊しています。

これらの大地震では、多くの方が倒壊した住宅に押しつぶされて亡くなったり、大ケガを負ったりしています。このような教訓から、大地震でも住宅が倒壊しないように耐震強度を上げるリフォームの重要性が叫ばれているのです。

しかし、いくら耐震リフォームが必要だとわかっていても、どれだけの費用がかかるのか気になるところです。

こちらでは、耐震リフォームの費用の相場と住宅の耐震基準、そして具体的な耐震リフォームの内容について説明致します。

1. 耐震リフォームの相場は100~150万円

木造住宅の耐震リフォームの場合、もっとも多い価格帯は100~150万円となっています。(参考:一般社団法人 日本建築防災協会ホームページ「木造住宅の耐震改修の費用」

この100~150万円という費用は、あくまでもっとも多い価格帯です。ですから、住宅が極端に老朽化していたり、1階と2階の広さが異なるなど特殊な形状の場合、150万円よりも高額となる可能性もあります。

いくら地震から自分自身や家族の身を守るためとはいえ、耐震リフォームに100万円以上もかかるとなると、負担が大きいと感じる方は多いのではないでしょうか?

この耐震リフォームの負担は、補助金や税額控除により減らすことができます。以下ではこれらの補助金や税額控除について、詳しく説明します。

 

1-1. 補助金

耐震リフォームと耐震診断(後ほど詳しく説明します)には、多くの自治体が補助金制度を設けています。特に耐震診断の補助金は、全国ほとんどの自治体が用意しています。

全国の自治体の耐震リフォームの補助金は、以下のサイトで調べることができます。

一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会 地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト

ただし、上記のサイトは耐震リフォームの補助金制度を完璧に掲載できているわけではありません。ここに掲載されていなくても、実際には補助金制度が設けられていることもあります。

ですから、耐震リフォームを検討しているなら、上記サイトでの調査だけでなく、お住まいの自治体に問い合わせることをお勧めします。

このように、耐震リフォームと耐震診断には、自治体による補助金制度が用意されていることがあります。ぜひ活用するようにしましょう。

 

1-2. 税額控除

耐震リフォームにかかった費用は、所得税の税額控除を受けることができます。具体的には、平成33年12月31日までに耐震リフォームを行った場合、標準的な耐震リフォーム費用の10%が所得税額から控除されます。

つまり、耐震リフォームは上記で説明した補助金とは別に、実質1割引きで行うことができると言えるのです。

ただし、補助金を受けている場合は、耐震リフォーム費用から補助金を差し引いた金額の10%となります。また、税額控除を受けることができるのは、最高25万円です。

なお、耐震リフォームの所得税の税額控除については、以下のサイトで詳しく紹介されています。

国税庁ホームページ 耐震改修工事をした場合(住宅耐震改修特別控除)

このように、耐震リフォームの相場として、もっとも多い価格帯は100~150万円です。

しかし、自治体によっては補助金制度が設けられていたり、耐震リフォームにかかった費用から補助金を差し引いた金額の10%が所得税から控除されたりします。これにより、耐震リフォームの負担を減らすことができます。

 

2. 地震のたびに見直される耐震基準

住宅を建築するときには、法律で定められた耐震基準を満たしている必要があります。しかし、法律による耐震基準は、大地震が起こるたびに見直し強化が図られてきました。

そのため古い住宅は、現在よりも甘い耐震基準で建てられています。また、経年劣化により耐震性は下がっていることから、特に耐震リフォームを検討すべきだといえます。

ここでは、主な大地震と耐震基準の見直し強化が図られた時期について説明します。

 

2-1. 1924(大正13)年に初の地震に関する規定

日本で初めて耐震基準と呼べるものが法律で定められたのは、1924(大正13)年です。

これ以前から、市街地建築物法という住宅に関する法律はありました。この法律は現在の建築基準法の原型ともいえる法律です。市街地建築物法では、耐震基準については触れられていませんでした。

しかし、1923(大正12)年に関東大震災により多くの建物が倒壊しました。関東大震災については、以下のホームページで報告書とその概要が公開されています。

内閣府 防災情報のページ:報告書(1923 関東大震災)

この関東大震災の翌年に市街地建築物法が改正され、鉄筋コンクリート造の建物や木造住宅の地震に対する規定が盛り込まれたのです。

 

2-2. 1950(昭和25)年 旧耐震設計基準制定

1950(昭和25)年には、建築基準法が制定されました。建築基準法では全国の建物に耐震設計が義務付けられたのです。具体的には、震度5の地震に耐える耐震設計が義務付けられています。

なお、この建築基準法の規定に基づいて建築された建物のことを、現在では「旧耐震」と呼びます。

建築基準法の制定で耐震基準が定められた経緯として、1948(昭和23)年に起こった福井地震が大きく関係しています。福井地震は福井市を直撃し、建物の全壊率80%以上という大きな被害を与えました。

また、地震の揺れも非常に強く、それまで存在しなかった震度7(激震)を創設するきっかけとなったほどです。福井地震については、以下のホームページで報告書とその概要が公開されています。

内閣府 防災情報のページ:報告書(1948 福井地震)

このように、1950(昭和25)年には建築基準法が制定され、全国の建物に震度5の地震に耐えられる耐震設計が義務付けられました。この耐震基準のことを現在では「旧基準」と呼びます。

 

2-3. 1981(昭和56)年 新耐震設計基準の施行

1981(昭和56)年には、耐震設計基準が抜本的に見直されました。この年に施行された耐震設計基準のことを「新耐震」と呼ばれます。

現在でも住宅の耐震リフォームや耐震強度の話では、この1981年という年がよく登場します。それは、この年以降の建物はより厳しくなった耐震基準に基づいて建てられているからです。

新耐震の大きな特徴は、震度6~7の地震でも崩壊や倒壊をしない耐震性を求めていることと、建物だけでなく建物内の人命を守ることに主眼を置いていることです。

新耐震の施行は、1978(昭和53)年の宮城県沖地震がきっかけとなっています。この地震については、以下のホームページで概要が公開されています。

宮城県公式ウェブサイト:宮城県沖地震の概要

1995年の阪神・淡路大震災でも、この新耐震基準に基づいて建てられた建物は、旧耐震基準のものと比べて被害が少なかったという事実があります。

以上のとおり、耐震基準は歴史的な大地震の直後に見直し強化されています。特に住宅の耐震性能で注目されるのは、1981年より新しいか古いということです。これ以前の住宅は建築時の耐震性能が低いため、耐震リフォームが大掛かりとなることが予想されます。

しかし、1981年以降に建てられた住宅が安全だという意味ではありません。住宅の耐震性能は、建築設計以外にも地盤などにも大きく左右されます。また、経年劣化により建築当初よりも耐震性能が落ちていることは間違いありません。

ですから、1981年以降の新耐震基準に基づいて建てられた住宅であっても、耐震リフォームが必要となる可能性は十分にあります。

では、耐震リフォームを行うには具体的にどうすればよいのでしょうか。以下では耐震リフォームの流れと具体的な内容について、詳しく説明します。

 

3. まずは耐震診断

耐震リフォームを行うためには、住宅の現在の耐震性を把握する必要があります。現状が分からないと、具体的にどのような耐震リフォームが必要なのかが判断できないからです。

耐震診断は専門家が住宅の設計図書などを確認した上で現地調査を行い、住宅の耐震性能を評価します。耐震診断結果は上部構造評点という評価点で住宅の耐震性能が診断され、以下の4区分に大別することができます。

  • 評点1.5以上      … 倒壊しない
  • 評点1.0以上1.5未満 … 一応倒壊しない
  • 評点0.7以上1.0未満 … 倒壊する可能性がある
  • 評点0.7未満      … 倒壊する可能性が高い

上部構造評点は、評点1.0が法律で定められた基準耐震強度です。

そのため、耐震診断の結果、評点1.0以上であれば安全な住宅だといえます。また、耐震リフォーム後は、評点1.5となることを目標とします。

一方で評点1.0未満だと、耐震リフォームによる対策が必要です。地震が起こったときに住宅が倒壊する恐れがあるからです。

ですから、耐震診断の結果、評点1.0未満だった場合は、耐震リフォームを行いましょう。

 

4. 具体的な耐震リフォームの内容

耐震リフォームでは、主に基礎の補強や土台と柱の修繕・接合部の補強、壁の補強、屋根の軽量化の4つの工事が行われます。以下でこれらについて詳しく説明致します。

 

4-1. 基礎の補強

耐震リフォームの具体的な内容の1つ目は、基礎の補強です。基礎は住宅を支える土台であるため、基礎を補強しなければ、地震に耐えることはできません。

現在の住宅では、基礎に鉄筋コンクリートを使用することにより、強度を確保しています。しかし、古い建物では鉄筋が入っていない無筋コンクリートを使っていることが多くあります。

このような場合、無筋コンクリートに鉄筋コンクリートを一体化させたり、基礎にクラック(ひび)があるときは補修したりして強度を確保します。

このように、耐震リフォームでは基礎の補強により耐震強度を確保します。

 

4-2. 土台や柱の修繕と接合部の補強

耐震リフォームの具体的な内容の2つ目は、土台や柱、接合部の修繕です。地震のとき、建物が歪んで柱が土台から抜け、住宅が倒壊することが多くあります。そのため、地震のときに柱が抜けてしまうことがないよう、金具で土台や柱、接合部を補強します。

また、古い住宅では土台や柱が腐ったり、白アリ被害に遭っていたりすることが多いものです。このような部分も継ぎ足して修繕します。

このように、耐震リフォームでは土台や柱を修繕し、地震で抜け落ちないよう接合部を補強します。

 

4-3. 壁の補強

耐震リフォームの具体的な内容の3つ目は、壁の補強です。住宅は地震による横からの力でねじれると、倒壊する恐れがあります。そこで、耐震リフォームでは内壁や外壁、もしくは両方を補強することにより住宅のねじれを軽減するのです。

具体的には、住宅の内外に耐震壁という壁を新たに設置したり、外壁であれば強化パネルを貼ったりして壁の強度を上げます。壁の強度が上がれば、地震のときの住宅がねじれが小さくなり、倒壊の可能性が低くなるのです。

このように、耐震リフォームでは住宅内外の壁を補強することにより、倒壊を防ぎます。

 

4-4. 屋根の軽量化

耐震リフォームの具体的な内容の4つ目は、屋根の軽量化です。屋根が重いと、地震のときに住宅を押し潰してしまったり、大きく揺れて倒壊したりする可能性が高くなります。

特に重量がある日本瓦を鋼板や銅板、アルミニウム板、ステンレス板のような軽い素材に取り替えることで、耐震性が向上します。屋根が軽くなることにより、住宅を押し潰すなどで倒壊する可能性が低くなるのです。

このように、屋根を重量の軽い素材に取り替えて軽量化することにより、住宅の倒壊を防ぎます。

以上のとおり、耐震リフォームでは、基礎の補強や土台と柱の修繕・接合部の補強、壁の補強、屋根の軽量化という4つの工事が主となります。

住宅の現在の耐震性能に応じて、先ほど説明した上部構造評点が目標としては1.5以上、最低でも1.0以上となるよう、これら4つの中から必要な工事を行います。

冒頭で、耐震リフォームの相場は100~150万円だと説明しました。現在の住宅で十分な耐震性能を得るためには、このような工事を組み合わせた結果として100~150万円の費用になることが多いのです。

 

5. まとめ

こちらでは、耐震リフォームの費用の相場と住宅の耐震基準、そして具体的な耐震リフォームの内容について説明致しました。

耐震リフォームの費用の相場は、100~150万円です。そして、自治体によっては補助金制度が用意されていたり、耐震リフォームで負担した金額の10%が所得税から税額控除されたりと、負担を少なくすることができます。

なお、住宅は建築された年によって耐震設計の内容が異なります。これは、耐震基準は大地震などがあれば見直し強化が図られるためです。

特に1981年以前と以降、どちらに建てられた住宅かによって、耐震性能は大きく異なります。だからと言って、1981年以降に建てられた住宅であれば耐震リフォームは不要だという意味ではないことに注意が必要です。

耐震リフォームの前に、まずは耐震診断が必要です。耐震性能により現状の住宅の耐震性能を把握することに、必要な耐震性を確保するための工事内容が決まるからです。

耐震診断の後、具体的な耐震リフォーム工事を行います。耐震リフォームの具体的な工事内容としては、基礎や壁、接合部の補強や土台、柱の修繕、屋根の軽量化があります。

耐震診断の結果に基づいてこれら必要な工事を行うことにより、大地震でも崩壊や倒壊の可能性が少ない住宅とすることができます。結果として、ご自身やご家族の命を守ることにもつながります。